月村了衛のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
安倍総理暗殺事件のようなことが冒頭で起こり、それに興奮を覚えるような感覚の持ち主である三上浩が語り手。彼は両親が生後すぐ離婚、引き取った母も周囲とトラブルを起こすような人物でなんとか高校までは卒業したものの、常に貧乏。母はその頃死亡、就職した工場も倒産し、30歳前に非正規警備員・家族友人なし、金も夢もない。そんな彼が暗殺者の宗教2世である松原に一方的に入れ込んでいく。とにかくハマり方が読んでいて付いていけなかった。まず、事件に興奮するところがもうダメ。
社会の暗部に切り込んでいくような主人公には話が暗いからこそ、自分を投影できるような格好良さが必要なのだな、と思いました。
高校生以上向け。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ現代日本の深部に巣食う病理を容赦なく抉り出す社会派小説。元首相銃撃事件をモチーフに、宗教二世や闇バイト、格差社会の不条理に加え、与党と新興宗教の癒着、右翼やヘイトスピーチを掲げる政党といった生々しい政治状況までも背景に配し、社会の底辺で喘ぐ「弱者男性」の内面世界へ肉薄していく。
本作の読みどころは、主人公の心象風景や独白を通して描かれる濃密な思索だろう。公安との攻防とか過激なアクションといったわかりやすいサスペンスフルな展開はなく、エンタメ要素は少ないが、その分、歪んだ共鳴が暴力へと昇華される心理プロセスが迫ってくる。
特に、闇バイトのトップの一人と主人公という異なる世界の二人の会話から辿り着く「世の中全員がテロリストである」という結論には背筋が寒くなる。
そして、冒頭から予感される不穏な結末へ向かう…エンタメとしての爽快感や華やかさは削ぎ落とされているが、痛烈な問いを突きつけ、単なる物語の枠を超えて「今、ここにある現実」の闇を直視させられる一冊である。