小野寺史宜のレビュー一覧
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『東京モノレールで働く人々の日常の一コマを描いた優しい連作短編』
生活圏でない人にとっては、ただ羽田空港に行くための路線である東京モノレール。だが、当然そこには住んでいる人がいて、働く人がいて、それぞれの物語がある。そんなホッとする日常にスポットを当てた、肩の力を抜いて読める作品。
東京モノレール沿線のローカルな描写が多いので、土地勘のある人ならもっと楽しめただろう。私は土地勘がないので、Googleマップで沿線を歩いてみたくなった。
また普段は知り得ない鉄道会社の裏側が見えるところも良かった。運転士、駅員、整備士、総務といった従業員の誠実な勤務姿勢は読んでいて心地よい。綿密な取材をもとにストーリーが組み立てられていることがよく伝わってきた。
ただ一点だけ。好みの問題もあると思うが、全体的に「あれ」とか「それ」といった指示代名詞が多用されていて、短く細切れの文節は読んでいてリズムがつかめない印象を受けた。例えるなら、もともとあっさりした中にコクを味わう塩ラーメンのような作品ではあるが、文体も相まってよりあっさりとした読後感であった。 -
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ネタバレバンド「カニザノビー」の4人の物語。
何か劇的な展開がある訳ではないけれども、リアル。
東京の駅名や路線、街の雰囲気が事細かに表現されていて、私は都内に住んだことがないから全くピンと来なかったけど、暮らしたことがある人はありありと情景が浮かんできてより物語を近く感じるんじゃないかな。
話に出てきたビリーホリデイやマウンテンを流しながら読み進めていくのもとてもよかった。
バンド解散後、それぞれの道を歩み出した訳だけれども、絹枝がお母さんの姿を追いかけそれと同じことをやるだけでなく、新しい挑戦に向かっていくラストはとても爽やかだった。 -
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江戸川のほど近くにある、4室だけの小さなアパート「ベルジュ江戸川」。
そこに住む人々が直面する悩ましい出来事と、それに住人たちが向き合えるようになるまでを描く連作短編ヒューマンドラマ。
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東京メトロ東西線。その電車から私が毎日見てしまうのが妙見島と呼ばれる、2本の川に挟まれた陸地の部分だ。2本の川と言ってもどちらも旧江戸川で、わりと大きな道路が橋代わりに渡されているとは言え、どう見ても孤島だった。そこを私は、通勤の行きも帰りもつい見てしまうのだ。
島の目印はラブホの大きな屋上看板。別にラブホに興味があるわけではない。
ただ、都会の陸地と切り離された立地を見ることで少しだけ日常から解放される気がする、その感じが気に入っているのだ。
何と言っても「少し」という感じがいい。完全には日常から離れたくないから。
考えてみれば、私がマッチングアプリに登録したのも同じ理由だったのかも知れない。別にカレシが欲しいというわけではなく ( いや欲しくないことはないのだけれど ) 、日常と少しだけ違うことをしてみたかったのだ。
してみてわかったのは、マッチングアプリというのはなかなか便利なツールだということ。大学卒業後に4年間できなかったカレシが、アプリを始めてから2年間で2人もできた。
最初から条件を絞り込んであるので、会ってみて全然好みではなかったということもない。
そんなことを考えているうちに、電車は南砂町駅に着いた。 ( 第1話「妙見島 ベルジュ江戸川201号室 佐野朋香」) ※全4話。
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小野寺さんお得意の、アパートを舞台にした連作ヒューマンドラマ。日常の人間関係の機微をテーマにしたストーリー。
各話とも本当によくある出来事をテーマにしているので、リアリティがあり共感しやすい。そして住まいや居住区の意義とその大切さを盛り込んだ少々ファンタジーめいた展開にほっとさせられる。
これまでも小野寺さんの作品には、そのようなコンセプトで描かれた作品が少なからずありました。だいたい同じような流れなのですが、それでも新作が出ると喜んで読んでしまうのです。
ストーリー的に、「主人公がひどいことにはならないというのが予想できるから」というのが大きな理由だと思いますが、それ以外にも2つあります。
1つは、主人公が結構いろんなことをウダウダ考えているのがおもしろいということ。
本作では、第1話の佐野朋香と第4話の新川剣矢のウダウダ具合いがいい。しかもこの2人をベルジュ江戸川の 201号室と 101号室というお隣ならぬ上下の関係に持ってきているのも、ご縁が期待できていい設定だと思います。
もう1つは、主人公がどちらかと言うと不器用で損をしがちな性格なので、つい応援してしまうところ。さらに、損な役回りになってウジウジ悩んでも最終的には前を向こうとするようになっていくところも、読んでいて安心できるから好きなのだと思います。
本作では、第2話の片山達児と第4話の新川剣矢がまさにそういうタイプです。ほっとけない、励ましたくなる、そんな不器用さがいい。
さて本作について、もう少し触れておきます。
4人の主人公は、自分の立ち位置がまだわからない、または決まっていない、そんな人たちです。なんせ不器用な人たちですから。
そして住んでいるのが、実は「番外地」と呼ばれるところで、東京か千葉かが微妙な地域なのです。この符号というか設定が特に、しゃれていていいと思いました。
物語の最後に、片山達児が 102号室を出て妻子とともに新天地へ向けて出発していく場面があります。
片山が仕事や家庭での自分の立ち位置についに気づいたことで、このベルジュ江戸川を退去 ( 卒業? ) するという、実によく考えられたラストでした。 ( あとの3人も退去が近そうな感じで、第4話に描かれています。) -
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郵便配達員の日常を描く第6弾。みつば郵便局勤務7年目、30歳になった平本秋宏。
小野寺さんの小説は、「ひと」「まち」のときも思ったけれど、どんな通りすがりっぽい、そのあと出てくることはないんだろうなって人でも、ちゃんと名前がある。何ならフルネームのことだってある。
だから読み進めていくと、過去のエピソードがつづられたときに、あの人ね!となる。
初登場で苦情を言って、そのあと彼氏と別れた片岡泉さん。お茶やアイスを一緒に飲んだり食べたりする場面が出てくると、元気だったのね!とうれしくなる。
ある街の日常を見ているような、温かい気持ちになる。 -
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高校生の青春物語かと思いきや、複雑な家族関係の中で悩みながらも成長していく主人公の姿が描かれている。
親の離婚。しかも母親の再婚相手は実父の弟であり、お互い近くの団地に住んでいる。それだけでも子供達にとっては複雑なのに、ある日、母親は末期癌の恩人を看とる決断をする。
母親の過去とその恩人との関係が気になり、赤の他人の死を見届けることになる子供達。そこで色んなことを学び成長していく。
主人公で高校生の想哉がこの複雑な環境の中で、淡々と状況を受け入れる姿はかなり大人びているし、多感な時期の妹のれなの気持ちは十分理解できる。重い話のわりにさらっと読めるのは登場人物が優しく温かいからだろう。
母親の恩人を看とりたいという気持ちは理解出来るが、母親の再婚相手が実父の弟で、子供達と仲良く一緒に住むという気持ちは理解出来ないなぁ。