あらすじ
親と子、教師と生徒の絆を深く描く問題作。
旭川の私立中学校に赴任した教師の杉浦悠二は、生徒のひとり、佐々林一郎の暗い表情が気になっていた。じつは一郎は、実業家の父を持つ裕福な家の息子であったが、姉だと信じていた奈美恵が父・豪一の愛人だったことを知って以来、すさんでいたのだった。悠二は一郎の力になりたいと何かと尽力するが、一郎は全く心を開かない。それどころかますますすさんでいくのだった。
1968年(昭和43年)、1975年(昭和50年)に2度、テレビドラマ化された、昭和を代表する名作!
「三浦綾子電子全集」付録として、新聞連載にあたっての文章(単行本未収録コラム)を収録!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
中学生のころ、土曜日の夜に夜更かししていたらテレビ大阪でふるーい映画が放映されていました。その後高校生になって三浦綾子さんの著作をいろいろ読んでいたらあの時観ていた映画の原作を発見!さっそく読みました。そして、最近「氷点」をきっかけに再び読んでみました。
この作品は北海道ではかなり名の売れた実業家、佐々林一家を中心とした親と子、教師と生徒の交流を描いた作品です。
主人公の一人、佐々林一郎はある日、一番上の姉と思っていた奈美恵が実は父の愛人だったということを知り、それ以来、何事にもやる気を無くしてしまい、だんだん反抗的になっていきます。担任教師(これがもう一人の主人公)杉浦悠二は何とか彼を助けようとするが、一郎はどんどん荒んでいき、悠二にまで憎悪を向け、事件を起こしてしまう・・・という話です。
昔は単純にストーリーを楽しみつつ読みましたが、今読んでみると、家庭での教育がいかに重要かを感じました。鍵つきの個室、バラバラでとる食事、なぜか住み着いている父の愛人(そういえば「華麗なる一族」でも父の愛人が同居・・・というのがありましたが)。。。
一番身近な家族を信じることができなければ、真に人を信じる気持ちは育たない。そんなことをこの本を読んで考えてしまいました。
我が家ではできるだけ(多少の秘密は持つことがあるのは仕方ないとしても)オープンでいたいと思います。
そうそう、この作品に関して書きたかったことがひとつ。
作中、悠二が担任を持つ生徒の保護者に、非常に自分勝手で息子のことしか見えていなくて、やたらと担任に難癖をつける親が登場します。
当時に比べてこんな親が増殖している今っていったい・・・・。なんて考えてしまいました。
この作品をもし、現代版にリメイクしたら・・・と時々考えることがあるのですが、おかしな親が多すぎて話にならないかも・・・(笑)
Posted by ブクログ
三浦綾子さんは塩狩峠を中1で読んで以来。
杉浦先生の温かさ。
これは塩狩峠のあの人を彷彿させた。こんな人になりたいです。私。
一郎の思春期に迎えた受け入れがたい家庭の事情。和夫の素直さ。久代の抱える過去。いまも癒えない傷。トキの隠したい現実と世間の目を恐れる虚栄心。
大人になることが酷なことだとは必ずしも思わない。けれども、「知らぬが仏」って諺が諭すように
一郎や和夫、みどりには知らないでほしい。でも乗り越えるしかない。もし知ってしまったなら。
やっぱ三浦綾子さんって、現代作家には書けない小説を書いてたんだな。シュールな大人向けの絵本を読んでるみたいな気分。
一郎が父と妾だと知った菜穂子へは妙な感情を抱き始めた経過が私には理解しがたかった。兄弟いないしね。姉を急に女としての眼でしか見れなくなったのかな。反抗期なら父親との葛藤があるのは理解できるけど、ここまでくると人間不信になる勢い。上巻を読んでみて下巻はどうなってゆくんだろうって楽しみ。一郎と和夫が腹の違う兄弟ってバレるのか?なみえの真実は?豪一と久代は再会してしまうのか?
平和な毎日に終止符を打つ日が刻一刻と迫る。
家族が崩壊してしまうXデーが。もはや家族とすらいえないかも。家族ってなんなんだろう。
積み木がぐらぐらと揺らぎ始めた。それが上巻の終わり方だった。面白いのは下巻なのかな。下巻に期待大。
そういえぱ杉浦先生と久代の恋はどうなるんだろう?好意を持っている同士でさえ、血のつながった家族でさえ理解しあえないなんて。
それから上巻で面白いと思ったのは父兄の描写。私たちも家族を作る番になったなら子どもと教育は避けられない課題の一つ。高校を卒業して結婚までの過渡期にいる時期だからこそ面白く感じたのかも。どっちの立場でもないから。
Posted by ブクログ
何というか良い人すぎる先生とお金持ちひねくれ者の話。先生が心配する気持ちが高校生にとっては、うざったくもあり理解されないと思う。当事者の心理とはそういうもので、心を閉ざしてしまうとそれ以上は入り込めなくなってしまうものなのだろう。昔の自分のことを考えるとわかるような、わからないような。
三浦綾子さんの本は愛が根底にあるけれども、同時に人間のねたみや恨みを素直に出してある。もちろんそこに共感する自分もいれば、人間って卑劣だなと思うこともある。2015/3/18
Posted by ブクログ
自分の家に母親と愛人が同居しているという境遇で、中学三年になるまで愛人をお姉さんと思っていた男の子が、それに気づいたことから色々な事件がおこる。教師と生徒のすれ違いを描く。
著者の作品としては、思想的な完成度はあまり高くないかな。
全2巻
Posted by ブクログ
終戦後の昭和の香りが大いに漂う設定。女生徒は恥らいがあり、態度だけでも教師を敬う面を見せる。アカの思想が話題になったり、付け届けを生徒の父兄から平気でもらったり。2016.5.4