あらすじ
〈時をめぐる大いなる戦いの果てに――著者が満を持して挑む、初の時間SF〉時間線を遡行して人類の完全なる殲滅を狙う謎の存在。絶望的な撤退戦の末、男は最終防衛ラインたる3世紀の倭国に辿りつくが……
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Posted by ブクログ
時間遡行による永遠にも思える途方なさや、死別とも違う永遠の別れが印象的でした。
オーヴィルがサヤカの言った人間の意味を人類史を遡り戦いながら段々と理解していく様子に感動しました。
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自分を自分たらしめるものは何か?十万年の戦争に耐え抜き、任務を達成させるような強いものとは何か?オーヴィルにとっては愛であるーーサヤカとの儚い夢のような。あらゆるものが時の風に吹かれ、時の砂に埋もれ、遥か遠くの時間枝に別れてしまっても、胸に残る愛の残像。これらが本作の根底に流れており、知性体としてのオーヴィルをぶれることなく描いている。
叙情的な描写の繊細さもさながら、時間遡行と歴史改変をテーマにしたSFとしても秀逸である。未来からの援軍が来ないので、この時間枝が滅びることが分かってしまう辛さ。カッティ・サークの冷徹なまでの理屈は分かるのだが、どうしても情緒の部分で受け容れることのできないもどかしさもあった。それらがオーヴィルの目を通して何度も繰り返されるのだ。一人一人の人生に触れ、共に戦う仲間であるのに殆どを救うことができない。オーヴィルだけではなく、滅びる時間枝の人間を描写することで、この戦争の虚しさが身に染みるのである。
そして卑弥呼が登場する。ちょっととんでもない展開だな、と思ったが、これが違ったのだ。日本史上、最古の統治者の一人である卑弥呼である必要性が大いにあった。また、その神がかり的な伝説にも必要性があった。人類存続の為に手段を選ばない時間軍に対し、今を生きる人間として、ただ生き抜こうとする強さが美しい。10万年の間誰もやらなかったことーーカッティ・サークに「疾く失せろ」と言い捨てることーーで新しい時間枝を生み出し、オーヴィルの心を繋ぐことができたのだ。全てが無情に消える筈だったオーヴィルを最後にただ一人救う存在だった。陳腐な言い方たが、オーヴィルに救済があって本当によかった。
また、敵の機械群・ETの動機がとても面白い。許し難いことだが理に適っているようにも思えるのだ。ET達の視点でこの話を読んでみたいと思うくらいに。
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時間を遡りながらの長い戦いのはなし。映像的な文章ですごくよかった。戦士としての矜持や自負のためではなく、愛した女のために何万年も戦い続ける知性体。そして、その感情を受けとった人間が自らの力で立ちあがる瞬間に目頭が熱くなった。
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#日本SF読者クラブ 人類はETが造りだした「バーサーカー」に敗れ去り、もはや滅亡は避けられない。人類は最後の望みを託し、人型人工知性体メッセンジャー達を戦略支援知性体「カッティ・サーク」とともに過去へと送りこむ。「人類滅亡」の未来を変えるというか、時間軸を分岐させるにために。ちょうど「ターミネーター」とは逆の設定となる。メッセンジャーの一人オーヴィルのハードで切ない物語にシビれる。しかしながら、最後は唐突ともいえるハッピーエンドを持ってこなくても良かったのではないか。どこかの分岐された時間軸で、ハッピーエンドの世界がきっとあるはずだから。何度も読んだお気に入りの作品。
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宇宙からの侵略者「ET」と人類の、時を跨いだ永い闘い。高度知性体、タイムワープ、歴史改変とSFの面白さを堪能。やっぱり硬派なSFは面白い。
AIが取りざたされる昨今なので、高度知性体などはあながち夢物語ではないかも?と感じながら読んだ。
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時間樹や時間枝というアイディアが面白いし、時間を遡行して機械群が各時代に進行するのを人型人工知性体が追跡する……などと書くと小難しいイメージが浮かぶかもしれないが、不思議とこれがスルスル入ってくる文章に化けているから面白い。
人の世の儚さと虚しい運命、それでも、いやだからこそ生きる人々の姿が脳裏に焼き付く。SFではあるが「ひとり」の生きた人間が時代と歴史という足跡になる、そんな風に語りかけられた気がした。
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邪馬台国の卑弥呼の時代に現れた謎の地球外生命体。それらと2300年後の未来から来た使者が共に戦う時間遡行SF。
しかしながら、”邪馬台国の卑弥呼”というのは、どうも腑に落ちないですね。おそらく、『渡部昇一の少年日本史』に書かれている事が、真実かなと思うのですが…
以下、『渡部昇一の少年日本史』P19抜粋-
(前略)
邪馬台の「台」は「と」と読めますから、「やまと」に「邪馬台」という漢字を当てて書いたのでしょう。しかも相手には野蛮国という先入観がありますから、「邪」という悪い漢字を使っているわけです。
そこの支配者は卑弥呼という女王であるというのも、どこかで耳にしたことなのでしょう。日本人から見れば卑弥呼は「日の御子(みこ)」です。日本人は昔から天皇のことを日の御子と呼んでいたのです。だから卑弥呼とは天皇のことなのではないでしょうか。
(中略)
しかし「魏志倭人伝」の作者は野蛮人の国の日の御子だから「卑」という字を使って卑弥呼としたのでしょう。
(後略)
以上、抜粋終わり-
結局、白髪三千丈の国の言う事なので、嘘偽りが混ざっているのは仕方ないところ(李白は好きなので、誤解なきよう)。ちなみに本作の著者は、作中で畿内説をベースに本作を書いています。前置きが長くなりましたが『時砂の王』のあらすじと感想。
巨大で不気味な物の怪に襲われた邪馬台国の女王・卑弥呼は、”使いの王”を名乗る者によって救われました。彼は、地球壊滅から62年後の2598年、海王星の衛星トリトンで目覚めた、強健な身体を与えられた人型人工知性体。敵対する謎の増殖型戦闘機械群を追って絶望的な時間遡行戦を行う中、西暦248年の邪馬台国に降り立たったのでした。彼は卑弥呼と協力し、その時代の人々を巻き込んで人類存亡をかけた最終決戦が始まります。
多分岐する時間枝を遡って戦い、時に第二次世界大戦、時に猿人の時代まで遡ったりと、タイムパラドックスもなんのその。ただ「地球人類の生存に奉仕する」という第一任務の遂行のために敵との戦闘に明け暮れます。そんな自分たちの行動が、後の時間枝にどのような影響がでるかを、当人たちでもわからなくなっているのがなんともメチャクチャで可笑しかった。あとは、時間遡行した先の大戦時の人類が、利権や愛憎などで協力し合えないという構図が、人類の特徴をよく現しており、卑弥呼の時代の人々が、ロクな武器もないのに団結して戦う姿がとても印象的で良かったです。そのあたりが、”使いの者”のセリフ(P255)に表れていて、感慨深いエンディングにも繋がっていたのだなと思いました。
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久々につくりもので泣きそうになっちゃったよ 深夜テンションのしわざです 小川一水はコロロギ岳に続き2冊目、時間遡行ものの人という認識だけどやはり上手いな〜と思いました
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タイムトラベル×卑弥呼という舞台設定だけでも好奇心をくすぐられるSF。更にこの舞台設定に時空を超える愛が練り込まれてる。時間軍の設定も構成も工夫されているし、邪馬台国の民衆と「物の怪」の戦闘もなかなか面白かった。もっと細かく書こうと思えばいくらでもできそうなところをスッと終わる潔さ。
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アレクサンドルは凍結から目覚めたのか。釈然としない?知性対サンドロコットスのサブユニット
因果効果、時間枝、ハイブリッド、カッティサーク 奪われた人類の
釈然としない部分はあるけど数万年単位の大きな人類の戦い、壮大だった。時間遡及し歴史改変した時間枝がパラドックスで消えるのでなく「滅亡する」という選択肢が絶望的。
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未来の人型人口知生体と卑弥呼、敵は古代神話に出てくるような物の怪。
この取り合わせが、作者の発明。
きわめて“ひと”に近い人口知生体が、二度と自分の過ごした時代には戻れない宿命を帯びて、人類の滅亡を救うべく、歴史をさかのぼる。
時間SFとしては定石のストーリーであるが、滅亡させようとする勢力の理由と、滅亡してしまう理由が、現代の我々への警鐘であることにポイントがある。
敵である「増殖型戦闘機械」群との戦闘がその時代ごとに違ってきて、ついに決戦となった邪馬台国の地の戦いの描写はとても迫力があった。
短いページ数のなかで、壮大なスケールを感じることができた。
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敵が過去を遡ってまで人類を滅ぼそうとするので、未来の人間は同じように過去を遡る。結果的に人間が勝つんだけど、それまでどう勝っていくのか気になって一気に読みました。
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壮大なタイムパラドックス、タイムリープSF小説。宇宙規模の戦いの歴史をコンパクトにまとめて居るけれど内容はかなり重め。でも文章は非常にこなれていて非常に読みやすいです。人類を救うために作られたクローン?人造人間?のメッセンジャーと言われる人々が、奮闘して人類を滅亡から救おうとするのですが、敵も味方も時代を超越して戦うので26世紀頃と卑弥呼の時代と紀元前10万年を入り乱れてで壮大極まりありません。
パラレルワールドの何処か一つでも人類が生き残る未来があれば、そこを死守するという人類の大義と、今この時に愛着を持ってしまったメッセンジャーオーヴィルの奮闘が次第に目的がずれて行く所がとても美しい。
結末迄美しい名作です。
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時間SF。
卑弥呼が主人公として活躍するSF。斬新。
読みやすく、面白いが、なかなか悲しい。
未来の人類が過去に行けるようになったが…、過去の世界で戦争をするとなると、技術力・資源・情報など問題は山積。想像力が試されて楽しい。
個人的に、面白いだけに、もう少しボリュームがあっても良かった。
ET側の立場からの視点も1章くらい観たかった気もする。
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卑弥呼は出てくるけど知ってる卑弥呼とその時代ではないのが面白かった。
歴史改変SF。小川さんの小説は読みやすい。長編SFは設定や世界観を頭に入れるのがだるくなってきてので短編ばかり読んでたけど、また長編読もうかなと思った。小川さんの作品をもっと読みたい。
卑弥呼とオーヴィルが恋仲になるのはなんかなって思った。命の恩人だけど。そこはオーヴィルにはサヤカ一筋でいて欲しいような、しかし10万年かけて守ってきたしなあとも思う。体感だと何年位なんだろう?何百年くらい?
カッティ・サークの元ネタはあるのか調べたけどわからなかった。船の名前が出てきた。あとウィスキー。でもほんとの元ネタは詩?の出来事?
なぜそれを人類を救うための知性体の名前にしたんだろうな……。魔女か~~。
最終的にカッティ・サーク自身が死ぬ時間枝の計算が出来ない=可能性が残されるというのに賭けて自爆するのが良かったな。
またオーヴィルが死ぬことで卑弥呼が奮い立ち、歴史が変わってOがやってきて、さらにOが沙夜と出会う。めちゃくちゃ好きな流れ。
バトルは予想より多かったし、人間同士の駆け引きや、カッティ・サークという人工知能との駆け引きも良かった。また、ドイツでハルトマンに乗せてもらうのも良かった。史実の人間がちょっと変わって出てくるのが良いな。
あと最初にオーヴィルと卑弥呼が出会う時に、Oを王と聞きとって使令の王として扱うのも良かった。これオーヴィルじゃなかったらややこしいけど。
敵のETの正体や仕掛けてくる理由も良かった。生存を賭けての戦いだから引けない。機械が襲ってくるのももとは細菌だからかな。肉体という概念が乏しいゆえスーツの延長で襲ってきてるのかなあと想像した。
Posted by ブクログ
たった270ページに、紀元前10万年から西暦26世紀の時間と、2000億人の死を詰め込むなんて、小川一水以外にできるでしょうかあ!
人類殲滅に襲いくる異星機械群と、究極知性…UIだな…を中心とした軍人ベースの知性体サブユニットたちが、時間を遡行して当時の人類の資源と科学を駆使しつつ闘い続ける。そのギリギリの砦、邪馬台国での舞台作りもお見事。ロマンスも詰め込んで…これ『天冥の標』くらい長くすることもできたろうなー。それを1冊に、しかも書き下ろすってすっごいなー。
主人公オーヴィルは、ジャンプラでやってる『Heart Gear』のアンドロイド戦士と重ねて読みました
Posted by ブクログ
西暦248年、不気味な物の怪に襲われた邪馬台国の女王・卑弥呼(彌与)とその従者の幹であったが、突如現れた「使いの王」オーヴィルと人語を発する剣カッティに命を救われる。
彼らは2600年後の未来から来た人工知性体で、太陽系奪回軍の参謀総長である知性体サンドロコットスのサブユニットとして創られた有体知性であるメッセンジャー・O(オリジナル、個体名はオーヴィルを選択)と、遡行軍統括の時間戦略知性体カッティ・サーク(女性の声で本体は別の場所にある)であり、彌与が襲われた物の怪は「ET」と呼ばれていた。
オーヴィルは西暦2598年に、人類の第一拠点である太陽系中枢府で生まれた。彼は人類が知識化したほとんどの情報をすでに保持していたが、人と関わることで、データでは得られない人間的な感性を育む期間が設けられていた。そこで出会ったのが補給廠の窓口で、受領者の頭にコーヒーをかけていたサヤカ・カヤニスキアであった。オーヴィルはいかにも人間的な行動を取るサヤカに興味を持ち、惹かれ合い、2人は付き合い始めた。彼女と関わることで愛を知り、そして別れを知った。
オーヴィルの根底にあるものは、メッセンジャーとして与えられた最優先命令としての「人間への忠誠」ではなく、救えなかったサヤカとの記憶、その彼女が望んでいた言葉。「人に忠実であれ…」
オーヴィルたちが創られた目的であり、サヤカと別れなければならなかった理由でもある、人類の敵ETとは、何者か(ETクリエーター)によって創り出された増殖型戦闘機械で、様々な形態のものが存在する。そしてその目的は人類の根絶であり、既に地球は壊滅させられていた。だが、その後の宇宙戦争において劣勢を悟ったETは、今よりはるかに弱小の過去の人類を掃討するため、時間遡行を行った。
一方、人類の存続を目的とするオーヴィルたち知性体も時間遡行を行うが、ETに先を越され、再遡行が必要になる。カッティは、ETが通過する時間枝を見捨て、一気に十万年前に遡行するという無機質な作戦を提示するが、人と触れ合い、感情を獲得しているオーヴィルたち一部の知性体はそれに反発した。結果的に、十万年前に定住してETを迎撃し続ける部隊と、時間枝の分岐点を守りながら遡行を繰り返して十万年前に向かう部隊とに分かれた。
後者のオーヴィルたちは、四百回以上の戦いの末にようやく本隊との合流を果たす。
そこでカッティから、クリエーターの正体が一億二千万年後、化学合成細菌から進化を遂げた生命体であることを知らされた。
クリエーターは時間遡行理論を手にして過去を調査し、地球人の無人観測基地の設置により、自分たちの先祖である細菌類とその母星が一度壊滅しかけていたことを突き止め、その復讐のためにETが送り込まれたという。
その途方もない事実と遡行戦の疲労により、オーヴィルは極東の小さな島(後の邪馬台国)で、ステーションを築いて凍結に入った。そして千二百三十年後、ETの出現により眠りから目覚め、邪馬台国の女王を助ける。
その時代は、十万年前から勝ち続けてきた人類側の遡行軍と、未来を喰い荒らしてきたETとの、時間戦略的な拮抗点であり、決戦の時であった。
彌与は「使いの王」に従い、ETとの戦いに身を投じた。その中で倭国(日本)を知り、世界を知り、「使いの王」の苦しみを知った。そして、彌与はオーヴィルを苦しみから救いたいと願った。たとえサヤカの身代わりだとしても。それから二人は閨を共にするようになった。
しかし戦況は圧倒的に不利となり、彌与は味方である高日子根の愚行により負傷、カッティは自爆、オーヴィルは深傷を負い死亡。人の軍は希望を失ったかに見えたが、彌与が立ち上がり、声を張り上げ宣言した「人類は負けない、海を渡ってでも生き残る」と。
その時、空に超巨大戦艦が現れ、オーヴィルによく似た男の姿があった。彼は二十一世紀時間軍パスファインダーのオメガと名乗った。彼の時間枝は、彌与の決意によりたった今産まれ、そして未来からの援軍はつまり、人類の勝利を意味していた。
オメガの時代に、オーヴィルたちメッセンジャーの戦いは、魏志倭人伝の御伽噺として伝えられていたが、オメガはオーヴィルの亡骸に触れて記憶を引き継ぎ、全てを理解した。メッセンジャー・Oであり、「使いの王」であったオーヴィルの意思は、同じ頭文字を持つオメガに引き継がれた。
オメガはETとの戦争を終結させた後、元いた時間枝で大勢の人々に歓迎されていた。その中で、不思議な格好をした沙夜という名の娘に出会い、胸の高鳴りを不思議に思いながら声をかける。あの日のオーヴィルのように。
270ページと少なめの長編小説だったが、上記の要約できていない要約以外にも、オーヴィルの同僚のアレクサンドルが恋人シュミナに向けて書いていた児童文学の話、高日子根の彌与に対する思惑や、オーヴィル亡き後、おそらく従者の幹と彌与が結ばれ、その子孫の沙夜と、Oの意思を受け継いだオメガが出会ったであろうことなど、魅力的な内容を含んでいる。また、1963年に優秀なパイロットとして少しだけ登場したハルトマンは、史上最多の撃墜記録を持つ、実在したパイロットのエーリヒ・ハルトマンであり、オーヴィルが史実を利用して人選するという話のつくりには、卑弥呼に関しても言えることだが、歴史的興味を掻き立てられた。
未来の知性体であるオーヴィル視点の記述では、本のことを「私製書籍ー脆くてハンドリングの悪い、恐ろしく低密度なデータベースだ。」というように
書かれていたことも印象的だった。
あえて苦言を呈するならば、カッティとオーヴィルの死後、彌与たち人の軍が海を渡り漢土に逃げ切ったとしても、それからETに滅ぼされずにどうやって生き延びたのかと言うこと。オメガのいる二十一世紀には超巨大戦艦が造られるほどに発展していることにも疑問が残る。
とはいえ、そこまで考えさせられた本作は、史実を基に時間遡行や宇宙戦争を絡めた壮大な物語であり、その広大なスケールを見事に書き上げた「時間SF小説」の傑作だった。
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人類を滅亡させた謎の生命体を滅ぼすべく、特殊な兵士たちが何度も過去へ遡るタイムリープものSF。この手のジャンルではタイムパラドックスにどう説明をつけるかが肝になってくるが、本作では過去に遡った時点で未来に影響を与える行為をすると即座に現世に反映されるシステムを採用しているため(タイムリープ小説の時系列を説明する時の時制のややこしさは異常)過去に遡った兵士たちは、もう二度と自分達の生まれた現世に戻ることはできない。
22世紀初頭や第二次世界大戦期など様々な時代に飛んだ兵士たちは一進一退の攻防を繰り広げるが、最後には敗れてしまいその都度過去の時代に飛んでいく。物語が始まるのはまだ日本に邪馬台国が存在していた遥か昔にまで遡る。「旅のラゴス」もそうだが、引っ張ろうと思えばいくらでも引っ張って重厚さを醸し出せるテーマなのに潔いページ量で綺麗に締めくくったのが高ポイント。
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邪馬台国に未来の戦士が降り立ち機械群と戦う!
例えると、ナウシカの所にターミネーターがやって来て風の谷の人達やペジテの人達と協力して悪意を持ってるオーム達に絶望的な戦いを挑むといった話!
タイムパラドックスは置いといてアイディアが面白い!SFってやっぱりアイディアだよねと思わされる一冊!
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初一水。『卑弥呼』と聞いて相当期待したんだけど…思ってた程ではなかった。結局ETとはなんだったのだ?私は別の人類が造ったものだと思う…。オーヴィル(人工生命体)のサヤカへの想いは、紛れもなく愛だった。目の前の人を救うのか——はたまたそれらを見捨て、人類の未来を選ぶのか——よくある疑問だが、わたしは名もわからぬ人類より、目の前の大切なひとを救うことこそ未来を救うことに他ならないと思う。それにしてもオーヴィルの時空を越えた、長い長い闘いには言葉もないよ…。星三つ半。
Posted by ブクログ
AD2598年に生を受けたメッセンジャー、ETに攻められ破滅間近な世界から、時を遡りその時点の人類に、未来を守るために闘えと伝える。滅びる時間枝から更に遡行を続け、248年卑弥呼女王の時代、女王とともに闘う。
無限の時間枝、生き残る枝には未来から援軍が来る。来ないということは、滅びるということ。タイムマシンがあると、そうなるのかぁ。
Posted by ブクログ
2回目だった....
けと、内容覚えてなかった。SFのオススメで頻出していたので、期待したのだけれど、それほどでもの印象。2回目だからか。
設定が大きい割には薄い本で、もっとボリュームがあると良かった。
最後の落ちどうするのかと思ったら、まぁそうなるのか、うん、そうね。だけどあっさりな気がする。
Posted by ブクログ
時間軸も地球もそれぞれ変えながらETと戦い続ける人工知性体オーヴィル.サヤカとの思い出を胸に,人間を守ると誓う.卑弥呼と出会い新しい局面が開いて行く.錯綜する物語,書き換えられ改変されて行く歴史に登場人物はもちろん読み手もこんがらがりながら,突然現れた正史にそうきたかと納得.うまくまとめたと思った
Posted by ブクログ
タイムパラドックスに並行世界に宇宙生物に人工知性に「邪馬台国」とてんこ盛りの内容だが、緻密な設定と骨太のストーリーが緊密に結びついていて、アイデア倒れでない一級の「小説」になっている。ただしラストの方の展開が個人的に気に入らなかった(実体としての「くに」「故郷」を否定する一方で、「想像の共同体」としての国家意識にすがるナショナリズムと、敵を殲滅してめでたしめでたしというマッチョイズム)。
Posted by ブクログ
未知なるETの攻撃により地球は壊滅し、人類が海王星を拠点として抵抗を続けている未来。メッセンジャーと呼ばれる強化された人間の身体を持つ知性体達は、人類を救うため時間遡行して敵戦闘機械群を地球にて迎え撃つ。だがしかし、ETも更に時間を遡り執拗なまでに人類を追い詰める。人類の生存を賭けて過去へ過去へと後退していく戦線。ついに最終的な決戦の舞台は古代へ移り、メッセンジャーOと時間戦略知性体カッティは女王卑弥呼と出会う。
正体と目的が分からないETっていうのは、SF的に熱いね。それに「未来からの増援がない」=「人類に未来が無い」と言う残酷な事実に思わず息を詰めてストーリーを見守ってしまう。
多少のご都合主義を気にさせず、骨太のSFバックボーンをラノベっぽい切り口で魅せる、読みやすい作品だった。