三浦綾子のレビュー一覧
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ネタバレ朗読会の作品として取り上げられていたため、読んでみたかった。
三浦綾子作品はほぼ読んだつもりだったが、知らなかった。
蟹工船の作者である小林多喜二の母セキの物語。
セキが自分語りをする中で浮かび上がる、貧しさと明るさ、清らかさ。
7人産み3人が亡くなる。そのうちの一人が次男である多喜二。多喜二が身請けしたタミちゃんのこと。
日本一の小説家でなくていいから、朝晩のごはん、冗談を言い蓄音機を聞きぐっすり眠る、そんな夢も叶わなかった
…
もちろん時代も違うけど幸せの基本はここにあると痛感する。多喜二が警察で拷問を受け亡くなったとき、
私は多喜二だけの母親ではない、と生き続けたこと。
産んだ子を失う -
Posted by ブクログ
30代後半で初めて結婚して小さい家に住むことになった2人の幸福感あふれる日々が、読者にも平安な気持ちをもたらしてくれる。幸福感とは、甘い新婚生活ではない、2人とも病弱でしかも、経済的に貧しい中での、日々の神への祈りと感謝に満ちた生活である。いろいろな幸福とは言えない人生へ歩んでしまっている知人との再会が、著者にとっても心の痛みになっているが、「結婚」に対する誤った姿勢がそのことを招いていることを著者ははっきりと感じている。後段は雑貨店を始めるに至った経緯、そしていよいよ朝日新聞懸賞小説への応募と1964年7月10日の1位入選発表への劇的なクライマックスへ。そこでの夫・光世氏の冷静な感謝の姿勢と
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Posted by ブクログ
ヨブ記を題材とした、正しく生きるとは、善く生きるとは何か(=信じるとは何か)を苦難を通して表現した作品。
ヒューマンドラマの形式で、
信仰心(正しく生きる)とは何かを、寓意的に読者にわかりやすく説明していく。
「善因善果・悪因悪果の否定」という構造で非常に分かりやすく信仰心を理解できる一方で、物語全体が善行善果になってしまっているのも否めない。
本家の「ヨブ記」自体も同じ構造になっているので、本当の意味での信仰の深さや神秘性を、言葉や物語を通して表現する事に限界があるのかなと感じました。
一般大衆向けに書かれていると思うのでしょうがないですが、ニーチェが言うところのルサンチマンに陥って -
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キリスト教信仰に生きた細川ガラシャの生涯を描く著者初の歴史小説。
日本史上最大の謀反とも言われる本能寺の変で、主君織田信長を倒した明智光秀。その子として生まれたが故に、悲劇的な生涯を送ることになった玉子(後のガラシャ)。
この上巻では、玉子の誕生から本能寺の変直前までの流れが描かれている。まだ玉子はキリスト教に帰依しておらず、信仰に纏わる話はほとんど出てこない。政争の道具として扱われた当時の女性の様子と、信長の性格とそれを取り巻く人間模様が中心に描かれている。
大河ドラマを読んでいるようで、とても興味深く、面白い。歴史ものなので登場人物は多いが、文章の内容が分かりやすいので、人物関係に -
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【恋とは。夫婦の愛とは。ゆるすこととは。】
青春から、
憧れから、
理解不能な、
また自分の辞書をひいてもわからないことに
惹かれ、
知りたいと思い、
やがて真実を知り、
酸いも甘いも噛み分けて、
許し、
許され、
生きていく。
良一のように、悔い改めるというのは稀だと思う。
そして奈緒美のように
葛藤をしながらもゆるし続けることは
相当に気力の要ること。
守るべき弱き者の存在があれば
なおのことゆるさない選択だってあるだろう。
ひつじが丘は美しい。
現実はそんな画になるようなことばかりではないけど
そのような関係もあるんだろうな
あってほしいなと思った。
許すことは難しい。
気づくこ