月村了衛のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
雑誌連載が単行本化され、そこから文庫本になったということである一冊だ。以前から気になっていたのだが、視過ごしのようにして時日を経た。それと偶々「再会」し、手に取って紐解いた。実に善かったと思う。
本作は“大河”というようにも言われている。1970年代を背景に物語が起こり、2000年代までが描かれ、雑誌連載が発表された2018年頃のことがエピローグのように添えられている。“大河”と表現される長い時間軸の、それも現在を生きる多くの人達が「自身の人生の一部…」として記憶の隅に在るような時代を取上げている。
本作は「一介の公安刑事」として生きた主要視点人物の砂田の物語であるが、同時に「砂田の目線を介した現代史」という感も抱くような物語である。なかなかに読み応えが在った。
主要視点人物の砂田は、警察に奉職し、所轄署の地域課巡査であった頃に時の首相、田中角栄の邸宅を警備する班に入った。強引に首相邸に押し入ろうとする酔漢と揉めて負傷し、病院に収容されたところに、「気配りの人」とされる首相の短い見舞を受けるという経験をした。その後、彼は公安部門の刑事となって行く。
そんな彼が担当した事件…ロッキード事件に関連する、日本国内に入り込んだ関係者の米国人を確保というような事案だった。そこを皮切りに、彼の“公安刑事”としての歩みが始まる。
本作の最初の方、ロッキード事件関連の事案に関する物語や、1980年代半ばの「東芝COCOM違反」というような事案に関する物語は、「話しとして聞いている…」という事柄に着想で想像の翼が羽ばたいている物語だ。が、それ以降の1991年頃、1994年から1995年頃、20001年頃というような様々な事案は「自身の人生の一部でもある時代…」ということで何やら前のめりに作中世界に入り込んでしまう面も在った。
「一介の公安刑事」として、時代を揺るがすかのような事案に「捜査関係者」として直接に関わる場合もあれば、色々と話しを耳にする縁者という立場で過ごす場合も、大きく揺れる歴史の中の傍観者的な個人として過ごす場合も在るであろう。そういう職務と、職務に関連して有する問題意識の他方に、個人の情や人生も在る。そういう様々な要素が巧みに織り交じった物語に仕上がっているのが本作だ。
終章に、何となくブームのようになっている田中角栄を取上げた本等に触れて、社会人になって日が浅かった頃に出遭った御本人や「“田中角栄”が在る時代」と「“田中角栄”が排された時代」とを比べながら想う場面が在る。そんな場面が秀逸であるとも思った。
思えば自身は本作の砂田よりもかなり若いということになるのだと思うが…それはそれとして色々と在った「幻影?」のような時代の連なりを駆け抜けて現在に至っているかのような想いを強くした。
なかなかに深い味わいが在る物語だ… -
Posted by ブクログ
ネタバレ前作までの展開がうろ覚えだったが、簡単なあらすじや人物紹介もところどころ挟まっていたおかげで思い出しながら読み進めることができた。
暗黒市場あたりから濃厚な映画を見たような没入感に浸らせてくれるシリーズだが、その期待を裏切らず本作も面白い。前作は機甲兵装での戦闘がなく、今作は戦闘はあるものの龍機兵は登場しない。だが龍機兵が出ないからこそ、姿、ライザ、ユーリの搭乗者としての有能さが際立っているように見える。また本作は本作でマレーシアでの死闘と日本での陰謀捜査が並行して進んでいく演出が新しく、退屈させない。
ついに<敵>の正体が垣間見えたが城木はどう立ち向かうのか。ここに来て突入班が増員されたが果たしてどういった形で作戦に組み込まれるのか。姿は本当に警察を辞めるのか。まだまだ先が気になる展開ばかりで、次回作が待ち遠しい。 -
購入済み
最新作にして最高傑作
近接戦闘兵器「機甲兵装」が普及した未来を舞台に描かれたシリーズの機龍警察シリーズの最新作。今作では、警視庁特捜部と契約する3人の傭兵が容疑者の引き渡しを受けるため渡ったミャンマーと、特捜部の幹部が訪れた京都で物語が展開する。SF警察小説でありながら、軍が実権を握って少数民族のロヒンギャが弾圧を受けているミャンマー、さまざまな反社会勢力が跋扈する京都の描写は現実に即している。異なる2つの場所で起きる事件はやがて一つの大きな渦となり、ページを繰る手が止まらなくなる。シリーズ最新作にして最高傑作である本書は、「このミステリーがすごい!2021」の国内編3位にランクイン。このミス2021で1位となった『黒牢城』が直木賞に決まったが、機龍警察シリーズの最新作がノミネートもされないのは不思議でならないほど。警察小説、SFが好きな人はぜひ第1作から読んでほしい。
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Posted by ブクログ
ネタバレ久々の機龍警察シリーズ。もう第6弾なのか!
今回は主人公たち3人はワンオフ機の龍機兵には乗らず、量産タイプの機甲装兵で戦う。舞台はミャンマー内の未開の地。ゲリラ暗躍、麻薬密売。ボトムズクメン篇リスペクトな感じ。
その一方で、沖津部長らは国内の政治経済癒着腐敗に切り込む。ミャンマー軍事提供や再開発をトンネルにした莫大な金額の収賄事件を捜査していくうちにまた少し見えてくる敵の姿、その一端がまさかここにつながってくるとは!な展開。
敵味方ともに新キャラや新しいスキルもお目見えして、いよいよ物語も中盤かなぁという感じ。早く続きが読みたいが、この質と量では大量生産ともいかないだろうから、首を長くして続編を待つことにしよう。 -
Posted by ブクログ
今回の舞台はミャンマー。国産機甲兵装の秘密を握るという国外逃亡犯の引き渡しを受けるため、「官邸」の意向を受けた特捜部の姿ら三人が現地に向かう。いかにも裏がありそうな設定。で、たしかに裏があるのだが、<龍機兵>はおろか一切の武器も持たぬまま、彼らは任務を遂行しなければならない。
太平洋戦争において「インパール作戦」が行われたこの地で、彼ら死体と、いや白骨と化すのか…
今回は<龍機兵>は登場しないが、他の機甲兵装は登場し、戦闘シーンもある。そして遂に<敵>の一部、しかもそれなりに上の方が明らかになる。その人物とは、××の※△■だったりする。
いつものことだが、読んでいて引き込まれる。一気読みを推奨したい。なお、このシリーズのカテゴリをSFからミステリーに変更した。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ・・・か・・・カッコいい・・・orz
いやもぅ、「機龍警察」シリーズは、どれもカッコいいんですけどね。これまでの作品同様、極めて重厚で救いようのない暗さを孕みつつ、ラストシーンに見える光の眩しさ、陳腐な表現をすれば「読後感の良さ」はシリーズ随一かと。
SFとしての評価ポイントは、新型機甲兵装「キキモラ」と<龍機兵>の対比。<龍機兵>に匹敵する運動性能を誇るキキモラを倒すために、その本質を掴んだユーリが編み出した奇策が「そう来たか!」と膝を打つ面白さ。機甲兵装同士の戦闘シーンもサービス満点の描写ぶりで、重厚なストーリー展開の中で派手なドンパチも堪能できるという、稀有なエンターテインメント作品です。
特に、下巻の舞台となる真冬の東北の雪景色を背景とした戦闘描写の美しさ!純白の雪、漆黒の樹影、紅蓮の炎。この色彩のコントラストを文章だけでここまで表現できるのは、さすが月村了衛、と唸らざるを得ません。
でも、この作品の真骨頂は、やはり登場人物たちの魂の相克だと、鴨は感じました。
<龍機兵>搭乗要員の3人は、皆複雑な過去があるようですが、職業軍人として戦闘を100%「ビジネス」として捉えている姿、もはや善悪の彼岸に魂を置いてきたかのように虚無を抱えたライザ、この2人に比べてユーリは「こちら側」の世界に必死にしがみついている印象がありました。時には冷ややかな視線を浴びながらも、ユーリがなお「こちら側」にこだわる理由。それが、この作品を読んで、ようやく分かったような気がします。
ユーリの人生を変えるきっかけを作ったダムチェンコ班長の生き様は、鴨には正直よくわかりませんでした。それがロシアという国なのだ、と言われてしまえば、そういうものなのかもしれません。そうしたモヤモヤも含めて、人間模様をじっくりと味わえるのもこの作品の楽しみ方です。
次のシリーズ作品も、絶対読むぞー!