平岡敦のレビュー一覧
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今年はピエール・ルメートルの作品が二作立て続けに読めた年。しかも先に読んだ『僕が死んだあの森』の後は、ルメートルはミステリーをやめたという話もあるくらいだから、今後は本書のようにハヤカワ・ミステリで出版されてはいるものの、冒険小説に近い普通小説の枠で書いてゆくのだろうか?
本書は第一次と第二次世界大戦の間のフランスの大作三部作の最終編であって、確かにこれまでのルメートルお家芸の謎解きミステリーやスリラーとは縁遠いものがある。それにしても三部作といいながら時代と家系を組み立て繋ぎ語りつつ、一作一作が独立して読んでも楽しめるエンタメ性に満ちており、ルメートルならではの面白さには太鼓判といった味 -
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今年はピエール・ルメートルの作品が二作立て続けに読めた年。しかも先に読んだ『僕が死んだあの森』の後は、ルメートルはミステリーをやめたという話もあるくらいだから、今後は本書のようにハヤカワ・ミステリで出版されてはいるものの、冒険小説に近い普通小説の枠で書いてゆくのだろうか?
本書は第一次と第二次世界大戦の間のフランスの大作三部作の最終編であって、確かにこれまでのルメートルお家芸の謎解きミステリーやスリラーとは縁遠いものがある。それにしても三部作といいながら時代と家系を組み立て繋ぎ語りつつ、一作一作が独立して読んでも楽しめるエンタメ性に満ちており、ルメートルならではの面白さには太鼓判といった味 -
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「フランス組曲」は構想として4部、または5部に渡る大長編になる予定だった。しかし書かれたのは第2部までである。著者がアウシュヴィッツで殺されてしまったためだ。
第一部「六月の嵐」はフランスに進攻してきたドイツ軍のあまりの進撃の早さに、パリの人々が逃げ惑う話だ。
前線の情報が入るのが遅く、遠く砲声は聞こえてくるがパリに住む人々はフランス軍がそんなにあっけなくやられるわけがないと信じていた。一刻も早く逃げなくてはいけない事態になっても、大丈夫かもしれない、とどこか信じている。正常性バイアスの典型例だ。
しかしフランス軍の敗走が明らかになり、事態がいよいよ深刻になってくるにつれて、みな慌 -
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1942年アウシュビッツで亡くなったロシア系ユダヤ人作家が遺した作品。
生き残った娘に託されたトランクの中に入っていたもので、創作ノートも残っており、本になっている2つの章(?)で終わらず、もっと続く予定だったようだ。
最初の「六月の嵐」はドイツ軍が侵攻してくるというニュースを聞いてパリ市民が郊外へ逃げていく「大脱走(エクソダス)」の様が描かれる。複数の家族、夫婦、恋人たちが登場する。なんというか因果応報なところもあって、にやりとさせられる。
次の「ドルチェ」はドイツ軍が宿泊する田舎町の複数の家の様子が描かれる。
巻末には著者の創作ノートと書簡を所収。 -
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思い出補正が入っていない、といえば嘘になる。それでも面白いものは面白い!
小学生の時、『奇岩城』を含むポプラ社版ルパン全集を、何度も繰り返し読んでいました。そして十数年ぶりのこの『奇岩城』
消えた強盗犯、謎の暗号、天下の大怪盗対高校生探偵の追走劇、歴史に隠された秘密の城とお宝たちと、ワクワクする要素は盛りだくさん。昔繰り返し読んでいたため、話の筋はほとんど覚えてはいたものの、それでもテンポの良さでどんどん読まされます。
ルパンと高校生探偵のイジドールの関係性も良かったなあ。怪盗と探偵という敵同士でありながらも、ルパンはイジドールの実力を認め、時によっては対等の友人、あるいはライバルに語り -
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オーウェン・バーンズシリーズ。前作「あやかしの裏通り」がとんでもない超常現象をすっきりと解き明かしてしまう物語だったので、今度もその傾向かと思ったら。今回はすべてが解明されるわけではないのだけれどそれがまたいいかも。好き嫌いは分かれるかもしれませんが。
子供の頃の記憶に深く残る映画を探す男。雪の中で起こった足跡のない殺人現場。時代も舞台もかけ離れた二つの物語が、徐々に符合していく不思議な読み心地の作品です。もちろんトリックを解き明かすミステリとしての部分が大きいですが、科学だけでは解明できない奇妙な部分も読み応えたっぷり。あれとこれとがあんなふうに繋がってくるとは……!
一見甘く輝かしい運命の -
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幽霊屋敷、降霊会、怪しげな影、密室殺人。素敵にいかがわしいオカルト要素が満載のミステリ。こういうの、大好きだわ本当に。次々に不審な事件が起こり、これだけ風呂敷広げといてきちんと解決できるんだろうか、とちらりと思ったりもしましたが。杞憂です。
サスペンスフルな展開が魅力です。ぐいぐい引っ張られ続け、そして一段落つくところの展開が! えー、「手が冷たい」ってそういう意味か!!! あれは鳥肌ものでした。ミステリ的にもあそこで一気に混迷に陥ってしまいましたし(苦笑)。
探偵役のツイスト博士がなかなか出てこない、って思ってましたが。なるほどそういう物語だったのね。そして最後の最後でまさしくガツンとやられ -
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カミーユ・ヴェルーヴェン警部のシリーズ)で一気に燃え上がった感のある作者ピエール・ルメートル。あちらは文春文庫。第一次大戦に纏わる物語を描いた『天国でまた会おう』は早川書房でハードカバーと文庫版の同時刊行。この作者特有の、とても奇妙な主人公の人生を描き、ゴンクール賞(フランスの芥川賞)・英国推理作家協会賞を受賞し、国内でも話題を読んだ(ルメートルはどの作品でも話題を呼んでしまうのだが)。本書は『天国でまた会おう』の続編ではあるが、一部登場人物が重なることと、時制が前作を引き継いでいることの二点だけであり、前作が未読であっても全く独立した小説として十分に楽しめる。単独でも、相応の推進力を蓄えた
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カミーユ・ヴェルーヴェン警部のシリーズ)で一気に燃え上がった感のある作者ピエール・ルメートル。あちらは文春文庫。第一次大戦に纏わる物語を描いた『天国でまた会おう』は早川書房でハードカバーと文庫版の同時刊行。この作者特有の、とても奇妙な主人公の人生を描き、ゴンクール賞(フランスの芥川賞)・英国推理作家協会賞を受賞し、国内でも話題を読んだ(ルメートルはどの作品でも話題を呼んでしまうのだが)。本書は『天国でまた会おう』の続編ではあるが、一部登場人物が重なることと、時制が前作を引き継いでいることの二点だけであり、前作が未読であっても全く独立した小説として十分に楽しめる。単独でも、相応の推進力を蓄えた
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1912年の小説。ルパン・シリーズです。面白い、訳も良い。
ケレンとヒロイズムに満ちて、エンターテイメントずぶずぶです。
ルパンの手下が捕まった。もうすぐ死刑になってしまう。なんとかして救わねば・・・。という物語。
どうやら当時のフランスで話題を呼んだ汚職事件なども変奏して盛り込んでいるらしいですね。
(つまり、「モリカケ事件」を変奏して「新宿鮫」シリーズの新作を書くようなものでしょうか。期待。)
これも実はかなり読み終わってから経過しているので、詳細は覚えていませんが、とにかく悪役がすごい。強い。もうこの強烈さ、ダークさ、毒気。「そうか、伊坂幸太郎って日本のモーリス・ルブランだったのか!」 -
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「その女アレックス」が有名なピエール・ルメートル。
他の作品も含めて、日本の出版界にも旋風を巻き起こしたといっていいでしょう。
「アレックス」の2年後のこれがまた、フランスで最高の文学賞である、ゴンクール賞を受賞した作品。
奔流のようにあふれ出る才能を堪能できます☆
第一次大戦中の1918年から話は始まります。
真面目で平凡なアルベールは、上官のプラデル大尉の非道なやり方をたまたま目撃してしまいます。
戦場の混乱に乗じてプラデルに生き埋めにされかかったところを仲間のエドゥアールに助けられますが、エドゥアールはこれで顔を半ば失う大怪我。
裕福な家の出のエドゥアールは変わり果てた姿を見せたくない