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母子家庭に育った浜野清美は、いじめや母の愛人の性的虐待などから人間不信に陥り、絵を描くことだけが救いとなるが、信仰深い叔母と一人の少年に出会い……。暗い環境に育った少女の、信仰に目覚め、生けるものすべてに愛を向けるまでの一人称で書かれた真摯な告白の記。 「三浦綾子電子全集」付録として、雑誌連載を終えてのインタビュー記事「看護婦さんって愛のある人たちだと思う」を収録!
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Posted by ブクログ
悪いのは自分ではない。自分はこんなに不幸な目にあっている。他の人が傷ついても私ほどじゃない。他の人にはわからないんだ。 もしかしたら、主人公の清美はこう思っていたのかもしれない。 私もそんな彼女に共感した。 彼女の背負っているものは重すぎる。復讐しても不思議じゃない。 でも彼女の気持ちは晴れなかった...続きを読む。こころを寄せていた人にも突き放された。 逃げ出すことができなければ、愛するより仕方ない。 でも、そんなことは簡単にはできない。 彼女は思いがけない再会を果たす中で、自分の弱さを直視し、今まで恨んでいた相手にも恥ずかしがっていた存在にも違う想いが湧いてくる。 きっと許しという深い愛に出会えたからだろう。 重い荷を一緒に背負ってくれる存在が できたからだろう。 蛇足になるが、 学生時代、強い影響を受けたシモーヌ・ヴェイユの言葉が出てきたのにはビックリした。 三浦綾子さんがヴェイユを読んでいたんだと 嬉しくなった。 不幸な人の不幸に気を配ることは、 実に稀な、 困難な能力である。 ヴェイユ
主人公の清美が信仰告白する、それをこの一冊で語ったものだ。決して幸せとは言えない境遇に育った清美が一人の男の子を好きになり、その人の考え方に共感し、諭されながら成長する。その中にはやはり、著者の小説の主題とも言える、許す、そして愛するというのが根底に流れている。 自分の好きなひとばかりが住んでいる世...続きを読むの中などない。そこから逃げ出しても、逃げ出した先にはきっと合わない人間が必ずいる。その度に逃げ出すことなんかできないのだ。だったらどうすればいいか。逃げ出すことが出来なければ、愛するより仕方ないのだ。憎むという不愉快な感情から逃げ出すためには、相手を好きになるより仕方ないのだ。 罪を犯さないなんてだれにもできっこない。そんなの人間じゃない、人間というのは言ってみれば存在そのものが罪なのだ。今天使のような心を持っていたとしても、1分後にはふっと良からぬ思いが胸を掠める。そうしたどうしようもない存在だからこそ、神の子であるキリストがぼくたちの罪を背負って代わりに死んでくれたのだ。
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