あらすじ
●あらすじ
児童養護施設で育った元不良の翔太は先輩の誘いで「カタラ」という会員制バーの従業員になる。ここは言葉巧みに女性を騙し惚れさせ、金を使わせて借金まみれにしたのち、風俗に落とすことが目的の半グレが経営する店だった。〈マニュアル〉に沿って女たちを騙していく翔太に有名私大に通いながら〈学び〉のためにカタラで働く海斗が声をかける。「俺たち一緒にやらないか……」。二人の若者を通した日本社会の歪み、そして「本当の悪とは」を描く社会派小説。
●担当者より
本作の主人公は二人の青年です。一方は施設育ちで貧困の連鎖の中にいます。いくら努力しても、彼の出自、彼の過去が彼自身を縛りつけていきます。もう一人は何不自由なく育ち、それでも上を目指して日々〈学び〉を怠らないよう努力をしています。努力をしている、という点は二人とも共通ですが、この二人を「日本社会」という入れ物に入れたとき、理不尽な現実が襲い掛かってきます。同じ半グレのもとで出会った二人がどんな人生を歩んでいくのか――著者である月村了衛さんが脱稿後「格別の手ごたえがあります」とおっしゃった力作、ぜひご一読ください。
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Posted by ブクログ
虚の伽藍、欺す衆生と読んできて今回3作目の小説。翔太が刑務所から出てきて大切な人のために更生していく姿に救われた。後半は何となく展開が読める話ではあったけど、それでもページを捲りたくなった。月村さんの小説は社会の闇、グレーな部分が描かれていて事実を基にしている部分もあるようだが、毎回何でこんなに詳しいんだろうと感心させられる。
Posted by ブクログ
闇の先の闇から逃げられなくて苦しむ姿がとてもリアル。実際に半グレ集団と付き合う人の中には自分から関わるつもりがなかったのに、ヤバい人だと気がついた時には時すでに遅しでどこにも逃げられなくなっている人が多くいるのではないかと思う。一方の海斗は環境に恵まれているのに自ら悪へと進んでいく。職や妻を失い転落したように見えるが、きっとまた何となくいい所からスタートできるんだろうなと思うとやりきれない。
Posted by ブクログ
施設出で高校中退の山科翔太とG大学卒のル山科海斗
半グレの経営するタカラは大勢の女性を風俗へ落として
上前をハネル悪どい商売で稼いでいる
その中で「学び」を習得しのし上がって行く二人...」
警察に摘発されるも実刑になったのは
翔太だけ
立ち回りの上手い奴らは白にも見えるグレーの世界で
甘い汁にたかる
真っ当に己の罪を抱いて生きる翔太と対照的に
日の当たる王道を生きているかのように見える海斗の罪
世の中ではこんな事がきっと今も
横行しているのだろう。
Posted by ブクログ
現代ノワール小説で、前半はホストの職業安定法違反を後半は電通五輪汚職を彷彿させる作品です。
主人公は施設出身の翔太と名門大学生の海斗で、前半の前半で二人がタッグを組んで女性たちを風俗に送り込んでグループトップテンにのし上がっていく様は裏社会の成功物語風で面白かったです。
しかし、グループが摘発されてからの二人の状況がまるで逆になっていて、面白いと思ったことも被害者の立場を考えると不謹慎であると反省しました。
第一部で改心する翔太と第二部で転落しても反省しない海斗は本当に対照的でした。
サイコパス的な海斗の続編があるのではないかとさえ思える不気味な終わり方でした。