あらすじ
日本裏面史を「貫通」する公安警察小説!
昭和・平成の日本裏面史を「貫通」する公安警察小説!
かつて田中角栄邸を警備していた警察官・砂田修作は、公安へと異動し、時代を賑わす数々の事件と関わっていくことになる。
ロッキード、東芝COCOM、ソ連崩壊、地下鉄サリン、長官狙撃……。
それらの事件には、警察内の様々な思惑、腐敗、外部からの圧力などが複雑に絡み合っていた――。
圧倒的スケールで激動の時代の暗闘を炙り出す、前人未踏の警察大河ミステリー!
※この作品は単行本版として配信されていた作品の文庫本版です。
感情タグBEST3
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ロッキード事件からオウム真理教事件まで公安の目線で紡ぐストーリー。月村了衛さんの独特のテンポと情景が浮かぶリアリティにひきこまれてしまう。終章のロシアスパイとの再会はなくてよかったと思う(笑)
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とても読み応えがある本。
一人の警察官の生き方が描かれているけれど、実際にあった事件を背景に当事者実名も出てきたりしてリアル感があり、これはノンフィクションじゃないよね?って思いながら夢中で読んだ。
月村了衛氏の本はハズレがない。
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この本で初めて月村さんを知りました。凄い作家はいるもんです。
ロッキード、東芝ココム、オウム等の新聞テレビで報道されていない大事件の裏側を公安の立場から小説仕立てに事細かく描いています。
公安を顎で使うCIA、全てに暗躍するKGB。驚きの内容が多いですが、特にオウムはちょうどテレビで見ていた世代なので衝撃を受けました。
とんでも無い作品です。
Posted by ブクログ
雑誌連載が単行本化され、そこから文庫本になったということである一冊だ。以前から気になっていたのだが、視過ごしのようにして時日を経た。それと偶々「再会」し、手に取って紐解いた。実に善かったと思う。
本作は“大河”というようにも言われている。1970年代を背景に物語が起こり、2000年代までが描かれ、雑誌連載が発表された2018年頃のことがエピローグのように添えられている。“大河”と表現される長い時間軸の、それも現在を生きる多くの人達が「自身の人生の一部…」として記憶の隅に在るような時代を取上げている。
本作は「一介の公安刑事」として生きた主要視点人物の砂田の物語であるが、同時に「砂田の目線を介した現代史」という感も抱くような物語である。なかなかに読み応えが在った。
主要視点人物の砂田は、警察に奉職し、所轄署の地域課巡査であった頃に時の首相、田中角栄の邸宅を警備する班に入った。強引に首相邸に押し入ろうとする酔漢と揉めて負傷し、病院に収容されたところに、「気配りの人」とされる首相の短い見舞を受けるという経験をした。その後、彼は公安部門の刑事となって行く。
そんな彼が担当した事件…ロッキード事件に関連する、日本国内に入り込んだ関係者の米国人を確保というような事案だった。そこを皮切りに、彼の“公安刑事”としての歩みが始まる。
本作の最初の方、ロッキード事件関連の事案に関する物語や、1980年代半ばの「東芝COCOM違反」というような事案に関する物語は、「話しとして聞いている…」という事柄に着想で想像の翼が羽ばたいている物語だ。が、それ以降の1991年頃、1994年から1995年頃、20001年頃というような様々な事案は「自身の人生の一部でもある時代…」ということで何やら前のめりに作中世界に入り込んでしまう面も在った。
「一介の公安刑事」として、時代を揺るがすかのような事案に「捜査関係者」として直接に関わる場合もあれば、色々と話しを耳にする縁者という立場で過ごす場合も、大きく揺れる歴史の中の傍観者的な個人として過ごす場合も在るであろう。そういう職務と、職務に関連して有する問題意識の他方に、個人の情や人生も在る。そういう様々な要素が巧みに織り交じった物語に仕上がっているのが本作だ。
終章に、何となくブームのようになっている田中角栄を取上げた本等に触れて、社会人になって日が浅かった頃に出遭った御本人や「“田中角栄”が在る時代」と「“田中角栄”が排された時代」とを比べながら想う場面が在る。そんな場面が秀逸であるとも思った。
思えば自身は本作の砂田よりもかなり若いということになるのだと思うが…それはそれとして色々と在った「幻影?」のような時代の連なりを駆け抜けて現在に至っているかのような想いを強くした。
なかなかに深い味わいが在る物語だ…
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月村了衛『東京輪舞』小学館文庫。
日本の裏面史で蠢く公安警察と数々の事件の背後を描いた警察大河ミステリー。ミステリーというよりも、昭和から平成という激動の時代の中で、誰よりも国を思い、真面目に生きた警察官の人生と叶わぬ恋を描いた長編小説であった。
敗戦から75年を過ぎてもなおアメリカに支配され続ける日本。日本の各地に治外封建の米軍基地が幅を利かせ、日本政府はアメリカの下僕であり続ける。政治や企業の腐敗と凶悪事件の日本近代史の裏に必ず見え隠れするのはアメリカやロシア、中国といった大国の影である。
田中角栄邸を警備していた主人公の警察官・砂田修作は公安へと異動し、時代を賑わす数々の事件と向き合って行くというのが本作の大筋。その中で砂田は警察という特異な巨大組織の派閥争いに巻き込まれ、容易に手に入れられたはずの幸せな生活すら失い、一介の老人として朽ちて行く……
1976年のロッキード事件。日本の高度経済成長期に起きたロッキード事件。確かに田中角栄が中国との関係を密にしたことでCIAにハメられたという説もある。ロッキード事件の周辺を探る砂田は美貌のKGB機関員のクラーラ・ルシーノワに手玉に取られる。
1986年の東芝のCOCOM違反事件。東芝と伊藤忠、通産省が絡んだ事件の背後で暗躍するKGBとCIA。再びクラーラ・ルシーノワが砂田の前に姿を現す。
1991年のソ連崩壊。三度、砂田の前に姿を現したクラーラ・ルシーノワ。部下と結婚した砂田だったがクラーラへの思いを引きずり過ぎたために早々離婚していた。煮え切らない砂田に愛想を尽かすクラーラ。そして、砂田の元妻の公安復帰の陰にあるのは……
1994年の地下鉄サリン事件。確かにオウム真理教が武器購入のためにロシアと関係していたという報道があった。元々小さなヨガ教室に過ぎなかった集団が宗教団体となり、カルト化し、様々な事件を起こすとは思わなかった。
1995年の国松長官狙撃事件。オウムによる地下鉄サリン事件の後に起きた国松長官狙撃事件。犯人はオウムの関係者で地下鉄サリン事件の捜査を撹乱するための犯行だったとか、その後に犯人が名乗り出たりと紆余曲折した。その背後で警察組織の派閥争いがあったとは。砂田はKGBのクラーラ・ルシーノワと接触していたことを問題視され、左遷される。
2001年の金正男の不法入国事件。竹の塚署の警備課長に左遷された砂田は千葉県警に出向させられる。折しも、成田空港に金正男が不法入国するという情報が入る。
2018年。退職した砂田が見たものは……夢現の中で輪舞を踊る……
本体価格1,000円
★★★★★
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とても面白く 心打たれる小説 、主人公が特別 優れてる人間でないのも一つの魅力であり 出会う相手がまたそれぞれに個性のある人ばかり 特に ロシアの女スパイ とのやり取りはとても楽しく 、主人公の誠実さにほっこりさせられる、最後の出会いは思わず息を飲む
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過去のいろんな事件を調べながら読みました
すごい臨場感!
ガッツリ公安!
面白かったです。田中角栄さんが魅力的に感じました。
なんか 今、ニュースとか観てても いろいろ裏があるのかなぁと考えちゃいます^_^
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昭和から平成までの大事件を1人の公安警察官の目線で書かれている小説。
どこまでが事実か分からなくて面白いけど、これ面白いって言う人は年齢層高いのかな。
特に表の歴史しか知らなくて、オウム事件から拉致被害者が帰ってきたのが5人だけで、小泉首相のカードの切り方が鈍臭いまでの裏の歴史は強ちこんな感じやったんかもしれへんなーと言う気がする。
Posted by ブクログ
ロッキード、東芝ココム規制違反、ソヴィエト崩壊、地下鉄サリン、警察庁長官狙撃、金正男不法入国など、現実に起こった事件をベースに、明らかにされていない謎を、フィクションという形で解き明かすインテリジェンス小説。手嶋龍一が好きな人は楽しめると思う。
それぞれの事件を解決しようと奮闘する主人公砂田と、事件の度に虚実ないまぜで砂田の前に現れるソ連の工作員クラーラ、砂田の部下から妻、元妻、チヨダの一員となる眉墨、のうち特に女性2人が砂田を翻弄する描写に砂田と共に感情が振り回される感覚があった。
登場人物のキャラクターも味わい深く、また表面上しか知らなかった過去の事件の裏側とされる部分の追求も、フィクションと簡単に片付けられない説得力を感じた。
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ロッキード、東芝ココム不正、ゴルバチョフのペレストロイカ、そしてオウム真理教に神戸の大震災、北朝鮮。最初の二つはリアルではあまり覚えていないのだけれど、やはり昭和の大事件だから、記憶にはあるし、他の事件は本当にリアルで覚えてる。
日本という国は、そして平成と令和という時代は、それほどまでに、嘘と欺瞞に満ち満ちた時代であり、国なのだろうか。
一介の市井の民として生きる自分には、その時々の自分の思い出は、この本の主人公が辿った想いとはまたかなり似ても似つかないものだけど、その場面場面で、自分がその立場に置かれていたら、やっぱり、この主人公のように、立ち振る舞い、悩み、そして受け入れて、いたのだろうか。
一つ一つの事件の読後感はすっきりしないのだけど、最後はなぜか、妙に、ああ自分もこういう境地に達したいなと思える話だった。
Posted by ブクログ
面白い。久しぶりに一気読みの快感を味わいました。
一応どの事件もリアルタイムに接していて、その時の世の中の状況とかは分かっているので裏面史としても楽しめた。
登場する人物が皆濃くて、思考回路が自分とはかなりかけ離れているので正直ついていけないところもあった。
ここに描かれている警察組織が実態に近いなら私にはとても務まらない、 。
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2019年版このミステリーがすごい8位。警察官の砂田の1976年から2018年までの42年間の公安警察官としての半生記。日本全体を揺るがせた、ローキード事件、東芝ココム事件、地下鉄サリン事件、長官狙撃等、公安部門が関与した大事件を題材に砂田とロシアのスパイ、クラーラとのほろ苦い交流をからめた物語。この人の余韻を残すかきっぷりが、恋愛感情の表現にぴったり。多くを書かずに恋心を表現する技術は他の作品も含めてすきです。
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一気読みした。現代史で学んだ様々な事件の裏側(フィクションだけど)を、1人の警察官の人生を通して描いている。主人公だけでなく、出てくる登場人物それぞれが、人生において何を重んじて、その時々でどんな判断をするかが見どころ。クラーラとのなんとも言えない距離が、最後に清算される描写も素敵。
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昭和・平成の日本裏面史を「貫通」する公安警察小説!
かつて田中角栄邸を警備していた警察官・砂田修作は、公安へと異動し、時代を賑わす数々の事件と関わっていくことになる。
ロッキード、東芝COCOM、ソ連崩壊、地下鉄サリン、長官狙撃……。
それらの事件には、警察内の様々な思惑、腐敗、外部からの圧力などが複雑に絡み合っていた――。
史実をベースにした公安警察が舞台だが、実はロマンチックサスペンスだったりもする。これはこれで良かったです。
Posted by ブクログ
公安警察官の砂田修作が主人公、昭和から平成にかけての大事件に関わっていくというストーリー展開です。ロッキード事件から金正男の不正入国まで…そして退職後にこれまでの人生を振り返るというような内容になっています。
様々な歴史的な事件には、公安警察官になる前の、田中角栄を護ったことがその矜持として根底にあり、また元部下で元妻との関わりやKGBの機関員だったクラーラという女性とちょっぴり切ないラブストーリーという側面も持っています。
ちょっと長かったし、私にはちょっとピンとこなかった事件も多かったな…というのが正直な感想…実際にあった事件をテーマにしているので、もっとすべての事件に興味を持てたなら違った読後になったかもしれません。ラストは、私好みでした。
Posted by ブクログ
ロッキード事件やオウム真理教事件など、70年台から現在に至る犯罪史に基づいて展開される公安部外事課の警察とスパイとの戦いを描いた本書。
正義感だけでは務まらない警察の闇や、そこから透けて見える日本政府の闇、真実に近づくと上司に捜査を打ち切られるなど、色々と納得いかず悩む主人公が救われなさすぎて、これがリアルな警察の姿なのかもと思ってしまった。
また本書は、当時アメリカに与しない田中角栄という気骨ある首相がいたことを見直す良いキッカケとなった。
Posted by ブクログ
1976年のロッキード事件から2018年までの長い物語。公安の捜査、外国スパイとの攻防、そこに組織の論理や人間関係が絡み読み応えがあった。実際にあった事件をベースにしているので、リアリティがありドキドキしながら読み進めた。最後の『昭和と平成の幕が下りる』という一行が印象的だった。