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北海道旭川市を舞台に人間の「原罪」をテーマにした著者のデビュー作であり、代表作。
ある夏、北海道旭川市郊外の見本林で3歳の女児が殺される。父親、辻口病院院長の啓造は出張中、母親の夏枝は眼科医の村井の訪問を受けている最中の出来事だった。夏枝と村井の仲に疑いを抱いた啓造は、妻を苦しめたいがために、自殺した犯人の娘を引き取ることにする。事実を知らない夏枝はその娘に陽子と名付け、失った娘の代わりにかわいがる。夏枝や兄の徹らの愛情に包まれて明るく素直な娘に成長していく陽子だったが、いつしか家族に暗い影が忍び寄る―。
三浦綾子の朝日新聞の懸賞小説当選作であり、デビュー作。
そして、1969年(昭和44年)、1970年(昭和45年)、1981年(昭和56年)、2006年(平成18年)と昭和から平成にかけて4度にもわたりテレビドラマ化された、空前の名作である。
「三浦綾子電子全集」付録として、懸賞小説の当選発表記事や受賞の言葉などを収録!
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Posted by ブクログ
本棚の整理をしていて、古い氷点を見つけて読みたくなった。
改訂版が出ていると知り、そちらを購入して読んだ。
平成の改訂版ては、フォントサイズが大きくなり、改行も多くなっていて、全体に読みやすくなっている印象。
言葉遣いなどは現代にそぐわないものはあるけど、時代背景を考慮し、修正はされずに発表当時のままが使用されている。
さて内容は記憶に残っている通り。
何十年も経っているのに、よく覚えていることに感心する。それだけの文章力。
妻の裏切り、失った子供、その復讐に犯人の子供を引き取る。という夫の心の動きを中心に、キリスト教の「汝の敵を愛す」が繰り返し問いかけられる。
何十年経って読んでも、再び引き込まれる氷点の世界観。
これがデビュー作なのだから、やはりすごいと思う。
三浦綾子の氷点と塩刈峠は、時々読んで考えたい。
今読むと、内容的には韓ドラにありそうな感じなので、三浦綾子さんって、すごい時代の先取りだったのかも。
下巻も続けて改訂版で読もうと思う。
Posted by ブクログ
これほどまでに激しく、生々しい感情を揺さぶられた小説は、かつてなかったかもしれない。物語を貫くのは、人間が抱える「邪悪さ」だ。
まず、母・夏枝の姿に戦慄する。自分の欲望を優先し、何も知らない養女・陽子を復讐の道具にするその姿。美しく成長する陽子に女として嫉妬し、彼女の想い人を誘惑し、最悪の形で出自を暴露して嘲笑う。何より恐ろしいのは、彼女が常に「自分は被害者だ」と言い聞かせ、自らの醜悪さを一切反省しないことだ。まさに、「吐き気を催す邪悪」がそこにある。
一方、夫・啓造もまた救いようがない。彼は「隣人愛」という高潔な言葉を盾に、陽子を復讐の道具として家庭に招き入れた。理性的に自らの卑怯さを自覚していながら、それを止めることができない。難破船での宣教師の自己犠牲という、人生観を一変させるような出来事に遭遇してもなお、日常の渦に引き込まれ、何も変わることができなかった。理性は、感情と日常の前になんと無力なことか。
この夫婦の「邪悪」の板挟みになったのが、純真無垢な陽子だった。 彼女は、外部からのどんな悪意にも屈しなかった。彼女は他人からどんなひどいことをされても、自分が潔白であるという信念さえあれば、自分は胸を張って正々堂々と生きていけると思っていた。しかし、自分の父が人殺しだと知り、自分は潔白だという信念、精神的支柱が崩れ去った。血のつながった家族がいない(と思っている)彼女は、精神的支柱が無くなったことで、生きていくことができなくなった。
彼女は死を前に、自分の存在という罪をはっきりと赦してくれる権威ある存在を欲した。行為に対する罪は人が許す。しかし、存在という罪はだれが赦せるのか。そもそも存在自体が罪であることがあり得ようか。殺人犯の血を引いていることは、殺人の可能性を持っていることだと彼女は考えた。悪をなす可能性があること自体が罪なのだとしたら、誰しも罪を背負っているのではないか。それが原罪なのだろうか。存在への罪は、赦す主体が存在しない。だから、神というすべてを赦すことのできる超越者が必要なのだろう。
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