小野寺史宜のレビュー一覧
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4つの連作短編。郵便屋さんの平本秋宏が配達先の住人達との心暖まる交流を描いたもの。悪い人が出てこないので安心して読める。
どの登場人物も郵便屋さんと接することで、心の悩みを解決させて行く。最初の章では不登校となった女子中学生。連日、郵便屋を待って話して行くことで学校に復帰して行く。次の章では他の人が配達して大クレームとなり、クレーマーに転じた相手が最後は改心する。嫌われ者の先輩が出戻りで異動して来て、先輩とぶつかるものの結果として先輩の良い点を見つけて懐に飛び込んでゆく。小学校の先生との交流も、懐かしさを呼び起こす。
もう一つの軸は、有名俳優である兄と同じく有名女優との交際と郵便屋さんの交流。これに弟である郵便屋さんと配達先の女性との交際と兄達を交えての四人での交流(友達同士含めて3組)。みんな淡々と進んで行くのが不思議。 -
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東京モノレール。浜松町から羽田空港を結ぶ軌道系交通機関だ。全長 18 km弱の路線距離ながら、人々にとっては重要な足になっている。
そんな東京モノレールで働く人たちにスポットを当てた連作短編お仕事小説。
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勤めている会社にドラマロケの話が来た。
まずはメールで、会社の問い合わせフォームに来ていた。発信者はさるテレビ局のプロデューサーで、相談内容はモノレール絡みのドラマを制作する予定だが、作品には何らかの形でモノレールを絡めたいと考えているので、ぜひ協力してもらえないかというものだった。
とりあえず直接会って話を聞いて欲しいというので、総務案件として猪股部長にも同席してもらって相談を受けることにした。
東京モノレール株式会社。それがうちの会社だ。路線距離は約 18 km。決して長くはない。けれど利用者は多い。だからそこには多くのドラマもあると思う。
そして話し合い当日。場所は浜松町にある本社。訪ねてきたのは、プロデューサーの赤星乙羽さんとシナリオライターの小倉直丈さんの2人。
こじんまりした会議室に通し、お茶を出してから4人で向き合って座った。
( 第1話「清藤澄奈 三十五歳 総務部」) ※全5話と“あとがき”及び“おまけ”からなる。
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お仕事小説ですが、そこは小野寺史宜さんなので群像劇の体をなしていて、すっきりしたヒューマンドラマになっています。
本作の見どころは4つあります。第1〜4話それぞれの主人公を務める4人がその見どころに絡みます。
1つめは、各主人公たちとモノレール会社との「縁」です。
なぜ東京モノレール株式会社に就職したのか。モノローグで綴られる就活時の主人公たちの思い。その描写が自然でよかった。
2つめは、主人公たちの公私の描写です。
「公」は配属された部署での職務と仕事ぶりです。4人の所属はバラバラ。だから、さまざまな部署からモノレール会社を垣間見させてくれます。
清藤澄奈さん(35) が総務部、梅崎初巳さん(30) が運輸部、水村波衣さん(25) が営業部、杉本滋利さん(40) が技術部。
特に運輸部や技術部の仕事についてはよく知らなかったので、興味深く読むことができました。
「私」は私生活。4人とも実にいろいろなことを考えながら、淡々とかつきちんと生きている。その姿に励まされます。
3つめは、主人公たちの町歩きです。
小野寺さんと言えば「町歩き」。その描写があるだけで作品の座りがいい気がします。モノレール沿線の町の様子。ゆったりした気持ちで読ませてもらいました。
そして最後が、制作されたTVドラマ『東京モノライフ』です。
全4話のこのドラマ。演じるのはもちろんプロの役者さんなのですが、主人公たちもチョイと絡みます。何か知り合いがテレビに映ったようなうれしさがありました。
他には、脇役がなかなかいいのも作品の魅力です。特に3人の脇役が光ります。
まずは総務部長の猪股宗康さん。とてもいい味を出していて存在感があります。理想の上司ですね。
2人めは、シナリオライターの小倉直丈さん。あの小倉琴恵さんのお兄さん ( 『カニザノビー』から何年経ったでしょうか ) 。それだけで親しみが湧いてきます
売れっ子作家の妹に敬意を払いつつ、しっかりした構想を立てていることがわかる描写が何度かありました。とてもいいシナリオだったと思います。
そして3人めが坂潤一郎さん。清藤澄奈さんにとって幼馴染みと言ってもいい中学時代からの知り合いです。
中学校卒業以来2人が顔を合わせることはなかったのですが、大学生になってモノレールの昭和島駅でばったり会ったことでライン交換をし、たまに連絡を取り合う仲になりました。
ただそれだけなのですが、この坂さんがとてもいい人なのです。清藤さんにとって気の置けない友人です。
この2人には、作品終盤に少しステキな展開が待っていそうな描写があり、ホクホクした気分で読み終えることができます。
感動巨編ではありませんが、小野寺史宜ファンの方にはオススメの1冊です。 -
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映画見に行きたくなった。ミニシアター系の。
今までミニシアター系ってスカしていて芸術家気取りのわけわからん主張の物って思い込みがあった。
すいません、偏見でした。
という風に考えを改めさせられる作品だ。
テレビドラマと映画の違いってそんな表現の違いだったんだ。目からウロコ。
はじめはとにかく読みにくい感じで、登場人物が現実の人と劇中映画の人物の感情が突然行ったり来たりするので混乱した。しかし慣れてくると何か癖になってくる。後半になるほどもっと乗ってくる。
連作短編だけどほぼ絡み合うことはない。最後の最後にようやくまとまったときはスッキリした。
監督の不器用さも伝わり気持ち良いまとまりで良かった。監督ならではですな。
無理だけど「夜、街の隙間」実際に観てみたくなった。どんな風に感じるんだろう。
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久しぶりに小野寺さんらしい心温まる内容の本だった。
兄が有名タレントで年子の主人公は25歳の郵便配達員。非常に真面目で、交通事故を起こさないよう慎重なバイクの運転で配達する毎日。双子と思われるほど兄に似ているが、職場では内緒にしているものの配達先で指摘されることも度々。
配達区域の事は何でも知っていて家族構成などもしっかり覚えている。食事の提供やお菓子の差し入れも良くあるが、個人情報保護の観点から不安になるほど配達先とは親密。
兄が有名女優と交際していて、二人が良く泊まって行く。女優単独でも泊まって行く。呆れるほど真面目な弟。
各配達先との交流が話しの中心だが、主人公と同様に悪人が登場せず安心して読める。シリーズとして現在8冊目まで続いているようなので、しばらく読み続けて行きたい。 -
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感想
家族の距離感がリアルに描かれているし、徐々に変化する想哉の心情もなんとなく伝わる感じで書かれていることを感じる。
大きな変化はないけど、人はこうやって成長するんだなぁと感じる。
あらすじ
僕こと安井想哉はヒッチコックの映画好きの高一。元女優の母、叔父が父、中一の妹がいる。
ある日、母親の帰りが連日遅く、理由を問うと元マネージャーの谷口が独り身で膵臓癌になり、その人を看取るために世話すると言い出す。
離婚で母親との仲が悪くなっていた妹は、母との対立を深める。
僕は、高校に入って始めたテニス部を3日で辞め、無理矢理誘われた演劇部にしぶしぶ入ることにした。
日々雰囲気が悪くなる家庭のなかで、想哉は谷口のお見舞いに行き、女優だった頃の母親の話を聞く。
冬になって谷口さんが亡くなり、その頃、叔父さんと妹と三人で母親が若かりし頃に出演した映画を見ていた。
想哉は冬休みに自分で台本を書き上げ、それを新歓で演劇することになる。同じ部活の美衣に微妙に告白したが、彼氏がいることを告げられ、淡い失恋をする。
最後は家族みんなで谷口さんの散骨に海へ行く。 -
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ネタバレ東京江戸川沿いにある小さなアパート「ベルジュ江戸川」、そこの入居者4人を主人公に据えた連作短編集。
特に大きな出来事は何も起こらない、最後に4人が顔を合わせるくらいのことが最大の出来事。それなのに何故か面白い。登場人物たちの考えていることが、ちょっとずれているというか、一般的を半歩だけ踏み違えているというか、そのずれが良いのだ。
誰しも、一般的とか世間常識からずれているところはあるのかもしれない。多様性とかホワイト社会とか、良くなっているけど窮屈にもなっているような昨今だからこそ、半歩くらいのずれがあって良いように思うし、その半歩を楽しみたいとも思うのだ。