あらすじ
日本仏教の最大宗派・燈念寺派で弱者の救済を志す若き僧侶・志方凌玄。バブル期の京都を支配していたのは、暴力団、フィクサー、財界重鎮に市役所職員……古都の金脈に群がる魑魅魍魎だった。腐敗した燈念寺派を正道に戻すため、あえて悪に身を投じる凌玄だが、金にまみれた求道の果てに待っていたのは――。圧巻の社会派巨編。
...続きを読む感情タグBEST3
このページにはネタバレを含むレビューが表示されています
Posted by ブクログ
騙す衆生系統の月村さん作品!
こんなんは大好物!
悪い奴らには京都弁が似合いますね。
表と裏を簡単に感じ取れる言葉ですよ。
読み終わったあとは京都弁使いまくりでした。
拷問に殺害に非道を尽くす主人公が
嫁と友達の奥さんとのいざこざにはタジタジで心底恐ろしいと思うところはアホっぽくて笑えました。
氷室がベストキャラクターですね、ソシオパス的な主人公を陰ながら応援し、真の理解者てきな立ち位置がめっちゃツボでした。
月村さんのこういう系統の主人公を読むと、いつもウォルターが脳裏をよぎります。
騙す衆生のアゲアゲラストより、終わりが虚しいのが少し残念ですが、これも十分面白かった!
Posted by ブクログ
いやー、好きだわー。
まさに月村作品って感じ。
鎌倉殿の13人の北条義時か。
はたまたSWのアナキン・スカイウォーカーか。
権力というのは恐ろしい。
Posted by ブクログ
凌玄という僧侶が燈念寺派のトップを目指す物語なのだが、そんな単純なものでもない。仏教の世界の権力争いと言えばそれまでだが、ヤクザも絡んで途轍もない話になる。ヤクザの抗争、友人の裏切り、そこに女の世界の掟も加わる。えげつない世界を見せてもらった。凌玄にとっては因果応報なところもあるが、なかなか世の中は上手く回っているとも言える。それが釈迦の教えなのかもしれないが、私には分からない。京都弁のセリフは慣れていないと読みにくいかもしれないが、個人的には京都の裏っ側を見事に表現していると思う。私には馴染みの言葉なので、気持ちの強弱を含めて強く心に描写された。
Posted by ブクログ
《あらすじ》
時はバブル前夜。日本最大宗派燈念寺宗系末寺の跡取り息子凌玄は、実家の寺を立て直すために総本山の宗務を司る総局部門に入職し、幹部僧侶になるべく日々職務に励んでいた。
ある日、文部部長の空善から「売却予定の夜久野の整地現場に顔を出してこい」と立会を命じられた凌玄は、そこで地元の老人が、厳斗上人所縁のものであるからと仏堂の取り壊しに強く反対している姿を目撃する。
帰社後、凌玄はこの件を調べて空善や室長の潮寛に報告するが、実はこの2人は黒幕である統合役員暁常の元、お山の土地売却によって利鞘を得ようと企んでいた張本人たちであった。
2人は凌玄を懲罰にかけ宗門から追い出そうと画策するが、凌玄のバックに扇羽組若頭の最上と京都闇社会のフィクサー和久良がついたことにより、逆に悪事を暴かれ破門となる。
その後、一躍宗門のヒーロー的存在となった凌玄は同期の海照と共に順調に出世していくが、それを後押しし大掛かりな人事異動を決行したのが先の汚職事件の黒幕暁常であった。暁常は役職についた2人に責任を負わせて失墜させようと裏工作を企てる。別荘地開拓事業の株主に燈念寺役員幹部が名を連ねていることを逆手にとり、その別荘地山崩れの対応を怠った件で2人を追い込みにかかったのだ。
進退極まった凌玄は和久良に相談。最上の組の京大出身ヤクザ氷室が対応策をねり、凌玄は役員幹部を味方につけることに成功。逆に暁常がメキシコへと左遷されてしまう。
その後も凌玄は「御仏の心にかなうよう」「仏教のため」にも自身が出世すべく、闇社会の人脈を駆使して燈念寺の膿を出すという大義名分の元、着々と悪事に身を染めていくのだった…。
その後どんどん話と登場人物が入り乱れていくので、このあらすじはほんの序盤です。
《感想》
京都最大のアンタッチャブルともいうべき仏教界を題材にしたノワール小説。自身の大義名分の元、どんどん倫理観を失い悪事に身を染め大物になっていくという展開は『騙す衆生』と全く同じではあるが、どちらもハラハラドキドキ興奮しっぱなしで一気読みできる!
小説そのもののおもしろさとしては断然『騙す衆生』に軍配が上がるのだが、如何せん自分自身が京都出身であることや仏教・暴力団界隈にかなり関心が高いという個人的理由から、この『虚の伽藍』にはひとかたならぬ愛着を感じずにはおれなかった。
登場人物たちが京都市役所を「御池」と呼んでいることや、「京大人脈」がいかに京都の闇社会と深く結びついてるかという話、洛中では地元信用金庫シェア率が異常に高い話などにはついニヤニヤしてしまった。
あと、昭和60年代、「古都税」を巡って京都市役所と仏教界に確執が生まれたという話は初耳で、興味深かった。