月村了衛のレビュー一覧
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ネタバレ《あらすじ》
時はバブル前夜。日本最大宗派燈念寺宗系末寺の跡取り息子凌玄は、実家の寺を立て直すために総本山の宗務を司る総局部門に入職し、幹部僧侶になるべく日々職務に励んでいた。
ある日、文部部長の空善から「売却予定の夜久野の整地現場に顔を出してこい」と立会を命じられた凌玄は、そこで地元の老人が、厳斗上人所縁のものであるからと仏堂の取り壊しに強く反対している姿を目撃する。
帰社後、凌玄はこの件を調べて空善や室長の潮寛に報告するが、実はこの2人は黒幕である統合役員暁常の元、お山の土地売却によって利鞘を得ようと企んでいた張本人たちであった。
2人は凌玄を懲罰にかけ宗門から追い出そうと画策するが、凌玄 -
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読書備忘録939号。
★★★★。
読んでてぜんっぜん!楽しくない!
メンタルを根こそぎ持っていかれる!
★5つは無理!
主人公の転がり落ちていく不幸が自分のこととして夢に出て来そう。
なんなら、既に家を出た息子とか娘の人生が破壊される可能性があるのでは?とうなされる・・・。
主人公の川辺優人。
どうやら誰かに手紙を書いている。
第一の手紙。
この世に生まれて普通に幼稚園に通い、普通に中学を卒業するまで。普通に。
第二の手紙。
高校から新卒で入社した教育コンテンツを手掛ける会社を退職するまで。
普通でいたいが為に高校でちょっと判断を誤る・・・。
さらに普通が良かったんじゃないの?と思わざる -
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ピカレスクやノワール小説をよく読む人にとってはわりと王道の内容かも。ヤクザやフィクサー、政治家(政治屋?)が企業を舞台に暗躍する話を宗教界で繰り広げるような話。ただこの主人公が小賢しいというか、言い訳ばかりで嫌な感じ。なので破滅を期待するのだが、なぜか憎めないのだ。個人的には冷徹なインテリが好みなのでヤクザの氷室がドンピシャなのだけれど、妖怪じみていながら人間くさい主人公凌玄にハラハラさせられ話にひきこまれる。凌玄と同じ滋賀の生まれで京都にも馴染みがある身としてはフィクションとはいえリアリティのある部分もあり、しかしリアルな故に魔界のような扱いの京の宗教界が可哀想でもあり……まあ大企業や大病院
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こ、これは…!!
読んでいる途中で、とある小説に雰囲気が似ていることに気づきました。
それは――太宰治の『人間失格』。
ものすごく似ている。現代版・人間失格と謳ってもいいかもしれません。
まず、手紙が三つに分けて書かれている点。
主人公・川辺優人の生い立ちが、時系列で三つに分けて描かれています。
そして、自分のことなのに、どこか他人事のように綴られていて、彼が本当はどう思い、何を考えていたのか、その実態がつかめないのです。
自分があるようでいて、ない。
倫理的にまずいことでも、他人の指示に従ってしまう。
そして、逃げない。逃げられない。
読み進めるほどに、主人公の輪郭がぼやけ、気分が悪くな -
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面白かったー。これぞ、痛快ノワール小説。
主人公の凌玄は最初信心深く善良な僧侶なのだけど、少しずつ悪に染まっていく。
この悪に染まっていく度合いが半端じゃなくて、本当にもうただの悪なんですよね…人もバンバン殺すし。
良心に苦しむ場面は最初の方だけで、あとはもう一気に悪の道をひた走っていくのだけど、悪すぎてむしろ爽快感すらある。
正しいことをするには力が必要で、力を得るためには正義に相反する汚いこともしなければならない…というのは、この世界の偽らざる真実なのかもしれないけど、権力と金を手に入れると人は堕落するんですよね…。こういうのは仏教界に限らず、政治の世界でも同じだよなぁと思ったり。 -
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『ただ普通でありたかった』
川辺優人は3通の手紙で自分の人生を幼少期より誰かに綴る。その生きざまは、よくあるけれど、表紙の男のように、何もないもので形作られているような生き方。突出してもいないし、劣ってもいない。むしろM大(明治、慶應は書いてあるのにGMARCH以下はアルファベット)卒なので、恵まれている方だと思う。はっきりいって、本人のやりたいことや目指したいもの、好きなものが全くなくて、読んでいて気持ち悪い。だから、読み心地良いものがいいのが好きな人には向きません。
目立たないようにしていて、時に悪いものにからめ捕られると、そこでも断りきれずに巻き込まれ、どんどん堕ちていく。確かに日本で3 -
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第12回高校生直木賞
「より多くの金をつかんだ者が京都を制する――最後に嗤うのは仏か鬼か」
「古都の金脈に群がる魑魅魍魎」
なんて面白そうな期待値の上がるフレーズ!
外で読むには表紙が激しくてちょっと恥ずかしいけど^^;
登場人物は曲者だらけで確かに魑魅魍魎。
凌玄の闇堕ちっぷりは途中からうんざりしてきて、面白いんだけど不快な気持ちだった。
お坊さんのイメージダウンにつながりそう。
ここまで極端ではないにしても、色んなつながりや闇取引きって一部ではあるんだろうな。
月村さんはいったいどこを取材して何を見てきたのかが気になるところ。
『虚の伽藍』ってタイトルが話の内容にぴったりで納得。 -
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女子大生夏芽の一年間の冒険譚というと作品のイメージがガラリと変わってしまいそうだが、最後まで読み切るとこの作品の主人公は間違いなく夏芽であり、その役割を真っ当している。作中、全てのキャラクター造形が際立っており、親友の紬以外はバックボーン含めて想像できる様な描き方がされている。それぞれの登場人物達は皆魅力的で、謎の老人である鳴滝も、彼の知人である剛田も、夏芽の大学の教授である榊も、まるで彼らが登場する作品を過去にみてきたかの様に生き生きとしている。
一点残念な部分があり、表紙に夏芽と鳴滝の姿が描かれている点で、時に鳴滝についてはミステリアスな要素を残しながら、読者に人物を想像させて欲しかっ -
Posted by ブクログ
「虚の伽藍」で著者の存在を知り、本作はまったく違った雰囲気を醸し出しているので手に取ってみました。
表紙からして昭和感が漂っていますが、作風もまた、どこか懐かしい昭和の空気感があります。舞台は現代(令和)なのに、アパートや地名など、そこかしこに“朧”という漢字が登場するせいでしょうか。全体にノスタルジックでレトロな雰囲気が流れているのです。
(「乱歩と千畝」を読んだ流れで本作を読んだせいか、余計にそのレトロ感を強く感じました。)
それにしても、思いっきり人情モノに振ってきましたね。笑
しかも、読み心地はとてもライト。
月村了衛さんは重めのテイストを描く作家だと思っていたので、そのギャップに