月村了衛のレビュー一覧
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ネタバレ凌玄という僧侶が燈念寺派のトップを目指す物語なのだが、そんな単純なものでもない。仏教の世界の権力争いと言えばそれまでだが、ヤクザも絡んで途轍もない話になる。ヤクザの抗争、友人の裏切り、そこに女の世界の掟も加わる。えげつない世界を見せてもらった。凌玄にとっては因果応報なところもあるが、なかなか世の中は上手く回っているとも言える。それが釈迦の教えなのかもしれないが、私には分からない。京都弁のセリフは慣れていないと読みにくいかもしれないが、個人的には京都の裏っ側を見事に表現していると思う。私には馴染みの言葉なので、気持ちの強弱を含めて強く心に描写された。
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ネタバレどうかなと思いつつページ開けば大変読みやすく、一気読みできた犯罪小説でした。
主人公川辺優人は幼少より普通を意識して行動し、周りの人からもそう思われながら社会人になったものの過去の悪事から逃れられず死刑にもなる犯罪を犯すわけですが。
自分を顧みると物心ついた時にはもう自分が普通でない事を意識していたので(自称生まれながらのオタク)、普通である事など苦痛で仕方なかったんですけど、でも高校時代あたりから「このままだと社会生活送れなさそう」と危機感を抱き、どうにかこうにか世間一般的な普通を意識して日々送っている訳ですがそれでも気が付くと世間から離れてる自分を意識してしまうのですね。
そういう普通 -
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ネタバレ《あらすじ》
時はバブル前夜。日本最大宗派燈念寺宗系末寺の跡取り息子凌玄は、実家の寺を立て直すために総本山の宗務を司る総局部門に入職し、幹部僧侶になるべく日々職務に励んでいた。
ある日、文部部長の空善から「売却予定の夜久野の整地現場に顔を出してこい」と立会を命じられた凌玄は、そこで地元の老人が、厳斗上人所縁のものであるからと仏堂の取り壊しに強く反対している姿を目撃する。
帰社後、凌玄はこの件を調べて空善や室長の潮寛に報告するが、実はこの2人は黒幕である統合役員暁常の元、お山の土地売却によって利鞘を得ようと企んでいた張本人たちであった。
2人は凌玄を懲罰にかけ宗門から追い出そうと画策するが、凌玄 -
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ピカレスクやノワール小説をよく読む人にとってはわりと王道の内容かも。ヤクザやフィクサー、政治家(政治屋?)が企業を舞台に暗躍する話を宗教界で繰り広げるような話。ただこの主人公が小賢しいというか、言い訳ばかりで嫌な感じ。なので破滅を期待するのだが、なぜか憎めないのだ。個人的には冷徹なインテリが好みなのでヤクザの氷室がドンピシャなのだけれど、妖怪じみていながら人間くさい主人公凌玄にハラハラさせられ話にひきこまれる。凌玄と同じ滋賀の生まれで京都にも馴染みがある身としてはフィクションとはいえリアリティのある部分もあり、しかしリアルな故に魔界のような扱いの京の宗教界が可哀想でもあり……まあ大企業や大病院
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面白かったー。これぞ、痛快ノワール小説。
主人公の凌玄は最初信心深く善良な僧侶なのだけど、少しずつ悪に染まっていく。
この悪に染まっていく度合いが半端じゃなくて、本当にもうただの悪なんですよね…人もバンバン殺すし。
良心の呵責に苦しむ場面は最初の方だけで、あとはもう一気に悪の道をひた走っていくのだけど、悪すぎてむしろ爽快感すらある。
正しいことをするには力が必要で、力を得るためには正義に相反する汚いこともしなければならない…というのは、この世界の偽らざる真実なのかもしれないけど、権力と金を手に入れると人は堕落するんですよね…。こういうのは仏教界に限らず、政治の世界でも同じだよなぁと思ったり。 -
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第12回高校生直木賞
「より多くの金をつかんだ者が京都を制する――最後に嗤うのは仏か鬼か」
「古都の金脈に群がる魑魅魍魎」
なんて面白そうな期待値の上がるフレーズ!
外で読むには表紙が激しくてちょっと恥ずかしいけど^^;
登場人物は曲者だらけで確かに魑魅魍魎。
凌玄の闇堕ちっぷりは途中からうんざりしてきて、面白いんだけど不快な気持ちだった。
お坊さんのイメージダウンにつながりそう。
ここまで極端ではないにしても、色んなつながりや闇取引きって一部ではあるんだろうな。
月村さんはいったいどこを取材して何を見てきたのかが気になるところ。
『虚の伽藍』ってタイトルが話の内容にぴったりで納得。 -
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女子大生夏芽の一年間の冒険譚というと作品のイメージがガラリと変わってしまいそうだが、最後まで読み切るとこの作品の主人公は間違いなく夏芽であり、その役割を真っ当している。作中、全てのキャラクター造形が際立っており、親友の紬以外はバックボーン含めて想像できる様な描き方がされている。それぞれの登場人物達は皆魅力的で、謎の老人である鳴滝も、彼の知人である剛田も、夏芽の大学の教授である榊も、まるで彼らが登場する作品を過去にみてきたかの様に生き生きとしている。
一点残念な部分があり、表紙に夏芽と鳴滝の姿が描かれている点で、時に鳴滝についてはミステリアスな要素を残しながら、読者に人物を想像させて欲しかっ -
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「虚の伽藍」で著者の存在を知り、本作はまったく違った雰囲気を醸し出しているので手に取ってみました。
表紙からして昭和感が漂っていますが、作風もまた、どこか懐かしい昭和の空気感があります。舞台は現代(令和)なのに、アパートや地名など、そこかしこに“朧”という漢字が登場するせいでしょうか。全体にノスタルジックでレトロな雰囲気が流れているのです。
(「乱歩と千畝」を読んだ流れで本作を読んだせいか、余計にそのレトロ感を強く感じました。)
それにしても、思いっきり人情モノに振ってきましたね。笑
しかも、読み心地はとてもライト。
月村了衛さんは重めのテイストを描く作家だと思っていたので、そのギャップに -
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第68回日本推理作家協会賞
第12回本屋大賞第5位
自衛隊海外派遣は前提として、自衛隊は軍隊ではないので戦闘はしないし、ましてや戦死者が出ることなどないという。
本当にそうなのだろうか?
何が起こるかわからない危険地帯で、本書のようなことが起こっても不思議ではない。
舞台は内戦の続くソマリア。砂漠気候でうだるような暑さの中、ひたすら援助を待ちながらの移動と死闘。
あまりにも過酷な状況に読んでいるだけで苦しくて、早く読み終わりたくなった。
後半はみんな満身創痍すぎて、誰がどこを負傷してどの配置なのか訳がわからなくなり、極限状態を垣間見たような感覚。
最後はなんて表現したらよいかわからない感 -
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月村了衛『香港警察東京分室』小学館文庫。
香港警察と日本の警察とが手を組み、国際犯罪と闘うという異色の警察小説。
第169回直木賞ノミネート作ということであるが、それ程飛び抜けた面白さは感じなかった。
香港国家安全維持法成立以降、日本に流入する犯罪者は増加傾向にあり、こうした国際犯罪に対応すべく日本と中国の警察が協力することになる。こうした中、警視庁に『特殊共助係』が新設されるが、警察内部では各署の厄介者を集め、香港側を接待する窓際的部署と噂され、『香港警察東京分室』と揶揄されていた。『特殊共助係』は、日本側の水越真希枝警視ら5名、香港側のグレアム・ウォン警司ら5名で構成され、香港側のメ