筒井康隆のレビュー一覧

  • カーテンコール

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    今年で90歳の筒井さん。「最後の作品集」と言われたら、とりあえず読まないわけにいかない。さすがに昔ほどの毒はもうないけれど、レトロ感たっぷりで、ドタバタや批判精神も忘れない御大〝らしさ〟が散りばめられた走馬灯のごとき25篇。芳山和子や小松左京ら懐かしい面々が登場する「プレイバック」が感慨深かった。ほとんどマニア向けと言えそうな一冊。

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    2024年01月16日
  • カーテンコール

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    ”最後の作品集”と言いながら、今後も「最後最後詐欺」として恐らく作品を出してくれるであろう筒井康隆御大の最新短編集。

    25の超短編、すなわちショートショートを収めたものであり、エッジの効いたブラックユーモアはいまだに健在であり、読者を安心させてくれる。

    個人的に気に入ったのはコロナ禍の日本社会を5拍子・7拍子のリズムで風刺的に描いた「コロナ追分」、そして「時をかける少女」や「文学部只野教授」など筒井康隆の過去の名作の主人公が突然現れて著者とユーモラスな会話を繰り広げるドタバタ劇「プレイバック」など。

    最後、と言わずにまだまだ元気でこうした作品を読ませてほしい。

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    2024年01月14日
  • 誰にもわかるハイデガー 文学部唯野教授・最終講義

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    ハイデガーの解説本の中でもいちばんわかりやすいと言う評価の「ハイデガー『存在と時間』を解き明かすNHKブックス」を読んでみたものの、まったく理解出来なかったので、さらにわかりやすそうなこの本を読んでみました。

    結果は、理解出来たとまでは言えないけど、「なるほど、こういう風な事が言いたかったのね。」程度のことはわかりました。

    『存在と時間』には。現存在とか平均的日常性とか、実存とか、本来性、非本来性とか、よく分からない単語が頻出するんだけど、まずはこの本から読んでみると、多少は理解の助けになると思います。

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    2024年01月11日
  • カーテンコール

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    25篇の掌篇集。
    言葉遊び、ナンセンス、奇想天外ごちゃ混ぜになった玉手箱。これで最後とは嘘か誠か?
    「附・山号寺号」の切れ味、さすが!

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    2024年01月08日
  • カーテンコール

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    端々のワードセンスは流石と思いつつ、個人的には「夜を走る」が面白すぎたせいで、筒井先生の短編集に対する期待値が上がりすぎていたように思う。
    インタビューで御本人が「書く力が弱くなった」とおっしゃっているし、収録作品の内容からしても筒井先生なりの終活の一環のつもりなんだろうか。
    ちなみに御年89歳、うちのばーちゃんと同い年です。それを考えると無理に「書け」と言うのは酷な気もしますが、やっぱり、もう一発ガツンとくるやつ読みたいなという気持ちも正直あります。

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    2024年01月07日
  • 笑犬楼vs.偽伯爵

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    口の汚い頑固な爺さん2人の罵り合いを期待していたのに、見事にうらぎられる!
    互いに気を遣い合うかの如き美辞麗句の数々!

    それにしても、蓮實さんが「◯◯させていただく」表現を連発していることに、ガッカリしました…。

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    2024年01月04日
  • 繁栄の昭和

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    同タイトル作の短編を含む短編集。
    筒井康隆ワールドを短編集として味わえる!?ってな感じかな。
    SFやミステリーにユーモア作品に・・・なんか理解できなかった作品など
    個人的には、面白い作品と微妙な作品の集まりで全体的には面白いか
    というと微妙な気がしてなりません。

    複数の文芸誌に掲載された作品をまとめたものなので、
    どうしてもまとまりがあるとは言い難いため、面白い作品と
    微妙な作品とがまとめられたという感覚で読みました。
    面白い作品や良作と感じる作品が多い中で微妙な作品のせいで
    ページ数のわりに時間がかかった感があります。

    「科学探偵帆村」、「メタノワール」、「つばくろ会からまいりました」

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    2023年12月31日
  • パプリカ

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    財団法人精神医学研究所の研究員である29歳の千葉敦子は、おなじ研究所に勤める時田洪作とともに、ノーベル医学生理学賞の受賞候補者です。時田らは、患者の夢の世界を映像化したりそこに入っていくことのできるテクノロジーを開発し、敦子は「パプリカ」という少女に扮して患者の夢のなかで彼らの症状の解析をおこない、治癒にみちびきます。

    一方、研究所の副理事長である乾精次郎は、寵愛する弟子の小山内守雄とともに、敦子たちの利用しているシステムに対する懐疑をとなえ、両者のあいだに対立が生じます。そんななか、洪作は装着したひとどうしで夢の内容を伝達しあうことができる「DCミニ」という装置を開発します。

    敦子は、理

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    2023年12月28日
  • 銀齢の果て(新潮文庫)

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    日本の高齢化問題はますます苛烈なものとなり、政府は70歳以上の老人たちに殺しあいをさせる「老人相互処刑制度」(シルバー・バトル)を実施します。宮脇町に暮らす77歳の宇谷九一郎は、かつてのシルバー・バトルの勝利者である、元刑事の猿谷甚一の協力を得て、生きのこるための戦いに参加します。

    生に執着するすがたをさらす者、二人いっしょに死のうとするも、思い通りにいかず苦しむ者、強者に協力しつつ出し抜く機会をうかがう者などが登場し、さらに元大学教授であり、生と死をともにあじわいつくそうとする津幡共仁、元自衛官である是方昌吾、かつて見世物の小人プロレスで活躍した乾志摩夫といった個性的な面々が、本気のバトル

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    2023年12月27日
  • 笑犬樓よりの眺望

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    雑誌『噂の真相』に、十年にわたって連載された著者のエッセイを収録しています。

    本書の最後に掲載されている文章は、1995年の「断筆宣言」です。著者の「無人警察」という作品が教科書に採用されることがきまったものの、その内容に対して日本てんかん協会から抗議が寄せられたことがきっかけとなり、「あたしゃ、キれました。プッツンします」という著者の「断筆宣言」がおこなわれます。

    著者は、とりわけブラック・ユーモアを駆使する作家であることから、さまざまな方向からの批判や抗議を受けることが多いのですが、そのような場面において文学者としての矜持を示さなければならないという使命感のようなものを語っています。や

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    2023年12月27日
  • 富豪刑事

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    大富豪である神戸喜久右衛門の息子で、キャデラックに乗って高級葉巻をいつも吹かせている刑事の神戸大助が、難事件を解決にみちびく作品です。

    若いときに阿漕な商売で金を得た喜久右衛門は、大助が世のなかのためとなる仕事をしていることを喜び、彼のために思いもよらない便宜を図ってくれます。さらに喜久右衛門の有能な秘書である浜田鈴江も大助の仕事に協力を惜しまず、大助は通常の捜査では思いもよらないような資金をもとに、事件の真相を明らかにしていきます。

    事件を解決するための方法が、あまりにもスケールが大きすぎて、爽快な気分さえおぼえました。くたびれた刑事が登場する作品もいいですが、こういう発想を思いつくのは

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    2023年11月26日
  • 笑うな(新潮文庫)

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    著者のショート・ショートや短編小説など、34編を収録している本です。

    巻頭に置かれている「笑うな」は、タイム・マシンを発明したという男の物語です。ナンセンス小説なのですが、このアイディアで一編の短編小説を生み出してしまうのは、容易なことではないとうならされました。

    「ベムたちの消えた夜」は、火星の探査によって生物が存在しないことが明らかになり、日常から離脱するような想像力の生きる余地がなくなっていく世界に諦観をおぼえつつあるSF作家のある日の出来事をえがいた作品です。著者のアイロニーの感覚がよく発揮されているのですが、それとともに澄み切った気分がもたらされるような、不思議な読後感が印象にの

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    2023年11月26日
  • 七瀬ふたたび(新潮文庫)

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    テレパシーで正体を暴き、人間が怖い事をヒタヒタ伝える前作『家族八景』とは根本的に属性が異なり、こちらは異能者を前面に押し出したいわゆる完全なSF作品。
    映像化出来そうなドラスティックな展開だが、テレパシーを舞台装置として文学的に消化した前作が好みの自分としては、今作はどうしてもノリ切れなかった。

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    2023年11月26日
  • 俗物図鑑(新潮文庫)

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    風巻機工で営業課長を務める雷門享介は、平松礼子を相手に、取引先の会社にお歳暮を贈るときの心得を説いていました。やがて二人の距離が接近し、オフィス内で不倫行為にいたってしまいますが、社内のさまざまなところに仕掛けられた盗聴装置によって二人の行為が社長にバレてしまい、礼子は馘首になってしまいます。

    その後、仕事にかまけて家庭のことを顧みない享介は、息子の豪介に殴られたのを機に、家を出て礼子とともに暮らすことになります。ところが、礼子の兄で出版社を経営している平松景吉が、享介の話をもとに『おくりもの入門』という本を礼子に書かせて、この本がベストセラーとなります。さらに景吉は、享介にも接待の評論家と

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    2023年11月12日
  • エディプスの恋人(新潮文庫)

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    「七瀬シリーズ」の第3弾。

    高校の事務員として働くことになった七瀬は、香川智広という男子生徒に向かって飛んできたボールが、とつぜん粉々にくだけ散るという異変に遭遇します。彼女がテレパシーの能力をつかって智広の心のなかをさぐると、ほかの生徒たちにはけっして見られることのない絶対的な自信があり、やがて七瀬は彼が神のような強大な「意志」の力に守られているという確信をいだくことになります。

    智広と彼を守る「意志」の源をさぐるために、七瀬は絵描きである智弘の父の頼央の故郷を訪ねます。やがて彼女は、頼央から「意志」にまつわる秘密を教えられますが、しだいに彼女は自分の智広に対する関心も、それどころか自分

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    2023年11月12日
  • 七瀬ふたたび(新潮文庫)

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    「七瀬シリーズ」の第2弾。

    汽車のなかで七瀬は、自分とおなじテレパシーの能力をもつ3歳の少年・ノリオと出会います。さらにおなじ汽車に、予知能力の持ち主である岩淵恒夫が乗りあわせており、彼の心を通じて七瀬は、この先起きる事故によって、自分たち三人をのぞく乗客たちが死んでしまうことを知ります。

    その後も、念動力の持ち主で七瀬を崇拝するヘンリー、タイム・トラベルの能力をもつ漁藤子などの異能使いたちが現われ、七瀬は彼らと協力し、能力を悪用する者たちとの戦いをくりひろげるなどの活躍を見せます。しかしやがて、七瀬のような異能使いを抹殺する組織が彼女たちにせまり、七瀬と仲間たちはしだいに追いつめられてい

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    2023年11月12日
  • 時をかける少女

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    よくメディアミックスされているのに未だに話を知らないのでいい加減読んでみようということで。意外と短い話でびっくり。会話に古さを感じるけど仕方ないかな。学生同士のSF×ロマンス、いわゆるジュブナイル?若いときに読んだらロマンを感じたかもしれないけどこの時代、この年齢になってはもうさすがに響かない笑
    むしろ筒井康隆の著書は小学生の頃に家にあったメタモルフォセス群島やら奇特な設定の短編集ばかり読んでいたので、こんなに爽やかな話も書く人なのだとは知らなかった。ある意味で物足りない笑

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    2023年11月11日
  • 時をかける少女

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    表題作のほか、短編2編を収録しています。

    「時をかける少女」は、ある日とつぜん、過去にタイム・リープする能力を身につけることになった芳山和子を主人公とする物語です。彼女は、理科実験室で割れた試験管からこぼれ出した液体のにおいをかいでしまいます。次の日の朝、クラスメイトの浅倉吾朗とともに登校中の彼女に、暴走トラックが突っ込んできて、危機一髪のところで彼女は時間を超えて前日にもどってしまいます。その後彼女は、不思議な能力をさずかった時間にもどり、そこにすがたを現わしたクラスメイトの深町一夫から、思いもかけない真実を伝えられることになります。

    「悪夢の真相」では、般若のお面に異常なほどの恐怖をお

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    2023年11月09日
  • 日本以外全部沈没 パニック短篇集

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    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    小松左京『日本沈没』のパロディで、日本列島以外の文明を持った人類が住む陸地ほぼすべてが沈没してしまった世界を舞台に、唯一残った日本へ殺到する、世界の著名人の悲惨な境遇と世界で一番偉い人種となる日本人と三等市民である外国人の軋轢を描いた小説。第5回(1974年度)星雲賞短篇賞受賞作品(ちなみに長編賞は『日本沈没』)。
    2011年、原因不明の天変地異でアメリカ大陸が1週間で海に沈む。大統領はじめ国外脱出しようとする人々で大混乱に。をの後、中国大陸、ユーラシア大陸、アフリカ大陸、オーストラリア大陸が沈没。田所博士は日本列島だけが無事だった理由を解明していた。避難民で人

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    2023年11月08日
  • 家族八景(新潮文庫)

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    『鮮やかさはほとんど皆無』

    題名からしてなんとなく鮮やかそうな場面も
    あるのか…?と思いきや全く反する
    全体的に何だかどんよりというか洞窟の中を
    ひたすらゆっくり進んでいるような感覚
    決してそれが居心地が悪いという訳では無いが、
    思考がポジティブになるような場面はほとんど無

    人間の醜さが小気味良く表現されている場面が
    多い印象のため、好みはあるが面白みは沢山ある

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    2023年11月02日