小川一水のレビュー一覧
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近未来を舞台にした作品5編収録のSF短編集。
近未来といっても10年、20年先というわけではなく、場合によっては数年先にはこうなっているのではないか、という作品ばかりです。
そのためか出てくる登場人物たちも身近に感じられるキャラが多いです。表題作の「煙突の上にハイヒール」は結婚詐欺師に騙されかけたOLさんが主人公。
「カムキャットアドベンチャー」では近所の猫に餌をやる男子大学生、「イブのオープンカフェ」では彼氏と別れたばかりの女性が主人公です。
SFのイメージで強いのは宇宙人、宇宙開発、アンドロイド、科学による人間の変容などなのですが、この短編集はそうした大げさなものでなく、
普 -
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ついに「救世群」が太陽系国家群を相手に撃って出る。
Part1で疑問だったイサリとミヒルについては、やはりメニーメニーシープに現れたイサリとミヒルだったか。硬殻化した「救世群」の人々はこの後どんな運命を辿るのか、ノルルスカインはカンミアとどんな関係で絡んでくるのか、カンミアはこれから「救世群」、「恋人たち」に対してどんな対応をするのか、ますます面白い展開になって来た。
ビーバーに拉致されたイサリとミヒルの話が面白かった。今回はスカイシー3とは違い、ミヒルのわがままで付き添いせざるを得なかったのだが、イサリはこれからも脱走みたいな事を繰り返すのだろうか。
とにかくPart3が楽しみだ。 -
Posted by ブクログ
メニーメニーシープからだいぶ経ったが、そろそろ最初の物語に関連する事柄が見えて来たのか。今回は、「救世群」と「非染者」のねじ曲がってしまった悲劇の関係が垣間見えて、ちょっとした事の行き違いが大きな誤解を生むと言う警告をしている様に思えた。その昔、千茅と青葉が築いた様な関係が持てるのだろうか。
内容としては、策略や怨みといった少々えげつない部分はあるものの、星のりんごのためだけに、イサリをエスコートしたスカウトの話や、アダムスとアインの冒険家らしい探究心は読んでいてワクワクする。
本書では年表と登場人物、キーワードが付録として載っている。カドムが遭遇した怪物イサリと、本書のイサリ・ヤヒロは同一人 -
Posted by ブクログ
小川一水の超大作の第五巻目。ようやく半分(ただし次の巻はPart3まであるのが見えている)。
今回は、一見これまでの話と繋がりの無いような農夫の話と、逆に明らかに物語の中核であろう被展開体「ノルルスカイン」の話が交互に綴られる。
段々と、これまでの点と点が繋げられて線になってきたと感じられた。
タイトルの「百掬」とはなんなのだろうかとグーグル先生に聞いてみたものの、どうやら造語のようである。
「掬する」には大きく3つの意味があり、
1 両手で水などをすくいとる。
2 気持ちをくみとる。推し量って理解する。
3 手にすくいとって味わいたいと思う。
個人的にはおそらく3の意で使われているのだと -
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自分達が把握していた世界を知り尽くして(そういう気になって)、新たな世界に進出した時。
そこで出会った意思疎通の出来る存在に対して、上から目線で接してしまうのは何故でしょうね。
大航海時代がそうですよね。
全て自分達の価値観に当てはめて、それ以外は劣性であると決め付けてしまう。中学生の万能感ですか。
そんなおばかっちょがかかる悪い病気に、痛烈にしっぺ返しかけてくれます。
未知との遭遇の怖さを教えてくれますね。
なんでもかんでも自分の価値観で、判断してはいけないということです。
知り合うことと、分かり合うことは、大きな違いがある。単純なことです。
個と個なら当たり前のことが、どうして構成 -
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ーーー西暦2349年、小惑星パラス。
地下の野菜農場を営む40代の農夫タック・ヴァンディは、
調子の悪い環境制御装置、星間生鮮食品チェーンの進出、
そして反抗期を迎えた一人娘ザリーカの扱いに思い悩む日々だった。
そんな日常は、地球から来た学者アニーとの出会いで微妙に変化していくが……。
その6000万年前、地球から遠く離れた惑星の海底に繁茂する原始サンゴ虫の中で、
ふと何かの自我が覚醒した――急展開のシリーズ第5巻。
全10章の『天冥の標』はやくも折り返し地点。
独立したピースが壮大なスケールで噛み合う様は、爽快感と更なる好奇心を呼び起こす。
超銀河団規模で繰り広げられる果てなき自然 -
Posted by ブクログ
全10巻の内の6巻目の1巻目というわけのわからないことになっている。
1巻に出てきた怪物と同じ名を持つ少女の物語。
それよりも着目点はもう一方の主人公の少年が所属している集団としてスカウトが扱われているところ。
冒頭の宇宙コロニー内でのキャンプ生活の描写も楽しんで読めたのだけど、なによりも政体も宗教も社会も現代社会からかけ離れていった宇宙時代という設定の中で、スカウトという理念だけは生き残り、活動し続けている人たちがいるという設定そのものがとてもうれしい。
お気に入りの作者だけに、自分のかかわっている活動を扱ってもらう嬉しさもひとしお。
この感覚はなかなか他の人とは共有できないだろうなぁ