三浦綾子のレビュー一覧
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夏江の娘ルリが誘拐され殺害て、犯人が子供残して自殺した。父親の知り合いがその娘のせわをしていて、夏江が、代わりの子供欲しくて啓造に頼んで、出生明かさないで、殺されたルリの代わりに育てて、ある日夏江は出生を知ってしまい、啓造は夏江と出口の逢引きが原因で、娘が殺された恨みで、犯人の娘を貰ったのだが、夏江は犯人の娘と知ると、啓造と高木の罠だと激怒して、陽子をいじめ出す。
遠くで祭りの五段雷が鳴った。昭和二十一年七月二十一日、夏祭りのひる下りである。
辻口家の応接室に、辻口啓造の妻、夏枝と、辻口病院の眼科医村井靖夫が、先程から沈黙のまま、向いあって椅子に座っている。
資産家の一人娘藤尾辰子は、夏枝と同じ二十六歳、女学校時代からの夏枝の友人で、日本舞踊の師匠である。
高木雄二郎は産婦人科医で、札幌の総合病院に勤めていた。啓造の学生時代からの親友である。高木は学生時代、夏枝を嫁にもらいたいと夏枝の父に願い出た。夏枝の父津川教授は、内科の神様といわれ、啓造や高木の学生時代の恩師であった。
「もしもし、聞えました。犯人はだれです?」 「佐石土雄、佐藤の佐に石ころの石、佐石土雄という男に心当りがありますか?」
(佐石の子を育てるといったら、高木は、何というだろう。この間の様子では恐らく絶対に反対するだろうな)
「だがな辻口、こうなった以上秘密は絶対に守った方が利口だぞ。夏枝さんにもいうな。犯人の子だって生きる権利があるからな。犯人の子であることを忘れて、出生の秘密は絶対守ってやるんだな」
(本心は、陽子を愛することではない。夏枝に犯人の子を育てさせたかったのだ。おれをうらぎり、村井と通じた夏枝のために、あの日ルリ子は殺されたのだ。おれはその夏枝が陽子の出生を知って苦しむ日のために、あの子を引きとったのだ)
(辻口は、事の真実を知った日の、わたくしの悲しみ悩む姿をみたかったのだ。絶対にとり乱した姿はみせてはならない)
(辻口は村井とのことをゆるさず、佐石の子を育てさせた。わたしもまた、決してその辻口を許しはしない)
「そして、いつか身も心も辻口をうらぎってみせるのだわ」
(夫はわたしをうらぎった。今度こそ、わたしも夫をうらぎろう) 啓造を苦しめるためには、村井に近づくのが第一であることを、夏枝は知っていた。
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辻口病院長夫人・夏枝が青年医師・村井と逢い引きしている間に、3歳の娘ルリ子は殺害された。「汝の敵を愛せよ」という聖書の教えと妻への復讐心から、辻口は極秘に犯人の娘・陽子を養子に迎える。何も知らない夏枝と長男・徹に愛され、すくすくと育つ陽子。やがて、辻口の行いに気づくことになった夏枝は、激しい憎しみと苦しさから、陽子の喉に手をかけた――。愛と罪と赦しをテーマにした著者の代表作であるロングセラー。 -
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夏江の娘ルリが誘拐され殺害て、犯人が子供残して自殺した。父親の知り合いがその娘のせわをしていて、夏江が、代わりの子供欲しくて啓造に頼んで、出生明かさないで、殺されたルリの代わりに育てて、ある日夏江は出生を知ってしまい、啓造は夏江と出口の逢引きが原因で、娘が殺された恨みで、犯人の娘を貰ったのだが、夏江は犯人の娘と知ると、啓造と高木の罠だと激怒して、陽子をいじめ出す。
遠くで祭りの五段雷が鳴った。昭和二十一年七月二十一日、夏祭りのひる下りである。
辻口家の応接室に、辻口啓造の妻、夏枝と、辻口病院の眼科医村井靖夫が、先程から沈黙のまま、向いあって椅子に座っている。
資産家の一人娘藤尾辰子は、夏枝と同じ二十六歳、女学校時代からの夏枝の友人で、日本舞踊の師匠である。
高木雄二郎は産婦人科医で、札幌の総合病院に勤めていた。啓造の学生時代からの親友である。高木は学生時代、夏枝を嫁にもらいたいと夏枝の父に願い出た。夏枝の父津川教授は、内科の神様といわれ、啓造や高木の学生時代の恩師であった。
「もしもし、聞えました。犯人はだれです?」 「佐石土雄、佐藤の佐に石ころの石、佐石土雄という男に心当りがありますか?」
(佐石の子を育てるといったら、高木は、何というだろう。この間の様子では恐らく絶対に反対するだろうな)
「だがな辻口、こうなった以上秘密は絶対に守った方が利口だぞ。夏枝さんにもいうな。犯人の子だって生きる権利があるからな。犯人の子であることを忘れて、出生の秘密は絶対守ってやるんだな」
(本心は、陽子を愛することではない。夏枝に犯人の子を育てさせたかったのだ。おれをうらぎり、村井と通じた夏枝のために、あの日ルリ子は殺されたのだ。おれはその夏枝が陽子の出生を知って苦しむ日のために、あの子を引きとったのだ)
(辻口は、事の真実を知った日の、わたくしの悲しみ悩む姿をみたかったのだ。絶対にとり乱した姿はみせてはならない)
(辻口は村井とのことをゆるさず、佐石の子を育てさせた。わたしもまた、決してその辻口を許しはしない)
「そして、いつか身も心も辻口をうらぎってみせるのだわ」
(夫はわたしをうらぎった。今度こそ、わたしも夫をうらぎろう) 啓造を苦しめるためには、村井に近づくのが第一であることを、夏枝は知っていた。
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辻口病院長夫人・夏枝が青年医師・村井と逢い引きしている間に、3歳の娘ルリ子は殺害された。「汝の敵を愛せよ」という聖書の教えと妻への復讐心から、辻口は極秘に犯人の娘・陽子を養子に迎える。何も知らない夏枝と長男・徹に愛され、すくすくと育つ陽子。やがて、辻口の行いに気づくことになった夏枝は、激しい憎しみと苦しさから、陽子の喉に手をかけた――。愛と罪と赦しをテーマにした著者の代表作であるロングセラー。 -
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わだしは、この子供らが、ぞっくり大きくなったら、今月はチヤの家、今月は三吾の家、今月は多喜二の家と、布団の皮を剥いで、洗い張りしてやったり、打ち直して綿を入れてやったりしてやるべーって、夢みてたの。
ねえ、あんたさん、わだしの願いは、欲張りな夢だったべか、無理な夢だったべか。そんなつもりはなかったども、あんな小っちゃな夢でも叶えられんかった。
わだしが思うに、右翼にしろ、共産党にしろ、キリスト教にしろ、心の根っこのところは優しいんだよね。誰だって、隣の人とは仲よくつき合っていきたいんだよね。うまいぼた餅つくったら、つい近所に配りたくなるもんね。むずかしいことはわからんども、それが人間だとわだしは思う。
そりゃあ人間だから、悪いことも考えるべさ。ある時は人ば怒鳴りたくもなるべさ。でも本当は、誰とでも仲よくしたいのが人間だよね。
それだのに、人間は、その仲よくしたいと思うとおりには生きられんのね。ちょっとのことで仲違いしたり、ぶんなぐったり、あとから後悔するようなことばかりして、生きていくのが、人間かね。 -
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わだしは、この子供らが、ぞっくり大きくなったら、今月はチヤの家、今月は三吾の家、今月は多喜二の家と、布団の皮を剥いで、洗い張りしてやったり、打ち直して綿を入れてやったりしてやるべーって、夢みてたの。
ねえ、あんたさん、わだしの願いは、欲張りな夢だったべか、無理な夢だったべか。そんなつもりはなかったども、あんな小っちゃな夢でも叶えられんかった。
わだしが思うに、右翼にしろ、共産党にしろ、キリスト教にしろ、心の根っこのところは優しいんだよね。誰だって、隣の人とは仲よくつき合っていきたいんだよね。うまいぼた餅つくったら、つい近所に配りたくなるもんね。むずかしいことはわからんども、それが人間だとわだしは思う。
そりゃあ人間だから、悪いことも考えるべさ。ある時は人ば怒鳴りたくもなるべさ。でも本当は、誰とでも仲よくしたいのが人間だよね。
それだのに、人間は、その仲よくしたいと思うとおりには生きられんのね。ちょっとのことで仲違いしたり、ぶんなぐったり、あとから後悔するようなことばかりして、生きていくのが、人間かね。 -
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ネタバレ印象に残っているのは、いよいよ最期のとき。
侍女や自分の子供との別れを惜しみつつ、
キリスト教信者であるため自害ができないので、
家臣から命をうばわれる際、何を思ったのか自分の髪をまとめてから首を差出した…
これには家臣もとまどいつつ「切腹ではないので」というような!?ツッコミをいれると、ガラシャ曰く「間違いましたか」と言って微笑したあと、胸元を開いたところを槍でひと突きされ命を絶たれた。
この緊迫した場面でのユーモアというか天然ぶりというか…
死ぬのは嫌だろうし切ないだろうし、なのにボケて微笑までするなんて…
これだけで、ガラシャの人柄や潔さや負けず嫌いな感じとか、いろんなことを想像させられた。
もしもガラシャが男性だったら、おそらく良き武将になって、光秀と3日だけではない天下をおさめていたかも。
こんな場面を書き上げる三浦さん…さすがです。