三浦綾子のレビュー一覧
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〈この直後東京から、ペンフレンドの木村美和子さんが訪ねて来られた。 彼女は物理学者で、わたしたちと同じキリスト者だった。 北大でひらかれた学会に出席のため札幌に来、その足を旭川まで伸ばしてくださったのだ。 わたしが土地を借りたことを告げると、そこを見せてくれと彼女は言った。 言われるままに、 わたしは案内した。 彼女はわたしの土地の前に立ち、 真実こめて祈ってくれた。 「三浦さんご夫妻が、 この土地 で、 神の栄光を現わすことができますように。 神様どうかお二人を御祝福ください」 今も彼女の真実な祈り が、時折り耳に鮮かに甦えることがある。 この祈りは、わたしの生涯忘れることのできない祈りの一
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本作を読んでみた理由は、詩人である星野富弘さんがエッセイの中で三浦さんのことを語っていて興味を感じたから。
人間の生きること、罪、本当の優しさなど、考えさせられることが多かった。
普通に生活していれば、自分たちは罪を犯していないと思っている。
だが、泥棒に入られて自殺する人は多くはないのに、誰かに悪口を言われて自殺してしまう人はたくさんいる。
つまり、悪口を言っている時点で、僕らはみんな罪人なのだ。法律上で罪はなくても、誰かに精神的ダメージを与えることで罪をうんでいる。
本作の中盤以降は、キリスト教についてのことが多く書かれている。少しマニアックで難しいなと感じたため、気になるところだけ読 -
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短編5編とも主人公の心の動揺、そして招いてしまう不幸はいずれも鋭く重い。著者が優れた短編作家でもあることを証明していると思った。定年後の寂しい心境『尾灯』、妹を喪い同じ病に冒された姉と義弟の微妙な関係『喪失』、不倫の夫とその両親の理不尽な態度に泣かされる主人公の妻の心境『貝殻』、吃音ゆえに不幸な人生を歩み最後は冤罪にも抗議をする元気もないおとなしい男性の内面『壁の声』、夫の不倫の末に家庭を奪われた妻とその幼い息子の境遇と悲劇的な終末『毒麦の季』。著者には珍しくキリスト教とは無縁の作品ばかりであったが、人間の醜い罪、それが招く救いのない不幸な世界を描き尽くしている。
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著者の「氷点」に続く第2作。青春小説のごとく始まる札幌のミッション系女子高校生(奈緒美、京子、輝子たち)と若い美男子の英語教師・竹山哲哉先生、青春真っただ中の純真な姿の冒頭のシーンからの激動の数年間を経て感動のラストへ!惹き込まれるようにその面白さで一気に読んだ。しかし、テーマは極めて重い。京子の兄・良一という女泣かせの青年の登場により、若い女性たちが不幸に巻き込まれていく。牧師である奈緒美の父・耕介が「愛とは赦すこと」と語る言葉に著者の問いかけがあり、耕介自身そして主要な登場人物たちの心の奥にある罪が抉られる。見事な展開で、最後に冒頭のシーンを想起させる青空と白い雲を見る場面で終わる。数年し
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ネタバレ読後に知ったが、フィクションだった時点で少し興覚め。
ただ同時に、三浦氏の遺書的な作品ということも知り、キリスト教をお仕着せするようなこともなく、氏が読者に伝えたかったことは純粋にこういうことだったのかなぁと思いながらどんどん読み進められた。
内容としては連載小説ゆえ仕方ない面もあるが、同じ記述の繰り返しが多く、全体としても冗長過ぎるきらいがあった。
細かいところでは、木下先生が校長の意向に背きつつ数年間も左遷されなかったのは無理がある(戦前だったら、親が政治家でもない限りあんな真似は出来ないはず)。
また逆に、タコ部屋から逃げてきた金が、どういう形で朝鮮に帰ったのかが描かれていないこと -
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札幌の医者家族のドラマを通して、家族観、男女観、宗教観に問題提起。昭和30年代以降が舞台と思われ、漱石モノより現代に近いはずだが、強く伝わってくるものがなかった。医者という富裕層が舞台だからか。
登場人物それぞれの心の闇についても印象に残ったのは「あなたの体はキレイ?」と尋ねられて以降、妻を抱けなくなった戦争帰りの陶吉のみ。でも、それが後の家族の問題の芽であり、その根源が戦争による人間破壊であれば、人の罪と心の傷の大きさを知る。
最初、べらんめえ調でぐれていた景子がインパクトあったのにあっけなく普通の良家の女子学生に戻ってしまったのは残念。登場人物はそれぞれ個性的でもあったし、描き方次第