月村了衛のレビュー一覧

  • 地上の楽園

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     一九五〇年代の在日朝鮮人の帰還事業で、日朝・日韓問題について書かれた本は小難しくて読者が少ない。戦後タブーとされてきた問題だからでしょう。

    「そもそも何故日本に朝鮮学校があるのですか?」なんて学校の先生に質問しても教えてくれない。差別問題が絡むからでしょう。この小説を読んだ人でさえ知らないんじゃないかな。

     孔仁学という少年は、朝鮮学校の中等部を卒業し、公立学校へと進学した。目的は、日本の大学で学びたいからだという。だから大学の受験資格が何としても必要だった。物語は日本人目線で書かれている本ではなくて、問題となっている地方の方たちの当初の物語の舞台になっており現実的です。長編小説ですが、問題の本質を戦前から戦後まで説明するとなると説明不足は否めない。戦後の朝鮮を「地上の天国」などという偽書を信じ帰国を勧めた仁学と、帰国した玄勇太が物語の最後にやろうとしたことが一筋縄ではいかないことは、今の日本の現状を鑑みればわかる。

    帯に、「今なお続く差別の源流と流転の果ての希望を濃密に描く」と書いている。
     久しぶりに興味深い本を読ませてもらったが、根が深くて苦しい!
     月村了衛氏の著書は、本質を鋭く抉るところに面白さがあると思う。

    上記には「地上の天国」と書きましたが、正しくは「38度線の北」です。

     僕が伝えたい事は、「あなたも読んでください」と言うことだけ。あとは原稿とキャプションに書きました。
    深掘りすると戦後政治の一端が見えてくる。

    帯の裏表紙には「差別も資因も、なくならないのか
    1959年大阪。在日朝鮮人への蔑みと暴力がはびこる街で、復興を遂げ平等を実現し「地上の楽園」と称される北朝鮮への「帰国運動」が過熱していた。高校生の孔仁学は、ヤクザの抗争に巻きこまれ窮地に立つ親友・玄勇太に「帰国」を勧める。
    北朝鮮行きを決めた勇太だったが、帰国船内の食事の貧弱さや寝床の汚さに、「楽園」への違和感を覚え始め・・・・・。」

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    2026年09月10日
  • 機龍警察 漆黒社会

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    シリーズのファンなので迷わず星五つ。過去のシリーズの中でも読み応えのある作品なので、初めての読者もきっと好評価になると思う。

    今回は中国黒社会大幹部の生い立ちに始まり、ある警部補の殉職を経て、最後はその大幹部操る機甲兵装と、警視庁龍機兵との戦いにつながる。結末はいかに。

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    2026年09月07日
  • 半暮刻

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    ここ15年ほどの日本で起きた事件や社会の闇を彷彿とさせる出来事を随所に織り込みながら、本当の悪とは一体何なのかを容赦なく突きつけてくる、ノンストップリアル小説。

    国の一大事業に群がる政界、財界、広告代理店。その下に幾重にも連なる中抜き会社、さらにその末端で搾取される零細企業。半グレやヤクザを介した金の流れ、ホストから風俗への斡旋まで、あらゆる欲望と利権が複雑に絡み合い、日本社会の暗部が次々と暴かれていく。

    悪に染まる者、悪から抜け出そうとする者、そして悪によって人生を壊される者。
    立場は違えど、誰もがこの悪の構造から逃れられない。


    人間には、誰かを傷つけたり、貶めたりする心がある。ほんの気まぐれや嫉妬、優越感から誰かを踏みつけてしまうこともある。

    しかし、明確な悪人ではなく、自分が悪だと認識していない人間こそ、本当の意味で恐ろしい。

    犯罪ではない、間違っていない、誰だってやっている。
    そうやって一つひとつの行為を正当化していくうちに、善悪の境界線は少しずつ崩れていく。

    成功体験ですら、人を正しい方向へ導くとは限らない。
    努力が報われる。人から認められる。自分の判断で人や時代を動かせる。
    そんな経験を積み重ねるほど、自分は間違っていないという確信は強くなり、自分の価値観こそが正しいという錯覚を育ててしまう。

    その自信が、やがて他人の声を聞かなくなる傲慢さに変わり、間違いを間違いだと認識できなくなったとき、人は自ら破滅へ向かうのだ。

    悪人にならないこと以上に、自分は正しいと思い込みすぎないことの重要性。
    本当に恐ろしい悪は、分かりやすい顔をして近づいてくるとは限らない。自分の中にもある小さな傲慢さや、誰かを見下す気持ちを見過ごしてはいけない。

    悪とは、自分は悪くないと思った瞬間から、誰の中にも芽を出すもの。それを絶対に忘れたくないと思った。

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    2026年09月05日
  • テロル

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    現在の日本の問題を、30代の弱者男性視点で描かれているので、暗い気持ちになり、心にモヤモヤが残る。子供たちに明るい未来を語ることは無理なんでしょうか?

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    2026年09月05日
  • 機龍警察 火宅

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    ネタバレ

    各登場人物たちの物語を補完する短編集。
    これを読んで由起谷がますます好きになった。
    ようやくこのシリーズで好きなキャラクターに出会えた気がする。
    宮近のサラリーマンは大変すぎる話もよかった。ラストにほっこりするし、めっちゃ王道なお父さんな話になってて笑う。中間管理職ってまじ大変なんすね。

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    2026年08月31日
  • 機龍警察 未亡旅団

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    ネタバレ

    シリーズの中ではこれが1番面白かった。
    テロ組織のしかも少年兵プラス自爆テロと最悪な敵との戦い。
    今作で大活躍する由起谷のおかげで物語がどんどん面白くなる。
    誘拐からの車ぶら下がりに連なるアクションの荒唐無稽感がたまらんかったです。こういうのもっとほしいなぁ!

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    2026年08月31日
  • 機龍警察 漆黒社会

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     ノワール版「機動警察パトレーバー」と勝手に呼んでいる本シリーズだが、帯にシリーズ第一部完結編とある。

     今作では、国際人身売買と国産機甲兵装開発に関わる闇が描かれる。そして、主要登場人物の一人が退場する。またそのことが、他の人物が闇落ち寸前から「踏ん張る」ことにつながる。

     このシリーズの特徴として、登場人物の生い立ちや背景が詳しく描かれることがあげられる。しかし、最重要人物である特捜部長の沖津旬一郎については、いまだ詳しく描かれていない。第二部では、<敵>の正体とともに明らかになるのだろうか。

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    2026年08月30日
  • 東京輪舞

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    もっと評価されて良い作品だと思う。
    精微な時代考察と公安事案の余白をフィクションで埋めていく手法は秀逸。

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    2026年08月26日
  • 半暮刻

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    生き方が正反対な2人が一緒に行動をともにし、様々な場面の描写にリアリティがあり最後まで物語に引き込まれる。実際にあった社会問題や事件を思いださせ、日本の現状や縮図が伝わってくる一冊!他の作品も読みたくなりました。

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    2026年08月24日
  • 機龍警察 漆黒社会

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    久しぶりの機龍警察シリーズ第7弾。4・5年ぶり?やはり、月村作品の代名詞のシリーズだけあって、やっぱりぶっちぎりに面白い。川瀬七緒の「法医昆虫学捜査官」シリーズと同じ位、終わってほしくないシリーズ。

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    2026年08月24日
  • 機龍警察 自爆条項〔完全版〕 下

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    ネタバレ

    解説にあるとおり、趣き自体は、ディーヴァーのリンカーンもののような格好良さがある。格闘シーンは貧困イメージ爺には追い付けずのトホホだけど骨太のストーリーは読者を迷わず見事なラストに連れていく。本作は、女性テロリストの過去と現在にフォーカスし、アイルランド情勢を結節点として進められる。その女性に関連するテロで家族を殺された技術班の捜査官とが絶妙な状態で絡んでいきクライマックスに駆け上がる流れはすごく緊迫感を伴って最高の展開だった。脇を固めるキャラも特徴があり素晴らしい。すっかりこのシリーズの虜となっている。

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    2026年08月24日
  • 普通の底

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    ヤミバイトで殺人事件おこし死刑になる話。ものすごくあと味がわるい。でも、これって真実に近い物語なのだろうな~奨学金の話も確かにうなづける助ける筈の借入が地獄の始まりなんて援助じゃなくて地獄への誘惑じゃないか?社会人なりたてで月々4万円の返済は確かにきついだろうな?
    借りなければ学生活が成立しないのであれば仕方ない。あとは本人次第うまくやれってそれは無いだろう。

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    2026年08月23日
  • 地上の楽園

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    『地上の楽園』



    初めましての 月村了衛さん( ・᷄-・᷅ )



    本当は…


    『証言・北朝鮮帰国者』


    これを読んでみたいと思っていました。
    ひま師匠のレビューがなんか良くて…


    でもね…順番があるんですって( ͡ ͜ ͡ )


    まずは 『地上の楽園』が さきっ!ってね
    教えて貰いました‪(  ・᷄ ᴗ・᷅ )ゝ




    地上の楽園…

    その言葉だけ聞くと どんなに素敵な所なんだろう…と想像してしまう。 人種差別による貧困やイジメ…将来を夢見ることもできずにいる時に そんな 楽園 が あるなんて知ったら誰でも皆 行きたいって思ってしまうのではないかしら?
    自分たちの未来にも希望があるんだって
    大きな夢を描くんじゃないのだろうか?



    それが偽りだったとしたら…
    地上の楽園 どころか……
    希望を見出すこともできない 地獄だったら…



    手にとって読もうとは思わなかった
    北朝鮮という国が 正直 怖くて
    自分は 何も知ろうとしてこなかったなぁ……

    でも…
    今は 読んでよかったと感じます


    地上の楽園 なんかじゃなくって、
    劣悪な環境…なんて生易しいもんじゃないくらいの 地上の地獄 を 知り得ることができて…



    目を背けるのではなく
    現実に起こったことを
    知っていきたい


    それが辛いことでも
    きちんと学んでいこうと 思っています( ͡ ͜ ͡ )

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    2026年08月15日
  • 普通の底

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    一気読みしてしまうほど、引き込まれた。
    でも、読後に残ったのはずっしりとした重さ。
    「普通」のすぐそばにある、人間の怖さや社会の闇を突きつけられるような作品。

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    2026年08月15日
  • 機龍警察 漆黒社会

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    このシリーズはいつも面白い!
    途中、目を覆いたくなるような内容もあったが、これが現実でも人間の悪意、科学技術の発展の裏にもそうなる可能性があると思うと、読みならがも知的好奇心が抑えきれず一気に読み終えてしまった。
    主人公たちが使っている機体の技術ももしかすると、そういう犠牲の上にあると、考えの転換もおこる重要な作品だと思う。今後も読み続けられるよう生きていきたい。

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    2026年08月14日
  • 機龍警察 漆黒社会

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    待ちに待った5年ぶりの機龍警察シリーズ。前作のミャンマーの物語から数ヶ月しか経っていない設定。中国を徹底的な悪の権化として描いている。現実世界においても中国の臓器売買の噂は絶えないが、本作の中国は、臓器売買に加えて、子供の四肢を切断し機甲兵装の「部品」としているという設定。迫力ある戦闘シーンの描写は読み甲斐があるのだが、株式投資の話は単純化しすぎているのはご愛嬌。

    なお、このシリーズが始まったころには存在しなかったが、現実社会の戦闘ではすっかり兵器の主役となっているドローンとAIはこの物語には登場しない。今後の物語にこの2つの要素をどうやって取り込むのか興味あり。

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    2026年08月14日
  • 機龍警察 漆黒社会

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    待ってました機龍警察シリーズ。
    今回も相変わらず面白い!
    バトルシーンの迫力は勿論、沖津の悪魔じみた頭脳による緊縛感ある政府や関連省庁とのやり取り。機龍ファンには堪らないですね。
    本作では、關の過去や因縁が明らかになり物語のメインとなる人身売買に繋がっていきます。ファン財団、城州グリープ、「敵」などの各組織の構造やその目的も朧げながら判明していく中で機龍シリーズファンには衝撃的な展開が待ってます。
    そして、「龍の逆鱗に触れたのです」と、桂木さんカッコいい!

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    2026年08月13日
  • 虚の伽藍

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    ネタバレ

    京都を舞台に伝統仏教と裏社会の人間の欲望が描かれている
    宗教が利権にまみれているのは分かっていることだが、ここまでのスケール感と怖さまでは想像できていなかった
    もちろんフィクションではあるだろうが、リアルすぎて光景が目に浮かぶようであった
    人を救う、悟りをひらく、その境地を求めたのが主人公の僧侶であった
    一見、成功を掴んでいき、成長し、大きくなっていく傑出した人物だが、それ以上の闇を抱えることになった
    やはりこの作家は面白い
    人の欲望、愚かさをよく理解していると思う

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    2026年08月12日
  • 半暮刻

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    ネタバレ

    作中の翔太に影響されて、稚拙ながら人生初レビューです…笑

    海斗のような"グレーな人間"こそ"人間の真の邪悪"なのではないかというメッセージは、地域や歴史を問わず存在する"人間の醜さ"を的確に表現していると思います。
    自分ごとですが、私の身の回りにも「法で裁かれないことをしてなんで悪いの?」といった論調で、悪意を持たずして他者を傷つける人がいました。私は「なぜ悪いのか」を上手く伝えることができず、納得もされなかったため、今でも違和感と不快感が残っています。ラストシーンの翔太と海斗のやり取りには、当時の私達の会話に通じるものを感じました。
    "誰にも裁けない悪"を"悪"とも思わない人間に対する不快感や諦め。本作では、私達が普段の生活で確かに感じているにも関わらず、上手く言語化できない感情が描かれているように感じました。

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    2026年08月12日
  • 地上の楽園

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    もう凄絶すぎて言葉がない。北朝鮮帰還事業をめぐるこの世の地獄の絶望の物語。私が生まれる数年前のことなのに恥ずかしながらあまりよく知らなかった(実際のところこの本一冊だけ読んでも複雑な国家間の利権などもっと調べないと今ひとつ理解できないことはたくさんあるのだが)
    国家規模の詐欺、犯罪に一個人がどうやって巻き込まれずにいられたろう。嘘八百を並べた一冊の本に狂わされる大勢の運命。闘志と不屈の男、勇太だけが救い。とはいえ彼も騙されたとはいえ愚連隊のいざこざに巻き込まれて逃げるのにちょうどタイミングがよかった帰還事業ってことで自ら進んで北朝鮮に帰国したのだけど…日本で差別や貧困に晒される人々が楽園のような母国への帰国という甘い響きに吸い寄せられるのになんの不思議もない。
    これぞ作家の仕事。たくさんの人に読んでほしい。
    止むことのない戦火や現在も続く独裁者の暴虐に苦しむ人々が命がけで伝えてくれる言葉に耳を傾け、そして歴史をしっかり学ばなければ。彼らの命の意味とこれからの世界への希望の灯を消し去ってしまわないように。

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    2026年08月13日