あらすじ
おまえを主人公にしてやろうか! これこそ、万城目学がずっと描きたかった物語――。勇猛な悟空や向こう見ずの八戒の陰に隠れ、力なき傍観者となり果てた身を恥じる悟浄。ともに妖魔に捕えられた日、悟浄は「何も行動せず、何も発言せず」の自分を打ち破るかのように、長らく抱いてきた疑問を八戒に投げかけた……。中国古典の世界を縦横無尽に跳び、人生で最も強烈な“一瞬”を照らす五編。
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中国の古典を元にして書かれた短編集
西遊記だったり、三国志だったり、史記だったり
その中から『主役の周囲にいる人物を中央に置き、その視点でもって主役を観察し、ひるがえって自己を掘り下げる、という心の動きを描いた(P.6)』お話になってます
例えば沙悟浄から見た孫悟空・猪八戒、趙雲から見た諸葛孔明・張飛、虞美人から見た項羽といったように
んでまあこれがめちゃくちゃ面白い!
物語が進んで主人公の心がどう動くのか、それぞれのお話での決意の方向がどれも魅力的でたまりません
お気に入りは『悟浄出立』と『虞姫寂静』
そういえば西遊記のお話って何故かなんとなく知っているんだけど、ちゃんと読んだ記憶もないんですよね
万城目先生に一から書いてもらいたい、読みたい!なんて思っちゃいました
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ついに直木賞作家となった作者といえば、京都ラヴァーズな、歯切れの良い文章と会話の掛け合いが楽しいエンタメ作家…という印象を、昔読んだ初期作たちの思い出とともに持っていたが、その初期作に混じって、こんな短編集も書いていたのか…とおどろき。
中島敦インスパイアから始まる、著名な中国の故事・逸話に材をとった短編たちは、派手さとも荒唐無稽さとも無縁な、文章も相まって朴訥だけれど温かみのある読後感を得られ、とても気に入った。
とくに、「常山の趙子竜」の名乗りに馴染みのある三國無双世代の我々としては、その名乗りから膨らまされた話にも読める、「趙雲西航」が刺さった。
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「鴨川ホルモー」をはじめとする万城目学氏の作品はいくつか読んだことがあり、面白い話を書く人、奇想天外なストーリーを書く人 というイメージだったが、本作はだいぶ違う。そして私好み。中国古典を題材に、深みのある内容、心に刺さるフレーズ、描写の巧みさ(スケール感、血腥さ、悲哀など)で、読み手の心を揺さぶってくる。
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遠い世界だった中国の歴史の世界を私も一緒になって肌で感じられて、中国史のとりこに
それも万城目さんらしく人間味あふれる魅力的な人たちにしてくれました
はまりすぎて中国語も習い始めてしまいしまた
私の世界を大きく広げてくれた1冊
短篇集で読みやすく、何度も読み返すほど好き
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物語の切り取り方。もう秀逸すぎます!
原典を知ってる人は大いに楽しめること請負。
そうでない方も、短篇として入り込めるストーリー。
読んでて、たまりません。
戦略・戦術をカッコヨク語る、猪八戒。
風邪で鼻水が止まらない、諸葛亮。
船酔いをする、趙雲。
しあわせを語る、范増。
訛りが酷くて笑える、荊軻。
そして。
特に大好きなのが最後の物語。
司馬遷の「史記」について、娘の目線から語らせるって、ステキ過ぎました!
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著者の作品は好きで、色々と読んでいるが、それらの作品とは一線を画す内容。
生意気ではあるがこんな作品も書けるんだ、と感心してしまった。
結構好き。
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実は、私が"万城目学"の名を最初に意識したのはこの文庫本。パラパラと目次を見ただけで、中国古典が好きな人ならすぐに気付くタイトルがずらりと並ぶ。
1 「悟浄出立」 西遊記のメンバーの一人•沙悟浄を主人公とした物語。
2 「趙雲西航」 三国志の蜀の軍人•趙雲子竜を主人公とした物語。
3 「虞姫寂静」 秦を滅ぼした項羽の寵姫•虞美人を主人公とした物語。
4 「法家孤憤」 秦の始皇帝暗殺未遂事件と法家思想政治の顛末の物語。
5 「父司馬遷」 史記の著書•司馬遷の娘から見た父の物語。
3〜5は史記が題材。どれもスピンオフ的な視点で物語が作られていて面白い。お薦めを一つ選ぶとしたら「虞姫寂静」。虞美人の秘めたるエピソードが胸を打つ。これで興味を持ったならば、司馬遼太郎の「項羽と劉邦」を読むと面白いんじゃないかな。良い読書ができました。
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この本を読んでいると、久々に中国史に関する本を読みたくなった。中国史は謎が少ないけど、題材にすると書き手によって特色が出るストーリーになって面白い。
万城目学は著者解題で中国史にミステリー要素が少ないのは、司馬遷がいたからだと主張している。司馬遷によって緻密に歴史が記録されたため、司馬遷以降も中国史は正確に書かれていると主張している。この主張はなるほどなと感嘆した。いつかは史記を読み、司馬遷が情熱を出した文を読みたいものだ。
この本はいくつかの短編によって構成されている。その中でも、この本のタイトルである悟浄出立に込められたメッセージに胸を打たれた。「過程にこそ素晴らしさがある」というメッセージは、現代の結果だけを求める風潮に一石を投じているのではないだろうか?
1番面白いと感じたのは、虞姫静寂だ。虞にスポットを当てており、あまり記録が残っていないため万城目学が思い描く虞に対するイメージがありありとこの話に表れていると思う。項羽のかつての妻であった虞に似た女を虞としての役割を与えるというのは、万城目学の妄想力が無ければ思いつかないだろう。
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中国の古典に題材をとった五篇の短編から成る短編集。
この短編集ではない、昔読んだ小説の中に出て来た会話。
妻がいる男性が妻を手酷く裏切って他の女性の許に走り、恨んだ妻は相手の女性に復讐する。
「これは酷い…もし復讐するなら男にするべきだ」と、ある小説家は妻に言う。すると妻は
「そうなんでしょうね。でも、女はそうは思いません」
この短編集のヒロインの女性は、男にきっちりと一発かまして去って行く。
代償行為で自分の心の穴を埋めようとするのは
男性あろうと女性であろうと、あまり褒められた行動ではありませんね。色んな人を傷つける。
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項羽と虞にチャイニーズデスコアの優Voodoo Kungfuのvo 李楠とサポート?Bの蒲羽を脳内キャスティングして読んだ「虞姫寂静」が良かった。
これ、読み始めてから間もなく何処かに行っちゃって、この前やっと発見したんだよね。
で、再読。
西遊記も史記も三国志も試験対策以外の知識も興味はなかったワケだよ。これまでは。まぁ、孫悟空は知ってるけど。
で、最初は正直辛かった。西遊記さえも。
でも、読んでいるうちに気がついた。と、いうか思い出した。漢文とか古典は同級生が言うほど嫌いじゃなかったことを。みんなに合わせて文句は言ってたけど、文中にふと差し込まれる視覚的な風景描写が好きだったなぁ。
で、原作からのスピンオフを万城目学が綴るという趣旨の本作。
原作知識のない私のようなNO歴読者に対し簡単な背景説明を巻末に収録という親切設計。
中国古典に見られる風景描写を挿入というスタイルを踏襲。美しい。臨場感が湧く。
行間で物語る漫画家と評されるあだち充の風景描写って中国古典の影響から来てるのかもと思い至った次第。
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万城目さんのは、映像化されてるのは、全部観てる!
(そんなんばっかやな(・・;))
で、はじめて本読んだ。
何か、あらすじなどに、惹かれて。
西遊記、三国志などのサブキャラをメインにしての短編5つ。
スラスラ読めるし、なかなか面白い。
好みは、やっぱり「悟浄出立」かな?
・結果が全てではなく、過程も大事!
・先頭に立って、道のない道を行く厳しさ(楽しい事もいっぱいあるけど)
何か、今にも通じるもんもあって、ジーンときた!
後書きにあたる?「著書解題」も面白い。
中島敦さんの「わが西遊記」を読みたくなった!
異世界
万城目さんの小説を読むと、異世界に入り込んでしまった様な感覚になります。孫悟空の世界、古き中国の世界へと。様々な人々の生き様を、まるで今目の前にしているような驚き。
今後の作品も楽しみにしています。
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言ってみれば中国の歴史小説のパロディですが、万城目氏が本書を書いた理由が非常に興味深いです。
ヘンテコな作品ばかり書いている天才だと思っていたら、意外と正統派の感性を持っていたんだ。
ついでに言うと、内容も充分面白い。
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初めて万城目学さんの作品を読んだ。
どの話もおもしろかった。
私の好きな「人生訓話」的なものが入っているのと、言葉が重くてよかった。
特に表題作の『悟浄出立』は悟浄が前に出るのもよかったが、八戒の人生が興味深かった。
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中島敦の悟浄出世からインスパイアされた表題作の他に、中国の歴史上の人物や出来事を元にした4作が収録されている短編集。
悟浄出立は爽やかで面白かったけど、中国史ってのはどうも全体的に血なまぐさくてグロテスクなイメージが伴って、読後感がいまいち。。司馬遷が宮刑というグロい刑を受けていたなんて知らなかった。
普段はすっかり忘れていたけど「李斯って焚書坑儒の人よね!」と、世界史で習ったことや漢文で習ったことをふと思い出すのも面白かったけど、たぶん再読はしない。
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題名作は、西遊記の悟浄を主役に仕立て上げた作品だ。中国史における助演者を主役にしたり、スピンオフであったりの5つのストーリーで構成されており、万城目学さんらしく面白い。
趙雲西航は三国志の蜀の軍人である趙雲子竜が主役。
虞姫寂静は秦を滅ぼした項羽の寵姫の虞美人が主役、夏目漱石が思い浮かぶ。
法家孤憤は秦の始皇帝暗殺未遂事件と法家思想政治の顛末が描かれている。
父司馬遷は史記の司馬遷について、娘からの視点で描かれている。
こうした確固たる方向性がある中で、登場人物の人間らしさをクスリと笑顔にさせる表現が、万城目学さんらしさを感じた。
ただ、私は中国史にはさほど興味がないため、読むのが少し辛かった。
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時折やってしまう、S潮文庫の呪縛による、内容未確認予約物件。悟浄は、沙悟浄のことでした。
中国古典文学の多少脇役にスポットを当てた短編集5編。
この作品を書くに至った万城目学さんの序文に、すごく、いいね!っと思いました。彼は、高校時代の現文テストに出題された小説に心奪われた。その後、それが中島敦の「わが西遊記 悟浄歎異」と知る。中島敦は33歳で亡くなり、これは未完といったところ。そして、万城目学さんがその歳になり、そのオマージュに挑戦となる。
私は高校の現文の教科書で読んだつもりの森鷗外の寒山拾得のラストが心残りで時々思い出していたのですが、それが寒山拾得縁起のラストであったことがわかった時、ようやく納得したような気持ちだったですね。若い時代の出会いって、忘れ難い。(最近は、一昨日登録した本もあやしい)
悟浄出立 西遊記より
沙悟浄視線の猪八戒考察。
趙雲西行 三国志より
張飛・趙雲・諸葛亮の蜀への船上物語。
虞姫寂静 史記より
四面楚歌の元 虞美人草の虞姫の悲恋。
法家孤憤 史記より
燕の刺客、荊軻 同音の名を持つ男との分岐点
父司馬遷 史記 「李陵」中島敦
娘の榮から見た、大御所司馬遷。
どれも読み物として面白いのだけど、私が中国古典を読んでなくて、中島敦も西遊記を読んでないんですよ。なので、どの部分が万城目学さんの創作なのか、どのぐらいフィクションなのか、わからないのが残念でした。
猪八戒って、天界にいた時は、シュっとしたイケメンで、地上に落とされた時豚とぶつかってあの姿というのは、西遊記からなのかしら?
Posted by ブクログ
万城目学作品だが、これまでとは異なり、原作から想像を膨らませた短編集。様々な作品をキャラクターそれぞれの目線で感情や行動が描写されているため、どれも主体者の目線で情景やエピソードが感じられる。おすすめは表題作よりも、虞姫寂静。
万城目氏、中島敦や沙悟浄が推しとは、やはり面白い。
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短編5編。
1話目の悟浄出立が一番よかった。
悟浄、あんたは間違ってないよ、と肩をたたきなる面白さだった。
中国の古典や歴史に疎く、他の話で盛り上がれなかった。
Posted by ブクログ
5つの小編が収められた本書。いづれも中国の古典を材に、それぞれのストーリーで中心をなす人たちが何かに気づき、悟り、大きく生き様を変えるドラマを描く。そうした意味でいづれもドラマチック。
とはいえ、著者の他の作品と趣きが異なるため、期待を裏切るかも。著者の中国古典への造詣の深さと世界をイマジネーションで広げる力強さに感銘を受ける作品集。
Posted by ブクログ
ファンタジーを読む友人に勧められて。
結論から言うと、いまいちだった。
友人が話してくれた「話」の方が面白かった。
話術というか。
そういえば、以前も落語家が勧める本を読んだが、
同じ様な感想を抱いたことがあったっけ。
どうも、登場人物の言動や気持ちに納得いかないというか。
書物や映画やドラマで取り上げられるような
有名な歴史上の人物にはすでに何らかのイメージがあるので、
よほどの腕がないと難しいのかもしれない。
「虞姫寂静」はいわゆる四面楚歌の場面を描いたもので、
亡き妻に似ているので名を与えられ、愛された女という
設定にしていたが、
これが一番面白かった。
Posted by ブクログ
2019/9/22
三国志知らんの。1ミリも知らんの。
なので最初の孫悟空はいいとして、2作目で心が折れた。
誰が誰かわからんし。
名前も覚えられないし。
でもその後のは三国志知らなくてもまだ理解できた。
とは言えじゃあ三国志読もう!とか全くならないから。
歴史にロマンを感じるセンスが私にはなかった。
Posted by ブクログ
いつもの万城目学作品というものではないけれど、それでも登場人物の複雑な心情がひしひしと感じ取れて、短編だからこそ面白かったように思います。中国古典を少し知ってた方が面白く感じたので、巻末の説明書きを読んでから読み進めました。
Posted by ブクログ
本屋の夏の文庫フェアコーナーで、わたしは西遊記ファンなもんでタイトルぱっと見で「おっ中島敦のやつか。買お」と衝動買いしたやつです。有名な作家さんやけど初めて読みました。中島敦リスペクトで、中国古典の脇役に焦点を当てた短編集でした。
西遊記以外は全く知らなかった(高校古典の漢文までの知識しかありませんこーゆーの)わたしでもものすごーく読みやすかったし面白かったです。
しかし胸糞悪い展開ばかりを招く八戒をあんなに美化せんでもいいと思うな。八戒はひどいやつなので(…)どんだけ綺麗な話にしようとぜんぜん繋がってる感じもしなければ納得もできなかったよ。あーいうキャラが八戒の魅力なんやし、何より悟空の出番が少なかった。でもニヤニヤしている悟空を見れたから割と満足です。
中島敦のやつもっかい読もう。「李陵」は読んでないし。
ほかの話もどれも面白かったです。