三浦綾子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
何気なく手に取って買った本でこんなに感動するなんて・・・。小林多喜二=プロレタリア文学=『蟹工船』と昔暗記したあの小林多喜二の母の物語だ。特高につかまり,拷問を受け,亡くなった多喜二。そんな知識で彼の印象を決めつけていた自分が恥ずかしくなった。三浦綾子さんは多喜二の母になりきって,独特の口調で語りかける。学はないが,寛容で息子の選ぶことはすべて善と信じ切る母。貧乏の中で育った多喜二は,貧乏な人を救うには世の中を変えなくてはいけないと考え,小説を書き続ける。若くして女郎に売られたタミちゃんに恋心を抱いた多喜二は彼女を救おうと自分の財をなげうつ。しかし,彼は彼女に指一本ふれようとしない。自立した学ぶ者同士が結びつこうと理想を語り,読んでいていらいらするほど,実直に生きる。いたわりあう二人があまりにいじらしく,いつしか「母」と同じ視点で彼ら2人を見守っている自分に気づく。彼の死はあまりにむごかった。母は牧師と出会い,息子の多喜二の死とキリストの死をだぶらせる。それでも命日が近づくたびに,哀しみが打ち寄せてくる。その哀しみは限りなく深い。
私はこの本を読んで多喜二が好きになった。タミちゃんという女性を好きになった。時代がもう少しずれていたら,彼ら二人はきっと結ばれていたにちがいない。
読み終わった後,もう一度多喜二が小さい頃書いた夢を読み返した。
「うちの母さんの手は,いつもひびがきれて痛そうです。着物も年がら年中,おんなじ着物を着ています。・・・ぼくは,ぼくのお母さんにも,よい着物を着せて,小樽の町中,人力車に乗せてやりたいです。これがぼくの夢です。」
こんな多喜二が好きになった。 -
Posted by ブクログ
読み終わって一言。しんどい。とにかくしんどい。
読んでいてこれ程までに胸を締め付けられるような小説がこれまであっただろうか? そう自問する。
読めば読む程、(殺されていい人なんていやしないのだけども)この人程、こんな死に方をしてはいけない人はいないだろうに、そう思って苦しくなる。
こんなに優しい人が、こんなに家族想いの人が、どうしてあんなに酷い死に方をしなければいけなかったのか。そればかりが頭の中でぐるぐると回った。
作中でお母さんも口にした疑問。小林多喜二はあんな目に遭わなければいけないような極悪人だったのか。そんなわけがない。元からそう思ってはいたが、この小説を読んでますますその思いが強くなった。
人一倍優しくて、誠実で、真面目な普通の人だ。
今ならば誰に咎められることもないような、当たり前のことを当たり前に言って、殺されるなんて。そんなことがあっていい筈がないのに。
ただただ悲しくて、それだけがぐるぐると胸の内に渦巻いているような、そんな感覚。
会ったこともない、それどころか私が生まれるずっと前に亡くなった小説家に、随分と惚れ込んだものだな、と自分でも不思議な気持ちになる。
知れば知る程、彼の小説を読めば読む程、彼が遺した作品は勿論のこと、彼自身もどんどん好きになっていくのだから本当に不思議なものだ。
それ程長くはないとはいえ、最初から終わりまでほぼ一気に読み切った。頁をめくる手を止められなかった。文字を追うのをやめられなかった。悲しい最期は知っているのに。
いつも以上に何もまとまらないけれどこれ以上書こうとしても悲しいとか辛いとかそんなことしか書けない気がするのでこのあたりでやめにしましょう。また読んだ時に、もう少し整理して何か書けたらいいと思う。
何度読んでも同じことになりそうではあるけども。 -
Posted by ブクログ
読み終わって一言。しんどい。とにかくしんどい。
読んでいてこれ程までに胸を締め付けられるような小説がこれまであっただろうか? そう自問する。
読めば読む程、(殺されていい人なんていやしないのだけども)この人程、こんな死に方をしてはいけない人はいないだろうに、そう思って苦しくなる。
こんなに優しい人が、こんなに家族想いの人が、どうしてあんなに酷い死に方をしなければいけなかったのか。そればかりが頭の中でぐるぐると回った。
作中でお母さんも口にした疑問。小林多喜二はあんな目に遭わなければいけないような極悪人だったのか。そんなわけがない。元からそう思ってはいたが、この小説を読んでますますその思いが強くなった。
人一倍優しくて、誠実で、真面目な普通の人だ。
今ならば誰に咎められることもないような、当たり前のことを当たり前に言って、殺されるなんて。そんなことがあっていい筈がないのに。
ただただ悲しくて、それだけがぐるぐると胸の内に渦巻いているような、そんな感覚。
会ったこともない、それどころか私が生まれるずっと前に亡くなった小説家に、随分と惚れ込んだものだな、と自分でも不思議な気持ちになる。
知れば知る程、彼の小説を読めば読む程、彼が遺した作品は勿論のこと、彼自身もどんどん好きになっていくのだから本当に不思議なものだ。
それ程長くはないとはいえ、最初から終わりまでほぼ一気に読み切った。頁をめくる手を止められなかった。文字を追うのをやめられなかった。悲しい最期は知っているのに。
いつも以上に何もまとまらないけれどこれ以上書こうとしても悲しいとか辛いとかそんなことしか書けない気がするのでこのあたりでやめにしましょう。また読んだ時に、もう少し整理して何か書けたらいいと思う。
何度読んでも同じことになりそうではあるけども。 -
Posted by ブクログ
前作「泥流地帯」で、北海道の十勝岳が噴火。拓一と耕作兄弟は一瞬にして祖父母、姉、妹、そして田畑を失う。貧しくとも真実に生きてきた彼らに与えられた結果がこの報い。折れそうな心を懸命に立て直そうとする耕作だが、復興に取り組んだところで、またも裏切られるのではないかという疑問は消えない。
若い頃の苦労が大事なのは今も昔も変わらない。それはわかっているんだけど、誰もがこの兄弟ほど真面目に生きられるのか。苦労は報われないこともあることを理解し、納得できるのか。考えれば考えるほど、人生は理不尽だと思う。
本作品では、復興に取り組む村民の中で悪事に走る者もいれば、宗教にすがる者も登場する。そんな様々な人間模様が描かれつつ、耕作たち家族にかすかな希望が見えたところで幕を閉じる。
おそらく、その希望も一瞬で、さらなる苦難が待ち構えているんだろう。真面目に生きていればいいことがある、なんて単純なことを作者は語らない。じゃあ、どんな生き方が正しいのか。そんな作者の問いかけに考えさせられる。 -
Posted by ブクログ
感動する小説は世の中に数多あります。
ただ、打ちのめされる小説に出合うことは滅多にありません。
打ちのめされました。
世に言う「北海道綴り方教育連盟事件」を題材にした94年刊行(単行本)の小説です。
と聞けば、こういうご時世です、「反戦平和小説ですか」「サヨクですね」と揶揄する向きもあるでしょう。
それは半可通というものです。
早合点するなかれ、主人公の竜太は紛うかたなき皇国民です。
陛下の大御心を理解し、奉安殿に向かって深々と、それは見事な最敬礼をする青年です。
そういう青年が「アカ」と疑われ、治安維持法違反で過酷な取り調べを受けたのです。
げに恐ろしいのは法律の中身でも政治家でもない、法律を拡大解釈し、政治家の意を体して現場で運用する官憲なのだと思いました。
いや、まあ、それはいい。
ある種の小説を読むと、すぐに「テーマは何か?」「この小説の教訓は?」と考えてしまうのは私の悪い癖です。
本作は、一個の物語として実に読み応えがあります。
小説は、主人公の竜太が小学3年のころから書き出されていきます。
大正天皇が崩御して昭和に変わっていく時分です。
小学校で竜太は坂部先生という恩師に出会います。
教育に情熱を注ぐ坂部先生の影響で、竜太も教師を志すようになり、やがて師範学校を出て夢を実現します。
ところが、たまたま綴り方連盟の会合に顔を出し、記名したことで無実の罪を着せられ7か月間にもわたって拘留されることになります。
この間、厳しい取り調べが続いたわけですが、竜太が何にも耐え難かったのは教員の退職を強要されたことです。
保護観察の身となって娑婆に出た竜太を、さらなる悲劇が待ち受けます。
同じく綴り方連盟に加担したとして逮捕、拘留されていた坂部先生が、厳しい取り調べの末に亡くなっていたのです。
竜太は慟哭します。
私もこの場面では涙を禁じ得ませんでした。
竜太はさらに時代の波に翻弄されます。
召集令状が来て、兵隊として満州へと渡るのです。
そこは死と隣り合わせの戦場でした。
実は、思想犯の前科のある者は、とりわけ厳しい任に就かせるという不文律があったのだそうです(しかも竜太は思想犯では断じてない!)。
この点、先年読んだ吉村昭の「赤い人」を想起しました。
ただ、そんな竜太にも心の支えとなってくれる人がいました。
その一人が、何と言っても、竜太の小学生時代からの同級生であり、恋焦がれて来た芳子です。
治安維持法違反容疑での拘留、そして戦争とさまざまな障害に阻まれながら、芳子との恋を成就し、敗戦直後に挙式する場面は目頭が熱くなります。
竜太を陰に陽に支えた家族、短い教員生活で出会った尊敬すべき教師たち、さらに戦場でも心優しい戦友に恵まれ、その交流のひとつひとつがジンと胸を打ちます。
そうそう、小説のごくはじめの方に登場する金俊明という男に触れないわけにはいきますまい。
タコ部屋から逃げ出してきた朝鮮人です。
この男が物語のキーマンの一人だったのですね。
興趣を殺ぐことになるので、これ以上は触れませんが…。
戦争は言うまでもなく、人の命を脅かし、大切なものを有無を言わさず奪っていきます。
著者の筆運びは淡々としていますが、行間からはそんな声が聞こえてきそうです。
ただし、そんじょそこらの反戦平和小説では断じてありません。
物語の最終盤、竜太が愛する祖国の敗北に涙を流したことを付記して筆を置きます。 -
購入済み
これは!
短い中に疑うことを知らない純粋な気持ちだったりドス黒い人間の性だったりの凄いドラマが詰まってました、普通に泣く。原作を是非読もうと思いました。
-
Posted by ブクログ
(10.09.2016)
三浦綾子氏の強い語調、自分の過去を全てさらけ出す強さ、同じ女性としてカッコいいなと思う。クリスチャンとしても、自分の弱さを認めながらも神様を信じ抜こうと努力する生き方は尊敬に値する。この本の最終章、最終頁の言葉に彼女の読者に対する思いが込められているのではないか、と感じた。心に響く素晴らしい本だった。
「かけがえのない、そして繰り返すことのできない一生を、キリストを信じてあなたも歩んでみませんか。今までの生活が、どんなに疲れきった、あるいは人に言えない恥ずかしい生活であっても、または言いがたいほどに苦しく悲しい毎日であったにしても、今、あなたの前に、まだあなたの足跡が一つも印されていない純白の布のような道があるのです。過去はどんな歩み方であったにせよ、自分の目の前に、足跡ひとつない道があり、そこにどんな足跡を残して行くかは、自分の自由だということ、そんなすばらしいことはないと思います。
過去はいいのです。今からの一歩を、あなたもキリストの愛の手に導かれて歩みたいとお思いにはなりませんか。そしてあなたの人生を喜びに溢れた人生に変えたいとは、お思いになりませんか。
そのことが、あなた自身にどんなにむずかしく見えても、神が助けてくださるのです。キリストはこう言っておられます。
〈人にはできないことも、神にはできる〉と」
光あるうちに光の中を歩もうではないか。 -
Posted by ブクログ
普段は一度読んだ本を読み返す事はほとんどしない私です。
読みたい本が、文字の通り山の様に積み上がっているので。
中学生の頃に三浦綾子作品と出会い、強い衝撃を受けました。
今まで読んできたどの本よりも心にズシンときて
それからは三浦綾子作品を読み漁る日々でした。
銃口も確か中学か高校の頃に読んだ記憶があります。
急にもう一度読みたくなり、実家の本棚から拝借してきました。
とても読み易いのです。それこそ中学生が読んでも決して難しく感じる事はないでしょう。
戦前の北海道を舞台に、教師をしている青年の話が筋。
三浦綾子さんも戦前、戦中と学校の先生をしていらした様で、本当はこう子供たちに教えたかった
と言う願望でしょうか、そう言うものが見え隠れしています。
当時戦争に反対していた教師も沢山いたでしょう。
子供たちに戦争をどう教えるべきか、葛藤していた教師も大勢居たと私は思いたい。
話の筋は大体覚えていたものの、改めて読み返してみると
何だか大切な言葉をすっかり忘れていたりしていて、大好きな本を再読するのも良いものだと深く思いました。
下巻へ続きます。