小川一水のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
なかなか面白かった。時間を遡りながらET(ETの意味が変わっていくのも凝ってた)と戦い続けるという話だけでも十分面白いんだけど、知性体という要素がサイボーグとか強化人間に近い存在としてでてくるんだけど、この時間を超えて戦うための存在に恋をさせて、人間や愛情を知っていかせるのが良かった。何万年という時間や人類全体の存亡を扱う話なのに、その中に特定の誰かを愛するというものすごく人間的な感情を入れたのがかなり効いていたと思う。
ただ読み終わってからタイムトラベルについて考え始めると、だんだんわけがわからなくなる。
最初は過去に遡行して干渉するたびに時間枝が分かれていく、並行世界が生まれる、いわばドラゴンボール型で話が進む。ETを防げなければその時間枝を諦めてさらに過去へ遡る。ところが途中から、過去が変わることで遡行者自身の存在まで危うくなる「因果崩壊」が出てくる。これはむしろバック・トゥ・ザ・フューチャー型の、一本の時間線を変更できる考え方に近い。
さらにラストでは、彌与たちがカッティなしで自分たちだけで戦うと決めたことで人類が生き延びる未来が生まれ、その2010年から時間軍が過去へ助けに来る。ここまで来ると「未来から助けに来ることまで含めて最初からその歴史だった」というインターステラーやターミネーター1型の因果ループに見える。
この三つって同時に成立するんだろうか??
時間枝が本当に分岐して残るなら、過去を変えても元の未来から来た人間が因果崩壊する理由がよくわからない。2010年から時間軍を送って過去に干渉したら、それもまた別の時間枝を作るだけじゃないのか。その一秒前に分岐した別の枝は誰が助けるのか。そもそも彌与たちが戦うと決めた瞬間に2010年につながる未来が成立したのなら、その2010年の時間軍は一体何を助けたんだ、という話にもなる。
互換性のないタイムトラベル観を三つも組み合わせているように見えるので、設定として厳密に考えるとかなり怪しい。でも読んでいる最中には「時間枝」「因果崩壊」「未来から全時間軍集結」のそれぞれがSF的なギミックとして強いし、何より物語に力があるので面白く読み通せてしまう。
読み終わってから「ところで、この三つのタイムトラベル観って同時に成立するのか?」と考え始めると矛盾に気がついてしまう。でもそれを読んでいる間は気にさせなかったのは物語の力が強いし、もし互換性のないタイムトラベル観を承知で全部ぶち込んでいるなら、それはそれでかなり野心的だと思う。 -
Posted by ブクログ
天冥の標シリーズ全10作17巻のうち6巻目。前作から数十年後の小惑星パラスに暮らす農夫の生活と、ダダーのノルルスカインの誕生からの歴史が交互に描かれる。本シリーズは宇宙SF世界を構成する様々な文明的な要素を著者の想像の限りを尽くして一つずつこれでもかと描いているような印象を受けるのですが、今巻のそれは農業ということ。宇宙時代における農業、農家のあり方とはどんなものだろうか、というのは想像しがいのあるテーマですよね。本作ではかなり閉塞感のある状態が想定されていたのですが、サイバーパンク的な世界の基礎を支える農業生産みたいなものはこういうものなのかもしれないなと思った。デブリ対策など低重力下ならではのディテールはなるほどなと面白かったですね。シリーズ全体のつながりの中ではダダーのノルルスカインについて描かれる断章が重要で、物語全体の大枠がやっと示されてきた感じがします。続きも楽しみです。
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Posted by ブクログ
女性主人公によるSFお仕事短篇集
しっかし、このタイトル酷すぎない?笑
近未来設定なのでその仕事自体が現代からすると特殊だけれど、近未来に時間軸を置いたことできっとこうなるだろう、なって欲しいという女性の社会進出を楽しく読める(やや少年ジャンプ風)
強い女性、をイメージするといつも浮かぶ物がある
ナンシー・シナトラ「These Boots Are Made For Walkin」という曲だ。
大変有名な曲なのだけどピンと来ない人も最後まで聞いてもらえればこんな歌だったのかと思うほど日本でも馴染みはある
そしてこの歌の歌詞、まさにこの本だ。
そこに痺れる憧れる アネキーっ -
Posted by ブクログ
短編集。どの話も総じて面白く、満足。
・ギャルナフカの迷宮
テーオを中心に、極限状況の中で人がどう秩序を作っていくのかを描く話としてかなり面白かった。タルカ、ホクストル、グンド翁といった人物の配置も効いていて、過酷な舞台設定なのに読み味は単なる殺伐さだけに寄らず、社会や制度が立ち上がっていく過程そのものに引き込まれた。
・老ヴォールの惑星
ヴォールやフライマが属する種族の設定がとにかく魅力的で、「これは生命なのか」と考えさせる感覚そのものが読みどころ。こういう設定めっちゃ好き。サラーハという舞台も含めて、文明や知識のあり方を壮大でありつつも静かなスケールで描いていて、派手さよりも余韻の深さが印象に残った。「『アルテミス』とか『星を創る者たち』みたいな異星インフラ施設が出てくるSFを読ませろ」ってCopilotに投げたらおすすめされた一作。読み始めは「なぜこれを……?」という感じだったが、読み進めるうちに理解。
・幸せになる箱庭
高美とエリカを軸に進む話だけど、読み進めるほど世界の見え方が揺らいでいく感じが強くて、不穏さの作り方がうまい。単なるファーストコンタクトモノと思いきや主題は認識と現実感をめぐるSF。最初の展開からしていた想像がいい感じに裏切られた。ラストはまーしょうがねえかなーとは思いつつも、読後感としてはちょい引っかかり。
・漂った男
『火星の人』が好きなら確実にぶっ刺さる。刺さった。タテルマとタワリ、ワティカの軽妙なやりとりがあるおかげで、パラーザという特殊な環境に取り残されたタテルマの孤独がむしろじわじわ効いてくる。状況説明だけ見ると静かな漂流譚だけど、時間の重みや心の揺れがしっかり積み上がっていって、最後まで読むといちばん強く余韻が残った。