三浦綾子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
★★★ 一度読めば満足
織田信長の反逆者・明智光秀の娘であり、細川忠興の妻となった、数奇な運命を辿った夫人・細川玉子もといガラシャの一生を綴った物語上巻。ここでは玉子の両親光秀と煕子の結婚から光秀が信長暗殺に関心を向け始めたところまでが語られる。
玉子の母・煕子は輿入直前で病にかかり、美しかった顔にあばたができてしまう。そのため光秀には煕子と偽って妹を輿入しようとするが、光秀はそれを看破し拒み、醜くなってしまった煕子と結婚する。
光秀は聡明で思慮深い人物、そして煕子もそれに似つかわしい肝の据わった女性で、これが玉子の物語だとは分かりながらももっと両親のエピソードが見ていたかった。
対して玉子は夫・忠興や義父・幽斎の慮りを無視して明智の謀反を彼女に告げる義弟・興元のことを庇うなど、一歩間違えれば細川家をバラバラにしかねない短慮な行動をするので、あまり好印象にはならなかった。 -
Posted by ブクログ
かなりヤバイ性格の陽子ちゃんの実弟が他人の人生をダメにするまでに至り、陽子ちゃんが流氷を観ながら「原罪」や「許し」を「絶対的な存在」である「神」に啓示されるまでのお話。
最後は前面にキリスト教が押し出され、その点に関しては陽子ちゃんがそれで良いのならどうぞ…という感じ。
何に救いを見出すかは人それぞれなので…。
ただ、絶対的な「神」を信じること(「神」の存在を受け入れること)でこれまでの数々の苦悩が救われるというのは、ちょっと良い子ちゃん過ぎるお話かな。
人の心の安寧というのは、何かしら既に出来上がっているものに寄ったほうが楽であることは事実だと思う。
自由のなかで自己選択と自己責任の繰り返しで生きるよりかは指針があったほうが楽だからね。
キリスト教信者の著者が絶対的信仰に基づいて描いた人間模様と考えれば破綻もなく、飽きずに最後まで読める作品でした。
ただ、良くも悪くも人間の本質を考えるにあたっては「続」ではなく『氷点』のほうが良かったです。 -
Posted by ブクログ
かなりヤバイ性格の陽子ちゃんの実弟が他人の人生をダメにするまでに至り、陽子ちゃんが流氷を観ながら「原罪」や「許し」を「絶対的な存在」である「神」に啓示されるまでのお話。
最後は前面にキリスト教が押し出され、その点に関しては陽子ちゃんがそれで良いのならどうぞ…という感じ。
何に救いを見出すかは人それぞれなので…。
ただ、絶対的な「神」を信じること(「神」の存在を受け入れること)でこれまでの数々の苦悩が救われるというのは、ちょっと良い子ちゃん過ぎるお話かな。
人の心の安寧というのは、何かしら既に出来上がっているものに寄ったほうが楽であることは事実だと思う。
自由のなかで自己選択と自己責任の繰り返しで生きるよりかは指針があったほうが楽だからね。
キリスト教信者の著者が絶対的信仰に基づいて描いた人間模様と考えれば破綻もなく、飽きずに最後まで読める作品でした。
ただ、良くも悪くも人間の本質を考えるにあたっては「続」ではなく『氷点』のほうが良かったです。 -
Posted by ブクログ
著者の自伝小説。
教師時代からお話は始まるが、綾子氏も熱心な教師であったことが覗える。
折しも時代は戦中、戦後の動乱期。そんななか、敗戦した日本はアメリカの指示の元、綾子氏が教えていた国定教科書の至る所に墨を入れ、修正させる場面がある。
生徒は黙々と墨をすり、修正箇所に黒く修正をいれる。その姿を見るに絶えず、“わたしはもう教壇に立つ資格はない。近い将来に一日も早く、教師をやめよう”とある。
ここに時代背景を感じるが、それ以上に綾子氏の意思の硬さに驚きを隠しきれない。
自身が情熱を傾けていた七年間は何だったのか?日本が間違っていたのか、もしくはアメリカがおかしいのか?一体何が正しいのか?
生徒を想うばかり葛藤し、間違ったことを純粋な生徒に教えてきてしまった自身が許せない、ならば潔く教壇から退こう。
熱心で慕われていた綾子先生像が目に浮かぶようです。その当時でも、誰も彼もが就ける仕事でもないものを、キッパリ断つ。なかなか出来る代物でもない。
そしてその後まもなく肺結核を患い、十三年間に渡る長き闘病生活が始まる。
闘病生活の間に師や療友、前川正や三浦光世、キリストの教えと出会う。
失意の底を経験したからこその神の教え、ここらへんは少し共感し難いものに感じたが、著者は様々な人に出会い、そして別れ、苦悶し葛藤し尽くした結果の洗礼。それは大いに素晴らしいことだと思った。
これはこれで良いお話ではあったが、個人的には物語を通じて三浦綾子を知る方が好きだ。
自伝ともなれば、どうしてもキリスト色が濃厚となり、少しとっつきにくいところではある。
しかしながら、著者の生い立ちあっての物語。
残りの第二部、第三部も日を改めて追ってみることにします。 -
Posted by ブクログ
〈この直後東京から、ペンフレンドの木村美和子さんが訪ねて来られた。 彼女は物理学者で、わたしたちと同じキリスト者だった。 北大でひらかれた学会に出席のため札幌に来、その足を旭川まで伸ばしてくださったのだ。 わたしが土地を借りたことを告げると、そこを見せてくれと彼女は言った。 言われるままに、 わたしは案内した。 彼女はわたしの土地の前に立ち、 真実こめて祈ってくれた。 「三浦さんご夫妻が、 この土地 で、 神の栄光を現わすことができますように。 神様どうかお二人を御祝福ください」 今も彼女の真実な祈り が、時折り耳に鮮かに甦えることがある。 この祈りは、わたしの生涯忘れることのできない祈りの一つである。〉p125
他者のために真実に祈ることができる人がいる、そのことに深い驚きを覚えた一節。
〈七月十一日水曜晴無事勤めた。 毎日無事勤められるのは幸福だ。 祈りの時間も幸福だ。〉p128
境地。どうやったらこの境地に達することができるのだろうか。 -
Posted by ブクログ
本作を読んでみた理由は、詩人である星野富弘さんがエッセイの中で三浦さんのことを語っていて興味を感じたから。
人間の生きること、罪、本当の優しさなど、考えさせられることが多かった。
普通に生活していれば、自分たちは罪を犯していないと思っている。
だが、泥棒に入られて自殺する人は多くはないのに、誰かに悪口を言われて自殺してしまう人はたくさんいる。
つまり、悪口を言っている時点で、僕らはみんな罪人なのだ。法律上で罪はなくても、誰かに精神的ダメージを与えることで罪をうんでいる。
本作の中盤以降は、キリスト教についてのことが多く書かれている。少しマニアックで難しいなと感じたため、気になるところだけ読んだ。
この本を読んで、宗教を信仰したいとは思わないけれど、宗教も一つの価値観なんだなと思った。
-
Posted by ブクログ
短編5編とも主人公の心の動揺、そして招いてしまう不幸はいずれも鋭く重い。著者が優れた短編作家でもあることを証明していると思った。定年後の寂しい心境『尾灯』、妹を喪い同じ病に冒された姉と義弟の微妙な関係『喪失』、不倫の夫とその両親の理不尽な態度に泣かされる主人公の妻の心境『貝殻』、吃音ゆえに不幸な人生を歩み最後は冤罪にも抗議をする元気もないおとなしい男性の内面『壁の声』、夫の不倫の末に家庭を奪われた妻とその幼い息子の境遇と悲劇的な終末『毒麦の季』。著者には珍しくキリスト教とは無縁の作品ばかりであったが、人間の醜い罪、それが招く救いのない不幸な世界を描き尽くしている。
-
Posted by ブクログ
著者の「氷点」に続く第2作。青春小説のごとく始まる札幌のミッション系女子高校生(奈緒美、京子、輝子たち)と若い美男子の英語教師・竹山哲哉先生、青春真っただ中の純真な姿の冒頭のシーンからの激動の数年間を経て感動のラストへ!惹き込まれるようにその面白さで一気に読んだ。しかし、テーマは極めて重い。京子の兄・良一という女泣かせの青年の登場により、若い女性たちが不幸に巻き込まれていく。牧師である奈緒美の父・耕介が「愛とは赦すこと」と語る言葉に著者の問いかけがあり、耕介自身そして主要な登場人物たちの心の奥にある罪が抉られる。見事な展開で、最後に冒頭のシーンを想起させる青空と白い雲を見る場面で終わる。数年しか経ていないにも関わらず、大きな時間の隔たりを感じさせる場面だ。しかし、人物造形(奈緒美、良一、哲哉、輝子、京子たちの心の動き)が少し粗削りで、やや無理を感じないでもなかった。