小川一水のレビュー一覧
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小川一水『導きの星』は、シンプルにいえば、地球外生命体を進化させる超SFです。加えて、地球そのものの新たな歴史を目指す、未来小説です。時間感覚も空間感覚も真に宇宙的なスケールであり、どこを切っても魅力の果実で溢れている。
しかも、このあらたな人類を見守るという行為が、「地球」の人類の安全を守るものなのか、宇宙人類の発展を促すものなのか、結局もっと高位である「超人類」の意思によるものなのか、はたまたそれがそのまま宇宙の発展なのか....
時間的にも空間的にも広がりを持つ本書では、一方で細部にも丁寧なこだわりをみせています。進化に伴う代々のオセアノ人の風俗や暮らしぶりの変遷、オセアノ人の風貌、 -
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メニーメニーシープにおいて、植民地臨時総督による体制が崩壊した後の話。
天を目指すもの、メニーメニーシープの情勢、アクリラ・アウレーリアの三本立てでの話の展開のようだ。
ここに至ってようやくメニーメニーシープの住人たちは、自分たちが植民惑星に住んでいるのではないということに気づき始めたようだ。人々をまとめる新大統領エランカの心理描写が興味深い。咀嚼者は無敵だと思われたが、彼らも元々は人間であり、得体の知れない殺人鬼ではないことから、この地下住民の抹殺を考えているのではないのだろう。再び救世軍との戦いが繰り返されそうだが、今度は前回のような悲壮な結末ではなく、もっと進化した関係を結んで欲しいと -
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"「おまえが偽薬売りと呼ばれるわけがわかった(中略)そうやって思わせぶりに役に立ちそうなことを言うばかりで、何ひとつ解決しやしないからだ」
「それはね、僕が何かを解決してもーーーいや、その通りかな」
「では、あなたは実際には何もできないのね?」
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こんばんは、精神的に追い込まれ始めると、SF小説を読みたくなる。あまりにもプロセスコンサルティングな「偽薬売り」に共感したので取り急ぎ。
全10巻の第9巻、シリーズ14冊目。刊行から7年経過。物語内では、スタートからすでに800年経過。大した長さじゃないね。
800年のヒトの歴史、地球の歴史では決してなく、宇宙の歴史 -
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ようやく最初の「メニーメニーシープ」に戻ったようだ。今回は初回の内容がイサリの視点で描かれており、最初はさっぱり訳の分からなかった話が、ようやく見えてきたと思う。不覚にも「ちょっ、おい!」と叫んでしまったあの時の不満が、ここに至ってようやく解消された感がある。最初の話に戻って読み比べると、楽しみが倍増すると思う。
関係ないことだが、世の中には「陰謀論」というものがまことしやかに語られていて、世界の一部の人間だけがその裏舞台を知って行動しているなどという。そういえば最近、人工知能が囲碁で人間に勝ったということが話題になったが、人工知能の棋譜は名人でも分からないとか...。より多くの情報を持つも -
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ネタバレとある惑星で農場を営むタックとその娘ザリーカ、さらには独り身で惑星にやってきたアニーのお話。また、ノルルスカインとミスチフ、オムニフロラの話もあり、それぞれが交互に繰り返される。
それぞれの話に関連性はないように見受けられるが、ノルルスカインの話は宇宙の始まりからの話なので連綿と続く宇宙の系譜という意味では関わりは濃いようにも感じる。
今回は比較的説明的な章であり、どのようにして宇宙が始まり、このシリーズで主にフォーカスされている人類はどの立ち位置に存在するのかが明確になってきている章であった。
筆者の設定の緻密さや知見の広さ、語彙の豊富さが目立つ章であった。 -
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ネタバレ―――セレス地表で世界の真実を知ったカドムら一行は、再会したアクリラとともにメニー・メニー・シープへの帰還を果たした。そこでは新政府大統領のエランカが、《救世群》との死闘を繰り広げつつ議会を解散、新たな統治の道を探ろうとしていた。いっぽうカドムらと別れ、《救世群》のハニカムで宥和の道を探るイサリにも意外な出会いが――。
あまりに儚い方舟のなか、数多のヒトたちの運命が交錯する、シリーズ第9巻完結篇
いま、日本SFで間違いなく一番熱いシリーズ『天冥の標』
その第9章の完結編
スケールは大きければ大きいほど良い、とは言わないが
銀河系の縦横奥行めいっぱいと、人と人あるいはヒトとの繊細な関係性が -
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「葉物は鮮度が命だからな」
という天冥の標、第5巻。
超スケール!ワイドスクリーン・バロック!(?)
3,4は正直いまひとつだと思っていましたが、
5は文句なく最高です!
今回は、今から遡ること6000万年前、地球から遠く離れた惑星の海の中で「我あり!」と覚醒したノルルスカインの誕生から長い旅の話と、
西暦2349年、アステロイドベルトの小惑星の一つで細々と農業を営む農夫タックヴァンディのお話。
超銀河団規模の舞台とアステロイドベルトあたりでウロウロしてるお話が並行で語られるのが面白いですね。
サンゴ虫(に似た生き物)を(人間でいう)ニューロンのひとつひとつのようにして -
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宿怨に続くアインとスカウトのメンバー達の物語。
ここに至ってようやくメニーメニーシープの側面が見えてきた。この話を読んでいて、ガンダムのホワイトベースのことを思い出したのだが、状況が状況だけに背負っているものがこちらの方が桁違いに大きい。
スカウトのメンバー達は、かなり訓練された優秀な人材なんだろう。あるいはノルルスカインが後ろで糸を引いているのか。
今回の話は、読んでいて色々と胸に来るものがあり、強く印象に残った。
さて、この「植民惑星ハーブC」においてカドムとイサリが出会うまで、メニーメニーシープ約300年の歴史が始まったわけだが、今後どんな展開が待っているのか、ますます興味深くなって -
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Part2から続く太陽系国家群と「救世群」の戦いもいよいよ大詰め。硬殻化した「救世群」は無敵とも思えたが、どうも副作用もあるようだ。咀嚼者とは...。カルミアンの意図がよくわからないが、これから「救世群」との関係はどうなっていくのだろう。
今回の話では、パナストロにおけるブレイドとシュタンドーレのやりとりが印象深かった。お互い敵であっても、何度も話し合うことによって人類というのは理解し合えるという希望があることが示されたような気がする。
この戦争の結果は意外なものだったが、ミヒル・ヤヒロには色々と謎があるようで気になる。
この後の展開がますます楽しみだ! -
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すごくすごくすごく面白かった!
山のてっぺんから宇宙をつなぐエレベーターがある、シンガポール沖の島・リンガ島で働く女性たちの話。舞台は2050年です。(前後の話もある)
工業デザイナーから、芸術家から、船乗りから、保育士から、不動産屋から、客室乗務員から…とにかくたくさんの女性が出てきます。彼女たちは強くて、アイディアがあって、一生懸命。
今の働く女性と同じで、それでいて少し進展してるんだなと思いました。
残念なのは常に横に男性がいて、支えたり励まして、最後は恋愛になるところ。きっと作者は男女の友情を信じない人なんだなと思いました。
そこ以外は本当に素晴らしかった!
特に最初の工業デザイ