【感想・ネタバレ】地上の楽園のレビュー

あらすじ

差別も貧困も、なくならないのか?
今なお続く「在留外国人問題」に切り込む、慟哭必至の社会派巨編


在日朝鮮人帰還事業――
1959年に始まったそれは、人類史上最悪の「大量殺戮」への序章だった。
二人の若者がそれぞれ経験した「地獄」を描き、現代に通ずる差別の源流と、政治家・マスコミらが犯した大罪に迫る。



なんやおまえ、チョーセンやないけ――。
1959年大阪。在日朝鮮人への差別がはびこる街で、復興を遂げ平等を実現し「地上の楽園」と称される北朝鮮への「帰国運動」が過熱していた。
学問の道を志す高校生の孔仁学は、ヤクザの抗争に巻きこまれ窮地に立つ親友・玄勇太に「帰国」を勧める。
家族とともに北朝鮮へ行くことを決めた勇太だったが、帰国船内の食事の貧弱さや寝床の汚さに、「楽園」への違和感を覚え始め……。

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Posted by ブクログ

在日朝鮮人帰還事業。1959年に始まったそれは、人類史上最悪の「大量殺戮」への序章だった。大阪に暮らす二人の若者、孔仁学と玄勇太が経験する「地獄」を通して、日本人の差別感情と、政府・マスコミらが犯した大罪に迫った社会派小説。

4冊目となる月村さんの作品はやはり裏切らなかった。一気読み!フィクションと承知しながらも、実在する本や人物、知った政治家などの名前が出て来ると、今更ながらそういうことだったのかと思わされる。そして、主人公達と同時代を生きてきた自分が何も知らないことに愕然となる。拉致被害に遭った日本人がタラップを降りて帰って来たテレビ映像もだぶった。
第一部での主人公・仁学の視点で進むと思いきや、第二部は仁学の勧めで帰還船に乗船した親友・勇太の北朝鮮へ上陸後の想像を絶する過酷な暮らしぶりが描かれていた。終幕の章で年を重ねた彼らは再び日本で出会い「希望」を見出そうと動き出した。歴史上実際にあった「北朝鮮帰還事業」の真実を暴き世界に知らしめるのだ。
学校の授業で教えられないのは当然だろう。結果的には政治家や著名人、マスコミも片棒を担いでしまったのだ。歴史に埋もれた人らの苦悩が胸に迫る渾身の一冊だった。
一人でも多くの人に読んで欲しい。

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2026年02月19日

Posted by ブクログ

 先月、東京地裁が「国家的施策として事実と異なる情報を流布して原告らを誤信させ渡航させた」として北朝鮮政府に対して脱北者4人に賠償命じる判決出したばかり。この時も、「情報を流布した」マスコミと日本政府は頬かぶりしたまま。歴史を掘り下げ、謙虚に学ぼうという姿勢は微塵もなし。「差別を逃れて帰国したつもりが、祖国は日本以上に厳しい差別が待っていた」キタのくだりはおぞましいできごとオンパレードに目を背けたくなるが勇太の行動になんとか救われる。また、おかしい事はおかしいとハッキリ言う山崎先生「大事なんは人々が差別のない社会に幸せに生活できること」にも。ただ、今また世界中で壁が築かれ始めている。本当に同じ過ちを何度も繰り返す人間…暗い小説だけど、最後に少しだけ希望が見えた。最近、月村さん社会派の重たいテーマばかり。フィクションと断りながら政治家やら実名バンバン。大丈夫か。エール贈りたい。

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2026年02月18日

Posted by ブクログ

読み終えて大きなため息がこぼれました。
とてつもない物を読んでしまった‥‥
在日朝鮮人帰還事業。
北朝鮮は地上の楽園だと書かれた本を読んで、皆に帰国を勧める仁学と、仁学を信じて帰国した勇太。
勇太を始め、帰国した者たちの想像を絶する生活。あまりの悲惨さに生気を失い虚な目で生活する人々。読んでいて、後半は何も感じなくなってきていている自分に気付く。脳が考えることを拒否しているのが分かる。きっと帰国した人たちも同じ感覚だったんだろうと思う。
知らないというのは恐ろしいことだと気付きます。日本と朝鮮との歴史をきちんと学んでいなかった自分をはっきりと自覚しました。
でも、本書で“地上の楽園”と書かれた本を信じ込んで行動した人々のことを思い出すと、本書を読んだあなた、あなたもこの本だけを信じるのですか?と月村了衛さんに問い正されているような気分にもなります。自分の目で見て自分の頭で考えなさいと言われているような気がします。
それにしても、ここまでタブーに切り込んでいいのか?と心配すらしてしまう本書。個人的には読めてとても良かったと思える一冊でした。

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2026年02月16日

Posted by ブクログ

読み終えて、自分は今作を読まなければいけなかったのだと思った。小説でありながら、真実に肉薄するこの文章が、自分には必要だったのだ。

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2026年02月11日

Posted by ブクログ

言葉では知っていたけど、その実態は知らなかった、在日朝鮮人の帰還事業。途中、辛すぎて読むのがきつかったけれど、歴史を知らなければ、そして忘れないようにしなければ。今のこの時代の危うさも感じさせてくれ、それでも最後は希望の欠片を感じられる良作でした。

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2026年02月02日

Posted by ブクログ

この本は日本人の課題図書にすべきだと思う。
朝鮮半島と日本の歴史、国際関係と政治、北朝鮮拉致被害者問題、人間としての道徳…ノンフィクションに限りなく近いフィクションとして書かれた物語。
かっての北朝鮮を「地上の楽園」と称して日本から送り出した人々の1人として登場する第一部の孔仁学、愚連隊で日本から逃げ出し北朝鮮へ渡った第二部の玄勇太はかって親友同士だった。
2人の歩んだ地獄の様な日々は誰の責任か!?
それを問うべく第三話で成り立つ物語。
かって「帰国運動」とはやされて北朝鮮へ渡った9万人以上。その根底には日本政府としてお金のかかる貧困外国人を追い出す目的もあったという。
その片棒を担いだ「地上の楽園」の作者や政府の代表だった小泉純也は小泉進次郎の祖父でもある。
拉致被害者帰国を助けた小泉純一郎は多少の償いの気持ちがあったのかと邪推してしまう。
朝鮮半島の南北問題、日本との軋轢、やはり歴史は学ばなくてはならない。

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2026年01月26日

Posted by ブクログ

年末に借りたのですがなかなか読む気になれず、8日が返却日。

読みましたー。

はい。心して読みました。

私が知らない事だらけで、自分の無知さをこれまた呪いました。

朝鮮人への差別から始まる帰国運動。
大人の言葉を信じて賛同する高校生。
全てが、無知ゆえの…差別に耐えられず「地上の楽園」と信じて疑わない心からくる、善意。
良かれと思って帰国を勧め…。

作者は見事にエンタメとして小説に書き上げ、私達読者に知らせてくれました。

ただ、私はこの事実を上手く子ども達や夫に伝えられません。こんな出来事があったんだよとか、実際はこんな内情だったんだよ、って言っても本当の苦しみまでは伝わらないですよね。
だから読んでほしい。
読んで体感してほしい。

それくらい悲しい歴史がありました。

今も現在進行形で苦しい生活をしてる方もいるのでしょう。

私に出来ることって何だろう?

歴史を正しく認識する事だけでも進歩、だと思い無理矢理納得させてる感…。



ストーブの前でぬくぬくしながら読んでいる事が申し訳ないと思えた。
北朝鮮の寒さ、ひもじさは相当なものなのだろう。
長野の寒さがそれを少しだけ体験させてくれる。


あの国も、この国も、どうやったら変われるんだろう…

小泉純也…

あんたって人は…。


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2026年01月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

とにもかくにも第2部がよすぎます。
勇太が最高です。いい男です、ほんとに。かっこいい。
騙されて北朝鮮に住むことになるが、船に乗った瞬間からもう何もかもおかしいって全員が感じてるのが第1部とはぜんぜん違います。
村に送られるバスからもう最悪、バスのボロさ、車内の汚さ、風景を見た反応から勇太家族の絶望がわかります。
村に着いてからの生活は最悪すぎて、ここから先に希望がまったく見えないのが読んでて怖かった。勇太が結婚し、子供が生まれたからさすがにこれ以上悪いことは起きないか?と思えばそれよりさらにひどいことが起きるとは。
この2部を読んでいけたのは勇太という人のおかげ。彼以外の視点だとあまりにも希望がなくて読み進められなかった。
「俺らが裕福やて、どんな国やねん、ここは」勇太の言葉が子気味良い。

1部では仁学が隠岐みたいに人を騙す話。
途中、途中で違和感を覚えながらもそんなことはないと言い聞かせやり遂げます。
彼が終盤にようやくするべきことを見つけられたのは良かったのかな。

月村さんで北朝鮮なら脱北航路もあるし
関西弁で北朝鮮に行き脱北すると言えば国境ですよね!途中川で撃たれるとこも一緒やったし。
寺尾吾朗の本、小泉やったこと、仁学が言う今は小泉ブームなんだよ!が恐ろしかったですね。今となにが違うんって。

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2026年01月03日

Posted by ブクログ

戦後、北朝鮮への帰還事業。歴史的事実を壮絶なひとつの物語として書き下ろしている。
あまりにも惨たらしい救いのない話だがページを進める手が止められずに一気読み。

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2025年12月30日

Posted by ブクログ

★5 その日、その場所で何があったのか… 在日朝鮮人帰還事業の現実を綴る社会派小説 #地上の楽園

■あらすじ
戦後、高度成長期になる前の大阪。在日朝鮮人の学生である孔仁学は、同級生から日常的に差別を受けていた。友人の玄勇太は優しく頼りになる男であったが、素行が悪く将来の見通しは暗い。

そんな貧しく耐えがたい日々に思い悩んでいた仁学は、ある一冊の本に出会う――寺尾五郎『38度線の北』 そこには、祖国北朝鮮が「地上の楽園」として紹介されており…

■きっと読みたくなるレビュー
★5 もう何も言うことがありません、読んでおくべき作品です。

これまで報道では聞いたことがあったし、たくさん記事も読んできたし、脱北者のインタビューを聞いたこともある。そのたびに胸が痛んでいたのですが、本作も同様に心が張り裂けそうになりました。

本作は小説なので、まるで現場に居合わせたかのように体験できてしまう。その時代、その日、その場所で何があったのか、その時ひとはどれほど絶望を感じたのか。とても現実とは思えない内容をつぶさに記した悲しい物語です。

本作は主に二人の視点で展開する。まずは孔仁学を視点とした物語で始まり、彼が大阪で在日朝鮮人の帰還事業への関わりについて語られる。その後、友人の玄勇太が北朝鮮に帰国し、壮絶な体験をするのですが… 果たして彼らの運命はどうなるのか、という筋立て。

ここまで当時の日本や北朝鮮の実情を露骨に描いている物語を読んだことがなく、かなりショックを受けました。特に第二部ではディストピア小説ですかってくらいありえない。それでも月村了衛先生の力強い筆致に魅了され、もはや冒険小説を読んでるかのように引き込まれてしまいました。

さらにこの物語のエンディング、収束のさせ方も素晴らしかった。私が今この本を読んでいること、知る、学ぶ、考えるってことが大切なんです。ちっぽけでも、ひとりひとりの積み重ねが未来へとつなぐんだと思う。

何故こんなことになったのか? 複雑な経緯や事情があるのは理解できるんだけど、あらためて戦争ってのはどこまでも人を不幸にすると思った。

なお月村了衛先生は、拉致被害者の亡命を描いた『脱北航路』も書かれています。何かできないかという意識の高さに頭が下がります。我々も課題認識のメッセージを受け取らなければいけませんね。

■ぜっさん推しポイント
坂本九「上を向いて歩こう」。本書の中でも登場する昭和の名曲。

たとえ辛いことがあっても希望を繋いでいこう、という歌だと思います。

しかし「自由」がないと希望も未来もないのです。「自由」がないことの罪深さが痛いほどよくわかる。自分はどれほど恵まれているか、そしてこれから何をなすべきなのか、考えさせられる作品でした。

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2025年12月30日

Posted by ブクログ

太平洋戦争後の在日朝鮮人の北朝鮮への帰還事業をテーマにした小説。

日本で差別された在日2世が、祖国北朝鮮へ還ったら、そこは地獄そのものだったという救いのない話。

壮絶、それしか表現できない。

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2025年12月28日

Posted by ブクログ

日本在住の北朝鮮籍の人が『帰還事業』で1959年12月14日の第一次船から1984年まで約9万人、集団移住した話です。とにかく強烈な追体験ができます。3部立てとなっていて、1部は第一次帰還の前に、日本に住み帰還を勧めていた側の在日高校生の目線で語られます。この部分が一番話も進まないし、移住しても絶対に幸せにならない未来を私たちは知っている上、当時の非人道的な在日差別を追体験し、読むのが辛いです。
第2部は1部で語り手だった孔仁学の親友、勇太が体験していく、移住後の帰還者たちの暮らし。とにかくここが壮絶を極めているので、恐ろしいのに読む手を止められません。そして、短めの第3部は日韓共同開催ワールドカップの頃。
ニュースなどで聞き流していた「日本人妻」という言葉にこれ程の重みがあったとは…。今、どのくらい生きていらっしゃるのか。拉致被害者の帰国と同時に、日本人妻の帰国もなんとかしてあげて欲しい。帰還事業については、当時の政治では国に帰ってくれるのなら、一人一人の幸福なんてどうでも良かったのかもしれないけど、日本でも在日の人たちを最低な扱いをして送り出した、本当に大枠的な国益だけ考えた政策だったと思う。でも、今の我々はどうだろう?少しでもましになったのか?つい最近、外国籍の少女が性的奉仕をする施設で保護されたけど、多分たくさんの大人がそれを知っていたはず。
よく知って考えて、政治に参加する(個人の考えだけとしても)。ちゃんとできるようにやっぱり本をたくさん読もうと思った。
グロい表現あるのと、内容が政治に関わり難しいので中学生以上向け。基本は高校から。

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2025年12月19日

Posted by ブクログ

大作です。
分厚い単行本でしたが一気に読み終えました。
夢と幸せのために、憧れの「地上の楽園」と称された北朝鮮への帰国、
船が到着した瞬間から地獄の生活が始まってしまう。
重くて苦しい物語。
月村了衛作品の中でもトップクラスの仕上がり。
評価が高いのにも納得です。

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2025年12月16日

Posted by ブクログ

1959年から開始された北朝鮮への帰還運動による悲劇をめぐる在日朝鮮人の青年二人の物語。

日本国内での、在日朝鮮人に対する執拗ないじめ、勉学に励んだところで就職先もない、健康保険に入れないから病院にもかかれないなどの、絶望的な状況があったところへ、「地上の楽園」北朝鮮への帰還事業が始まった。
これには、朝鮮総連のみならず、共産党、社会党、自民党の超党派の議員、その上、マスコミもこぞってこの事業を賛美する。
優秀な高校生である孔仁学は、北朝鮮を礼賛する本に影響を受けた上、総連にそそのかされ、この運動にのめり込み、多くの人を北朝鮮に送り込むのだった。

あまりの悲惨さにページを捲る手が止まらず一気読み。
実在する人物名や団体もいろいろ出てくるが、圧力などなかったのか、心配になってくる。
このような小説を書いた筆者や、出版社に敬意を表したい。


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2025年12月16日

Posted by ブクログ

重い、とにかく重い。
本作の感想を一言で言ってしまうとこうなりますが、『重い』という言葉だけで片付けられるような話ではありませんでした。
また、このような悲惨な事案に再び人々が巻き込まれるような事があってはならない、とかやはり差別はあってはならない、などと言ってもそれはどこまでいっても綺麗事でしかない、と思わずにはいられないほどに色々と考えさせられました。
今はまだ読み終わったばかりなので色々と思うところがありすぎてうまくまとめられないのですが、とにかくまずはこの本の末尾に列記されている参考文献をいくらかでも読んでいきたい、そして日朝の歴史についてわずかながらでも理解を深めたいと思いました。

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2025年12月16日

Posted by ブクログ

帰還事業は、国家承認の拉致事件だったんですね。朝鮮は怖い国なのですね。とても、読むのがつらい物語でした。こんなにひどい国が存在するのでしょうか?フイックションとは言え、かなり現実に近いものでしょう?抑圧された人民は、なぜ、反旗を翻さないのでしょうか?なぜ、金王朝は3世代も続くのですか?本当の朝鮮の暮らしが知りたいものです。でも、地上の楽園でないことだけは間違いないようですね。

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2025年12月10日

Posted by ブクログ

地上の楽園

あの頃、誰もがそこに夢を見た

あの頃、誰もがそこに憧れを抱いた

あの頃、誰もがそこに希望を求めた

日本での酷い差別に、苦しい生活に耐えれず、希望の楽園へ渡ったおよそ9万人の在日朝鮮人(日本人妻は約1800人)


今でこそ地上の楽園なんてものは偽り、そんなものは存在しないということは百も承知である

しかし、あの頃にはそんなことがわかるはずもない
差別のない、希望に溢れ、安定した夢のような生活
彼らはただそれをを求めて祖国へ向ったのだ


だが、希望の楽園へという偽りの国で彼を待ち受けていた真実とは!?

日本以上に厳しい差別が待っていた
その日その日の命をつなぐのが精一杯
まさにこの世の地獄のような世界

これを読めば「地上の地獄」を知ることができるであろう

まさに読むべき一冊である

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2025年12月05日

Posted by ブクログ

『地上の楽園』はまやかしだった

差別が戦争を生み、戦争がまた新たな差別を生む
人はそんな歴史を何千年も繰り返してきた
そしてその悪循環を止められないのは、人間の持つ弱さなのか

だが、人類は「学ぶ」ことで、その弱さを乗り越え、強さを手に入れることができる
今度こそそれを信じたい
信じて「学ぶ」ことを始めよう

そして本当の『地上の楽園』を作り上げよう

月村了衛さんのそんな想いを感じた物語でした

必読の一冊

読んで学べ!( ゚д゚ )クワッ!!

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2025年11月25日

Posted by ブクログ

1959年の大阪で、朝鮮学校の中等部を卒業した仁学は大学の受験資格を得るために公立高校へ進学したが、虐めや暴力、そして差別のなかで唯一の味方であった山崎先生から一冊の本を勧められる。
『38度線の北』を読み終えた仁学は、「地上の楽園」と称される北朝鮮への帰国運動に力を入れるようになる。
幼馴染の勇太が、ヤクザの抗争に巻き込まれたことで、勇太に「帰国」を勧める。

仁学が北朝鮮への帰国を勧めてからのその後を第一部に勇太が北朝鮮で経験したことを第二部として描かれている。


地上の楽園はまやかしだった。
十万人近くを地獄へ送る壮大な罠だった。
なのに、今日に至るも、責任を取るどころか、誰も謝罪すらしていない。
あったことすら忘れているのか…
誰も言わなければなかったことになってしまうのか…


自分の生まれる前のことだから知らないでは済まされないのでは…という気持ちになった。
隠蔽されることばかりだと何が真実かがわからなくなる。
他人事だと思わず勉強しなければならないと思った。


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2025年11月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

2025/09/25予約9
星5では足らない。
北朝鮮帰還事業、こういうことだったのか。不勉強でわからないことが多すぎて調べながら読み、第一部で孔仁学のつき進む方向がそっちじゃないのに頭がよく正義感に溢れた若者だったからか、そそのかされうまく使われてしまう。今読んでいる私たちは間違いがわかるが、当時は知識って本からあるいは信頼する人から得るもので、偏ってることがわからない。リアルタイムの情報も無く信じて北朝鮮に帰還(帰国)するなんて。第二部はとにかく辛い。金賢姫の手記を読んだ時の驚きがよみがえった。家族をみんな失ったのに脱北し生き続けた玄勇太、私の語彙力ではすごい、以上の事が言えないのがもどかしい。第三部で勇太は仁学を探し出す。そして新潟で別れた高の娘と共に真実を伝えるため書籍を日韓で刊行しようとする。
科学の発展は人の諍いを生んでしまった、確かにそれも思う。ネットだけでない真実を知らなければならないと強く思う。巻末の参考資料、読めるものは読んでみよう。
小説という形で歴史を知るきっかけを与えてくれて感謝です。
今年一番の本かも、おすすめです。

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2025年11月17日

Posted by ブクログ

在日朝鮮人と北朝鮮帰還者の苦労と差別が
リアルに書かれていて心に刺さった。
それだけでなくどうすればギクシャクした両国の関係を改善できるのか具体的な案もあり勉強になりました。

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2025年11月17日

Posted by ブクログ

北朝鮮への帰国に尽力した(してしまった)者と帰国した者、それぞれの地獄を描いた作品
どこまでが史実でどこまでがフィクションか分からないが、圧倒的な臨場感があった
こういう世界は体験したくはないが、読書を通じて少しでも知れてよかった

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2025年11月15日

Posted by ブクログ

読み続けるのが非常に辛い小説だった。
自民党の小泉純也議員をはじめとして、マスコミまでが挙って北朝鮮を地上の楽園と賞賛するのだが、現代の知識でこの小説を読む読者にはあまりの欺瞞に憤然としてしまう。
在日朝鮮人を国策として官民で推し進め、朝鮮総連も自国に棄民として在日朝鮮人を送り込む。
以前は民間放送で北朝鮮と言わず、北朝鮮・朝鮮民主主義共和国。
と言い直していたのを思い出すのも、この小説によって喚起された。
地上の楽園とはあまりに皮肉で恐ろしい表現であった。
辛い小説だが読まなければならない一冊だった。

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2025年11月10日

Posted by ブクログ

分厚いのを1日で読んだ。色々な感想は誰かが密告するかもしれないからここには書かない。
小泉進次郎は読んだほうがいい。クリステルさんに読んでもらって教えてもらいなさいな。日本政府も悪いなー。

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2025年11月09日

Posted by ブクログ

ネタバレ

地上の楽園

著者:月村了衛
発行:2025年10月25日
中央公論新社
初出:『中央公論』2024年4月号~2025年4月号(連載)

今年の本屋大賞へのノミネート作品発表が、2月6日、今週の金曜日に発表になるが、候補になり、大賞を取ってもおかしくないほどの傑作だった。475ページの大作である点も、書店員好みと言える。ただし、ノミネート作品予想をいろんな人がしているが、この本を挙げた人は今のところ見つからない(^o^)。昨年中に読んでいれば、間違いなくナンバーワン本。

1960年から実際に始まった在日朝鮮人の朝鮮人民共和国への帰国。北朝鮮本国の公認で行われた朝鮮総連による「帰国運動」、日本政府が閣議了解した「北朝鮮帰還」により実現したが、日本の政界では、共産党や社会党のみならず、超党派による「在日朝鮮人帰国協力会」が支援した。中心人物は自民党の鳩山一郎と小泉純也らだった。「地上の楽園」との宣伝文句に騙された在日朝鮮人や日本人妻、子たちには地獄の生活が待っていたというのは、今さら言うまでもない。

本書の注釈では、その歴史の暗部に関して「歴史的経緯を踏まえて書かれたフィクション」としている。多くの人を騙した書籍類や新聞記事なども実名で登場し、小泉純也ほか人物もそのまま出てくる。第1部に出てくる「朝鮮人帰還事業意見交換会」という東京でのイベントは創作だとしているが、言葉を変えれば、あとはみんな実際にあったこと、つまりノンフィクションに近い本ともいえるわけである。そういう意味で、この問題に関する歴史の勉強にもなった。

なぜ、著者が、今のタイミングでこれを書こうと考えたのか?インタビューでも答えているが、この問題に関して誰も責任を取っていないではないか、ということを言いたかったようである。朝鮮半島の2つの政府は、北も南も独立してできたばかり、日本からの帰国者を受け入れる余裕などなかった。李承晩の独裁政権である南は、はっきりと拒否し、「北送」を批判した。一方の金日成独裁政権である北は、受け入れる気がないくせに受け入れを発表し、国際的に〝成功者〟であることを示す路線をとったが、実際はそうではなく、帰国者を殆ど人として扱わず、逆らうものは次々に銃で撃ち、奴隷のように働かせ、餓死や拷問死、衰弱死、自殺などでその数を減らしていった。「終章」にあるが、拉致問題も帰国運動も根はひとつ、ということ。本質は同じである。

そして、帰国運動は日本政府や政治家たちも支援した。超党派の組織を作ったが、その中心人物が小泉純也だった。一方、拉致問題解決の突破口を開いたと日本で大変な評価を得た政治家は、時の首相である小泉純一郎だった。2世議員が地獄へ在日朝鮮人を送り込み、3世議員であるその息子が拉致された日本人を連れ戻す。根が一つであるなら、親子で行ったマッチポンプとしか言いようがない。父親がしたことの責任は、一体、誰がとるのか?

もちろん、その前に、朝鮮半島への侵略や、大勢の朝鮮人を日本に連れて、苦難の生活を強いたのは誰か?その責任を誰もとっていないし、それを隠すために帰国運動の支援をしたのである。これが著者の一番言いたかった点であろう。

**********

第1部は大阪が舞台。孔仁学という在日朝鮮人の高校生が主人公で、北尾吾郎著『38度線の北』(新日本出版社)を読み、帰国運動の重要性を感じ、人に本を貸すなどして帰国を勧めるようになった。孔一家は貧しく、学校でも町でも職場でも、えげつない差別を受けて暮らす。ただ、仁学は勉強ができたため、公立高校へ行って大学進学を目指していた。兄、妹、弟がいたが、兄も工場で働きながらそれを心から応援していた。不安定な仕事しかない父親は、覚めた目でみていた。大学を出たって差別される社会では、ろくに仕事なんかない、という具合だった。

もちろん、仁学自身も将来は帰国を希望、一家揃って北朝鮮でやり直したいと考えていた。そんな活動や姿勢が朝鮮総連幹部の耳に入り、総連の手伝いをしないかとスカウトされた。高校生でありながら、東京のイベントに招かれ、大阪での自分たちの現状などをあるがままに堂々と訴えた。彼は一躍スターとなり、帰阪すると英雄のような扱いを受けた。総連大阪本部で働き、将来の幹部候補に。もちろん、近所でも有名になった。

そんななか、兄が工場内の自己で左手の指を4本落としてしまった。僅かなお金を渡されてクビになり、もう大学へは行かせられないと仁学に詫びた。仁学は大学をあきらめ、父親の仕事を手伝ってドブさらいなどをしていたが、いよいよ帰国の第1便が出ることになり、日本では仕事がなく生きていけない兄を一足先に帰国させようと提案、総連に頼み込んで船に乗せた。

さらに、幼馴染みの一人である玄勇太が、在日のヤクザ組織と結びついている愚連隊に入り、殺人の手伝いをさせられてしまい、警察にも組織にも狙われていることを知り、勇太も帰国させることにした。勇太も仁学から北朝鮮の話を聞き、本も読んで「地上の楽園」ぶりに感激し、大喜び、大感謝で船に乗り込んだ。

ところが、兄からは全くの梨のつぶて。帰国を勧めた人たちからも、同じ。しばらくしてやっと帰国者の親族から手紙が来たが、欲しいものはなんでもあり、食べ物もなんでもあって美味しいと、その「地上の楽園」ぶりを報告しているものの、食べ物や衣類、日用品を大量に送ってくれとも書かれている。さらに、現金も。これはきっと検閲を誤魔化すために嘘の文面を書いているに違いない、本当はとても大変な生活をしているのだ、と親族は見抜いた。なぜなら、書いてあることが嘘の場合に分かる暗号のようなものを事前に取り決めしていたからだった。
(本当の話なら「前略」「草々」、嘘なら「拝啓」「敬具」と書け、など)

そう言われた孔仁学は、最初は信じなかったが段々と疑い始め、総連幹部に確かめにいく。何度も食い下がり始めると、幹部たちは態度を急に変えて、仁学のことを反逆者呼ばわりし、総連から追い出し、痛い目にあわせようとしはじめる。さらに、在日の人たちからは、彼は総連の嘘の片棒を担いだという評価になり、暴力を含めた散々な目にあうことになる。仁学は心から玄勇太をはじめ、自分が帰国を勧めた人たちにお詫びをしたいと思い、殺して欲しいとさえ思い始めた。

ここで一部は終わり、2部となる。
2分の主人公は、玄勇太。
彼の地獄のような生活が描かれる。腕っ節が強く、体力があり、正義感に溢れる彼は、なんとか生きのびていき、帰国女性と結婚をし、娘も生まれる。幸せを感じ始めた矢先、彼は役人に目を付けられ、妻子と引き離されて管理所送りになる。もう、一生出られない。もちろん、妻子も殺されていることだろう。自暴自棄になった彼は、自らの命などまったく惜しくないと思って奴隷のような生活を送っていた。ところが、あることがあり、このまま死ぬのはだめだ、この実態を世界中に知らせようと決意する。そして、脱北をはかる。

銃で撃たれながらも、豆満江を越え、中国の朝鮮族村に。脱北成功。

3部は、2000年代の日本が舞台。
埼玉県八潮市に住む孔仁学、韓国の出先機関(裏の仕事をしている)で働いてきた玄勇太、やはり脱北に成功して企業経営者として大成功した女性・高美花(大阪出身で仁学や勇太も知っている)の3人が登場し、本書で言いたい一番の本質を露わにしつつ、この問題、この歴史に関する本の出版へと話を進めていく。すなわち、本書がそれに重なってくるわけである。

***********
(メモ)

【第1部】

孔仁学:公立高校2年、在日、総連系
孔英哲:仁学の兄、中学卒後眼鏡工場へ、
孔哲完:父
愛淑(あいしゅく):母
孔啓子:妹

安東初子:商業高校生、在日、民団系
安東義春:初子の父、猪飼野でサンダル工場経営、済州島出身、民団系
趙道永:北送阻止工作隊、趙道傑の息子

玄勇太(ヒョン・ヨンテ):仁学の幼馴染み、中学を出てパチンコ店員、父親はいない、母は明子、妹(千代)、弟(睦夫)
克江:勇太の叔母、ホルモン焼店経営

山崎孝男:高校の社会科教師、民主的
平井:高校3年時の学年主任、差別的
新井功治:同級生、在日
金山良和:同上
古橋:担任教師
島本:級長、父は大阪府警、大阪市立大学法学部へ
稲垣:同級生、差別的なやつ、

高在基:焼肉屋経営、2階を総連に貸す在日、一家で帰国へ
善姫(ぜんき):妻
美花:娘

徐漢中:総連大阪支部帰国運動推進部会
李雲煥:天王寺第二分会長
朴京必:支部長
梁(りょう)重光:東大阪委員長
鄭元康:東大阪副委員長
韓徳銖:総連中央委員会議長

木下:旋盤工場経営、オート三輪
崔孝美:町内会、仁学の母と同年代で仲良し
星岡:乾物屋
黄花:老婆、駄菓子の行商、総連も民団も日本も朝鮮も知ったことじゃないという処世術、初子の結婚を教えてくれた
具淳次:朝鮮学校時代の先輩、皮革加工(家業)、元不良、不良から一目
松畠秀世:松畠鉄工の倅、田丸会トップ?
安田道生:田丸会、仁学が38度線の北をあげた、背の低い少年
李広志:安田道生から38度線の北を借りる
金海:金和組
高山光:田丸会幹部、金海と大げんか、最終的に秀世とともに殺される


野上良江:日本人妻、川越出身、北へは行きたくない、墜死(清津市内の招待所から飛び降り自殺)

林宗勝:貿易会社(ナカヨド)経営、在日、「はやし」は通称で本名は「リン」、高在基の友人

・陣友会:在日朝鮮人の愚連隊が集まった暴力組織、鶴橋周辺が縄張りだがミナミにも進出
・田丸会:バックに陣友会、松畠鉄工がたまり場

・昭和22年に施行された外国人登録令により、在日朝鮮人は登録証明書の常時携帯が義務づけられた、その国籍等の欄には一様に「朝鮮」と記載された。この場合の「朝鮮」とは特定の国体を意味せず、便宜上の表記でしかない。
・昭和27年のサンフランシスコ講和条約の発効により、朝鮮戸籍登録者は正式に日本国籍を喪失した。ただし、外国人登録証明書の「朝鮮」表記を「韓国」または「大韓民国」へと変更することは可能であった。
・かつて「百済川」とも呼ばれていた「平野川」は、俊徳橋(生野区)北あたりから中本橋(東成区)あたりまで蛇行していたのでしばしば氾濫した。大正12年に改修されたが、その際に動員されたのが朝鮮人労働者。危険な重労働だったが極めて低賃金だっため、工費を安く抑えられたことが大阪市の報告書にも記されている。
・1959年12月4日、帰国第一次船出港10日前、新潟日赤センター爆破計画が発覚した


【第2部】

清田次郎:山川一家、川崎の愚連隊
曺大順(そうだいじゅん):清田の舎 *曺は曹の異字体(朝鮮半島の姓)
史(し)健二:曺の舎弟

白甲碩(ペクカプソク):茂山(ムサン)郡人民委員会事務所長
蔡昭男(チェソナム):学者志望
成妙子:帰国者、共同農場で働く、江東区枝川生まれ
成行祐(ソンヘンウ):妙子の父
喜美子:妙子の母、日本人、墨田区本所生まれ、共同農場で働く
閔碩柱(ミンソクチュ):妙子が出産した時の医師、妙子の実家の村で開業
香淑(ヒャンスク):その妻、同じく医師

英愛(ヨンエ):勇太と妙子の長女

任寧求(イムニョング):13号管理所の仲間、
申興烈(シンフンヨル):同上、管理所内の刑務所に入っていた


・核心階層
・動揺階層:最下層近く、帰国同胞
・敵対階層
*曾祖父の代まで遡る出身成分分析表に基づく選別(343P)

「帰胞(クィポ)」「在胞(チェポ)」
「パンチョッパリ」=半日本人、パン=半、チョッパリ=割れた蹄

・北朝鮮における「管理所」には「革命化区域」と「完全統制区域」があり、前者に入れられた者は、革命精神の教化が完了すれば(建前にすぎないが)釈放が認められることもある。しかし、体制、つまり金日成を批判した「政治犯」が収容される完全統制区域に釈放はない。死ぬまで罰を受けることになる。


【終幕】

兪萬薫(ユマヌン):中国の朝鮮族村にいる、訪ねた時は死亡していた
尚斗浩(サン・ドゥホ):兪萬薫の身内
裵岩伊(ペ・アミ):当時の韓国組織を仕切っていた大親分

許容極(ホ・ヨングク):蒼白初、LK商事社長(韓国の出先機関=企業舎弟)、日韓ワールドカップの利権調整

高美花:高在基の娘、脱北、韓国再王手の飲食店チェーン「サンノクス」経営、

孔仁学は、埼玉県八潮市の小さなアパートに住んでいる。

「あの時代の政治家は、要するに社会問題になっとった俺ら在日が邪魔やったんや。その問題を自分らで解決でけへんから、北朝鮮へやってしまえと。棄民政策ちゅうねん。その張本人の一人が小泉純也や」(仁学、425P)

「人々を分断する壁を建造する壁を文明がいつか打ち壊してくれる。私達はそう信じてやってきました。なのにその文明が、新たな壁を建造するのではないか。私にはそう思えてなりません。帰国運動と違うのは、この壁は政治家やマスコミによって作られたものではなく、人々が自ら作り上げるものであるという点です。この壁を壊すのは難しい」(美花、456P)

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2026年02月05日

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 北朝鮮帰還運動!この時代に生まれなくて良かったとつくづく思う。
 史実を忠実に描き切った作者に拍手。このような問題作を提示するとは恐れ入った。イヤミスとは違うが、ずっと重たい雰囲気のまま話は進んでいく。
 朝鮮戦争と日本の立ち位置など現在では窺い知れぬ歴史を小説の形で具現化した衝撃の問題作と言える

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2026年01月15日

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ネタバレ

本書は1959年から1967年にかけて行われた在日朝鮮人総聯合会(朝鮮総聯)による北朝鮮帰国運動をベースに書かれた小説である。
北朝鮮帰国運動は、在日朝鮮人とその家族を集団的に北朝鮮へ帰国させるための運動で、約9万3千人が永住帰国した。
日本社会でひどい民俗差別を受け、貧困生活を送っていた在日朝鮮人たちは、朝鮮総聯が、衣食住の心配のない「地上の楽園」と喧伝する北朝鮮での暮らしに夢を託した。
ところが、帰国した先に待ち受けていたのは、常軌を逸した強制重労働と非人間的生活環境だった。
彼らは、北朝鮮の社会主義体制のもと、「在胞」、「帰胞」として新たな差別を受け、思想教育や監視の対象になることもあり、絶えず、飢餓や処刑の恐怖に苛まれる地獄の苦しみを味わうことになった。
要するに、北朝鮮は、韓国に対する政治的優位性と無償の労働力を得んがため、人道主義を謳って、在日朝鮮人の帰還をぶち上げたのである。
対して、韓国は北朝鮮を非難しながら自国の出身者を受け入れようとしなかった。
「帰国運動」は、朝鮮戦争を根源にした国際社会の思惑によって演出された「死と流血の茶番劇」だったのである。
本書は、帰国に希望の光を見出し、熱情を抱いた若い二人の主人公を通して、彼らの夢がどのように踏みにじられ、どれほど深い絶望の淵に陥れられたかを濃密に描いている。
1959年、大阪鶴橋周辺で暮らす主人公ら在日朝鮮人の間では、「帰還運動」(日本政府は北朝鮮を国家として承認していなかったので「帰国運動」と呼ばなかった)が過熱していた。
学問の道を志し、公立高校で学ぶ孔仁学は、恩師の山崎先生が勧めてくれた寺尾五郎の著書「38度線の北」に感化され、帰還運動に次第に傾倒、総聯の活動に関与していく。
彼は、職場の事故でのケガで失職した兄やヤクザの抗争に巻き込まれた親友・勇太の一家を苦境から救おうとして、第一次帰還船に乗せる。
だが、その後、帰国者たちから「騙された」ことを暗に伝える知らせが次々と届く。
愕然とする仁学に対し、同胞は卑劣な売国奴として罵詈雑言を浴びせ、家族への嫌がらせが続く。恩師の山崎先生は責任を感じて自殺する。
大阪は仁学にとって「生き地獄」と化す。ここまでの話が第一部。
第二部では、もう一人の主人公・勇太が北朝鮮に帰還して味わう「死と隣り合わせの地獄」を描く。
わくわくしながら帰還船に乗り込んだ勇太は、船内の食事の貧弱さや寝床の汚さに違和感を覚え、着岸した港で出迎える人々の貧しい身なりを見て、ここは楽園ではないと気づく。
現地に降り立つと、自由に住んで働く場所を選べるはずが、強制連行、そして、社会の最下層としての差別、強制労働。
劣悪な住環境と食事で体力は奪われ、反動分子と見なされると公開処刑が待っている。
勇太の親族、新しい家族や仲間も次々と命を落としていく。
凄惨で衝撃的な描写が、これでもかというほど続き、さすがにうんざりしたが、著者は、彼ら帰国者の苦悩の重さをなんとしてでも強く訴えたかったのだろうと感じた。
最後は、年を重ねた二人が再会し、過去の問題に目を背けず、明らかにして追及することで拉致問題など現在の問題の解決につなげるべきだとの希望を見いだす結末となる。
小泉純一郎の父、純也が帰還運動の中心的役割を担ったこと、日本における民俗差別が北朝鮮への帰国を促す一因になったことなど、深い歴史的意義を知ることができた一冊だった。

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2026年01月16日

Posted by ブクログ

朝鮮総聯の口車と高校の恩師の紹介で読んだ「38度線の北」に感化され、北朝鮮帰国事業に心身を捧げ、家族、知人に北への帰国を説いて回り、実の兄をも北に送った孔仁学だが、北での生活の悲惨な実態を知った帰国者の家族たちからその行いをなじられ、一家の生活は崩壊し、恩師は自ら命を絶つ。

愚連隊で人殺しに関わった仁学の友人玄勇太は、仁学の誘いに乗り第一次帰国船で母弟妹とともに北に渡るが、そこに待っていたのは大阪鶴橋猪狩野での朝鮮人差別を遥かに上回る帰国者(「帰胞」)差別と衣食にも事欠く貧困、筆舌に尽くし難い朝鮮当局者による弾圧だった。

作中、命からがらの脱北に成功し裏社会で生き永らえだ勇太が罪悪感に苛まれ日本各地を転々としながら隠棲していた仁学に書くことを求めた、送り出す側と渡った側からみた帰国事業の一部始終が本書には記されている。

作者がなぜこのタイミングで本書を書こうとしたのか動機は不明だが、1952年のサンフランシスコ条約で日本国籍を失い宙ぶらりんな存在となった在日朝鮮人への対処に困惑した日本政府、朝鮮戦争後の国力疲弊を背景に帰国者の受入れを拒否した韓国李承晩政権、共産主義の優位性を示すとともに資金、情報源として帰国者と家族を利用しようとした北朝鮮の金日成政権、(恐らく)人道的立場から帰国事業に協力した日本赤十字、悲惨な実態を知ってか知らずか「地上の楽園」という北の宣伝をそのまま報道した各新聞などの思惑が絡み合い始まったこの歴史的な非人道的事業は、最終的に1984年まで続いたという。

それにしても朝鮮総聯という組織の腐敗具合は今も昔も変わらない。

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2026年01月10日

Posted by ブクログ

正月早々、素晴らしい本に出会えた。
こんなに厳しい二人の主人公の体験を考えると、
どんな事でも頑張れる。
人生って山あり谷ありって言うけど、この谷は強烈だ。
読後、自分はこんなに幸せなんだと、改めて思わせて
くれた。
とにかく凄い話しだ。

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2026年01月02日

Posted by ブクログ

一気に読み終えた。
2人の在日コリアン男性を軸に、北朝鮮への帰還事業、その後の物語。

物語の序盤から現れるとある本や、その雰囲気は、旧ソ連に招かれた著名な作家たちのその後を思い起こさせ、日本人2人目のノーベル文学賞を受賞した作家がTVを見、「私には帰るべき北朝鮮がない」と涙したエピソードなどが脳裏に浮かんできた。
この数十年、政治家は話にならないとしても、いわゆるマスコミや進歩的文化人は一体、何をしてきたのだろう。何を無視し続けて来たのだろう。

拉致問題と帰還事業が密接に関わっている、作中のこの言葉が印象に残る。

当時と今、何か変わったのだろうか。
何も変わっていないのではないか、と唖然とする。
義憤と虚無が読後に残った。

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2025年12月04日

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