【感想・ネタバレ】虚の伽藍のレビュー

あらすじ

日本仏教の最大宗派・燈念寺派で弱者の救済を志す若き僧侶・志方凌玄。バブル期の京都を支配していたのは、暴力団、フィクサー、財界重鎮に市役所職員……古都の金脈に群がる魑魅魍魎だった。腐敗した燈念寺派を正道に戻すため、あえて悪に身を投じる凌玄だが、金にまみれた求道の果てに待っていたのは――。圧巻の社会派巨編。

...続きを読む
\ レビュー投稿でポイントプレゼント / ※購入済みの作品が対象となります
レビューを書く

感情タグBEST3

Posted by ブクログ

仏教観とエンタテインメントが見事に融合して面白かった。
登場人物が全て個性的な人物で魅力的でした。
主人公の人心掌握術やレトリックを駆使した詭弁ともとれる交渉術などなかなか興味深いものがありました。
次々難題が降りかかり、それをどうやって回避するのか、最後まで先が気になる展開で一気に読めます。

0
2025年09月14日

Posted by ブクログ

お坊さんと、ヤクザが手を組む?!
どえええ、こんな世界あってたまるか!と思いますけど、だから面白んだよね( ^ω^ )
自分の寺を建て直すとはいえ、裏の世界に通じちゃうほどだなんて、よほど行き詰まってたんだろうねぇ。
いやでも、小説の話じゃなかったら、お寺に行って、「ご縁がありますように…!」って思って入れた5円玉はどこへ行くんだ!ってどうしても思ってしまって、参拝したくなくなるし…!
ちょうどいい汚れ方ってのがあるんだなあと、まあしみじみ。
めちゃおもろかった(^。^)

0
2025年09月01日

Posted by ブクログ

政治も宗教も、資金がないとのし上がれない。人々の為と言いながら、何処を見て金集めしてるのか?がらーんとしてるのがらーんは、伽藍からきてるとか聞いた事がある。タイトルの「虚の伽藍」なかなかいいね。

0
2025年08月30日

Posted by ブクログ

月村了衛・・・面白い。そういえばだいぶ前に土獏の花を読んで面白かった。
オーディブルできいたが了玄のいつも仏を信じて、そして力でねじ伏せていくのが痛快。僕は2/3くらいのところまででよかったようにも思う。後半は少し行き過ぎ。
京都の地上げの更地で地上げのひどさをみつつ、御仏のためには・・・と祥子にいう了玄がいい。

0
2025年08月15日

Posted by ブクログ

月村ワールド全開!!
凌玄が大妖怪に変貌していく様をおどろおどろしい仏教界の中で圧倒的な存在感として描いている。
政敵を喰らうだけでは飽き足らず、凌玄を引き入れてくれた和久良やヤクザまで喰らい利用するとは、、、
でも凌玄が一番凄いのは仏教を自分をマインドコントロールするように自分自身に酔いしれることができることではないかなと思ったりして恐ろしかった。
他の登場人物も和久良や氷室・地下二階など曲者ばかりだし、宗教の醜さをこれでもかと描いていて震えたね。
実際、今の坊主なんて職業坊主しかいないだろうから清廉さなんか必要ないんでしょう。
個人的には一番欲深い人種がなる職業だと思う。
地獄の沙汰も金次第とはよく言ったものとこの作品を読んでつくづく思う。

0
2025年08月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

騙す衆生系統の月村さん作品!
こんなんは大好物!
悪い奴らには京都弁が似合いますね。
表と裏を簡単に感じ取れる言葉ですよ。
読み終わったあとは京都弁使いまくりでした。


拷問に殺害に非道を尽くす主人公が
嫁と友達の奥さんとのいざこざにはタジタジで心底恐ろしいと思うところはアホっぽくて笑えました。
氷室がベストキャラクターですね、ソシオパス的な主人公を陰ながら応援し、真の理解者てきな立ち位置がめっちゃツボでした。
月村さんのこういう系統の主人公を読むと、いつもウォルターが脳裏をよぎります。

騙す衆生のアゲアゲラストより、終わりが虚しいのが少し残念ですが、これも十分面白かった!

0
2025年07月14日

Posted by ブクログ

素晴らしい取材力と構成。いつもおもしろいテーマを深掘りして知らない世界を見せてくれふ作家さん。坊主とヤクザが平成の終わりの裏でも表でも大暴れする話。

0
2025年07月08日

Posted by ブクログ

 宗教界とヤクザの世界、いかにもありそうな映画になりそうな小説でした。話は面白く、電車の友には最適です。
 でもなんでしょう?最後の一つの星をつけるほどではない?どうもよくわりません。

0
2025年11月18日

Posted by ブクログ

千年の村社会ーまさに京都の本質
うわぁ、すごいこと書くなぁ
“再開発“といえば、もう利権の取り合いで汚い金の奪い合いは当たり前と思っていたが、そこに高い志を持っていたはずの若い僧侶がずぶずぶと落ちていく
社会派かつ超エンターテイメントで面白かった

この作品が高校生直木賞だなんて、自分が高校生でこんな社会派小説読んでなかった
今の高校生恐るべし!

0
2025年09月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

凌玄という僧侶が燈念寺派のトップを目指す物語なのだが、そんな単純なものでもない。仏教の世界の権力争いと言えばそれまでだが、ヤクザも絡んで途轍もない話になる。ヤクザの抗争、友人の裏切り、そこに女の世界の掟も加わる。えげつない世界を見せてもらった。凌玄にとっては因果応報なところもあるが、なかなか世の中は上手く回っているとも言える。それが釈迦の教えなのかもしれないが、私には分からない。京都弁のセリフは慣れていないと読みにくいかもしれないが、個人的には京都の裏っ側を見事に表現していると思う。私には馴染みの言葉なので、気持ちの強弱を含めて強く心に描写された。

0
2025年09月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

《あらすじ》
時はバブル前夜。日本最大宗派燈念寺宗系末寺の跡取り息子凌玄は、実家の寺を立て直すために総本山の宗務を司る総局部門に入職し、幹部僧侶になるべく日々職務に励んでいた。
ある日、文部部長の空善から「売却予定の夜久野の整地現場に顔を出してこい」と立会を命じられた凌玄は、そこで地元の老人が、厳斗上人所縁のものであるからと仏堂の取り壊しに強く反対している姿を目撃する。
帰社後、凌玄はこの件を調べて空善や室長の潮寛に報告するが、実はこの2人は黒幕である統合役員暁常の元、お山の土地売却によって利鞘を得ようと企んでいた張本人たちであった。
2人は凌玄を懲罰にかけ宗門から追い出そうと画策するが、凌玄のバックに扇羽組若頭の最上と京都闇社会のフィクサー和久良がついたことにより、逆に悪事を暴かれ破門となる。
その後、一躍宗門のヒーロー的存在となった凌玄は同期の海照と共に順調に出世していくが、それを後押しし大掛かりな人事異動を決行したのが先の汚職事件の黒幕暁常であった。暁常は役職についた2人に責任を負わせて失墜させようと裏工作を企てる。別荘地開拓事業の株主に燈念寺役員幹部が名を連ねていることを逆手にとり、その別荘地山崩れの対応を怠った件で2人を追い込みにかかったのだ。
進退極まった凌玄は和久良に相談。最上の組の京大出身ヤクザ氷室が対応策をねり、凌玄は役員幹部を味方につけることに成功。逆に暁常がメキシコへと左遷されてしまう。
その後も凌玄は「御仏の心にかなうよう」「仏教のため」にも自身が出世すべく、闇社会の人脈を駆使して燈念寺の膿を出すという大義名分の元、着々と悪事に身を染めていくのだった…。
その後どんどん話と登場人物が入り乱れていくので、このあらすじはほんの序盤です。

《感想》
京都最大のアンタッチャブルともいうべき仏教界を題材にしたノワール小説。自身の大義名分の元、どんどん倫理観を失い悪事に身を染め大物になっていくという展開は『騙す衆生』と全く同じではあるが、どちらもハラハラドキドキ興奮しっぱなしで一気読みできる!
小説そのもののおもしろさとしては断然『騙す衆生』に軍配が上がるのだが、如何せん自分自身が京都出身であることや仏教・暴力団界隈にかなり関心が高いという個人的理由から、この『虚の伽藍』にはひとかたならぬ愛着を感じずにはおれなかった。
登場人物たちが京都市役所を「御池」と呼んでいることや、「京大人脈」がいかに京都の闇社会と深く結びついてるかという話、洛中では地元信用金庫シェア率が異常に高い話などにはついニヤニヤしてしまった。
あと、昭和60年代、「古都税」を巡って京都市役所と仏教界に確執が生まれたという話は初耳で、興味深かった。

0
2025年08月25日

Posted by ブクログ

ピカレスクやノワール小説をよく読む人にとってはわりと王道の内容かも。ヤクザやフィクサー、政治家(政治屋?)が企業を舞台に暗躍する話を宗教界で繰り広げるような話。ただこの主人公が小賢しいというか、言い訳ばかりで嫌な感じ。なので破滅を期待するのだが、なぜか憎めないのだ。個人的には冷徹なインテリが好みなのでヤクザの氷室がドンピシャなのだけれど、妖怪じみていながら人間くさい主人公凌玄にハラハラさせられ話にひきこまれる。凌玄と同じ滋賀の生まれで京都にも馴染みがある身としてはフィクションとはいえリアリティのある部分もあり、しかしリアルな故に魔界のような扱いの京の宗教界が可哀想でもあり……まあ大企業や大病院のトップ争いの亜種と思えばこれぐらい派手な事件がある方が面白いわけで、あくまで娯楽作品として読むものなのだろう。

0
2025年08月15日

Posted by ブクログ

面白かったー。これぞ、痛快ノワール小説。
主人公の凌玄は最初信心深く善良な僧侶なのだけど、少しずつ悪に染まっていく。
この悪に染まっていく度合いが半端じゃなくて、本当にもうただの悪なんですよね…人もバンバン殺すし。
良心に苦しむ場面は最初の方だけで、あとはもう一気に悪の道をひた走っていくのだけど、悪すぎてむしろ爽快感すらある。
正しいことをするには力が必要で、力を得るためには正義に相反する汚いこともしなければならない…というのは、この世界の偽らざる真実なのかもしれないけど、権力と金を手に入れると人は堕落するんですよね…。こういうのは仏教界に限らず、政治の世界でも同じだよなぁと思ったり。

0
2025年08月10日

Posted by ブクログ

仏教・ヤクザ・京都・地上げ。
登場人物の漢字が難しい(浅学ゆえ読めませんでした)けど、文章は読みやすくてするする読めた。
人が闇落ちしていく部分を描いているので、読み終えた後の感情はなんとも言えない微妙なものが残りました。

0
2025年07月22日

Posted by ブクログ

第12回高校生直木賞

「より多くの金をつかんだ者が京都を制する――最後に嗤うのは仏か鬼か」
「古都の金脈に群がる魑魅魍魎」

なんて面白そうな期待値の上がるフレーズ!
外で読むには表紙が激しくてちょっと恥ずかしいけど^^;

登場人物は曲者だらけで確かに魑魅魍魎。
凌玄の闇堕ちっぷりは途中からうんざりしてきて、面白いんだけど不快な気持ちだった。
お坊さんのイメージダウンにつながりそう。

ここまで極端ではないにしても、色んなつながりや闇取引きって一部ではあるんだろうな。
月村さんはいったいどこを取材して何を見てきたのかが気になるところ。

『虚の伽藍』ってタイトルが話の内容にぴったりで納得。

0
2025年07月14日

Posted by ブクログ

第172回直木賞候補作。
バブル期の京都。
主人公・志方凌玄(しかた りょうげん)は田舎の弱小寺院の子。仏教系の大学を出た後、伝統仏教最大宗派の1つである燈念寺(とうねんじ)総局部門の最末端、文書部に勤めている。
下っ端としてこき使われる日々。ふとしたことから、凌玄は寺の上役が不正に土地を売り、利益を手にしているのではないかと疑いを持つ。
そんな凌玄に近づいてきたのは、謎の紳士、和久良。どこが気に入ったのか、凌玄に入れ込み、何かと力を貸してくれる。どうやら京都では知る人ぞ知る「フィクサー」であるらしい。凌玄は、和久良の紹介の暴力団の力を借りつつ、上役の悪事を暴いていくことになる。僧侶が暴力団と結託するなどとんでもない、と最初こそひるむ凌玄だが、事態はどんどんと大きくなっていく。
何しろ燈念寺の内部には、人間の欲が渦巻いていたのだ。理想に燃える凌玄は、「仏敵」と戦うべく奮闘する。不正に関わる上役にはそのさらに上役がおり、そのバックには、当然のように、いかがわしい勢力がいる。和久良の伝手で、ヤクザばかりでなく、市役所の古株職員やら政財界の大物やらも巻き込みつつ、敵を次々に陥れる一方、凌玄は燈念寺派の頂点に向かって駆け上がっていく。若き日の志はそのままに、しかし、その手を真っ黒に染めながら。

一気呵成の犯罪ノワールなのだが、主人公が坊さんというところがキモである。
巨大宗教団体ともなれば、組織の常で確かに腐敗もあるだろうが、しかしそうはいっても清い理想はあったはずなのだ。俗人的にはどこかで自身もごまかしながら、折り合いをつけていくことになるのだろうが、凌玄はそうではない。心底、自分は宗祖の流れを汲むものであり、自身の理想を達成するために、多少汚いことをしてもそれは「方便」である、と信じているのだ。そこがおかしいようでもあり、恐ろしいようでもある。

町中の地上げ、京都駅周辺の都市開発、やがてバブルの崩壊を経て、サラリーマン金融の破綻。
現実の事件を織り込みつつ、また、実在の団体を強く想起させながら、物語は疾走する。敵・味方が交錯し、あるものは一敗地に塗れ、あるものは危機一髪で窮地を切り抜け、あるものは強制退場となる。
凌玄の行き着く先はどこなのか。

「虚の伽藍」。
タイトルが示唆するように、もちろん、これは、凌玄が、金も地位も名誉も、そして法悦もすべて手に入れ、ハッピーエンドで終わる話ではない。
彼が思い描く極楽浄土は、虚=偽りなのだ。
タイトルである種、手の内を晒しながら、凌玄が物語の終幕にどうたどり着くのか、一気に読ませて作者の剛腕を感じさせる。
最後の数ページで、凌玄の世界ががらがらと崩れ落ちる音に飲み込まれる。ノワールならではの読み心地である。

0
2025年06月09日

Posted by ブクログ

こういう本はハードボイルドと言うのだろうか、最近のんびりした本をよく読んでたのでハラハラドキドキ刺激的でした。
田舎寺の息子が京都の宗派の本山に入り、フィクサーやらヤクザやら何でもありでのし上がっていく話。
リアリティがあって本当にありそうに思えてくる。
面白かったです。

0
2025年11月30日

Posted by ブクログ

一部はすごく面白い。その反動か、二部は少し面白味がダウン。人生も小説も、ある程度の高みまでの行き方、道中が面白いのだろう。トップ争いは、坊さんでもサラリーマンでも、同じようなものかなと思った。

0
2025年11月25日

Posted by ブクログ

一部はキャラが立って良かったが、二部からキャラの個性がトーンダウンした感じ。二部はもっと、はしょれる文章に出来た印象、その上で三部くらい書いても良かったと思う。色んなキャラがあっけなくすぎるのはマイナス。

0
2025年11月11日

Posted by ブクログ

一介の僧侶が裏社会勢力を利用して教団のトップへ上り詰めるストーリー。月村了衛の他のノアール小説のように自らの機転で事態を解決するよりも、外部勢力の力で解決する場面が多く、あまりスッキリしない。作中で沢山描かれる教団の醜聞は、実際にも似たよう事あったのかと思わせられた。

0
2025年09月14日

Posted by ブクログ

主人公のお坊さんがどんどんブラックに染まっていく展開がスリルがあって
この人どこまで黒くなっていくんだろうと
ドキドキしました

金とヤクザが絡む組織の不正や権力闘争
それが僧侶の社会の出来事で
人間としてのいっそうの生々しさを感じました

自分の考えや行いを正当化する方法として
仏様を利用するのはとても危ういし気持ち悪い

どこかで絶対に罰が当たると思ってたら

最後 ヤクザ以上にブラックになって
頂点まで上り詰めた後に
それまでの自分自身を全否定し
自分自身の存在意義もなく
空っぽになってしまった

生きていても
生きていないと同じ

それこそが最大の罰でした
まさしく自業自得

昭和から平成にかけての時代の雰囲気も
感じることができました

0
2025年09月03日

Posted by ブクログ

仏教の蘊蓄のところは読み飛ばして、神聖な宗教世界の裏に蠢くドロドロしたところを中心に読んだ。いいヤツだったのにどのタイミングで踏み外してしまったのか見破れなかった

0
2025年08月06日

Posted by ブクログ

宗教界もヤクザも公務員も政治家も、みんな同じ穴のムジナ?若いときの理想や正義は、歳を重ねるごとに色褪せて、あげくの果てが、これなんて!

0
2025年08月04日

Posted by ブクログ

上層部の腐敗に義憤を抱き、自らが権力者に上り詰めることにより組織の浄化を図ろうとする理想を描く若い仏僧が、清濁併せ呑む中でいつしか権勢欲に執着し、理想を見失う。

社会のどこでも起こりそうな話だが、宗教界を舞台としているせいか余計に生臭さを感じる。

後半の主人公が俗物すぎて、やや興醒めする。
親友である海照との決別は序盤から予感があった。

0
2025年07月29日

Posted by ブクログ

京都の坊さん達が繰り広げる、仁義なきコンクラーベ

最高位を目指すライバル同士の奥さんが、この女狐、なんやとこの仏敵、と罵り合うシーンがありますが、"仏敵"って新鮮!

Kyoto’s monks stage a no-holds-barred conclave.

There’s a scene where the wives of two rival contenders for the top rank hurl barbed insults at each other—“You vixen!”, “What the heck are you?!”, even “You enemy of Buddha!”—and I thought “enemy of Buddha” was so fresh!

0
2025年07月28日

Posted by ブクログ

うーん、読み終わってスッキリはしなかった。
宗教団体も暴力団もなんだったらエラソーに怒鳴る警察も好きじゃないからかなー。最後には主人公の凌玄と同じような虚しさを感じた。
凌玄はとんとん拍子に偉くなったけど、それは背後にいる後ろ暗い人たちのおかげ。坊主の評価が声の良さや頭の形で決まる、と断言するのは面白かったけど。
こういう話はきっと現実にあるかもだけど、イマイチ入り込めなかった。

0
2025年07月10日

Posted by ブクログ

京都の仏教の一大勢力の寺の派閥争い、権力争いと汚職。滋賀の貧乏寺の子どもの夢見た仏への道が利権にまみれ、ヤクザと組んでの成り上がりへの道となっていく。京都の闇に蠢く裏社会、恐ろしい。

0
2025年07月04日

Posted by ブクログ

月村さんらしい超ノワール小説でした。

昭和末期から平成初期の京都が舞台。
日本仏教最大の燈念寺派に属する若き僧侶である凌玄が、腐敗した燈念寺派を改めるためにヤクザと手を結ぶ。当初は志を忘れずにいた凌玄だが出世の階段を駆け上がるうち、都合よく解釈した仏の教えを言い訳にカネと欲に身を落としていくー。

この小説を読んだとき、10年ほど前に結婚相談所勤務の知人が「男性はお坊さんが圧倒的に人気」だと話していたのを思い出しました。
理由を聞けば「お寺はお金があるから」。

反社が進んだ現代はともかく1980年台後半は暴力団と行政、宗教って何かしら繋がっていたのかもしれないと思ってしまう、そんな小説でした。

煩悩の恐ろしさを突きつけられました。
登場人物全員、欲深くて恐ろしい。
月村作品の中では「脱北航路」「土漠の花」に続いておもしろかったです。

0
2025年06月16日

Posted by ブクログ

うーん....私には合わなかったな。
主人公の凌玄の行いにただただ辟易とするばかり。こんな坊さんいるのかな?終わり方は納得。

0
2025年06月14日

Posted by ブクログ

先ず主人公が僧侶というのは初めてで新鮮だった。僧侶・凌玄は仏教最大宗派である燈念寺派の宗務院に勤務し、実家の寺を助けるために出世を目指していた。ある日、寺の所有する土地売却の立ち合いで、燈念寺派が二重帳簿を付けていることに気付き、そのことで宗派内の実力者ににらまれ窮地に追い込まれる。彼に手を差し伸べたのは、京都闇社会の実力者・和倉という男。
冒頭では確かに凌玄は改革を念じていたが危うさも匂わせていた。この危うさを彼に見出したフィクサーたちが操れる男だと狙い定めたのか? 凌玄が人を引き付けた魅力って何だったのだろう? 本書に「坊主に大切なのは意外にも頭の形と声」と書かれていて苦笑い。確かに人の上に立ち人心を操るには見目は重要だ。彼の読経する朗々とした声や剃髪した頭の形は左右対称で美しかったとある。仏教の教えを自分なりの流儀で解釈し、自分がやるすべては世の中のためになる布石としてぶれない強さを持っている。終いには、黒幕のヤクザの親分らにも、彼らがやる悪事はしいては人のためになり浄化され良き事と説法して、逆に巻き込み彼らを利用していく。冒頭から凌玄の末路は想像できたが、どこかで開眼するのではという期待を込め、一方ではそんなラストに追い詰められる過程を知りたくて一気に読んだ。京都の裏社会を牛耳るフィクサーらと手を組み、燈念寺派でのしあがっていく凌玄が愚かと切り捨てられない。実際に起きた仏像が隣国に盗まれ時を経て返還された事件や地上げ屋などの話は空言と一笑に伏せなかった。裏で資金源が欲しい暴力団やサラ金などでつながっていてもおかしくはない。現実味が増して空恐ろしくなった。凌玄が登り詰めて伝統仏教最大宗派の頂点をめぐる貫主選挙に挑む展開は、最近あった『教皇選挙』を思い起こされた。キリスト教であれ仏教であれ、宗教も行きつくところは所詮コンクラーベ”根比べ”なのだろうか。
美緒と佐登子の友情は元々なかったのは残念。もし凌玄が佐登子と結婚していたら、凌玄の目を覚ませたのか・・・。しかし、彼女は凌玄の親友だった海照を選び、それをずっと思い悩み悔い心を病んだのだった。

0
2025年06月16日

「小説」ランキング