筒井康隆のレビュー一覧
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ネタバレこのような形で喪失を描くことができるのか、というまさに唯一の体験だった。タイトルにある「残像に口紅を」のフレーズは早々に回収され、そのどうしようもない儚さが胸を打つ。その美しい余韻もそこそこに主人公は突き進む。家族らが消失した時点では、それでもまだ残っている言葉に恵まれていたのだと思い知らせるためだけのような、世界が崩れてゆくその先。つぎつぎに自分以外が消えていく世界は第三部にもなると次第に駆け足になり、最終的には行為や擬音だけが残り、それすらも「ん」に終着する。両脇から崖が迫りきて、ついには奈落にのみこまれたかのように。
裏表紙に「その後の著者自身の断筆状況を予感させる」との文句があったが、 -
Posted by ブクログ
初めて書泉グランデに行った際に気になって手に取った作品。
筒井康隆ってめっちゃ有名な人なんだ…。「時をかける少女」とか「ラゴスの旅」とか色々知っている聞いたことのある作品をたくさん書いているみたいだけど読んでみるのは実際には初めて!かなり昔の小説みたいだけど、全然そうは感じさせないような文章。(でも自分自身が、かまいたちの夜とか平成初期の大学生をモチーフにしていた作品ばかり読んでいたのも原因かも。自分の大学生活はコロナ時代だったから大学生に対しての解像度が平成初期が鮮明なのかもしれない)
文章の構成が章ごとに講義が設定されている、が、しかし講義が抽象的で難しすぎる笑
これは、読ませるために作 -
Posted by ブクログ
筒井康隆作品は殆ど読んだことがないのに比較的最近の文庫本が目についたので読んでみた。
文庫化漏れ作品を中心とした編集ものにしてはクオリティが高い。(正規作品をあまり読んでないので客観的な評価とは言えないが、たぶん。ビートルズでいうとPast Masters Volume1/2 といったところか。)
「悪魔の世界の最終作戦」と「黄金の家」の二作品が特によかった。
前者は、眉村卓との合作扱いとなっていて、眉村の「最終作戦」という作品の原稿用紙の裏に筒井が「悪魔の世界」という手書きの原稿を書き、そのままごちゃ混ぜで校正刷りされ、校正の時間がなかったのでそのまま掲載された、という設定。二作品の境 -
Posted by ブクログ
SFの設定をベースにしているけれど、人間が極限状態で発狂していく様子など、どこか滑稽だがリアルでもあり、読んでいて癖になる面白さだった。
16編の短編が収められているが、どれも60年代に書かれたものとは思えない。
「ひとの愚かさが変わらないかぎり、筒井康隆の小説は面白い。つまり、筒井康隆の小説は永遠に面白いのである。」という裏表紙の一文にうなずいてしまう。
ロボットがやたら干渉してきてうるさいとか、10分間を何度も繰り返すタイムリープもので、ただ人々がおかしくなっていく話、大学生VS予備校生の話、長生きできる錠剤の争奪戦‥
どの作品も、スケールが大きいのか小さいのかわからない感じがツボだっ