月村了衛のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
いやいや、面白かった。きっと助かると思っているんだけど、囮捜査に入ったユーリの運命には、終始ハラハラさせられっぱなし。キモノ同士の闇ファイトも、闘う側に回されるんだろうな、という予感はあっても、そこにどうやって持っていくのか見えなかったけど、なるほど、このタイミングでバレる訳やね。過去のシーンで裏切った(と思わされていた)上司も、そのキャラぶりと裏切りという行為に、かなり乖離があるように感じられたけど、救出劇への身を呈した参加を見せつけられるに至って、感動もひとしお。劇的展開が素晴らし過ぎる。シリーズ第一作の時点では『まあそこそこかな』とか思っていたんだけど、第二・第三長編と読み進むにつけ、これはとんでもない物語だと、思いを新たにした次第。
-
Posted by ブクログ
シリーズものの小説は、観光間隔が開くと、ほぼ完全に登場人物とか、その背景とか忘れてしまう。かといって毎回読み直すのも、自分的にはちょっと違うし、何となくのまま読み進めてしまうことが多い。本作も、多分には漏れないんだけど、キャラ立ちが素晴らしいせいか、主たるメンバーはそれなりにしっかり覚えていられる。という訳で、今回もその中の一人に焦点が当てられた作品。しかも、本上巻の後半は、丸々その回想に割り当てられているという結構。自分が読む長編としては、シリーズ3作目だけど、こういう展開も大歓迎。という訳で、現在とシンクロしたところで上巻は終わり。下巻も興奮しそう。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ物語全体を通してまるで『山月記』の読書感想文を読んでいるようだった。作中には『羅生門』など他作品も引用されているが、やはり人とまともに関わらず自尊心を飼いふとらせている点が物語の肝になっていると思う。昔授業で山月記を習ったときはなんとも思わなかったが、大人になった今だとこの自尊心を飼いふとらせるという表現が自分に深く突き刺さった。
この主人公にどこまで感情移入できるかで評価が変わりそうな気がする。展開だけを見れば、中学校教師の過労、政治家の癒着、婚約者の失望、同僚・生徒の裏切りなど、主人公がひたすら傷付けられている。それを一歩離れたところから見てざまあみろと嘲るか、一緒になって自分の心を痛ませるか。自分は後者だったからこそのカタルシスを得られた。
とりあえず今一度『山月記』を読み直してみようと思う。 -
購入済み
蘇る昭和の世界、味わいある七編
東京オリンピックを背景に、著名なミステリー作家七人によるアンソロジー。あの頃は今よりもみんなが前向きで、街にも活気があふれていたような気がする。初めて読む作家もいて、それぞれの持ち味が楽しめてよかった。個人的には月村さんが面白かったかな。
-
Posted by ブクログ
2010年に刊行が始まった月村了衛さんの『機龍警察』シリーズ。
似た設定の『機動警察パトレイバー』と比べると、よりサスペンス色の強いシリアスなハードボイルド作品になっています。
本作はその2作目にあたり、日本SF大賞を受賞し、『このミス』9位に輝いた月村さんの出世作です。
1作目は読んでいたものの、以降が上下巻ということでなかなか手を出せていませんでしたが、ようやくこのたび読むことができました。
結論から言うと面白かったです。
やはりシリーズものなので1作目から続けて読んだほうがいいと思いますが、一応前作を読んでいなくても支障はないようには配慮されているようです。
設定もよく練られており、一読した限りでは不自然さや破綻はありませんでした。
横浜港で機甲兵装の大規模密輸事件が発生し、警視庁特捜部は北アイルランドのテロ組織IRFによるイギリス高官暗殺計画が日本で進行していることを掴みます。
実は龍機兵搭乗要員のひとりであるライザはIRFの元メンバーだったのでした。
組織を裏切ったライザの前に現れたIRFのテロリストたちに加え、浮かび上がった中国黒社会の面々。
ライザの過去を描いた第二章を挟んで、中盤は特捜部による捜査の場面が中心ですが、身内の警察や他省庁との腹の探り合いがなかなかスリリングです。
そして上巻のラスト、特捜部はIRFの居場所を掴み、密輸された機甲兵装との対決を迎えますが・・・
以下下巻へ。 -
Posted by ブクログ
機龍警察シリーズ、5作目。
これまで存在さえも不明瞭であった特捜部の《敵》がより形となって現れてきた感じ。現代に置き換えれば5G通信システムといったところか、日中間の一大通信インフラ事業をめぐる経済疑獄に対して、特捜部を始め、捜査一課に捜査二課、組対、公安と、警察組織のオンパレード。そこに国税局なども加わって、協力と軋轢の綯い交ぜ状態。「至近未来」の物語とは言えど、現代に通ずる生々しいリアルを感じました。しかも、今回は龍機兵の戦闘シーンは一切無し。ライザと狼眼殺手の因縁の肉弾戦が今作のアクションシーンを飾り、それも見事でした。
最終的には龍機兵の特殊システムがカギとなり、シリーズとしてのストーリーが大きく動いていきそう。今後も楽しみ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレユーリの「契約破棄」と裏社会への進出というショッキングな出来事から始まる。
充実した刑事時代、一転して突き落とされた地獄と負け犬の日々、そして現在進行形の潜入操作の「相似」に翻弄されながら、ユーリ、そして特捜は闇の市場を暴くことができるのか。
潜入捜査の緊張感とワクワク感。
特捜と組対の合同捜査、そして宮城県警、受け入れがたくとも目的を同じくする者の熱い共闘。
沖津に翻弄される由起谷夏川コンビ、やはり沖津はすごい。
龍機兵乗りの中で一番脆い部分を抱えたオズノフ警部が、過去においても現在においてもとにかく大変な目に逢いまくる。
「影」ゾロトフとの複雑な関係のもつれや、かつての上司ダムチェンコへの信頼・尊敬・敬愛、それを裏切られた憎しみと哀しみなど、こういうのが……ブロマンス……??? -
Posted by ブクログ
ネタバレまさかの龍騎兵戦闘シーンなしの巻。政治的駆け引きと警察官僚の活躍とテロリストとの肉弾戦で構成される異色の一編。
その特色が賛否両論を生んでいるが、俺は賛成側。良質な長編シリーズにはこういう回があっても良いと思うのだ…ただし面白ければ…。この本は十分に面白いし、今後のシリーズに大きなうねりをもたらす既設伏線の一部回収と、新たな伏線敷設をやってのけているし。
狼眼殺手のアクションシーンもオモロイ。ライザについてはもうちょっと強くあって欲しいと思う(あれじゃ、悪い意味で既存の女性ハードボイルド主人公みたい)が、彼女と狼との確執描写は良い。背景が良いからアクションシーンもドキドキ感たっぷりで良い。
龍騎兵シーンなしでもこのシリーズ世界でオモロい小説は駈けると証明された巻。だが、やっぱりそこも大きな醍醐味の一つなので、次回作では大いにそのシーンを期待したい。
次作以降、敵側もきっとすごいドラグーンを出してきそうな気配だし、期待は膨らむ一方である。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ機龍警察シリーズの短編集。サイドストーリーと言えば軽く思えるが、どれも読みごたえのある、手抜きなしの傑作短編集。
とはいえ、本編の5作(この本以降のもう1作は後で読んでもいいみたい)を読んでおかないと、世界観、キャラクター等が分からず楽しめないので、「まずは短編集で機龍警察シリーズデビュー」という方法はやめた方がいいと思う。
このシリーズは是非とも刊行順で読んで欲しい。
遠田潤子風ブルースを感じる表題作に、隠蔽捜査シリーズみたいな話もあるし、なんとガンダムサンダーボルトネタまで。しかもその全てが捨て駒じゃないって、なんという多才っぷり。短編一つ一つに本編以外の直接的つながりはないものの、最後に掲載の作品にユルやかに収れんされていく構成も見事。
今更俺が言うてもなんの評価にもならんけど…
月村了衛は日本小説界の至宝だと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ文句なし、鉄板の星×5
今更俺が書くまでもなく、このシリーズは大傑作である。
龍騎兵パイロット3人が主人公の3作が終わって、さてどうなるんやろ?と思っていたが、まさかの由紀谷・城木!で、駆け引きモノ現場モノになるんかと思ったら…そういう部分もあってなおかつ、そこも面白いのだが…機甲装兵格闘含むアクションシーンも十分に、どころか壮絶に描かれている。敵方のボスキャラ3人VS龍騎兵3機、手に汗握るシリーズでも屈指のシーンである。
今作も敵方の設定が凄い。イスラム系チェチェン独立派ゲリラ、しかも女性テロリストのみで構成された集団で、自爆も辞さないどころか自爆が常套化している危険集団である。確保すれば自爆、弾が当たれば自爆、人ごみに入れば自爆で、日本警察機動隊が悲惨なまでにヤラれていく。
単なる勧善懲悪モノではなく、こちらもあちらも不幸を抱えていて、人間味も溢れている。今のところ悪役を一身?に背負う、陰に隠れた「敵」とやらの目的はなんなのか?
由紀谷良かったな。そして城木はこのままダークサイドに引き込まれていくのか?あえて影側に振られてから善玉に戻ってくる展開はワクワクできるのだが、戻ってこれるか城木?カティアは今後絡むことはあるのか?そして今回鳴りを潜めた中国系蛇頭のあいつら…
あぁ、今後が気になって仕方がないぞ! -
Posted by ブクログ
機龍警察シリーズ第四弾はこれまでの作風からまたちょっと変えてきた。今回は突撃要員ではなく由起谷・城木が主役。作者の月村さんは特に由起谷がお気に入りなんだろうなというのが伝わってくる(実際、次作の短編集でもフューチャーされている)。今回は戦場で常に犠牲となる女性と子供からなるテロ組織が空いて。自分たちの身を守るための自衛組織がいつの間にかテロ組織に変質していく恐ろしさが書かれている。またそんな組織に物心つくころから身を寄せる少女シーラの心情も上手く描かれている。そのシーラと由起谷との取調室でのやり取りがこれまでの龍機兵との動的活躍とは対照的な静的緊張感に溢れた良作。由起谷は幼いころからテロ組織で育った少女を変心させることが出来るのか。シーラと“死神”ライザの一瞬の邂逅も後々意味を持ってくるあたり良く練られている。そして日本に上陸したテロ組織「黒い未亡人」の目的とは。これまでどちらかというと宮近より好感の持てた城木の身近にまで<敵>の魔手が近づいていて彼の気持ちの揺らぎも伝わってきて、ますます次作が楽しみである。