三浦綾子のレビュー一覧
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余韻を残して終わった『氷点』の続編。
自殺未遂を起こした陽子ちゃんが助かり、特に後遺症もなく暮らしていくなかで、より著者のキリスト教的な視点が強く表現されていく作品でした。
キリスト教における「原罪」と「許し」をティーンエイジャーの陽子ちゃんがどう自分のなかで消化(昇華)していくのかのお話。
陽子ちゃんが我が子を殺した犯人の子ではないと知ってもお母さんは未熟な人間のまま。これは一生変わらなさそう。
医師のお父さんも良い人であろうとし過ぎていくつになっても迷いっぱなし。
そこに暴動機関車のような陽子ちゃんの実の弟などが出てきて、とにかくお話としては飽きさせませんでした。
ただ、陽子ちゃんま -
Posted by ブクログ
悪いのは自分ではない。自分はこんなに不幸な目にあっている。他の人が傷ついても私ほどじゃない。他の人にはわからないんだ。
もしかしたら、主人公の清美はこう思っていたのかもしれない。
私もそんな彼女に共感した。
彼女の背負っているものは重すぎる。復讐しても不思議じゃない。
でも彼女の気持ちは晴れなかった。こころを寄せていた人にも突き放された。
逃げ出すことができなければ、愛するより仕方ない。
でも、そんなことは簡単にはできない。
彼女は思いがけない再会を果たす中で、自分の弱さを直視し、今まで恨んでいた相手にも恥ずかしがっていた存在にも違う想いが湧いてくる。
きっと許しという深い愛に出会えたから -
Posted by ブクログ
ヨブ記を題材とした、正しく生きるとは、善く生きるとは何か(=信じるとは何か)を苦難を通して表現した作品。
ヒューマンドラマの形式で、
信仰心(正しく生きる)とは何かを、寓意的に読者にわかりやすく説明していく。
「善因善果・悪因悪果の否定」という構造で非常に分かりやすく信仰心を理解できる一方で、物語全体が善行善果になってしまっているのも否めない。
本家の「ヨブ記」自体も同じ構造になっているので、本当の意味での信仰の深さや神秘性を、言葉や物語を通して表現する事に限界があるのかなと感じました。
一般大衆向けに書かれていると思うのでしょうがないですが、ニーチェが言うところのルサンチマンに陥って -
Posted by ブクログ
ネタバレ朗読会の作品として取り上げられていたため、読んでみたかった。
三浦綾子作品はほぼ読んだつもりだったが、知らなかった。
蟹工船の作者である小林多喜二の母セキの物語。
セキが自分語りをする中で浮かび上がる、貧しさと明るさ、清らかさ。
7人産み3人が亡くなる。そのうちの一人が次男である多喜二。多喜二が身請けしたタミちゃんのこと。
日本一の小説家でなくていいから、朝晩のごはん、冗談を言い蓄音機を聞きぐっすり眠る、そんな夢も叶わなかった
…
もちろん時代も違うけど幸せの基本はここにあると痛感する。多喜二が警察で拷問を受け亡くなったとき、
私は多喜二だけの母親ではない、と生き続けたこと。
産んだ子を失う