筒井康隆のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
本書は2005年に岩波書店から刊行された単行本を文庫化したもの。「笑い」というものの本質について小樽での講演会とシンポジウムにて真剣に論じたものを書籍に纏めた。講演は、臨床心理学者の故・河合隼雄、解剖学者の養老孟司、そして作家の筒井康隆。シンポジウムの方は、この3名に女優の三林京子と特定非営利活動法人絵本・児童文学研究センター理事長の工藤左千夫が司会として加わる。
「笑い」と「健康」との関係から始まり、様々な事象と笑いとの関連性について次々と話が展開していく。笑いだからと言って決して楽しい内容ではなく、各人が自分の専門または広い知識を基に、極めて真面目に持論を披露していく。シンポジウムでは各所で観客が笑う(笑)を入れているが、これは発言者の言い回しの面白さに反応しているだけ。
お目当ての筒井康隆の講演内容については、最近自伝関係の本が数冊発売され熟読したこともあり、既知内容が多かった。笑いに否定的な評論家に対する批判も含まれており、かなり根深い面も露呈し、棺桶に入る寸前まで呪い続けることだろう。この言い回しはきっと気に入ってくれることだろう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ筒井康隆さんの話を読んだのはこのパプリカが始めてです。最初はとらえどころのない話だと思いながら読んでいましたが、次第に話の展開や夢と現実という世界の構造に引き込まれて行きました。第一部でははっきりしていた現実と夢の境界線が第二部では曖昧になっていき、ついには混じりあってしまいます。読者の意識では現実と夢との区別がつかなくなってしまい、まさしく混沌とした夢を見ているような心地になることでしょう。一方この作品ではメインとなる夢と現実の他にも様々なモチーフが存在していると思います。いかに常日頃の思考によって抑制されていたとしても拭い去ることのできない情欲の存在であったり、潜在的に存在する恐怖が顕現した時の人の言動だったりです。
このように、筒井康隆流の、理性と対する本能的な情欲の描き方という点もこのお話のモチーフの一つとして読者に強く印象付けられるのではないでしょうか。 -
Posted by ブクログ
かつて人文学徒だった者の一人として、一度は読んでおかねばならないと思っていた作品をようやく。いや面白かった。さほど学業に熱心な学生というわけでもなかったけれど、それでも学生時代にかじったあれこれの断片を少々思い出した。
全編を通して繰り返されるHIV患者への差別、女性差別、同性愛差別の描写にはずいぶん辟易したものの、ここまでくるともはや潔い。良くも悪くも(良くはないか)そういう時代だったのだろうと感じた。
筒井康隆氏の作品は『家族八景』を遠い昔に読んだ気がする……程度にしか触れてこなかったけれど、とんでもなく軽妙な語り口でぐいぐいストーリーを牽引していって、倫理的にどうだとか登場人物に共感できるとかできないとかそういったことが些事に思えてくるほど読者を作品のペースに巻き込む手腕を持った恐ろしい作家なのだなあと感じた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ作中で言及している通り、英語などではこうはいかないでしょう。自分自身を形容するだけで何十通りの言い換えができるのは、改めて特異かもしれません!
有名すぎる実験小説ですが、やっと読めました!
半分くらい減っても、文章を読めるレベルで紡いでいける凄まじい筆力。
特に情事を、限られた文字数であんなに艶やかに描写できるのが驚嘆しました。普通にえっちでした
最後の数十ページ、読みにくさが優ってくると、読み進めるのが辛くなってきて、なかなか骨が折れたのですが……ここをおざなりにすると、それはそれで実験としては失望されると思うので難しいところですね。