月村了衛のレビュー一覧
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シリーズものの小説は、観光間隔が開くと、ほぼ完全に登場人物とか、その背景とか忘れてしまう。かといって毎回読み直すのも、自分的にはちょっと違うし、何となくのまま読み進めてしまうことが多い。本作も、多分には漏れないんだけど、キャラ立ちが素晴らしいせいか、主たるメンバーはそれなりにしっかり覚えていられる。という訳で、今回もその中の一人に焦点が当てられた作品。しかも、本上巻の後半は、丸々その回想に割り当てられているという結構。自分が読む長編としては、シリーズ3作目だけど、こういう展開も大歓迎。という訳で、現在とシンクロしたところで上巻は終わり。下巻も興奮しそう。
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ネタバレ物語全体を通してまるで『山月記』の読書感想文を読んでいるようだった。作中には『羅生門』など他作品も引用されているが、やはり人とまともに関わらず自尊心を飼いふとらせている点が物語の肝になっていると思う。昔授業で山月記を習ったときはなんとも思わなかったが、大人になった今だとこの自尊心を飼いふとらせるという表現が自分に深く突き刺さった。
この主人公にどこまで感情移入できるかで評価が変わりそうな気がする。展開だけを見れば、中学校教師の過労、政治家の癒着、婚約者の失望、同僚・生徒の裏切りなど、主人公がひたすら傷付けられている。それを一歩離れたところから見てざまあみろと嘲るか、一緒になって自分の心を痛ませ -
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月村了衛『追想の探偵』双葉文庫。
最初にタイトルを見た時に鏑木蓮の『思い出探偵』シリーズみたいなストーリーかなと思ったのだが、全く似て非なる内容の作品で、なかなか面白い設定の探偵小説であった。
探偵小説と言っても少し毛色が違い、黎砦社(れいさいしゃ)という今にも潰れそうな名前の出版社で特撮映画を取り上げる『特撮旬報』という雑誌の編集を担当する神部実花が消息不明の大物映画人を捜し出し、不可能と思われたインタビューを成功させて雑誌の特集に使うというものだ。
様々な事情を抱え消息不明となった人びとの過去を巡る実花の旅。映画に関わる様々な人びとの過去と様々な思い出とが一つにつながった時、感動の結 -
購入済み
蘇る昭和の世界、味わいある七編
東京オリンピックを背景に、著名なミステリー作家七人によるアンソロジー。あの頃は今よりもみんなが前向きで、街にも活気があふれていたような気がする。初めて読む作家もいて、それぞれの持ち味が楽しめてよかった。個人的には月村さんが面白かったかな。
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大沢在昌、藤田宜永、堂場瞬一、井上夢人 今野敏、月村了衛、東山彰良『激動 東京五輪 1964』講談社文庫。
昭和39年。東京オリンピック開催に沸く東京を舞台にした7人の作家によるミステリー・アンソロジー。古き善き時代の香りの中に描かれる様々な形のミステリーとピカレスクはいずれも秀逸。
2020年の東京オリンピック開催を記念しての刊行かと思うが、新型コロナウイルス感染拡大の非常事態により東京オリンピックは2021年に延期されてしまった。延期ならまだしも、2021年に開催できるかどうかすら怪しい状況である。自分は中止になると見ているが……『アンダーコントロール』『復興五輪』という日本の総理大臣 -
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2010年に刊行が始まった月村了衛さんの『機龍警察』シリーズ。
似た設定の『機動警察パトレイバー』と比べると、よりサスペンス色の強いシリアスなハードボイルド作品になっています。
本作はその2作目にあたり、日本SF大賞を受賞し、『このミス』9位に輝いた月村さんの出世作です。
1作目は読んでいたものの、以降が上下巻ということでなかなか手を出せていませんでしたが、ようやくこのたび読むことができました。
結論から言うと面白かったです。
やはりシリーズものなので1作目から続けて読んだほうがいいと思いますが、一応前作を読んでいなくても支障はないようには配慮されているようです。
設定もよく練られており、一読 -
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機龍警察シリーズ、5作目。
これまで存在さえも不明瞭であった特捜部の《敵》がより形となって現れてきた感じ。現代に置き換えれば5G通信システムといったところか、日中間の一大通信インフラ事業をめぐる経済疑獄に対して、特捜部を始め、捜査一課に捜査二課、組対、公安と、警察組織のオンパレード。そこに国税局なども加わって、協力と軋轢の綯い交ぜ状態。「至近未来」の物語とは言えど、現代に通ずる生々しいリアルを感じました。しかも、今回は龍機兵の戦闘シーンは一切無し。ライザと狼眼殺手の因縁の肉弾戦が今作のアクションシーンを飾り、それも見事でした。
最終的には龍機兵の特殊システムがカギとなり、シリーズとしてのスト -
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ネタバレユーリの「契約破棄」と裏社会への進出というショッキングな出来事から始まる。
充実した刑事時代、一転して突き落とされた地獄と負け犬の日々、そして現在進行形の潜入操作の「相似」に翻弄されながら、ユーリ、そして特捜は闇の市場を暴くことができるのか。
潜入捜査の緊張感とワクワク感。
特捜と組対の合同捜査、そして宮城県警、受け入れがたくとも目的を同じくする者の熱い共闘。
沖津に翻弄される由起谷夏川コンビ、やはり沖津はすごい。
龍機兵乗りの中で一番脆い部分を抱えたオズノフ警部が、過去においても現在においてもとにかく大変な目に逢いまくる。
「影」ゾロトフとの複雑な関係のもつれや、かつての上司ダムチェンコ -
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ネタバレまさかの龍騎兵戦闘シーンなしの巻。政治的駆け引きと警察官僚の活躍とテロリストとの肉弾戦で構成される異色の一編。
その特色が賛否両論を生んでいるが、俺は賛成側。良質な長編シリーズにはこういう回があっても良いと思うのだ…ただし面白ければ…。この本は十分に面白いし、今後のシリーズに大きなうねりをもたらす既設伏線の一部回収と、新たな伏線敷設をやってのけているし。
狼眼殺手のアクションシーンもオモロイ。ライザについてはもうちょっと強くあって欲しいと思う(あれじゃ、悪い意味で既存の女性ハードボイルド主人公みたい)が、彼女と狼との確執描写は良い。背景が良いからアクションシーンもドキドキ感たっぷりで良い。 -
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ネタバレ機龍警察シリーズの短編集。サイドストーリーと言えば軽く思えるが、どれも読みごたえのある、手抜きなしの傑作短編集。
とはいえ、本編の5作(この本以降のもう1作は後で読んでもいいみたい)を読んでおかないと、世界観、キャラクター等が分からず楽しめないので、「まずは短編集で機龍警察シリーズデビュー」という方法はやめた方がいいと思う。
このシリーズは是非とも刊行順で読んで欲しい。
遠田潤子風ブルースを感じる表題作に、隠蔽捜査シリーズみたいな話もあるし、なんとガンダムサンダーボルトネタまで。しかもその全てが捨て駒じゃないって、なんという多才っぷり。短編一つ一つに本編以外の直接的つながりはないものの、最後 -
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シリーズ第6作目で、最高潮に達する面白さでした。
しかも今回は龍機兵を登場させず…してこれだけ面白いともう先が楽しみで仕方ありませんね。
警察組織内部の縄張り争いや軋轢、暗闘の面白さ、テロや利権や政治とか犯罪や事件解決への捜査の面白さ、特捜部内での葛藤や苦悶する人間関係、敵味方複雑に入り組んだ中での駆け引き…どれを取っても一級品で、そこへ回復や再生といった人間らしさを取り戻していくドラマが入ってきて、ハラハラし、ドキドキして、涙させられる。このシリーズの面白さは、もう鉄板中の鉄板‼︎ 稀代の天才ストーリーテラーによる最高の一冊!でした。無茶苦茶面白いです。 -
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ネタバレ文句なし、鉄板の星×5
今更俺が書くまでもなく、このシリーズは大傑作である。
龍騎兵パイロット3人が主人公の3作が終わって、さてどうなるんやろ?と思っていたが、まさかの由紀谷・城木!で、駆け引きモノ現場モノになるんかと思ったら…そういう部分もあってなおかつ、そこも面白いのだが…機甲装兵格闘含むアクションシーンも十分に、どころか壮絶に描かれている。敵方のボスキャラ3人VS龍騎兵3機、手に汗握るシリーズでも屈指のシーンである。
今作も敵方の設定が凄い。イスラム系チェチェン独立派ゲリラ、しかも女性テロリストのみで構成された集団で、自爆も辞さないどころか自爆が常套化している危険集団である。確保すれ