月村了衛のレビュー一覧

  • 影の中の影(新潮文庫)

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    ネタバレ

    成り行きで手を組んだヤクザと伝説の男が亡命者を守るために中国の精鋭暗殺部隊と文字通り決死の戦いを繰り広げる。バッタバッタとネームドの人物がちっていく無常の戦いの中、冷静沈着でクールなカーガーに対して、任侠道を突き通すヤクザの生き様が好対照で思わず目頭が熱くなる場面がしばし。おっさんだらけの登場人物に配置された女性ジャーナリストも絶妙な立ち位置におり、全てを繋ぎ合わせてストーリィに整合性を持たせていると共に単なるアクション小説を超えて、ウイグル問題という社会的な面にスポットを当てている点も見事。解説にもあるがキャラ良し、アクション良し、ラスト良しの傑作エンタメ小説。

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    2018年10月12日
  • 槐(エンジュ)

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    キャンプ場に隠された大金を狙って我先にと駆けつける悪の軍団。巻き込まれるのは野外活動部の中学生たち。引率は学校一嫌われ者の教頭と学校一やる気のない臨時教諭。

    不良軍団が皆「君」付けで呼び合っていて、あんたらジャニーズかと思いきや、意外にもグローバル(笑)。映像化したら少なくともR15+にはなりそうな肉ぶった斬りの血飛びまくり。あり得なさに笑ってしまうけれど、キレ味抜群、痛快で興奮しました。

    勇気を持って、最後まであきらめないってやっぱり大切なこと。仲間を騙し討ちする悪党になんて負けてたまるか。教頭先生に敬礼。

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    2018年09月11日
  • 機龍警察 火宅

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    ネタバレ

    1日で読んでしまった。
    機龍警察の登場人物を主人公にした短編集でミステリ主体。
    この短編集で登場人物それぞれの人物像がさらに明確になってきた。
    この短編集が先に文庫化された理由はあるのだろうけれど、シリーズ第三作の文庫化がより楽しみになった。

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    2018年09月02日
  • 機龍警察 火宅

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    最新型特殊装備“龍機兵"を擁する警視庁特捜部は、警察内部の偏見に抗いつつ、国際情勢のボーダーレス化と共に変容する犯罪に立ち向かう――由起谷主任が死の床にある元上司の秘密に迫る表題作、特捜部入り前のライザの彷徨を描く「済度」、疑獄事件捜査の末に鈴石主任が悪夢の未来を幻視する「化生」など全8篇を収録。着想の妙と研ぎ澄まされた世界が広がる、2010年代最高のミステリ・シリーズ初の短篇集。

    単行本刊行時から三年半ぶりに再読。短編の方が警察小説としてのすごみを感じるのは、今回も同じだった。

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    2018年08月28日
  • 機龍警察 火宅

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    こういう、主要登場人物のアナザーストーリーも楽しい。でも、シリーズに首ったけな訳でもなく、新作が文庫化されたらそこで楽しみたい、というくらいのスタンス者としては、やっぱちょっと物足りなさが残るかも。あと、順番が繰り上げになって、本短編集が先に文庫化されたのもちょっと謎。という訳で、シリーズ第三作の文庫化を早くお願い。

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    2018年08月14日
  • 機龍警察 自爆条項〔完全版〕 上

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    珠玉の警察SFと言える作品。
    主人公3人の中で、元IRAテロリストで、ミステリアスなヒロインの過去を織り交ぜ、犯罪ミステリーが展開するストーリー。

    当時のアイルランドという本当の貧困を描き、テロの元凶が生まれ育つフィクションを超えた知識を与えくれる。
    冷酷無比なテロリスト達の本当の目的を知った瞬間には、鳥肌モノであった。

    個人的な見どころは、本作品のヒロインが、テロリストから足を洗うきっかけとなった妹との手紙とのやり取りが、せつない。

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    2018年08月09日
  • 槐(エンジュ)

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    ネタバレ

    あらすじをまともに読まずに占拠されたキャンプ場から主人公たちがどうやって抜けだすのかと考えながら読み進めていたため、槐が登場した展開に驚いた。前半は凄惨なシーンが多いものの、その分、槐の圧倒的な力で敵を蹴散らしていく様は爽快だった。
    溝渕や中国マフィアたちが私利私欲のために戦うのに対し、教頭先生や中学生たちが、槐の祖母の教えのように、愛するものを守るために戦っている姿もまた清々しく、読んでいて気持ち良かった。

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    2018年06月13日
  • 土漠の花

    購入済み

    現実とラップしやりきれない思い

    ジブチの自衛隊活動拠点で編成された捜索救助隊が捜索活動中突然の出来事で、ソマリアとの国境地帯で現地武装集団との壮絶な交戦を余儀なくされ何人
    もの死傷者を出しながらかろうじて活動拠点まで帰還するものの、上官の命令で自衛官による戦闘行為など一切なかった事にされてしまう。あまりに理不尽な処遇が現実とラップして何かやり切れない思いがする。

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    2018年06月06日
  • 機龍警察 暗黒市場

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    ネタバレ

    龍機兵バーゲスト搭乗員であるユーリ・オズノフ警部が警視庁との契約を解除されるという驚愕のスタート。旧知のロシアン・マフィアであるゾロトフとの関わりとユーリの転落を描く「最も痩せた犬たち」のエピソードは暗く悲痛で読み進めるのが苦痛なほど。しかし最後にすべての伏線が明らかになるカタルシスのあるラストが待っていた。DRAG-ON、アグリメント・モードでのユーリ=バーゲストの死闘に涙せずにいられない。

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    2018年05月03日
  • コルトM1851残月

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    お江戸の裏金融業に蔓延る一味に、表裏合わせて浮かぶ残月の如く、刃紋が煌く日本刀ではなく六連コルトをぶっ放す稼業人。
    痛快アクションではあるが、描かれる場面場面は感慨深い。国家間から一個人の感情の起伏まで、一冊にまとめるには、あまりにもとっ散らかりそうな内容だが、著者の筆腕は素晴らしい。
    近現代、英国紳士と呼ばれるステレオタイプがアヘン戦争時の発端の鬼畜道、勧善懲悪のアメリカナイズ、切った張ったの渡世の人情、と思えばストックホルム症候群からの..
    初めて読んだ著者だが、よくもこの薄さの中にまとめあげたものだと驚く。
    ただ、巻末の後書の馳星周の件は不要。せっかくの良い作品が台無しだ。

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    2018年04月21日
  • 影の中の影(新潮文庫)

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    登場人物の過去もがっつり語られ、重厚なお話になってます。私利私欲に走る者達に翻弄されながらも信条を持って立ち向かっていくところに爽快感がある。
    日本国内が舞台なのでここまでやるかと思わないでもないですが、まぁやるかなと思わせるところが中国のすごいところだよなぁ。

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    2018年04月19日
  • 土漠の花

    購入済み

    世界の裏がわ

    知らなかった世界の裏の暗闇を、描きながらも光が差す想いがした。ただ恋愛の組み込み方がチープかな、と。終わり方がきれいすぎた感あり。

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    2018年03月29日
  • 影の中の影(新潮文庫)

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    土漠の花と比べると少し落ちる。

    土漠の花では自衛隊VSアラブのテロリスト集団だったのに対して、本作はヤクザと伝説のエージェントVS中国の暗殺部隊!!!

    間違いなく興味が唆られるプロットで、満足のいく内容!中国のウイグル自治区の問題を物語の中央に添えている。

    土漠の花では自衛隊の武力行使と隠蔽があり得そうだと思ってしまうが、本作のウイグル自治区への中国の弾圧はさすがに・・・あり得ないかなぁと・・・。
    しかしあり得る!?と考えてしまうと急に世界が恐ろしいものに思えてしまう事と同時に報道の全てに疑念を感じてしまう。

    領土と民族と利権の問題が全てクリアせれる未来が、1日でも早く訪れる事を只々祈

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    2018年03月25日
  • 影の中の影(新潮文庫)

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    月村了衛『影の中の影』新潮文庫。

    『土漠の花』程のリアリティは感じられない軽いエンタメ系アクション小説。

    パクりでないかと思うくらい矢月秀作の『もぐら』シリーズと酷似した設定の作品。『もぐら』は主人公が元警視庁組織犯罪対策部に所属し、とある事件で妻と娘、相棒を失い、表社会から姿を消した影野竜司。対する本作の主人公は元警察キャリアで婚約者を殺され、表社会から姿を消し、最強の格闘技・システマを身に付けたカーガーこと景村瞬一。

    血も凍る暴虐に見舞われた故郷から秘密を抱えて脱出したウィグル人亡命団を取材中のジャ ーナリスト仁科曜子が、白昼の東京で襲撃される。絶体絶命の状況下、謎の男・景村瞬一が救

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    2018年03月06日
  • 槐(エンジュ)

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    面白かった。これは是非映像で観たい。かなり凄惨なのでTVでは無理だと思うが、映画なら大丈夫。
    中学生たちのサバイバルと成長が物語の軸となっていますが、10代前半でこれを経験しちゃったら、その後の人生は大きく変わるよね。この物語の主人公達の10年後、20年後を見てみたい気もします。

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    2018年02月19日
  • 機龍警察 暗黒市場

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    今回の主役はユーリでした。
    相変わらず重厚で、痛くて苦しくて、でも少し救われた。いろんなことに気づいた今、ユーリはどう生きていくんだろう?
    〈敵〉も見えたと思えば姿を消すのでハラハラする。沖津の過去も気になるが、今後どこかで掘り下げられるのかな。

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    2018年02月03日
  • 機龍警察 自爆条項〔完全版〕 下

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    下巻も面白くてぐいぐい読みました。
    タイトルの「自爆条項」の意味が分かったとき、「!!そんな!!」となりました。
    沖津さんがやっぱりかっこよくて、でもその上をいく〈敵〉…続きも楽しみです。
    ライザと緑のこれからもとても気になります。ライザはこれから変わっていくのかな。
    警察内部や、他の省庁との駆け引きはやっぱり難しくて…世界情勢も、知らないではすまされないのでしょうね。
    戦闘シーンのスピード感、映像化されないかな。
    完全版が出るのはここまでらしいのですが、続きの文庫化が待ち遠しいです。

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    2018年01月14日
  • 機龍警察 自爆条項〔完全版〕 上

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    シリーズの続きの今作も不穏で面白くてぐいぐい読みました。前作も面白かったですが、序章だったのですね。
    日本で暗躍するテロリストと、中国の裏社会…警察内部や他の省庁との駆け引きもハラハラして、沖津さんがかっこいいです。沖津さんの頭脳戦、面白いです。
    今回は機龍兵の搭乗員のひとりの、ライザ警部の過去も関わってきます。ライザが元テロリストというのは前作でもちらりと出てきましたが、こんなに暗い過去とは。
    この世界の日本はどうなるの…と、下巻に突入します。下巻では、テロリスト時代のライザも描かれるのかな。緑とのこれからもどうなるのか、ドキドキです。

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    2018年01月13日
  • 機龍警察 自爆条項〔完全版〕 上

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    前作は姿フィーチャーだったけど、今回はライザがメイン。
    世界に名を轟かせたテロリストである彼女の過去が描かれるのだけど、まともに受け止めたら息ができない。
    事件も非常に入り組んでいて狡猾で残忍で、本当に防げるのかどきどきしてくる。
    でもって缶コーヒー飲みたくなるの、どうにかしてほしい。

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    2017年12月24日
  • 機龍警察 暗黒市場

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    「機龍警察」シリーズ3作目。今作は元刑事のユーリが主役なので警察小説の色合いが濃くハードボイルドな仕上がりに。
    いきなり冒頭からユーリが契約解除で特捜部を離れ武器の密売に手を染めるという驚きの展開。そして明らかになる過去。
    数奇な因縁を持つことになるゾロトフとの出会い。「最も痩せた犬達」の一員として邁進したモスクワ民警時代。裏切りにより警察を追われ闇社会に堕ちていく過程。
    そこからユーリの持つ繊細さや捨て去ることのできない警官としての矜持の理由が見えてくる。
    プロフェッショナルの姿・超人のライザと比べてやられ役気味だったユーリをきっちりカッコ良く描いてくれたことが何ともうれしい。
    シャープな印

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    2017年08月28日