市田泉のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
宇宙に旅立ち、持っていった人類の文明のデータが消えた後の世界、船内で音楽を演奏するグループに参加している女性の話が特に良かった。
過去の名曲を再現しようとしても過去の作品全ては拾えない。
今同じ時間に存在しているものにも思いを馳せたり、これから新たに作り出すことに勇気をもらえる話だった。
「風はさまよう」の他
クジラを運転して旅する「イッカク」
多元宇宙のサラ・ピンスカーが集うサラコンで起きた殺人事件「そして(Nマイナス1)人しかいなくなった」
夫婦間の謎を妻が理解し進む「新縁をあとに歓喜して」などが良かった。
寝る前に少しずつ細切れに読むと、数日後に話の内容が追えなくなり、何度も止まった…理解力の無さです…いくつか、また読みかえします。 -
Posted by ブクログ
いやー面白かった。すごく読み応えのある作品だった。
女性だけが1日100語という発話の制限が課せられる。聖書の歪んだ解釈による蛮行。途中まではこの世界観の理不尽なミソジニーさが苛立たしくて仕方がなかった。著者の、現実の女性蔑視・不平等への怒りがそのまま伝わってくるような文章。
どうして数千年も前に書かれた文章を元に、その後人類が血にまみれた歴史の果てに獲得した人権というかけがえのないものを踏み躙ることができるんだろう?不思議でしょうがない。
ホモソーシャルでミソジニーでホモフォビアでレイシストの白人男性による白人男性のための白人男性の国、アメリカ。半世紀前から拡大した貧富の格差を女性や黒人や移民のせいにして自分達のグレートな国を取り戻したい白人男性が支配する病んだ国、アメリカ。
しかしここに描かれている内容を完全にフィクションと笑い飛ばすことはできない。彼の国では最近、女性の中絶は違憲であるという最高裁判決が出た。レイプや近親相姦などによる妊娠の例外も認めず違法、という州法が成立している州もある。キリスト教の古い信仰が篤い州だ。そしてこんな判決を出した保守派の判事達を最高裁に送り込んだのはこの作品の大統領のモデルになったと思われる、あの前大統領だ。現実とフィクションがどちらがよりディストピアを作り出せるか、チキンレースをしているように見える。
終盤は少し失速した様に思えるのが少し残念。クライマックスまでの盛り上がりに比して、結末が尻切れ感が拭えない。場面描写も少しアンダスタンダビリティに欠けるところがあった。
しかしこれがデビュー長編なのは恐るべし。次回作に期待大。 -
Posted by ブクログ
ページを捲る手が止められなかった。
読みながら、ふつふつと怒りが湧いてくる。
男性はこの物語をどのように読むのだろう?女性である自分と、異なる印象になったりするのだろうか?
侍女の物語と重なる部分は多いけど、「言葉を封じる」という言語の制限にフォーカスしている分より状況が具体的に見えてくる部分もあり、色々考えさせられた。また侍女の物語と異なる点として、主人公には息子もいる。それが物語に、更なる絶望の奥行きを与えているように見える。
以下印象に残った部分
●ソニアのオムツも喜んで変えていたようなスティーブンが、買い物は女の仕事なんだからママやれよ、とどんどん新政府の思想に染まり傲慢になっていくところが、一番つらかった。
自分の腕に抱かれている赤ちゃん時代を知っている我が子が、教育によって、変わってしまうことの恐ろしさ。
●逆に、ソニアは言葉を封じられ、首を縦に振るか横に振るかしかしない子になってしまう。
後に、彼女はもともとはおしゃべり好きな女の子だということがわかる。教育の恐ろしさよ。
●カウンターをはずされ、言いたいことを言うジーンに向かって理解ある夫が言う「カウンターをつけてた時の方がましだったのでは?」
真に怖いのはこういうところだ。善良な分別ある者さえ、自分に痛みがなければ、異常な物事に慣れてこんな思想を抱くようになってしまう。
●言語を統制するにとどまらず、言語を司る脳をおかしくして物理的に言葉をとりあげようとは。おぞましすぎるな。
●へなちょこだと思っていたパトリックが、実は一番勇敢だったのかもしれない。それにしても報われないよ…ジーン…
●ある者たちを思い通りに動かそうと思ったら、服従させようと思ったら、確かになによりも言葉を奪うのが効果的なのかもしれない。言葉は思想も意思も奪うから。
文中にもあったように、言葉を使わずに育った子が母親になったら?その母親に育てたれた子がさらに母親になったら?
何代目か後の女性のなかには、この状態がおかしいと考える言葉すら存在しなくなってる。
明らかにおかしいのに、同性婚が認められていないこの日本で、
この物語をディストピアだと笑っていられない。
悪が成し遂げられる唯一の方法は、善人がなにもしないこと。じっくり考えて投票しないと。
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Posted by ブクログ
小さいころに2作目までは読んでましたが、3作目が出てたのは知らなかったので見つけて早速読みました!
1、2作目と同様に前半は少し説明描写が多いので単調に進みがちですが中盤から後半にかけて物語が一気に動いていくと、どんどん読むスピードが上がります!
主人公のチャーメインの成長も微笑ましいですが、やはりシリーズファンとしてはハウル御一行が出てくるとウキウキしてしまいます。
ちなみにジブリとは別物と考えた方がいいです。(私は原作→映画の順だったのですが原作を頭に浮かべて見てたら展開が違うのでおどろきました。今はどちらも好きです!そして結局本作を読みながらも、ビジュアルはジブリバージョンで想像してしまいます笑)
この作者さんのクレストマンシーシリーズやダークホルム闇の君はハリーポッター前に私のファンタジー好きの扉を開けてくれた作品なのでおススメです。
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Posted by ブクログ
オーケイ、これは所詮SFの話だ。こんな荒唐無稽なことは到底起こるとは思えない。あまりに極端な設定だし、そもそも人も焼いてしまう腕輪の電源とかどうなってんだよ(笑)、とか。いや、本当にそうなのか?
政治家は自らの無能を隠すように平気で嘘をつき、単純化した二元論で選択を迫る。Show me your flag. 人々はネットの情報の海に溺れて思考停止になり、自分が心地よい情報だけを盲目的に信じる。その結果は気に入らない奴はすべて攻撃する、炎上だらけの人と人の信頼のない世の中だ。何がダイバーシティだ。
そんな世界で、明日こんなことにならないと誰が断言できるんだ? -
Posted by ブクログ
ディストピア小説の多くは、おおよそ近未来を舞台に「すでに成り立ってしまっている」架空の国家や社会が描かれることがポピュラーですが、この『声の物語』では、何と現代のアメリカで、超保守政党が政権を掌握したことで(執筆&刊行当時の、かの大統領政権よりもはるかに!)悪夢的な管理社会が立ち上がっていき、じわじわと人びとの暮らしや価値観が変質していくさまが、かつて認知言語学者だったマクレラン家の妻にして三児の母親である、ジーンの目線から語られます。
先導的な牧師であるカール・コービンが唱える思想「ピュア・ムーブメント」。キリスト教原理主義的で女性蔑視を正当化するその思想は、バイブル・ベルトと呼ばれるアメリカ中西部から南東部を中心として、徐々にアメリカ全体へ広がっていき、推し進められる政策とともに強制力を持つようになっていった。やがて、すべての女性は手首に「ワードカウンター」と呼ばれる、一日に百語以上のワードを発すると強い電流が流れるブレスレットを取りつけられることで、言葉を使う自由を取り上げられ、意見を言うことはおろか、そもそも読み書きすら教えられず、学問や仕事、参政の自由までも奪われて、家庭に押し込められることを強いられていく。
ジーンはこの暗鬱な状況が成立するまで、友人から幾度も抵抗や運動への参加を誘われても、すげなく断ってきた過去を悔いながら、変わってしまった生活を淡々と過ごしていた。すでに長男は「女にある仕事をさせて、男にほかの仕事をさせるほうが生物学的に理にかなっている」と、悪びれもせず言い放つほどに「ピュア」の思想に毒されていて、最も幼いソニアはカウンターのせいで、その日学校であったことを母に話すこともできないでいる。心には不満や澱が積み重なっていくも、そんな状況に何の批判的態度や気遣いの言葉も表さない夫へのイライラもまた、ただただ募るばかり。
そんなある日、ジーンのもとを突然、大統領の側近たちが訪れた。彼らはジーンに、大統領の兄が事故で脳に損傷を負ってしまったことを告げ、そしてその兄を治療するための研究チームに参加してほしいと、ある条件と引き換えに持ちかける――損傷部である「ウェルニッケ野」と呼ばれる言語機能を司る部位について、ジーンはまさにその治療研究の第一人者だった。
治療法確立までに与えられるタイトな条件と期限、日々差別的思想と発言を強めていく息子、娘のソニアを守るための葛藤、頼りない夫に冷えていく心、不倫相手だった研究者との再会、レジスタンスの存在、そしてプロジェクトの裏に仄見える不穏な動き……と、さまざまな障害や信じがたい出来事に阻まれ、心にも体にもダメージを受けながらもジーンが立ち向かわざるを得ない戦いは、ひたすらに不利で過酷なもの。けれども、だからこそ描かれる寓話的社会のありようが、決していまわれわれの目前で進行しつつある変化や状況と彼岸の火事ではない、ということを強く実感させられます(特にジーンが、とある黒人女性と交わす会話で示唆されるさらに恐るべき未来のくだりは、何度読んでも鳥肌が立ちます)。
後半に入ると展開する、ひたすら針に糸を通していくような研究プロジェクトの顛末、そしてスリリングな脱出劇まで――何度もガツンと殴られて胃や臓腑をかき回されるような嫌悪感を覚えながら、薄氷の上を歩くような息が詰まる思いで胸苦しくなりつつも、一度読み始めたら止まらなくなること必至の、いま読まれてほしい作品だと思います。 -
Posted by ブクログ
「ジャケ買い」「タイトル買い」です。
ブックカバーデザインにやられて、タイトルの「を」のあとが気になって、でも久々の「二段」ページにおじけづいて5ヶ月、やっと読みました。
読み進めると、当初の印象の派手なSFファンタジーだけではなく、主人公ふたりの成長を通じた「心の旅」物語が見えてきた。
「孤立」と「孤独」
「孤立」は物理的な状態、「孤独」は心理的な状態。
ともに最初は傍からみるとそれほどでもないのに、自分でエスカレートしてしまう。その姿を見て周囲はさらに引く。
ふたりは「もがきあえぐ」も、自己の力に疑いがない反面、結果に自信もなく、それ故に「自分を肯定してくれる人」を憧れ、探し続ける。
ときおり登場するパトリシアの姉ロバータの言葉が、身勝手な自分の心に刺さる。
環境問題は、物語からはそれほどの問題提起を受けることなく、地球存亡の危機にあたってどちらが正しいのか、結論を問うこともない。
ただ人の心の多様性を容認することが、自然との共存の第一歩であり、それは無理をすることではない。
「増長しない」ということは、そういうことかな…。
ふたりの「心の旅」を通じて、次第に「多様性が必然で自然であること」が浮かび上がってくる。
ところで、
すぐれたAIの重要な仕事が「出会い系サイト」って、人類永遠のテーマですね。
また、
ロレンスの反重力装置で飛ばされたブリアは、異空間で何を見たのだろう……。
気になります。