月村了衛のレビュー一覧
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普通を目指して生きてきた青年が闇バイトの沼に堕ちるまでを描いた作品です。
現代の闇を色濃く描いた怪作です。
3部の手紙と編集者の覚え書きの4篇構成です。
手紙の章は青年の独白形式で進みます。
最初は「主人公はなんて他責思考で自己中心的な人なんだろう…」という気持ちでいっぱいになりました。
自我が無く、コスパとタイパ重視で、共感能力に乏しく、プライドだけは高いのに挑戦を恐れて何も成さず、承認欲求は高いのに常に受け身で、いかに自分が損をしないかを考えて立ち回る現代の若者そのままの姿でした。
とにかく【薄っぺらい】中身の人物です。
それが読み進めるうちに「何かを間違えれば自分もこんな人間になったのかもしれない…」という気持ちにさせられました。
いつの間にか自分を重ねてしまっていたのです。
それがとても恐ろしく感じました。
編集者の覚え書きである最終章は圧巻でした。
共感の嵐とはまさにこのことか、となるほど頷きながら読みました。
とても記憶に残る作品です…今だからこそ読む価値があります。
間違いなく本作は私の記憶に残ると思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『ワイルド・ソウル』といい本作といい、過去の日本の棄民政策って何なん?って言いたくなります。ま、本作では歴史的な背景もあり、「祖国への帰国」という建前があったわけなんですが。「地上の楽園」を喧伝し、「帰国」事業を推進したAと、Aの幼馴染でAの言葉を信じ、北朝鮮へ渡ったB(名前忘れた)。AとBの2人の視点から物語は進むのですが、どっちも地獄なんですな。Aはいいように使い捨てにされた末端の宣伝員に過ぎないけれど、本人の罪悪感とか後悔とか、もう計り知れないわけで。「騙したな!!」ってなかんじで、住んでいた場所を追われ、本人も自分の幸福を追求するどころではなく、ほぼホームレスのような生活を送るのです。でもでも、実際に北朝鮮に渡ってしまったBに比べたら雲泥の差で。いやもう、ディストピア。Bは両親も妻も子供も皆死んでしまって、収容所に囚われ、生きながら死んでいこうとするのですが、そこで知り合ったC(名前忘れた)とともに脱北を決意し、中国に逃れることに成功します。そしてそして、日韓ワールドカップの後に、AとBは日本で再会を果たすのです。「帰国事業」の欺瞞を白日の下に晒そう、という目的で団結し、立ち直ったA。明るい未来を感じさせる終わりで、たいへん楽しく読めました。が、楽しんでよいのだろうか、という一抹の罪悪感?のようなものをおぼえたにこでした。
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読むのが辛くて怖い。でも先を知りたい、とページをめくる手が止まりませんでした。
戦後の在日朝鮮人帰還事業のお話。恥ずかしながら本書で初めて知りました。
北朝鮮は「地上の楽園」というウソの情報を信じ、日本で差別に苦しんでいた在日朝鮮人たち9万3千人が北朝鮮へ渡る。しかし、たどり着いた地は、日本での貧しい生活さえ天国と思えるほどの地獄だった。死んだほうがマシ、とはこういう状況だと思わずにいられませんでした。
北朝鮮もひどいけれど、日本の政治家、メディアも加担している。そしてその責任追及はされていない。北朝鮮に送られた人たちの救済はされなかった。
情報操作の恐ろしさよ。メディアへのアクセスが容易な現代だからこそ、その発信の真偽を見極める力も私たちには必要ですね。
拉致被害者の帰国も進んでいない。
人権を守るって、誰も取りこぼさないって難しい。
でも、できることならすべての人が尊重され、自らの人生を選んで生きられる世の中でありますように。
そして、1人の政治家の名前が出ておりますが、恐らく書けなかったもっと多くの大物が関係していたことだろうと思います。よく出版できたな、と。 -
Posted by ブクログ
労働力が欲しい北朝鮮と朝鮮総連、棄民したい日本政府の思惑が重なって推進された帰還事業。北朝鮮は地上の楽園であると信じて帰国事業の宣伝に邁進する高校生、地上の楽園を信じて帰国した人々を待ち受ける地上の地獄。帰国事業に翻弄された人々や当時の状況について描いた物語り。
無責任に煽りそれを総括しないマスコミと政治家の姿勢は未だに正されない。また、本書で述べられる帰国事業と拉致問題が同根であるという指摘には頷かされる。
帰国した家族から日本の親類へ送った手紙の検閲から逃れるため、切手の裏に書かれた「ここはじごく ぜったいに くるな」がリアルで恐ろしい。 -
Posted by ブクログ
詐欺師の話だけれどもコンゲームではなく、詐欺がうまくいっても決して痛快であったりはしない
主人公はそもそも好きで詐欺を始めるのではない
なんならずっと詐欺の世界から離れようとしている
にも関わらず次から次へと大きな詐欺に手を染めることになる
詐欺の手口も巧妙だったり緻密だったりというわけではない
ストーリーの中では巧妙とされているものの仕組みがさらっと描かれるのみ
主題は詐欺師の業だろうか
まるで転落していくように詐欺師としてのし上がっていく主人公
最後、娘に迫る結婚詐欺師や後妻業の女を詐欺師の手腕でねじ伏せる主人公は、カタルシスとともに、来るところまで来たという諦念のようなものがある
一気読みできるエンタメであり純文感もある
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読書備忘録983号。
★★★★★。
在日朝鮮人の帰還事業ですわ。
いやはや凄いものを読んでしまった。
月村さんヤバすぎ・・・。
月村さん普及活動者としては出遅れ感満点ですがやっと読めました。予約するのが遅かった。
なにを隠そう(実は隠すものすらない)!帰還事業知らんかったです。お恥ずかしい。
1964年生まれのシンタローとしたら1959年から大量に始まった北朝鮮への帰国事業を知らんとかありえない。生まれたらすぐに「38度線の北」を読んどくのでした・・・。
あと「北朝鮮の記録 訪朝記者団の報告」も「楽園の夢破れて」も読んどかなあかんかった。洟たらししてザリガニ釣ってる場合じゃなかったわ。
さて物語。
ざっくりネタバレですので読みたくない方はご注意を!
第1部。
時は昭和34年。大阪猪飼野。今は地名として存在せず、いわゆるコリアンタウンですね。
高校生の孔仁学。「地上の楽園」を謳う「38度線の北」に感化されてしまった。
誰もが衣食住に困らず、好きな仕事に就き、安寧の暮らしが出来る楽園。
北朝鮮への帰還事業に高校生ながら熱を上げてしまった。総聯事務所に出入りして。想いはひとつ!みんなの幸せの為に!
一方、孔仁学の友だち玄勇太。
情には熱いが手が早い。愚連隊(やくざやね)の下っ端まがいの日々。
そしてあろうことか、殺人に間接的に関わってしまった!
捕まったらヤバイ。
そこに孔仁学現る!
ここに帰還事業船の乗船チケットがある。乗る?乗る?日本におったらヤバいんやろ?勇太は家族と共に北朝鮮の楽園へ!
昭和35年になり、親族を楽園に送り出し日本に残った家族らのもとに彼らからの手紙が届く。
「こちらは楽園です。こちらは楽園です。言うことないです。ところで米送ってください。着るモノ送ってください。これ送ってください。あれ送ってください。そしてこれもあれも。そしてあれもこれも。」
おかしい。何かがおかしい!
手紙に隠された暗号。
「拝啓 敬具」だったら嘘八百が書かれていると決めてあった。
「前略 草々」だったら真実が書かれていると。
手紙は「拝啓 敬具」だった。切手の裏にも「絶対に来るな。地獄だ。」と記されていた。
絶望の孔仁学。なんてことをしてしまったんだ。おれは・・・。
取り返しのつかないことをしてしまった。ララァを・・・、違います。
物語は第2部へ。
北朝鮮へ渡った玄勇太のものがたり。
壮絶のひとこと。
死屍累々とはこのことを指す。
みなまで言うまい。
以上。
終幕。
平成14年。
舞台は東京。
勇太と仁学の再会。
頼むから俺を殺してくれ、と仁学。
そう簡単に殺すか!甘えるな、と勇太。
ガンバレ仁学!勇太!
いやはや凄い邪悪な一大事業だったんですね。
繰り返します。知らんかった。
朝鮮戦争の焦土復興の為に大量の人工が欲しかった北朝鮮。
なべ底不況で生活保護財政に破綻を来たしていた日本。特に在日朝鮮人はお荷物。
政治、マスコミ、すべてがグルになって謀った一大事業。
行き場の無かった朝鮮人。生き場の無かった朝鮮人。黒歴史どころか、今ですらあるあるやろと感じる。
そして純一郎の父小泉純也。「在日朝鮮人帰国協力会」の代表。いやはや黒幕やん!進次郎のおじいちゃんやで!
これはみなさん読まなあかんよ。
ノーパンから月村普及を務めてきた私としては、これは絶対におススメ。 -
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ネタバレ普通の人になりたかった青年が重大な犯罪を犯してしまう
それは単なる不幸の連鎖によるものなのか?
それともか彼の人間性によるものなのか?
または時代のせいなのか?
本書は結論を出していないが、誰しもに起こりうることとしているように思えるため、時代のせいと訴えているようだ
先日、Z世代の特徴について書かれた書籍を読んだが、本書の主人公によく似ている
優秀だが、それは隠し、目立つことを恐れ、出世を望まず、平均的な生活を望む
一方で自己肯定感がかなり強く、自分の能力、判断に自信を持つ
Z世代は闇バイトに陥りやすい特徴を持つのだろうか?
ふとそう考えた -
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2018年に発覚した東京医科大学での女子減点事件は、医師の働き方という点では私と無関係ではなく、また子供が受験生だった年で医学部入学だったという点でも無関係ではなかった。ただ当時も今も点数減らされようが男性を蹴飛ばせるだけの点数取ればいいじゃないのという高飛車な意見にそんなに変わりはない。
地検が裏口入学の捜査に来て、私立統和医科大学の資料を持っていった。政治家の息子が学生寮建設用地取得に便宜をはかってもらった見返りで、点数に下駄をはかせた疑惑である。日報新聞の社会部記者である菊乃は取材をしていた。入試で女子の点を減点しているとの噂がある。
統和医科大学の一次試験での男子合格率18.7%、女子合格率15.5%。二時試験では8.4%、2.5%。調べなければ。菊乃の娘は医学部を受験する予定の現役高校3年生なのだ。取材したほとんどの医師が女子減点は昔からやられている、と答える。
理事のほとんどは医師だが、統和医科大学理事の神林晴海は事務局出身。女子差別入試に対するマスコミ対策常任理事に指名される。隠蔽のための根回しを着々と開始する。その神林に菊乃は突撃取材する。不発に終わった。
菊乃が娘の予備校の親子面談に赴くとなぜか神林がいた。特別枠で統和医科大学に娘を入学させてもいいというのだ。かわりに取材から手を引けという。そんなくだらない申し出を受けるわけにはいかない。
菊乃は神林がなぜ理事になれたのか、必死で頭を働かせはじめる。 -
Posted by ブクログ
医学部の受験で女子が一律減点されていた問題をテーマに、それを暴こうとする記者と、大学の権威を守るために隠蔽しようとする理事の対決を描いた作品。
対決する女性2人は、立場こそ違えど誠実に生きようとしてる。そしてそれぞれが女性であるというだけで理不尽な差別を受けてきた。本書では性差別やその他の差別に正面から向き合い、それが決してなくなることはないことも受け入れつつ、解決を模索していく。そしてその思考の先に主人公2人の対決がある。
もう物語が動き始めてから最後の最後まで、まったく緊張感が途切れない。扱っている問題は胸糞悪いものですが、主人公2人がどこまでも誠実なので、物語としては清々しさすら感じるものとなっています。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ2月6日再読。
この小説を読む度に、色々なことを考えさせられる。
私は彼と同年代なので、考え方や世の中に対して共感できる点も多々ある。
だけど一方で相容れない部分もあるが、この本を読むと自分の人生の先が怖くなりもする。
今回読んで思ったのは、私たちの社会が何かと意味や物語を求めすぎていることも今を生きる上で息苦しくなっているのではないだろうか。
シンプルに見下されたくない、怒られたくない、傷つきたくない。
こういったことを甘やかしだと過度に批判されるため、それなりの理由をつけて何事も納得する。
自分の感情にも嘘をつきながら、納得する理由を探している。
佐伯ポインティさんの動画のコメントに、Z世代は人生のネタバレを全部見せられていると書かれていたが、世の中を見渡せば、やるべき事、無駄なこと、全ての情報が転がっていて、ネットの世界では誰かを罵ることばかり。
ただこれを社会だけのせいにしてはいけない。
自分がどんな時代を生きているか知ることが大切なのかもしれない。
この本は読む度に感情がぐっちゃぐちゃになる、
改めて今を象徴する本だ。