酒井昭伸のレビュー一覧
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2010年の読み初めはこれ!と決めて、暮れに届いてから楽しみに置いていた。なんといっても「ハイペリオン」番外編となる表題作が収録されているんだから。数年前のSFマガジンですでに読んでいたけれど(その号はハイペリオン特集号で、もうなめるように楽しんだ)すっかり内容を忘れていた。まるではじめてのように読みながら、あらためて、自分がいかにハイペリオン世界を愛しているかしみじみわかった。大叢海、炎精林、地下迷宮、聖十字架、森霊修道士…私にとってハイペリオンは、時空を越えて、実在と変わらないものとして、つまり、確かな存在感と茫漠としたつかみどころのなさを併せ持つものとして存在している。
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ネタバレいろいろと残念な下巻。いつの間にかポールはフレメンを掌握しており、フレメンはアラキスのほとんどを制圧している。そこに至る様々な苦闘を期待していたのだが、作者は大きく省略して、それぞれ最も大きな出来事だけを描いている。上・中巻までのどっしりぎっちりした物語進行に比べて、書くのに飽きたような飛ばし方だ。また、スフィル・ハワトはいいとこなし、ガーニー・ハレックはポンコツ化、男爵は4歳児に殺されるなど、ここまでさんざん強キャラアピールしていた面々はほとんど活躍なしに物語が終わる。さらに砂蟲に対する畏怖や神秘もはぎとられ、馬並みの扱いをされてかわいそう。逆にポールはスーパーマン化して負ける感じがしないから、緊迫感が生まれない。私の期待が大きすぎただけかもしれないが、不満の残る最終巻でした。
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Posted by ブクログ
ネタバレ不老長寿の薬、T7。
これを投与されると体は若返り、寿命も延びるが、副作用として体全体が巨大化し、強靭になる。
投与された人間は通称「タイタン」と呼ばれ、その投薬には莫大な費用がかかるため、利用できるのは一部の富裕層に限られている。
主人公キャル・サウンダーは、警察に雇われている捜査コンサルタント。 ある一人のタイタンが殺されたところから物語は始まる。
現代も格差社会と言われて久しいが、本書ではその格差がタイタンによってさらに拡大される。
命も、時間も、お金で買える。 そして富を持つ者は、より長い時間を生き、その時間によってさらに富と権力を蓄積していく。
すべてがタイタン側に集まっていく世界だ。
主人公キャルの立ち位置が絶妙である。 警察のコンサルタントでありながら、タイタン側にも顔が利く。
かつての恋人アテナが、タイタンの中でも大物中の大物であるステファンの娘であり、アテナ自身もタイタンだからだ。
普通の人間とタイタン。 その両方の世界に足をかけているキャルを通して、この社会の格差が浮き彫りになっていく。
キャルのキャラクターもいい。 シニカルだが筋を通す。
普通の人間より喧嘩は強いが、本作では人間にもタイタンにも徹底的にボコられる。
主人公が圧倒的に強い物語もいいが、弱い主人公には弱い主人公の魅力がある。 傷つくからこそ、それでも前に進む覚悟が見える。
そして、自分たちと同じ「普通の人間」として身近に感じられる。
しかし、タイタンには勝てない。
主人公だけでなく、この世界の普通の人間はタイタンには勝てない。
タイタンは神ではないが、限りなく神に近い存在になっている。
彼らの長大な時間の前では、真実も、人が大事に紡いできた物語も、テレビドラマの一話のように薄っぺらく見えてしまう。
ラストは予想した通りの結果だった。 これでは普通の人たちは救われない。
次作はすでに英国で発売されているという。
その答えは、もう少し先にあるのだろうか。