あらすじ
差別も貧困も、なくならないのか?
今なお続く「在留外国人問題」に切り込む、慟哭必至の社会派巨編
在日朝鮮人帰還事業――
1959年に始まったそれは、人類史上最悪の「大量殺戮」への序章だった。
二人の若者がそれぞれ経験した「地獄」を描き、現代に通ずる差別の源流と、政治家・マスコミらが犯した大罪に迫る。
なんやおまえ、チョーセンやないけ――。
1959年大阪。在日朝鮮人への差別がはびこる街で、復興を遂げ平等を実現し「地上の楽園」と称される北朝鮮への「帰国運動」が過熱していた。
学問の道を志す高校生の孔仁学は、ヤクザの抗争に巻きこまれ窮地に立つ親友・玄勇太に「帰国」を勧める。
家族とともに北朝鮮へ行くことを決めた勇太だったが、帰国船内の食事の貧弱さや寝床の汚さに、「楽園」への違和感を覚え始め……。
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Posted by ブクログ
年末に借りたのですがなかなか読む気になれず、8日が返却日。
読みましたー。
はい。心して読みました。
私が知らない事だらけで、自分の無知さをこれまた呪いました。
朝鮮人への差別から始まる帰国運動。
大人の言葉を信じて賛同する高校生。
全てが、無知ゆえの…差別に耐えられず「地上の楽園」と信じて疑わない心からくる、善意。
良かれと思って帰国を勧め…。
作者は見事にエンタメとして小説に書き上げ、私達読者に知らせてくれました。
ただ、私はこの事実を上手く子ども達や夫に伝えられません。こんな出来事があったんだよとか、実際はこんな内情だったんだよ、って言っても本当の苦しみまでは伝わらないですよね。
だから読んでほしい。
読んで体感してほしい。
それくらい悲しい歴史がありました。
今も現在進行形で苦しい生活をしてる方もいるのでしょう。
私に出来ることって何だろう?
歴史を正しく認識する事だけでも進歩、だと思い無理矢理納得させてる感…。
ストーブの前でぬくぬくしながら読んでいる事が申し訳ないと思えた。
北朝鮮の寒さ、ひもじさは相当なものなのだろう。
長野の寒さがそれを少しだけ体験させてくれる。
あの国も、この国も、どうやったら変われるんだろう…
小泉純也…
あんたって人は…。
Posted by ブクログ
とにもかくにも第2部がよすぎます。
勇太が最高です。いい男です、ほんとに。かっこいい。
騙されて北朝鮮に住むことになるが、船に乗った瞬間からもう何もかもおかしいって全員が感じてるのが第1部とはぜんぜん違います。
村に送られるバスからもう最悪、バスのボロさ、車内の汚さ、風景を見た反応から勇太家族の絶望がわかります。
村に着いてからの生活は最悪すぎて、ここから先に希望がまったく見えないのが読んでて怖かった。勇太が結婚し、子供が生まれたからさすがにこれ以上悪いことは起きないか?と思えばそれよりさらにひどいことが起きるとは。
この2部を読んでいけたのは勇太という人のおかげ。彼以外の視点だとあまりにも希望がなくて読み進められなかった。
「俺らが裕福やて、どんな国やねん、ここは」勇太の言葉が子気味良い。
1部では仁学が隠岐みたいに人を騙す話。
途中、途中で違和感を覚えながらもそんなことはないと言い聞かせやり遂げます。
彼が終盤にようやくするべきことを見つけられたのは良かったのかな。
月村さんで北朝鮮なら脱北航路もあるし
関西弁で北朝鮮に行き脱北すると言えば国境ですよね!途中川で撃たれるとこも一緒やったし。
寺尾吾朗の本、小泉やったこと、仁学が言う今は小泉ブームなんだよ!が恐ろしかったですね。今となにが違うんって。
Posted by ブクログ
戦後、北朝鮮への帰還事業。歴史的事実を壮絶なひとつの物語として書き下ろしている。
あまりにも惨たらしい救いのない話だがページを進める手が止められずに一気読み。
Posted by ブクログ
★5 その日、その場所で何があったのか… 在日朝鮮人帰還事業の現実を綴る社会派小説 #地上の楽園
■あらすじ
戦後、高度成長期になる前の大阪。在日朝鮮人の学生である孔仁学は、同級生から日常的に差別を受けていた。友人の玄勇太は優しく頼りになる男であったが、素行が悪く将来の見通しは暗い。
そんな貧しく耐えがたい日々に思い悩んでいた仁学は、ある一冊の本に出会う――寺尾五郎『38度線の北』 そこには、祖国北朝鮮が「地上の楽園」として紹介されており…
■きっと読みたくなるレビュー
★5 もう何も言うことがありません、読んでおくべき作品です。
これまで報道では聞いたことがあったし、たくさん記事も読んできたし、脱北者のインタビューを聞いたこともある。そのたびに胸が痛んでいたのですが、本作も同様に心が張り裂けそうになりました。
本作は小説なので、まるで現場に居合わせたかのように体験できてしまう。その時代、その日、その場所で何があったのか、その時ひとはどれほど絶望を感じたのか。とても現実とは思えない内容をつぶさに記した悲しい物語です。
本作は主に二人の視点で展開する。まずは孔仁学を視点とした物語で始まり、彼が大阪で在日朝鮮人の帰還事業への関わりについて語られる。その後、友人の玄勇太が北朝鮮に帰国し、壮絶な体験をするのですが… 果たして彼らの運命はどうなるのか、という筋立て。
ここまで当時の日本や北朝鮮の実情を露骨に描いている物語を読んだことがなく、かなりショックを受けました。特に第二部ではディストピア小説ですかってくらいありえない。それでも月村了衛先生の力強い筆致に魅了され、もはや冒険小説を読んでるかのように引き込まれてしまいました。
さらにこの物語のエンディング、収束のさせ方も素晴らしかった。私が今この本を読んでいること、知る、学ぶ、考えるってことが大切なんです。ちっぽけでも、ひとりひとりの積み重ねが未来へとつなぐんだと思う。
何故こんなことになったのか? 複雑な経緯や事情があるのは理解できるんだけど、あらためて戦争ってのはどこまでも人を不幸にすると思った。
なお月村了衛先生は、拉致被害者の亡命を描いた『脱北航路』も書かれています。何かできないかという意識の高さに頭が下がります。我々も課題認識のメッセージを受け取らなければいけませんね。
■ぜっさん推しポイント
坂本九「上を向いて歩こう」。本書の中でも登場する昭和の名曲。
たとえ辛いことがあっても希望を繋いでいこう、という歌だと思います。
しかし「自由」がないと希望も未来もないのです。「自由」がないことの罪深さが痛いほどよくわかる。自分はどれほど恵まれているか、そしてこれから何をなすべきなのか、考えさせられる作品でした。
Posted by ブクログ
太平洋戦争後の在日朝鮮人の北朝鮮への帰還事業をテーマにした小説。
日本で差別された在日2世が、祖国北朝鮮へ還ったら、そこは地獄そのものだったという救いのない話。
壮絶、それしか表現できない。
Posted by ブクログ
日本在住の北朝鮮籍の人が『帰還事業』で1959年12月14日の第一次船から1984年まで約9万人、集団移住した話です。とにかく強烈な追体験ができます。3部立てとなっていて、1部は第一次帰還の前に、日本に住み帰還を勧めていた側の在日高校生の目線で語られます。この部分が一番話も進まないし、移住しても絶対に幸せにならない未来を私たちは知っている上、当時の非人道的な在日差別を追体験し、読むのが辛いです。
第2部は1部で語り手だった孔仁学の親友、勇太が体験していく、移住後の帰還者たちの暮らし。とにかくここが壮絶を極めているので、恐ろしいのに読む手を止められません。そして、短めの第3部は日韓共同開催ワールドカップの頃。
ニュースなどで聞き流していた「日本人妻」という言葉にこれ程の重みがあったとは…。今、どのくらい生きていらっしゃるのか。拉致被害者の帰国と同時に、日本人妻の帰国もなんとかしてあげて欲しい。帰還事業については、当時の政治では国に帰ってくれるのなら、一人一人の幸福なんてどうでも良かったのかもしれないけど、日本でも在日の人たちを最低な扱いをして送り出した、本当に大枠的な国益だけ考えた政策だったと思う。でも、今の我々はどうだろう?少しでもましになったのか?つい最近、外国籍の少女が性的奉仕をする施設で保護されたけど、多分たくさんの大人がそれを知っていたはず。
よく知って考えて、政治に参加する(個人の考えだけとしても)。ちゃんとできるようにやっぱり本をたくさん読もうと思った。
グロい表現あるのと、内容が政治に関わり難しいので中学生以上向け。基本は高校から。
Posted by ブクログ
大作です。
分厚い単行本でしたが一気に読み終えました。
夢と幸せのために、憧れの「地上の楽園」と称された北朝鮮への帰国、
船が到着した瞬間から地獄の生活が始まってしまう。
重くて苦しい物語。
月村了衛作品の中でもトップクラスの仕上がり。
評価が高いのにも納得です。
Posted by ブクログ
1959年から開始された北朝鮮への帰還運動による悲劇をめぐる在日朝鮮人の青年二人の物語。
日本国内での、在日朝鮮人に対する執拗ないじめ、勉学に励んだところで就職先もない、健康保険に入れないから病院にもかかれないなどの、絶望的な状況があったところへ、「地上の楽園」北朝鮮への帰還事業が始まった。
これには、朝鮮総連のみならず、共産党、社会党、自民党の超党派の議員、その上、マスコミもこぞってこの事業を賛美する。
優秀な高校生である孔仁学は、北朝鮮を礼賛する本に影響を受けた上、総連にそそのかされ、この運動にのめり込み、多くの人を北朝鮮に送り込むのだった。
あまりの悲惨さにページを捲る手が止まらず一気読み。
実在する人物名や団体もいろいろ出てくるが、圧力などなかったのか、心配になってくる。
このような小説を書いた筆者や、出版社に敬意を表したい。
Posted by ブクログ
重い、とにかく重い。
本作の感想を一言で言ってしまうとこうなりますが、『重い』という言葉だけで片付けられるような話ではありませんでした。
また、このような悲惨な事案に再び人々が巻き込まれるような事があってはならない、とかやはり差別はあってはならない、などと言ってもそれはどこまでいっても綺麗事でしかない、と思わずにはいられないほどに色々と考えさせられました。
今はまだ読み終わったばかりなので色々と思うところがありすぎてうまくまとめられないのですが、とにかくまずはこの本の末尾に列記されている参考文献をいくらかでも読んでいきたい、そして日朝の歴史についてわずかながらでも理解を深めたいと思いました。
Posted by ブクログ
帰還事業は、国家承認の拉致事件だったんですね。朝鮮は怖い国なのですね。とても、読むのがつらい物語でした。こんなにひどい国が存在するのでしょうか?フイックションとは言え、かなり現実に近いものでしょう?抑圧された人民は、なぜ、反旗を翻さないのでしょうか?なぜ、金王朝は3世代も続くのですか?本当の朝鮮の暮らしが知りたいものです。でも、地上の楽園でないことだけは間違いないようですね。
Posted by ブクログ
地上の楽園
あの頃、誰もがそこに夢を見た
あの頃、誰もがそこに憧れを抱いた
あの頃、誰もがそこに希望を求めた
日本での酷い差別に、苦しい生活に耐えれず、希望の楽園へ渡ったおよそ9万人の在日朝鮮人(日本人妻は約1800人)
今でこそ地上の楽園なんてものは偽り、そんなものは存在しないということは百も承知である
しかし、あの頃にはそんなことがわかるはずもない
差別のない、希望に溢れ、安定した夢のような生活
彼らはただそれをを求めて祖国へ向ったのだ
だが、希望の楽園へという偽りの国で彼を待ち受けていた真実とは!?
日本以上に厳しい差別が待っていた
その日その日の命をつなぐのが精一杯
まさにこの世の地獄のような世界
これを読めば「地上の地獄」を知ることができるであろう
まさに読むべき一冊である
Posted by ブクログ
自分の親戚も帰国運動で北朝鮮に行ってしまったので、「地上の楽園」という言葉は幼い頃から知っていて読まなければいけないと思い手にとった。フィクションと書かれているけれど事実と合っていることが多くてびっくりした。済州島→猪飼野→猪飼野/北朝鮮、親戚の1人も学校の先生だったということ、北朝鮮に渡ってから送られてきた切実にあれこれ送って欲しいという手紙まで全く一緒で猪飼野に残った家族達が心痛めていたことも聞いていたし、北朝鮮に行ってからの生活の描写は他人事でなく読むのが辛かった。本当にとんでもない国際犯罪だと思う。
Posted by ブクログ
『地上の楽園』はまやかしだった
差別が戦争を生み、戦争がまた新たな差別を生む
人はそんな歴史を何千年も繰り返してきた
そしてその悪循環を止められないのは、人間の持つ弱さなのか
だが、人類は「学ぶ」ことで、その弱さを乗り越え、強さを手に入れることができる
今度こそそれを信じたい
信じて「学ぶ」ことを始めよう
そして本当の『地上の楽園』を作り上げよう
月村了衛さんのそんな想いを感じた物語でした
必読の一冊
読んで学べ!( ゚д゚ )クワッ!!
Posted by ブクログ
1959年の大阪で、朝鮮学校の中等部を卒業した仁学は大学の受験資格を得るために公立高校へ進学したが、虐めや暴力、そして差別のなかで唯一の味方であった山崎先生から一冊の本を勧められる。
『38度線の北』を読み終えた仁学は、「地上の楽園」と称される北朝鮮への帰国運動に力を入れるようになる。
幼馴染の勇太が、ヤクザの抗争に巻き込まれたことで、勇太に「帰国」を勧める。
仁学が北朝鮮への帰国を勧めてからのその後を第一部に勇太が北朝鮮で経験したことを第二部として描かれている。
地上の楽園はまやかしだった。
十万人近くを地獄へ送る壮大な罠だった。
なのに、今日に至るも、責任を取るどころか、誰も謝罪すらしていない。
あったことすら忘れているのか…
誰も言わなければなかったことになってしまうのか…
自分の生まれる前のことだから知らないでは済まされないのでは…という気持ちになった。
隠蔽されることばかりだと何が真実かがわからなくなる。
他人事だと思わず勉強しなければならないと思った。
Posted by ブクログ
2025/09/25予約9
星5では足らない。
北朝鮮帰還事業、こういうことだったのか。不勉強でわからないことが多すぎて調べながら読み、第一部で孔仁学のつき進む方向がそっちじゃないのに頭がよく正義感に溢れた若者だったからか、そそのかされうまく使われてしまう。今読んでいる私たちは間違いがわかるが、当時は知識って本からあるいは信頼する人から得るもので、偏ってることがわからない。リアルタイムの情報も無く信じて北朝鮮に帰還(帰国)するなんて。第二部はとにかく辛い。金賢姫の手記を読んだ時の驚きがよみがえった。家族をみんな失ったのに脱北し生き続けた玄勇太、私の語彙力ではすごい、以上の事が言えないのがもどかしい。第三部で勇太は仁学を探し出す。そして新潟で別れた高の娘と共に真実を伝えるため書籍を日韓で刊行しようとする。
科学の発展は人の諍いを生んでしまった、確かにそれも思う。ネットだけでない真実を知らなければならないと強く思う。巻末の参考資料、読めるものは読んでみよう。
小説という形で歴史を知るきっかけを与えてくれて感謝です。
今年一番の本かも、おすすめです。
Posted by ブクログ
在日朝鮮人と北朝鮮帰還者の苦労と差別が
リアルに書かれていて心に刺さった。
それだけでなくどうすればギクシャクした両国の関係を改善できるのか具体的な案もあり勉強になりました。
Posted by ブクログ
北朝鮮への帰国に尽力した(してしまった)者と帰国した者、それぞれの地獄を描いた作品
どこまでが史実でどこまでがフィクションか分からないが、圧倒的な臨場感があった
こういう世界は体験したくはないが、読書を通じて少しでも知れてよかった
Posted by ブクログ
読み続けるのが非常に辛い小説だった。
自民党の小泉純也議員をはじめとして、マスコミまでが挙って北朝鮮を地上の楽園と賞賛するのだが、現代の知識でこの小説を読む読者にはあまりの欺瞞に憤然としてしまう。
在日朝鮮人を国策として官民で推し進め、朝鮮総連も自国に棄民として在日朝鮮人を送り込む。
以前は民間放送で北朝鮮と言わず、北朝鮮・朝鮮民主主義共和国。
と言い直していたのを思い出すのも、この小説によって喚起された。
地上の楽園とはあまりに皮肉で恐ろしい表現であった。
辛い小説だが読まなければならない一冊だった。
Posted by ブクログ
高市政権になり、拉致被害者問題が微かにだが動き出す可能性を感じる昨今、その根っこにある北朝鮮帰還事業の欺瞞と闇を、そして騙されて北朝鮮に渡った在日朝鮮人および日本人妻たちの生き地獄という言葉では生温いほどの無間地獄を、忘れさられることを強く拒否するような強烈な言霊を容赦なく読者に投げつける、月村氏渾身の大傑作。同胞を裏切り続けて地獄に送る様は、ある意味ホロコーストよりたちが悪く、スターリンや文化大革命の大粛清に匹敵する悪行であり、人間がどこまで悪になれるのかの見本市のよう。その無間地獄の生き残りが、それでも見出す希望とは、歴史を風化させないための言霊を後世に残すことだった。本年の、そして月村氏の最高傑作の一冊であり、問題作。今年絶対読むべき一冊。
Posted by ブクログ
分厚いのを1日で読んだ。色々な感想は誰かが密告するかもしれないからここには書かない。
小泉進次郎は読んだほうがいい。クリステルさんに読んでもらって教えてもらいなさいな。日本政府も悪いなー。
Posted by ブクログ
これは力作。
北朝鮮の帰国運動について知らない部分も多かったので自分の勉強不足を恥ずかしく思った。
地上の楽園と信じて帰国した人々が、どれだけ過酷な生活を強いられたのか。
私はたまたま生まれたのが日本だったけど、北朝鮮で生まれていたらどんな人生を送っていたんだろうと考えると怖くてたまらない。
Posted by ブクログ
朝鮮総聯の口車と高校の恩師の紹介で読んだ「38度線の北」に感化され、北朝鮮帰国事業に心身を捧げ、家族、知人に北への帰国を説いて回り、実の兄をも北に送った孔仁学だが、北での生活の悲惨な実態を知った帰国者の家族たちからその行いをなじられ、一家の生活は崩壊し、恩師は自ら命を絶つ。
愚連隊で人殺しに関わった仁学の友人玄勇太は、仁学の誘いに乗り第一次帰国船で母弟妹とともに北に渡るが、そこに待っていたのは大阪鶴橋猪狩野での朝鮮人差別を遥かに上回る帰国者(「帰胞」)差別と衣食にも事欠く貧困、筆舌に尽くし難い朝鮮当局者による弾圧だった。
作中、命からがらの脱北に成功し裏社会で生き永らえだ勇太が罪悪感に苛まれ日本各地を転々としながら隠棲していた仁学に書くことを求めた、送り出す側と渡った側からみた帰国事業の一部始終が本書には記されている。
作者がなぜこのタイミングで本書を書こうとしたのか動機は不明だが、1952年のサンフランシスコ条約で日本国籍を失い宙ぶらりんな存在となった在日朝鮮人への対処に困惑した日本政府、朝鮮戦争後の国力疲弊を背景に帰国者の受入れを拒否した韓国李承晩政権、共産主義の優位性を示すとともに資金、情報源として帰国者と家族を利用しようとした北朝鮮の金日成政権、(恐らく)人道的立場から帰国事業に協力した日本赤十字、悲惨な実態を知ってか知らずか「地上の楽園」という北の宣伝をそのまま報道した各新聞などの思惑が絡み合い始まったこの歴史的な非人道的事業は、最終的に1984年まで続いたという。
それにしても朝鮮総聯という組織の腐敗具合は今も昔も変わらない。
Posted by ブクログ
正月早々、素晴らしい本に出会えた。
こんなに厳しい二人の主人公の体験を考えると、
どんな事でも頑張れる。
人生って山あり谷ありって言うけど、この谷は強烈だ。
読後、自分はこんなに幸せなんだと、改めて思わせて
くれた。
とにかく凄い話しだ。
Posted by ブクログ
一気に読み終えた。
2人の在日コリアン男性を軸に、北朝鮮への帰還事業、その後の物語。
物語の序盤から現れるとある本や、その雰囲気は、旧ソ連に招かれた著名な作家たちのその後を思い起こさせ、日本人2人目のノーベル文学賞を受賞した作家がTVを見、「私には帰るべき北朝鮮がない」と涙したエピソードなどが脳裏に浮かんできた。
この数十年、政治家は話にならないとしても、いわゆるマスコミや進歩的文化人は一体、何をしてきたのだろう。何を無視し続けて来たのだろう。
拉致問題と帰還事業が密接に関わっている、作中のこの言葉が印象に残る。
当時と今、何か変わったのだろうか。
何も変わっていないのではないか、と唖然とする。
義憤と虚無が読後に残った。
Posted by ブクログ
ニュースで知っているつもりだったが、「地上の楽園」という幻の看板に騙され、送った側と送られた側の人間を小説を通して、その登場人物と共に楽園どころか生き地獄だったことを体感して、実際には何もわかっていないことを痛感した。
第二部で描かれた次々と人が…目を覆いたくなるような、でもページを捲る手が止まらない社会派だけでないエンタメ小説としての面白さにもグングン引き込まれた。
何よりも恐ろしいのは、
「流れに逆らうものを寄ってたかって叩こうとするのが日本人の国民性」
「拉致問題も帰国運動も根はひとつ…」
「薄々察知しながら、無視し続けた」
という政治家でありマスコミであり我々国民であるということだ。
「歴史を理解することが不可欠。学ばないものに未来は決して訪れない。」
ラストで生き残った者たちの責任と使命、そして「希望」こそが本書であると思う。