万城目学のレビュー一覧
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琵琶湖にまつわる特殊な力を持つ日出家と棗家は、
古くから敵対している。
日出本家の淡十郎と共に高校入学をする日出涼介。
同じクラスには棗家の広海がいた。
各家の存亡をかけた戦いに勝つことはできるか?
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万城目さんらしい、荒唐無稽な青春・友情物語。
読み進めながら映像が浮かんでくるのは、
万城目さんの描写がうまいからだろう。
ときどきクスクス笑いながら、
彼らの友情や決意の行方にハラハラしたり。
少し寂しい気持ちになりながらも、
人生そんなでは終わらないよ、
さ、また笑って生きてこうぜ
って手を引っ張られたような読後感。
また読み返したい。 -
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四人の作家によるアンソロジー。「時」を題材にした作品集。
タイムカプセルの八年 辻村深月
主人公は大学教授だが、自身の研究に没頭し、父親らしい姿は今まで見せられた事がない。
どことなく自分に投影できてしまう人物で、息子のクリスマスプレゼントを買い忘れた際のいい訳もある意味で納得してしまった(笑)。父親というだけで煩わしい人間関係やコミュニケーションに巻き込まれていく事への疑問は自分勝手に感じるが通じる部分もあり彼の人間臭さを感じたが、合わせて「タイムカプセル」の事実を知り、行動してしまう矛盾、もう一度父親の会メンバーが集合し、意気投合する様子に温かみと少し滑稽な感じがした。
彼自身が見る彼 -
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小学一年生になった、かのこちゃん。
外国語を話せるアカトラ猫のマドレーヌ夫人。
その彼らの日常と不思議な出来事、出会いと別れを描く、
心にしみるファンタジックな佳品。
・プロローグ
第一章 かのこちゃん 第二章 マドレーヌ夫人
第三章 かのこちゃんとすずちゃん
第四章 かのこちゃんとマドレーヌ夫人
・エピローグ
・解説 松田哲夫
知恵が突然啓かれてからの、かのこちゃんは好奇心旺盛に。
楽しいことがいっぱいだけど、悩んだり、迷ったり、
「ふんけーの友」のすずちゃんと共に成長していきます。
ふと住み着いたマドレーヌ夫人。
空地での猫集会にも参加し、この町に馴染んでいきます。
彼女の傍らには老犬の -
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ネタバレなんという大作でしょうか。大作であり、傑作だと思いました。史実とひょうたんを絡めたフィクションですが、壮大な物語です。
上巻でも書きましたが、再読です。詳細は全然覚えていませんでした。
黒弓の境遇やこれから成し遂げたいことを風太郎に話すところは、ラストシーンを覚えているだけに辛く悲しかったです。
芥下が風太郎に「必ず戻るのじゃ」と言うシーンもラストを覚えているだけに辛くて辛くて。
本阿弥光悦が風太郎に見た「暗さ」は風太郎の運命を物語っていたのでしょうか。
我が子を託した忍び4人にあたたかな声をかけ、最期の別れを告げるひさご様に泣かずにはいられなかった。
詳細を覚えてはいなくても、ラストを鮮明に -
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ネタバレ鴨川ホルモーとか鹿男あをによしとかとは、ちょっと違う雰囲気かな。
基本的に氏の作品は、どこか不思議な世界で一風変わったキャラクターが縦横無尽に活躍する、そんな作品が多いイメージだったけども、今回のはそうした雰囲気は少し薄い。キャラがたってるのはいつもどおりだけど、世界観としては比較的ほのぼのしてるし、マドレーヌのねこまた事件も世界を揺るがすような大げさな事件ではない(ネコにとってはそうであったとしても)。
だからこそなのかもしれないけど、ジブリを見ているような気持ちになるし、それでいてどこかに氏の他の作品への入口があるのではないかとワクワクさせられる。盛り上がりどころでスコーンとあがるよう -
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ネタバレ再読です。
前回読んだ時はただただ斬って斬られての凄惨なところばかりに目がいってしまい、「面白かったけど、もう読むことはないかもな」くらいに思っていましたが、文庫本(上・下)をちゃんと本棚に取っておいてよかったです。”万城目学を読み返そう運動”の最後に「(内容的に)重いからな~、どうしようかな~」と思いながら読み出しましたが、さすが万城目作品です。再読もなんのその、内容としてはやはり重くて辛い場面もたくさんあったのですが、読書としては楽しく、さくさくと読み進みました。
時は戦国時代。伊賀の国で忍びとして育った風太郎は、あることがきっかけで伊賀の国を去らざるをえなくなり、忍びとしても用無しに -
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中国の古典を元にして書かれた短編集
西遊記だったり、三国志だったり、史記だったり
その中から『主役の周囲にいる人物を中央に置き、その視点でもって主役を観察し、ひるがえって自己を掘り下げる、という心の動きを描いた(P.6)』お話になってます
例えば沙悟浄から見た孫悟空・猪八戒、趙雲から見た諸葛孔明・張飛、虞美人から見た項羽といったように
んでまあこれがめちゃくちゃ面白い!
物語が進んで主人公の心がどう動くのか、それぞれのお話での決意の方向がどれも魅力的でたまりません
お気に入りは『悟浄出立』と『虞姫寂静』
そういえば西遊記のお話って何故かなんとなく知っているんだけど、ちゃんと読んだ記憶 -
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ついに直木賞作家となった作者といえば、京都ラヴァーズな、歯切れの良い文章と会話の掛け合いが楽しいエンタメ作家…という印象を、昔読んだ初期作たちの思い出とともに持っていたが、その初期作に混じって、こんな短編集も書いていたのか…とおどろき。
中島敦インスパイアから始まる、著名な中国の故事・逸話に材をとった短編たちは、派手さとも荒唐無稽さとも無縁な、文章も相まって朴訥だけれど温かみのある読後感を得られ、とても気に入った。
とくに、「常山の趙子竜」の名乗りに馴染みのある三國無双世代の我々としては、その名乗りから膨らまされた話にも読める、「趙雲西航」が刺さった。 -
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小学1年生のかのこちゃんが成長していくのが、ユニークに描かれており、忘れていたことを思い出させてくれる。決して茶柱ならぬうんち柱を思い出したわけではない。
なぜ、かのこという名前になったか、指吸いからの卒業、漢字や言葉への興味から始まる。突然出てきた「刎頚の友」ということばの回収もちゃっかりある。
一方、マドレーヌ夫人は猫である。外国語を話す。この外国語はどんな言葉かも描いている。これが万城目学さんらしい。
さまざまな別れも描かれている。マドレーヌ夫人の不思議な出来事とは別に、温かさを感じる。そしてかのこちゃんが、また一歩成長した。ほんのりと温かさを残して、この物語は終わる。 -
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見た目は、趣味の悪い柄もののシャツを着たおっさん。でも「神様」なんです。それも主な担当は『縁結び』。小さな町の、名も無い神社で千年もお役目をつとめてきた。そんな神様のところに、取材が入った。髪をぴっちりと分け、メガネをかけた姿はまるでサラリーマン。だけどこちらも「神様」。さらに、神様の昇進をかけた試験も絡んでいるからなんだかややこしいことに…。
「神様」を主人公とした連作短編を一つにまとめた本書。単なる"縁結びのエピソード集"かと思わせて、実はしっかりと芯が通っていて読みごたえがあります。
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