たとえ今は住所を持たない番外地のような定まらない自分であったしても、「自分の居場所は必ずある」と優しく教えてくれた作品。本作もまた馴染みのある土地で、共感しながら読んでしまった。
篠崎駅近くのベルジュ江戸川に住む4人のお話。マッチングアプリで別れた後ふと妙見島に行く女性だったり、妻と娘と折り合いが悪いなかで異動や今後の生き方に立ち止まる男性だったり、昔の亡くした知り合いを懐古する女性だったり、会社を退職したものの次の一歩を踏み出せない男性だったり…人生の「番外地」にいる人物が様々登場する。
特に印象深い話は、3つ目の『東京高速道路 ベルジュ江戸川二〇二号室 青井千草』の話。元アルバイト先の社員である琴ちゃんの早逝を知り、千草はたくさんの考えを巡らす。琴ちゃんは生きることにとても不器用で、優しすぎて…読んでいてとても辛くなってしまった。そんな琴ちゃんを思い続けた果てに千草は、琴ちゃんの実家の美容院を訪れることに…。どんなに辛くても琴ちゃんには生きていてほしかった。この世界に必要な存在だった。琴ちゃんにも、1歩を踏み出せるまで番外地で休んでいてほしかった。その思わずにはいられない切ないラストだったな。
みんながみんな住所のあるところで、歩いている訳ではない。たまには住所のないところだって、人生の脇道に逸れたって、いつかは住所のある自分の居場所を見つけることができる。自分のペースでゆっくりゆっくり歩いていけばいいんだよと、またもや小野寺先生から背中を押してもらえた…
私も自分の居場所が分からなくなったら、自分なりの番外地(心の隙間)を作って、そこで一休みしてから、マイペースに生きていきたいと思う。
★人生の配役(『東京高速道路 ベルジュ江戸川二〇二号室 青井千草』より)
「人は皆主役にして脇役だ。自分の人生においては主役で、他者の人生においては脇役。世間では主役に見える人も、ただそう見えるだけ。他者の人生で主役にはなれない。主役に見える人、という脇役でしかない。」