三浦綾子のレビュー一覧
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ネタバレ今まさに、NHK大河「麒麟がくる」(明智光秀)OA中。 戦国の世は刺激が多くて、歴史フリークの心をつかんでやまない。一国の主とはいえ、少しも安らぐことのない国盗り合戦。下剋上、猜疑心、裏切り、寝返り、人質…混乱の真っただ中に生きた明智光秀の娘、細川忠興の妻細川玉子の物語だ。
「麒麟…」の中でも明智光秀はまっすぐで心温かい人として描かれているが、実際にそうだったんでしょうね。庶民からの信頼も厚い。土地を愛し、家族を愛し、それだけに自分が大切に築き上げた近江と丹波の土地を信長から召し上げられた悔しさは如何ばかりか。
天下人になるような人物は、信長にしろ秀吉にしろ家康にしろ、役に立つ者は利用し、かわいがるが、いざその者が才知にたけていたりすると反逆を怖れて謂れもなく討伐する。そのやり方は情け容赦がない。気に入らないことがあるとすぐ殺す。それぐらい激しい性分でないと天下は取れないのかも。明智には無理。優しすぎて。だから細川にさえも味方についてもらえず、三日天下で終わってしまったのよね。
明智光秀の反逆により、味土野の山奥に身を隠すことになった玉子。誰も訪ねてこない隠遁生活の中で、武家に生まれた女たちの不条理な生き様を憂い、そこで知った天主(イエスキリスト)へ自然と惹かれていくこといなる。やがて大坂に戻り、夫を通じてキリシタン大名高山右近の話などを聞くうちに意志が固まり、秀吉による弾圧化の中、ひっそりと洗礼を受ける。
秀吉に可愛がられた細川忠興だったが、秀吉死後、天下分け目のうねりに巻き込まれ、妻である玉子は夫への貞節を守り、自害を自ら受け入れる。信仰は命より尊しと、玉子は最期までかっこよかった。辞世の句、
散りぬべき時知りてこそ花も花なれ人も人なれ
は、家や名誉にしがみついて醜く争う男たちとは対照的な潔さを表している。
長崎で大規模なキリシタン弾圧が行われ、多くの信者が過酷な拷問の末、非業の死を遂げたのはそれから何年も後の話だ。
コロナ禍、微熱で東京に戻れず、ぶらぶら過ごした実家の本棚から。
再読 2024.11.1
新たに知ったこと
・信長の重臣であった荒木村重がなぜ毛利家に寝返ったか。
村重の従弟 中川清秀が一儲けしようと劣勢で兵糧不足の敵方の陣に入り米を売りつけた、との噂が信長の耳に入り、それを案じた家臣たちが、毛利に逃げた方が賢明だと進言する。謀反の意思はなかったのに、信長方に戻るのは危険と判断し毛利に逃げた。最終的に中川清秀は信長に降り、村重だけが取り残された。毛利からの助けもなく、覚悟を決めた村重は妻で玉子の姉である倫を明智家に戻したが、他の一族家臣たちは残虐的に殺された。気の毒だけど‥黒田官兵衛を長期に渡り土牢に閉じ込めたやつ、と思えば同情心は起きない。
NHK「軍師官兵衛」で荒木村重役は村上哲司。
・明智光秀はなぜ謀反を起こしたか。
丹波八上城(兵庫県)の波多野秀治を光秀が包囲したとき、投降する秀治の身の安全を保証するため実母を人質として預けたところ、信長が秀治の助命を認めなかったために義母が処刑されてしまった。
武田勝頼を滅ぼした功績を褒めるどころか「おのれ一人が苦労してこの戦勝を導いたというのか」と罵り、なんの故もなく公の席で打擲した。また、これ見よがしに森兄弟に褒美を与え、坂本城まで取られてしまいそうな勢いに危機感を感じた。
織田配下において自分は秀吉より上だという自負があった。それなのに命じられたのは秀吉の助っ人としての毛利討伐。自分が先頭に立つべき長宗我部の四国征討へは織田の三男信孝が大将として出陣した。その上、平定後の出雲、石見をくれる代わりに大事な領地近江(坂本城)と丹波を召し上げられた。
・なぜキリシタンに好意的だった秀吉が、急に追放令を出したか。
九州討伐にキリシタン大名が活躍し、力を持ち始めたかのように見えた。高山右近はじめキリシタンの信仰心の前には自分の権力も全く意味を為さないことを知った。
いずれも諸説あり。
玉子の辞世の句
「散りぬべき時知りてこそ世の中の花も花なれ人も人なれ」 -
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日本の鎖国時代、船が遭難して危うく助かり外国を見てしまった船乗りや漁師はたくさんいたのだろう。
ジョン万次郎は有名だが、この小説の主人公音吉も世界を見てしまったために日本に帰れなくなってしまう不幸を味わった。実話だそうである。
地球を一周するように世界を見てしまうのはそもそも太平洋を1年2ヵ月も漂流し、北アメリカに着いてしまったからだ。
14人居た乗組員たちも3人となってしまう過酷な漂流、流れ着いた北アメリカもインデアンの住むところで奴隷にされてしまう辛い経験の後、イギリスの商社に助けられた。
しかし簡単には帰国できないのである。すなわち鎖国の日本、イギリスが日本との通商を望む思惑、などあり西回りの世界一周とも言える船旅をする5年の歳月がかかったのだ。
そしてたどり着いた日本は3人に酷い仕打ちをする。送って貰ったイギリスの商船に江戸時代も終わらんとする幕府は砲撃するのである。
結局日本には帰れなかった3人の運命はこの小説にはない。
19世紀のはじめころ、キリシタンを禁じている鎖国時代、音吉14歳から19歳、英語を習得し、キリスト教の精神欧風の精神を学び、人間が人間らしいというのはどういうことかを知り、日本を外から見てしまったのだ。
世界を見てしまう、今なら造作もないかどうか?
鎖国時代の音吉たちが愕いた世界、相変わらずわたし達もいまだに愕いているのではないか! -
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日本の鎖国時代、船が遭難して危うく助かり外国を見てしまった船乗りや漁師はたくさんいたのだろう。
ジョン万次郎は有名だが、この小説の主人公音吉も世界を見てしまったために日本に帰れなくなってしまう不幸を味わった。実話だそうである。
地球を一周するように世界を見てしまうのはそもそも太平洋を1年2ヵ月も漂流し、北アメリカに着いてしまったからだ。
14人居た乗組員たちも3人となってしまう過酷な漂流、流れ着いた北アメリカもインデアンの住むところで奴隷にされてしまう辛い経験の後、イギリスの商社に助けられた。
しかし簡単には帰国できないのである。すなわち鎖国の日本、イギリスが日本との通商を望む思惑、などあり西回りの世界一周とも言える船旅をする5年の歳月がかかったのだ。
そしてたどり着いた日本は3人に酷い仕打ちをする。送って貰ったイギリスの商船に江戸時代も終わらんとする幕府は砲撃するのである。
結局日本には帰れなかった3人の運命はこの小説にはない。
19世紀のはじめころ、キリシタンを禁じている鎖国時代、音吉14歳から19歳、英語を習得し、キリスト教の精神欧風の精神を学び、人間が人間らしいというのはどういうことかを知り、日本を外から見てしまったのだ。
世界を見てしまう、今なら造作もないかどうか?
鎖国時代の音吉たちが愕いた世界、相変わらずわたし達もいまだに愕いているのではないか! -
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不幸だと思った時に 降りかかる困難や苦悩は、その人の行いの善悪とは関係無い。
1970年代の小説であり、また舞台が火山噴火の時期からして1920年代だろうか、このため、古臭いところはある。家族の在り方や経済主義の否定など、耳が痛い箇所も少なくない。
しかし、おそらく最も大きなテーマである文頭の一文については、情報社会で化学が発達した今も、誤認している人が少なくないだろう。正しいことをした者が報われるわけではなく、悪い者が必ず裁かれるわけではない。自然災害などその際たる物だ。良い事を行うのは、報われるためではない。強いて言えば、自分のためだ。 -
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三浦綾子氏の自叙伝三部作の第二部。本作品は処女作『氷点』が朝日新聞小説の大賞を受賞するまでを描き、主に三浦綾子氏と夫である光世氏との旭川での生活が描かれている。
信仰に生きて穏やかに慎ましやかに日々を送る2人の姿が印象的だ。夫婦とも長く病に臥しており光世氏35歳、綾子氏37歳での晩婚であったが、ゆえに平穏な日常に感謝する姿が意味合いを帯びてくる。綾子氏自身はとても社交的で自身で雑貨店を開業し成功させる当時の女性像とは一線を画すほど活動的な方であったようだが、13年という病そして大切な人々との別れと聖書との出会いが「生きる」ことの真剣さを綾子氏にもたらしたのであろう。光世氏が度々語る「神が与えてくれる」という言葉、真摯に人生と向き合う大切さを教えてくれる。 -
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『氷点』『塩狩峠』で知られる三浦綾子氏の自伝小説。本作品を読む前は綾子氏を職業作家と思っていたが、彼女を見舞った幾多の試練に対して誠実にそして前向きに向き合う姿が印象的だ。
肺結核を患い13年間床に臥すとはどのような思いであっただろうか。しかも敗戦による教師生活の喪失感を抱えながら。しかし綾子氏にはその日常の暗さを感じない。一時的な2重婚を抱えながらやや退廃的に生きる彼女が、前川正そしてキリスト教と出会い聖書と信仰を心の肝に置くことで人間的な成長と深みを増していく姿が印象的だ。
本作は三部作の第一部で、夫である三浦光世と出会い結婚するまでを描いた作品であるが、困難のうちに生きる人間の輝きと強さを感じられる作品であった。 -
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大正天皇の御大葬から昭和天皇の御大葬まで、昭和史のような時代を背景に生い立ち、教師として生きていく主人公「北森竜太」を描く。
裕福な家庭に生まれた素直な少年の彼が、小学校時の受け持ちの先生の影響を受けて教師となる。
天皇のご真影を拝する学校教育に何の疑問も感じず、その時代のごく普通の教師であった。
しかし、情熱を持ってした綴り方指導が言論統制の当局の目にとまってしまった。
治安維持法で勾留され、教師をやめさせられ、教師なら免除になって逃れていた軍隊への召集もかけられ戦争に参加しなければならず、さまざまな苦難を味わうことになるのである。
ストーリーは太平洋戦争のあとさきに限られており、戦後の教師はどうだったかというテーマもあれば昭和をたどったことになろうが、そこまでは筆が及ばなかったようである。
だから教師の昭和史と言うより、国策により権力を持った憲兵が、自分の保身のためどんな風に悪知恵を働かせ罪を作って個人にかぶせ翻弄させられるか、さすが三浦綾子さんの筆運び、迫真に描かれてあり、読後すごく怒りを覚えさせられた。
思えば状況は今も同じようである。
実際検事局が状況証拠を捏造したりするのをまのあたりにしたのだもの、油断ならない、怖ろしい。 -
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大災害発生後の拓一の復興へ向けた情熱。若さにも関わらず完璧な人間ぶりは、最後に旧約聖書のヨブが登場するが、全くその人格そのものに感じた。また拓一・耕作兄弟の母・佐枝のキリスト者としての姿は祈っている場面、聖書のヨブ記にしをりを挟んでいる場面、児童たちと讃美歌を教えている場面が出てくる程度で非常に抑えているものの、やはり印象に残る姿だ。拓一や福子を始め善良な人たちの不条理な苦難が何故?というテーマがヨブ記を通して、耕作や叔父修平たちに語られる部分がこの小説の一番の主張であり、それが極めて自然に提示される!感動的な、希望を感じさせるエンディングである。
佐野文子という廃娼運動に取り組んだ実在のクリスチャン社会運動家の姿の自然な登場での紹介も素晴らしかった。