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石ころのように平凡な一少女であったわたしは、軍国主義のさなか、女学校を卒業して小学校の教師となり、天皇への忠誠を信念にすえ日々を過ごしていた。しかし敗戦による世の中の価値観の転換に激しい衝撃を受け、わたしは深い自己不信に陥った。そして教育者としても人間としても、女性としても迷いの中に入り込んでしまった――。戦中、戦後という時代の波にもまれ悩み苦しんだ青春期を振り返る長編自伝小説。
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Posted by ブクログ
読み終わったのが8/と原爆投下の日。偶然だけど、おぉっと思った。 三浦綾子さんは、予想を越えるいい意味で変わった方だった。裁縫お料理が得意な、勝手に女性っぽいイメージを持っていたので。 自伝ということで、どんな生涯を送ったのかな〜と思い読み始めたが、最後に思った事は戦争は二度と起こしたらいけないな...続きを読む。と感じた。 戦時中の話を聞く機会が減った中で、このタイミングでこの本に出会えて感謝です。 私の知らない戦時中のことを色々と知ることができた。
とても熱心に教師をしていたことで、終戦のあとの反動が凄まじかったのでしょう。こういう形で自らが考えていたことを残せることって、羨ましくもあり、すごいことだと思う。
作者の作品は「氷点」を高校生時代に読んだ以来でした。 作家になる前は戦時中は教師をされていた時のお話です。 彼女自身の若い頃の自伝小説です。 作者の人なり、戦時中の生活、炭鉱街で暮らす人々の生活が書かれています。 作者の戦争への思いを知る事が出来ます。
作家三浦綾子さんが,まだ,堀田綾子だった頃のことを綴った自伝です。 描かれている時代は,幼少から,年若くして教員となり戦前・戦中を皇国史観の中で教育し,敗戦を迎えた頃までです。 綾子は,全身全霊をかたむけて教育にあたり,子どもとともに成長していたからこそ,敗戦で受けた衝撃は大きなものでした。こ...続きを読むの生き方で間違いないと思っていたことが,脆くも崩れ去るとき,彼女は,教壇から去って行きます。たった7年の教師生活でした。 昨日まで教えていた教科書に墨をぬらせたということは,わたしをして,単に国家や政治への不信ばかりではなく,すべての人間への不信に追いやっていたのである。p.339 人間としても,どう生きていけば良いのか分からない状態になった綾子は,重い病気まで引き起こしてしまいます。 自分の過去を客観的にふり返る姿は,時に大変赤裸々です。さすが作家さんだと感心します。 遊女の意味も分からず,男女の関係も分からず,ただ純粋培養された娘が,どのように社会と交わって成長していくのか。現代では考えられない,10代前半から20代前半の少女の考え方が見えて,興味深いです。 なお,三浦さんには,この続編となる自伝『道ありき』『この土の器をも』というのもあるそうです。
三浦綾子の自伝小説だ。 彼女は、小学校の教師になり、皆から好かれた。だが、彼女はこの小説を書くにあたって、当時のことを思い出し、自分は全然教師として失格だったと悔悟している。たしかに、彼女のクラスの子たちは、成績は良い方だった。でも、今にして思うことは、全然、子供たちに必要なことを、大切なことを教え...続きを読むていなかったというのだ。真理を教えるべきであったと。愛することは何かを教えるべきであったと。実につまらぬことを口やかましく教えてきたことを後悔したという。キリスト教に帰依した彼女らしい反省で好感がもてる。彼女は、生徒をかわいいと思い、厳しく躾けることを使命と思い、1人の生徒も置き去りにしてはならぬと思い、働いていたのだ。それでも十分立派だと思うが、ダメなのだ。彼女は生徒たちに、大きくなったら、あなた方も御国のために死ぬのよ、と語っていたという。その一方で、生徒が可愛くてならなかったというのだから、戦争というものが世の中の思考に影響をあたえる異常さを本当に恐ろしくかんじる。それを彼女は、書く。 国家が戦争をはじめた場合、勝つという一つの目的に向かって強引に国民を引っ張っていく。たんに、特高警察や憲兵が脅し、すかすだけではない。自分みずからが、志願さえして命を落としていくほどに洗脳されてしまう。そして国民全体がそれを讃美し、戦争を肯定して疑わぬ心理になっていく。 彼女がカエリスになるまでは描かれていないが、本書の最後の方に書かれている言葉がある。 この世の中で絶対というものは何だろうかと。神でもないと。それは、自分は死ぬということだ。そして、彼も彼女もみな死ぬという事だ。それだけは絶対であるのだ。だから何ということまでは言われてない。ただその事実があるだけだ。
時代が違えば私も…と、改めて思わされる。この人にも、こんな軍国少女時代があったのだ。 同じく戦時中の自伝を書いた曾野綾子の本も、近々読んでみよう。
三浦綾子さんの7年間の教師時代。 情熱的で頭脳明晰な三浦綾子さん。 時代が違ったらという「たら」「れば」を言いたくなる。 しかし、迫り来る戦争をどんどん肌で感じ、 最後は今まで信じて疑わなかったことを 墨で塗りつぶさねばならなくなったことを自省しやめていく。 教育愛に燃え、子どもをとことん可愛だって...続きを読むいた彼女だったからこそ 虚無感や失望の念が強かったのだろう。 キッパリと教師を辞める潔さ。 彼女の真摯さに惹かれる。 教師時代、炭鉱の村に赴任し、そこで働く人の子達を見て 目を見開かれていく彼女。 中でも朝鮮半島から来た子が 風呂敷を振ってサヨナラを告げていた光景が目に焼きつく。 その後日談もいい。 入学するはずだった1年生が、学校に来られなくなってしまうところも ズシーンと響く。 夕飯を食べてお風呂に入って布団で寝ることができている自分。 そんな日常が当たり前でなかった時代の 一教師の内面がここにある。 引き込まれて一気に読んでしまった。
石ころのように平凡の一少女であったわたしは、軍国主義のさなか、女学校を卒業して小学校の教師となり、天皇への忠誠を信念にすえ日々を過ごしていた。しかし敗戦による激しい衝撃を受け、わたしは深い自己不信に陥った。そして教育者としても人間としても、女性としても迷いの中に入り込んでしまったーー。 戦中、戦後...続きを読むという時代の波にもまれ悩み苦しんだ青春期を振り返る長編自伝小説。
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