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Posted by ブクログ 2024年05月05日
面白く一気読みしました。
生まれの境遇により縛られる環境や処遇が明らかにあるのにも関わらず全て自己責任を問う寛容さのない社会にも一石を投じる、作者の実力に感嘆しました。
作者の作品はいくつか読んでいますがいづれも期待を超えて面白く今後も楽しみです。
Posted by ブクログ 2024年04月12日
初めての作家さん。
久々に社会派小説を読んだ。
大満足!
施設育ちの翔太と有名私立大学生で裕福な海斗、
真逆な環境でありながら、出会った二人。
犯罪に手を染めても、海斗は守られ、翔太は刑務所に。
「罪」を償い、徐々に生活を変えようとしても、
ヤクザは元ヤクザにしかなれない、
なかったことにはな...続きを読むれない。
それでも、懸命に立ち直ろうとする姿が感動する。
けれど、海斗の意識や行動の、現実での問題の多い政治家や企業トップそのもの。
読んでいて、気分が悪くなった。
「悪」を自覚して行う事より、
「悪」を認識しない事を、「邪悪」とあるが、
まさにその通りだと思う。
その「邪悪」に、群がるヤクザや半グレ・・・
ドロドロな暗黒の世界、恐ろしい。
Posted by ブクログ 2024年04月07日
すごい面白かった
ダークな世界に引き込まれるし、物語の先が気になり、止まらなかった。
現実でも起きてそうな出来事で少し怖い。
2人はどんな人生をこれから送るんだろう。と想像してしまう。
Posted by ブクログ 2024年04月01日
個人的に当たりとハズレの差が大きく感じる月村作品。
今作は大当たり!でした。
主人公ふたりの過去からの歩み。暗くて重いムードがしっかりと伝わってきます。
ラストの交わらない会話にグッときました。
Posted by ブクログ 2024年03月27日
現実社会でも問題視され、看過できない罪(ネグレクト、癒着、談合、過労死、パワハラ、男尊女卑、隠蔽、半グレ…)を織り交ぜ、フィクション化。翔太と海斗の眼を通し、狡猾な人間達が蔓延る腐った裏社会の絡繰に憤る。有紀と本に出逢えた翔太が、やっと《答え》に到達できたこと。それこそが『半暮刻』の唯一の救いに思え...続きを読むた。
Posted by ブクログ 2024年03月23日
帯に一気読み必至!とかあったので、またまたーとか思いつつ読み出したらマジで止まらない事止まらない事。大変良かったです。
育児放棄の末、児童養護施設で育った翔太は、半グレ組織が運営するバーで女の子を風俗に沈める仕事をするうち同僚の海斗と意気投合。ツーマンセルで成績トップを取るものの風向きがおかしくな...続きを読むり…という導入から破滅、2人が分かれてからのそれぞれの人生を、その当時の時事ネタを絡みつつ描いているのですが、さまざまな挫折や失敗を経験しつつひょんな事から読書にハマる翔太の姿は本当に尊いし沙季の「面白いから読書する」という思想をプライドにしている様は読んでいるこちらの気持ちを鼓舞してくれるようで、辛いシーンも多いものの基本的に心が温まる翔太パートは読んでいて心地よかったです。
反面海斗パートは作中にもある様に「昭和何年?」という価値観にある彼氏が、聞き覚えのある社風の一流広告代理店でその価値観を増幅し色んな人に一目を置かれつつ活躍する様がメインなんですが、サラリーマン小説の様で犯罪小説でもある作りになっているところが痺れます。特に逢摩産業設立に至る話し合いの場面は読んでてゾクゾクしました。
そんな海斗は自分の異常さに最後まで理解できないのがなんとも。人間はみな真っ白に生まれてきますけど、生きているとどんどん黒くなりその黒みを意識しているかしていないか、黒にならないにはどうすれば良いかを苦悩する人間もいれば、自分の黒さに自覚無く他人を黒く染めてしまう人間もいるから、せめて自分は苦悩する人でいようと思った次第です。
Posted by ブクログ 2024年03月17日
うわ〜。すごいの読んじゃったかな。体にズシっときた。
最初は翔太が裏切った奴らに復讐するような単純な展開になるのかなと思ったけどそんな底の浅いものではなかった。
翔太は大きな罪を背負ったけど償うということもせずに(償い方がわからない?)漫然と生きているだけだったけど有紀と出会い、そして本と出会うこと...続きを読むによって本当に罪と向き合うことができて良かったんじゃないかな。にしても、幼少期を含めてかなり地獄を見ているが、、、途中からはもうこれ以上落ちるな〜とドキドキしながら読み続けてしまったよ。
それに比べて海斗は全てにおいて恵まれているにも関わらずホントに表面だけで物事を上か下、損得でしか判断しないし、本質的に間違いを犯したと心から思わないヤツで、翔太が『邪悪』と表現するのも頷けてしまう。
ただ個人的には虚構という言葉がずっと海斗に対して当てはまり、中身のない薄ら寒さを感じずにはいられなかった。
海斗にカレーを作ってくれる人が現れたら少しは変わるのかな?
アドルーラーに対しても虚構という2文字が当てはまり、逆に倫理という2文字はない。
モデルとなったであろうあの企業もこんな感じなのかな?もしそうなら上辺だけ取り繕って今も変わってないんだろうな。
Posted by ブクログ 2024年03月14日
とても読み応えがあり、考えさせられた。
今まで大手広告代理店について深く考えたことが無かったが、社会の上にいる者達が甘い汁を吸う構造がよくわかり、今の日本の停滞や鬱屈感にも繋がっていてるのではないかと感じた。
ヤクザ、半グレより白(全うに生きてると思われる政治家や広告代理店社員)のほうが本当は恐ろ...続きを読むしく、政治家などもヤクザ等を利用している描写があったが、現実も恐らくそうなんだろうと思うと空恐ろしく、絶望的な気持ちになった。
今の日本社会を知るためにも、読んで良かった。
Posted by ブクログ 2024年03月08日
その昔に大下英治著『小説電通』を読み、マスメディアを牛耳り、政財界にコネを張り巡らすこんな無敵な化け物会社があるのかと、呆れたというよりも感心した。事実は小説より奇なりだと思うから。ところが、当時は考えられなかった急速なテレビや雑誌の凋落とネットの台頭。東京五輪の談合や過労死問題で、あろうことかあの...続きを読む化け物が叩かれる時代になった。簡単には倒れぬも、時代は変わりつつある。そして、ここに新たな小説がその生態系を晒してくれた。最後の翔太と海斗たのやり取りは釈然としないが、誰の中にも彼らの正邪が棲んでいるのだろう。
Posted by ブクログ 2024年02月24日
月村了衛さん初読みでしたが、とても面白く読み応えがあり、物語にのめり込んでしまいました。月村さんの他作品に興味をもち、読書の幅が広がる体験ができました。
物語は2部構成。1部が、女性を騙し、金のために風俗へ転落させるホストクラブの話。2部はガラリと変わり、利益追求のためには何の犠牲も厭わない大...続きを読む手広告代理店の話です。
主人公は翔太と海斗。この2人の出会いと別れ、そして最後の最後に再会する物語でもあります。
章立てタイトルである「翔太の罪」「海斗の罰」のネーミングが本作の内容の的を射ており、不条理さや罪と罰の奥深さを感じます。
2部の共通点は、人をモノとみなす所業、人間の邪悪さでしょう。半グレや大手企業の裏ドキュメンタリーを観ているくらいにディティールがリアルで、現代社会の闇を描き切っています。実際の事件報道と重ねてしまうほど引き込まれます。
主人公を2人置いたプロットも見事で、全くタイプの違う翔太と海斗の対比、金の亡者と厳しい境遇の者の対比と扱いの筆致が素晴らしく、絶妙です。
日常のすぐ隣にある闇に足元をすくわれる怖さ、やるせなさが湧き出てきますし、読んでいてずーっと気分が悪いのですが、決して目を背けられない、という感じです。
世の中に蔓延る胸糞悪くなる個人や社会構造を炙り出し、著者の怒りと鉄槌が表れた渾身作であり、社会派小説の傑作と受け止めました。
翔太と沙希(=有紀)を救い、繋いだ「本」の存在と扱いが印象的でした。確かに本を読むことで、何かが変わったり救われたりします。(目的不要で)「ただ楽しいから読む」というくだりに、読書は万人のためのものだと、共感しかありませんでした。
Posted by ブクログ 2024年02月17日
ノンフィクション!って思わされる物語。
正直めちゃくちゃ面白く物語の中に吸い込まれました。
リアルにあってもおかしくない社会の闇。
二人の主人公が闇に堕ちていく姿、
そこから這いあがろうと奮闘する姿などなんとも心が震わされました。
闇の世界って恐ろしいとも思わされましたね。
この小説は読む価値...続きを読むのある小説でした。
Posted by ブクログ 2024年02月05日
現代に蔓延る闇を感じました。
過去の自分と向き合い、逃げず生きていくことの大切さを学びました。
過去は変わらない。それをどう受け止めるか、考えさせられる作品でした。
Posted by ブクログ 2024年02月04日
読書備忘録799号。
★★★★★。
そんなに厚くないけど読み応え満点なので、★も満点の5つにしちゃいました。
月村小説に振れなし!今回はネタバレ備忘録。
今作の主人公は2人。
所謂半グレ。堅気(白)でもやくざ(黒)でもない境界線(グレー)で活動する悪。
作品タイトルは半暮刻。ラストで2人が海岸線...続きを読むで語るシーンが陽が沈む半暮どき。陽の光の下で生きるのか、暗闇で生きるのか?それとも・・・、という場面に半グレをかけているのかな、と想像しました。
物語は2部構成。「翔太の罪」「海斗の罰」。この章タイトルが納得のストーリーでした。
主人公は、山科翔太と辻井海斗。
翔太は劣悪な家庭環境のうえ施設で育ち高校中退。一方の海斗は有名大学在学中のいいとこの坊ちゃん。
2人は、悪質ホストクラブを運営するカタラグループのメンバー。そして、カリスマ経営者の城有が作ったマニュアル通りに女性をナンパし貢がせ、借金を作らせて、最後は風俗に落とすというシステムを回す。
彼ら2人は、自分たちのやっていることは悪いことではなく、女性の向上心を高め、それを具現化する為に紹介をしていることに疑いを持っていない。
どこまでも女性が風俗に落ちるのは自己責任であると。
彼ら2人はコンビを組んで成績を上げ、ホストの中でも成績上位のトップテンにランキングされて有頂天に。
城有はそんな2人を高く買い、やくざの陣能に紹介する。陣能と城有はスマトラで大規模な詐欺犯罪を計画しており、それに2人を関わらせようという訳だ。
海斗はノリノリ、翔太は及び腰。
そんな折、被害女子の告発によりカタラグループが摘発され、主要メンバーが捕まった。捕まった主要メンバーに城有はいた。翔太もいた。しかし海斗は含まれていなかった。そして、翔太だけ実刑判決で懲役3年。城有ほかの検挙者は執行猶予がついた・・・。施設出身で、少年院歴ありという過去が災いしたようだ・・・。
時は過ぎ、翔太は出所。
前科持ちに仕事はない。行きつく先はやくざだった。
末端のやくざである仰木組と盃を交わし組員に。上納金を納めるためにデリヘルドライバーに。
そして、デリヘルで働く沙季との運命の出会い。
沙季も悪質ホストに騙され借金を抱え、デリヘルで返済していた。
沙季に感化されて読書を始めた。夢中になった。面白かった。
そして、堅気になることを沙季と約束する。
困難な堅気への道を信念で突破し、弱小の印刷工場の非正規に採用された。
そして沙季(本名有紀)と結婚。有紀は妊娠し、明るい未来が見えてきた。
しかし、この頃から翔太は悪夢にうなされる様になる。
そして有紀が難病に。お腹の子供にも影響が出るかもしれないと。
翔太は悪夢の正体に思い当たる。自分には瑛二という弟がおり、親に虐待され死んでいた。それを黙って見ていた自分。その罪が頭をもたげてきたのだ。
自分は幸せになれるのか?カタラの罪。瑛二を死なせた罪。やはり自分は幸せになる資格はないのか?どれだけの罪を背負って生きていかないといけないのか・・・。
一方の海斗。
捕まらなかったことで、カタラのテクニックを存分に使って大手広告代理店アドルーラーに就職した。
能力を買われ、東京都と国家の一大プロジェクト「東京ワールドシティ・フェスティバル」、略してシティ・フェスの推進準備室の室長補佐となる。
「利益は倫理に優先する」「寝る間も惜しんで仕事するのがアドルーマンの誇り」という社内不文律に従い、グレーな施策を次々に展開してプロジェクトを進めていく。業者発注からの二次受け、三次受け、四次受けと金が中抜きされ、予算は莫大になっていく。そして中抜きされた金は、政治家、アドルーラー幹部の懐に還元するシステムを構築していく。海斗はアドルーラー経営層の絶大な評価を得る。
プライベートでも松村証券役員大垣泰輔の娘彩音と婚約し、公私ともにイケイケで突き進む。
しかし、プロジェクトには問題が降りかかってくるのが当たり前。それを解決するために、かつてのカタラグループ総帥の城有の手を借りることになる。そしてその先には陣能がいた・・・。問題が解決すればするほど、グレーが黒に染まっていく。
そんな不都合な情報が拡散しないように、ネットをコントロールする海斗。SNS担当の部下遠野早友理が自分のやっていることの罪の重さと過労で自ら命を絶つ。
早友理がSNSに上げていたプロジェクトの内情が大炎上し、海斗が元カタラのトップテンであったこと、プロジェクトが半グレ組織と談合していたことなどが全て明らかになり海斗はクビとなる・・・。
しかし、海斗がクビになるとマスコミもネットも鎮まった・・・。あきらかに海斗が作ったシステムが機能してそれ以上の事態にはならなかった訳だ。
エンディングの海岸。
翔太と海斗。
翔太は罪を背負った。それは消えることはない。その罪を背負ってこそ生きていくことが許される。有紀の難病も小康状態。生まれた娘も軽度の難聴で済んだ。正社員に抜擢された。翔太の罪。半暮刻から陽の当たる世界に・・・。
一方の海斗。自分のやったことは罪に問われていない。自分以外の他人はどうでも良い。遠野の自殺も彼女が弱かっただけだ。プロジェクトの学びはこれからも生かされる。海斗の罰。表面的な罰ではない。自分以外の人も生きている。ひとりの個人。ひとの係わりを正しく持てないという海斗の罰は続く・・・。半暮刻から最後は闇夜に転落するのでは・・・。
深い深い。
Posted by ブクログ 2024年05月04日
初めての作家さん。一気読み。今の社会問題をうまく取り込んでいる。とことんダークになるのかなという予想を裏切り、モーパッサンの小説なんか出てきたり。脂肪の塊は読みたくなり、ネットで注文してしまった。
Posted by ブクログ 2024年04月30日
週刊大衆連載の悪漢小説。ヤクザ、半グレの抗争劇かと思ったけど、焦点がちょっと違って、主人公は向上心が強い大学生。ホストクラブの人気トップになり、女の子を借金漬けにして、風俗送りにし、のちに店が摘発されるもうまくすり抜け、業界トップの広告会社(電通がモデル)に就職する。そこでも出世のために、上にはゴ...続きを読むマすり、下にはパワハラ、頭が切れるので半グレも利用して、若手の筆頭株に。しかし世の中そんなに甘くない。やがて転落。ヤクザにヤクザよりたちが悪いと呆れられる。結果的に法の裁きは受けないんだけど、こういう悪人、確かに増えてるわ、といたく納得するストーリー。
Posted by ブクログ 2024年04月25日
堅気とヤクザの中間であるグレーな存在「半グレ」は、堅気の世界で悪行をしても法律で取り締まることができない分、邪悪な存在であると語る本書。
裏と表の世界で暗躍する半グレの存在を、ホスト、電通、東京オリンピックなど、時事ネタを絡めながら、浮き彫りにしていく。
ノンフィクションと見紛うほど迫力があった...続きを読む。ボリュームはあるが、大変読みやすく、ガッツリハマって予想外に一気読みしてしまった。
Posted by ブクログ 2024年04月22日
どこかで見たような、どこかで聞いたような、今もこれからも、同じようなことがどこかで起こっているのだろうなと思わせる物語。二人の主人公は対照的。育ちや学歴と人間性は相容れない。真の邪悪を体現するような人物は、育ちもよく学歴も高い。どこまでも自分の学びは独善的で自己愛を追求するのみ。しかし人間の本質とは...続きを読むまさにこれかもしれない。コンラッドの闇の奥、ルシア・ベルリンの掃除婦のための手引き書、読んでみよう。
Posted by ブクログ 2024年04月11日
そうなるか。どうしたっていい締めくくりはない。現代社会のグレーな一面を大胆かつ丁寧に描いたこの作品は、登場人物のキャラが立っていてどのシーンも目が離せない。先の展開が気になるばかりだった。有紀さんは、特に良いね!!
Posted by ブクログ 2024年04月08日
まず、頭に浮かんだのは、電通、東京オリンピックだった。裏の世界はおおよそこんなもんじゃなかったのかなと思われる。作品としては、最後の部分がいまひとつ。もう一暴れして欲しかったなぁ。
Posted by ブクログ 2024年04月05日
なんだか後味の悪いラストだった。
改心する日が来るのかね〜
平成ならともかく令和の今、大企業であんなのはないと思いたい。
主人公の2人とも嫌だ嫌だ。
あっちもこっちも嫌だ。
過去は変えられない。
性格も本質は変わらない。
きっと今は良くてもなんかあるはず。
SNSって印象操作できるんだ。...続きを読む
勉強になりました。
Posted by ブクログ 2024年04月01日
最近綺麗な物語ばかりを読んでいたせいか、こういう本を読みたかったんですよね。ハードボイルドだけでも肩が凝るし、ミステリばかりでも疲れてしまう。かと言って綺麗な物語ばかりだと、犯罪系のを読みたくなったり。そんな私が求めていたズバリの作品でした。
タイトルの『半暮時』は、つまり半グレをもじったもの...続きを読む。翔太と海斗、境遇が全く違う2人の青年が『カタラ』なる半グレが経営しているクラブでお互いスタッフとして出会う。
『カタラ』とは、女性を引っ掛けて、クラブで金を落とさせ、最終的に風俗に落とすシステムを構築している腐った組織。高い思想を掲げてやっていることは下衆の極み。そんなカタラが摘発され、施設で育った翔太は執行猶予が付かない実刑判決。有名大学に在学している海斗は逮捕すらされなかった。
そんな2人が全く別々の人生を歩んでいく。翔太は先輩に誘われるままヤクザになり、その後、このままではいけないとヤクザから足を洗い小さな印刷工場で働きだす。
海斗は超巨大企業『アドルーラー』に就職し、新都市博という大プロジェクトを任されるようになる。そんな中、プロジェクトにかつてカタラの創始者と、その裏にいたヤクザが絡んできて・・・。
翔太の章ではその生まれ持った境遇で、ここまでも報われないことってあるのかなと憤慨したし、海斗の章ではせっかく築いた地位が少しずつ崩れていく様が恐ろしかった。それ以上に海斗のしていることは許せなかったが。
カタラでしてきたことは許されることではないが、翔太の生き方には賛同できる。海斗は・・・。どこまで行っても性根が腐った奴は腐ったままなのかな。でも、これがリアルなのかもしれない。
Posted by ブクログ 2024年03月24日
翔太の罪の後半部分号泣してしまった。施設育ちで元ヤクザの翔太が、本がきっかけで働き口が見つかった時は嬉しかった。
一方、自分より下の人間を見下し追い詰める海斗。罪の意識がないってこわい。
難しい漢字や言葉が多かったので二度目に読んだ際は漢字と意味を調べながら読み進めたらすこし賢くなれました。
Posted by ブクログ 2024年03月17日
罪を受け入れた翔太と罪から逃れた海斗の罰、
この対比が読後印象に残った。
自らの罪から再び逃れた海斗は
この先も自身で築いた地位や大事な物を
再度壊してしまうのだろう。
表紙の黒いフード、あれが海斗の中にいる
人間の邪悪な気がした。
あと本の感想を書くことは重要だなとこの本を読んで感じた。
本...続きを読むの内容を理解して、文章化することは糧になる。
Posted by ブクログ 2024年03月14日
小説という形のノンフィクションと言えそう。
あまり(絶対)関わりたくない世界だけど現実に起きていること。
特に後半は、実際報道等で知っていることと重なり、どんどん読めました。
SNSはもちろん、報道も操作できる権力に、改めて脅威と怒りも感じました。
最後の翔太に対する海斗の態度にイラッとして...続きを読むしまったので星を減らしましたが、読んでよかった本でした。
Posted by ブクログ 2024年02月20日
半グレとしてペアを組み、若い女性を借金漬けにして風俗に落としていた二人。
摘発された後は対照的な道筋を辿る。
中卒の翔太は服役し、出所後ヤクザとなり、被害女性と出会い、本の楽しみに触れ、ヤクザを抜け、改心し、地道に生きようとする。
大学生の海人は罪に問われず、広告代理店最大手に就職し、大きなプロジ...続きを読むェクトを任され、マスコミに登場するなど表舞台で大いに活躍する。
過去の自分を省みて生き方を変えた翔太と変えなかった海人。
自覚的に悪を行う者よりも、無自覚に悪をまき散らすグレーな存在の方が邪悪だ。
この世は政界も財界も半グレで溢れている。
作者の主張はある意味当たっている。
作者は半グレをむしろ人間らしいという。
すべての人間は悪人であるという鎌倉仏教の教義にも通じる。
悪を自覚できない海人は、確かに本書に登場する人物の中で最も邪悪かもしれない。
後編の遠野さんのエピソードは、電通で不幸な最期を遂げた若手女子社員そのもので、読み進めるのがつらかった。
Posted by ブクログ 2024年04月09日
「脱北航路」「土漠の花」に続いて読む3作目の月村さんの作品。
以前読んだ2冊から勝手に国際的な社会問題をテーマに小説を書く方と思い込んでいたので本作はまた毛色が異なり驚きました。
あらすじは割愛するとして、他の方のレビューにあるように本作を読んで思い浮かべるのは東京五輪と電通、そして個人的にはかつ...続きを読むての私の上司でした。
一昔前のドラマや小説には何だか憎めない悪人がいて最終的には彼らも改心する流れが示されて、ほっと一安心というものが多かったように記憶しているのですが、本作には最後まで話が通じない悪人がいます。
善人の顔をした、自分が悪人であるという自覚のない悪人。サイコパスとはまた違うこういう人、いるんですよね(元上司もしかり)。
そこに「上流国民」が得をする仕組みとなっている問題や、あらゆるハラスメントがなくならない労働環境などが絡み合い、ストーリーが進行していきます。
最後まで読んだ感想として、もうちょっと何か悪人の心を抉るような言葉は出なかったのかと地団駄を踏む思いはあるものの、そんな簡単に反省するような人物ならストーリーも本作の問題提起も成り立たないわけで、よく考えられた結末なのかなと思います。
日本には色んな問題があって、その多くは国や政治に起因するのですが、本作でも書かれているように時間が経つとその騒ぎが収束してしまうのは何故なのか。
国民が飽きやすく忘れやすいから?マスコミのせい?
本作を読み終えて、私は社会問題よりも自身の目の前の生活に精一杯にならざるを得ず、そういった生活になったのは自己責任だと思わせる国の仕組みのせいだと思いました。
そうではなくて、最低限の生活は国が保障してくれて、その上で政治や社会問題について考える余裕を国民が持てる国こそ、理想的なのではないでしょうか。
そんな国あるのかしら、そんな国を目指す政治家はいるのかしら、ですけどね。
私が求めていた月村作品とはちょっと違ったけれど、色々と考えさせてくれる良作でした。
まだまだ読み続けたい作家さんです。
Posted by ブクログ 2024年02月18日
”半暮刻”(はんぐれどき)という当て字のようなタイトルが的を得ていた。
最近まで馴染みのなかった言葉、半グレとはそもそも何だろう。『暴力団に所属せずに犯罪を行う集団で、半グレは都市部を中心に勢力を拡大しており、暴力行為や詐欺行為などの犯罪行為を繰り返している。彼らは暴力団とは異なる特徴を持ち、日本各...続きを読む地で様々な局面で暴力団と対峙する勢力となっている』というから、怖い存在だ。
半グレ集団がやっている風俗を斡旋する仕事で、協力して良い成績を残した大学生の海斗と施設で育った翔太の二人。二人がそれぞれ主人公となり第一部が『翔太の罪』で 第二部が『海斗の罰』となっている。
黒より灰の方が性悪で始末に負えないと、違法すれすれに企業と政治が結託して見せつける展開に返す言葉が見つからない。そして筆者は現日本国家体制も同様だと読者に投げかける。ニュースで知る政治家たちを見れば誰もが解る真実。果たして、半暮(はんぐれ)のその後に待っている”刻”は闇かと考えると背筋が凍る思い。
第一部で本好きデリヘル嬢(後に翔太と結婚)のセリフに「読書に何の意味もない。ただ好きだから読んでいる~ 後略」とあったが、諸手を挙げて賛成です。
Posted by ブクログ 2024年02月09日
本当のクズとは、どんな人間をいうのか?
広告業界を舞台にした、人間性とは何かを問う社会派小説。
第一部で「下級国民」として反社会的勢力、第二部で「上級国民」を描く(嫌な言葉だが)。
その第二部の舞台が広告業界だ。
広告代理店最大手「電●」。作品内での社名は...続きを読む「アドルーラー」。社員の自称は「電●マン」ならぬ「アドルーマン」。
adruler(広告を統べる者=広告王)なら、そのままアドルーラーでええやん(と思った)。
呪いや洗脳のように何度も連呼され、あまりのゴロの悪さに苦笑する。お前それでもアドルーマンか!
ストーリーは昨今、社会問題化した実際の事件、報道を基にしている(てんこ盛りだ)。読みながら、皆さん「ああ、あれか」と思うはず。
それを批判したいわけではない。
しかし、フィクションとしての物語的飛躍に乏しく、すべてが想定の範疇におさまったのが残念だった。
章立てのタイトルは、ドストエフスキーの『罪と罰』からと思われ、おそらく翔太と海斗の人格は、その主人公ラスコーリニコフを二分して造られたのだろう。
ならばこそ、クライマックスのどこまでも噛み合わない情景も納得できる。
改めて「人間性」について考えるきっかけになった。
偉いから。貧しいから。学歴が高いから。前科があるから。
あなたは人を人として見ていますか?