ケン・リュウのレビュー一覧
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ネタバレ楚漢戦争を下敷きにしたケン=リュウの異世界ファンタジー第2巻。第一部の完結編。
前巻と比べ、主要登場人物の陰の部分がより深く描かれている印象。
登場人物の多くがそれぞれ自分なりに葛藤やら業やらを抱え込んでどんどん濁っていく中で、クニ=ガル(劉邦)は「自分はそんなことしたくなかったんだけど、周りの意見を聞き入れた結果…」という体。実際は相当えぐいことをやっているのに、一人だけそんなに濁らない構造になっているのは実にズルくてうまい。
人物の大きな運命に関してはここまでのところ下敷きに忠実なので、あの人やあの人やあの人も今後随分ひどいことになっていくのかなあ…と思いながら読むと実に苦々しい気分になれる。この苦々しさを変に昇華しようとしないところもこの作品の魅力だと思うし、次巻以降もしっかり苦く書いてほしいと思う。 -
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(巻の一、二を併せての評である)
ケン・リュウ版「楚漢戦争」。竹や木、鯨骨といったアジア的な材料を用いて、飛行船や潜水艦を活躍させる、著者自らの命名によるシルクパンクというジャンルを創出して見せたファンタジー小説。
紀元前中国における項羽と劉邦の対決を、ゲド戦記の舞台、アーキ・ペラゴのような架空の多島海に置き換え、ウェルギリウスの叙事詩『アエネーイス』に登場するような神々に似た各国を贔屓する神々まで登場させて換骨奪胎している。
ただ、ストーリーそのものは、人口に膾炙した鴻門之会や四面楚歌など、楚漢戦争をなぞっており、新味は少ない。横山光輝のマンガを読んでいるのと似ている。英雄は英雄らしく、知者、賢人は英知を披歴する。少し違うのは、女性の活躍が目立つことだ。
巻の一、二で第一部を構成している。第二部も、中国の話に基づいたものになるのかどうか。中国の古い物語は白髪三千丈的なスケールの大きさを誇るが、ある意味で人間の描き方が紋切型でマンガチックというか、講談調。調子よく読み進めるのはありがたいが、後に残るものがない。
ないものねだりをしても仕方がないが、『紙の動物園』を読んで、この長編に手を伸ばした読者はあてが外れるだろう。別のジャンルの小説に挑戦した作家の意欲に拍手を送るか、別の作家を探すかは読者にゆだねられている。 -
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AIが普及した近未来にAIと人間の関係を考えさせる16編。海外の作家でケンリュウ以外知らない作家だが、面白かった作品も多い。日本のロボットはお友達SFに比べてダークなものが多かった。
エンドレス サード・Z・フセイン 個別のAIにも経済的な浮き沈みがある設定が楽しい
アイドル ケン・リュウ 自分とそっくりのAIをつくるということを三井住友中島社長は実現してる?
もっと大事なこと サラ・ピンスカ― AIによる殺人? よくある設定だが実際におこると怖い
人形芝居 アレステア・レナルズ 乗組員ほぼ全員死亡した宇宙船でAIが右往左往
翻訳者 アナリー・ニューイッツ AIの言葉を人間にわかるように翻訳する職業?は不滅です
赤字の明暗法 スザンヌ・パーマー ロボットのために貧乏オーナーが活躍するいい話。 -
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ネタバレSNSで見かけて気になったので読んでみた。
アメリカに住む女の子マディーのパソコンに意味不明な絵文字のチャットが届く。表題3連作を含むSF短編集。
宇宙人なのか異世界人なのか。本作ではどんな接触があるのだろうと興味を抱いて読んでみたところ、相手は意識をデータ化され、デジタルネットワークの世界に存在する父親だった。
本作が書かれたのは2011年らしい。当時に読みたかったかも。今ではとくに意外性を感じない設定となってしまった。
表題作はまだよかったのだけれど、翻訳のせいなのか、専門用語が多いせいなのか、全体的に読みづらく、ストーリーが頭に入ってこなかった。お酒を飲みながら読んでいたせいかもしれない。 -
Posted by ブクログ
・ケン・リュウ編「金色昔日 現代中国SFアンソロジー」(ハヤカワ文庫SF)は「折りたたみ北京」に続く中国SFの第2弾である。登場人物等、さすが中国である。カタカナでではなく、漢字の名前が多い。ま づこのことに感心してしまつた。それほど私が中国とは無縁の読書生活を送つてゐるといふことである。さういふ内容の作品もあればさうではない作品もある。実に様々である。「本アンソロジーには、全部で十四名の作家による十六篇の作品が収録されて」(「序文」12頁)をり、「作品渉猟の場を拡大する方向に目を向けて」(同前)編まれたといふ。ただし、「本プロジェクトは、中国現代SFの代表的な作品を集めるという意図は」(同13頁)持つてゐないといふ。私にはいかなる作品が「中国現代SFの代表的な作品」か分からない。「中国SFと呼びうる作品の多様さと中国SF作家界の雑多な構成」(同前)といふことは、中国SFといつたところで、決して一つにくくれるものではないといふことなのであらう。
・表題作宝樹「金色昔日」はおもしろい作品であつた。私は現代中国の歴史を知つてゐるわけではないが、 それでもこの作品が現代中国の歴史をさかのぼつてゐることは分かる。主人公の「いちばん古い記憶はオリンピックの開会式だ。」(222頁)といふのが北京五輪であれば、彼は私達の同時代人であると言へる。 「三年生のときに感染症のSARSが流行し」(226頁)た。次にサダム・フセインやビン・ラーディンが出てくる。例の9・11もある。かうして様々な出来事があり、ゴルバチョフがソ連邦を作り、「?小平の計画経済改革が失敗し、経済は悪化の一途をたど」(243頁)る。さうして共産党内部抗争から天安門事件が起きる。主人公は学生側の指導部に加はるも、最後は軍隊に掃討される。……ここまで書けば十分であらう。この作品は歴史を改編しつつさかのぼつてゐる。従つて、最後は日独伊の三国同盟対米ソ同盟であ り、この中国側の動きとして国共内戦と国共統一戦線による抗日闘争である。この間に幼なじみの恋人が登場する。この女性の運命は歴史に弄ばれてゐる。最後は日中戦中に主人公に会ふことかなはず死ぬ。「ある意味で本書の作品中最も中国的な物語であ」(ケン・リュウ解説218頁)り、「人民共和国の歴史を知れ ば知るほど、この物語の意味もはっきりと見えてくる。」(同前)といふ。私に見えたものが宝樹の見たものであるなら、これが中国国内で発表できるのかと思ふ。「最初の公式な出版が英語版と」(同前)なるさうである。原典には"No Chinese publication"とある。中国語版なし。訳者はケン・リュウである。「公式な出版が英語」であるなら、非公式な中国語もあるのであらうか。中国国内で出せないから英語版を出したのではないのか。中国の現状を見る限り、危険を顧みずに敢へて出版するとは思へない。宝樹はいかなる人かと思つても、フリーライターであるらしいとしか分からない。web上 にもこれ以上はなささうである。この人、中国で現役の作家としてやつてゐるのだらうか。天安門事件や文革を描き、?小平の経済改革を失敗といふ。かういふことが許されるのなら、中国は今少しまともな国にな つてゐさうでる。しかしさうではない。あくまで習某の中国である。かうして日本語版が出るからには、この人の現在を心配する必要はないのかもしれない。もちろんこれは例外的な作品である。本書は普通のSFばかりである、とは語弊があるか。しかし、ここに様々な傾向の作品があり、様々な内容の作品があると知れる。おもしろい作品集であつた。 -
Posted by ブクログ
近年スマッシュ・ヒットを飛ばし続けている現代中国SFのアンソロジー、2019年に発売された「折りたたみ北京」に続く第二弾が満を侍して発売。SF者の期待感を表すかのような分厚さ。「折りたたみ北京」の1.5倍ぐらいになっている・・・(^_^; 早川書房さん、紙の文庫本は上下巻に分かれても構いませんので一冊あたりの厚みを抑えていただけないものでしょうかね〜。紙の文庫本にとって、「携帯性」ってとても重要なポイントだと思うんですけどね〜〜。
閑話休題。
一通り読んでみて、「折りたたみ北京」を読んだ時ほどの衝撃は、正直感じませんでした。読むこちら側の期待値の違いかもしれません。「よーし、面白いSF読むぞー!」と鼻息荒く読み始めたら、肩透かしを食った感じ。SFというよりも、「幻想小説」または「実験小説」といった趣の作品が多い印象です。
ただ、面白くないわけではありませんので念のため。SF風味は薄めかもしれませんが、ひとつの小説のとしての完成度はどれも高く、読後感は良いです。これ、中国の商業作家たちが、クロスオーバーにレベルの高い作品を輩出し続けている、ということですよね。中国の文壇は今、とてもエキサイティングな状況にあるのだと思います。SFの枠に囚われることなく、もっと読まれても良い作品集だと思います。
鴨的お気に入りは、劉慈欣「月の光」、宝樹「金色昔日」、張冉「晋陽の雪」あたり。いずれもSFとしてレベルが高いです。そして、やたらとインパクトがあったのが馬伯庸「始皇帝の休日」。「どこの野崎まどだよ」とツッコミを入れたくなる斜め上のぶっ飛びぶりで、どのような心構えで読めば良いのか最後までよくわかりませんでしたヽ( ´ー`)ノ
いやー、相変わらず肩幅広いですねー。中国SF、当たり外れはありますが、この先も引き続きチェックしていきたいです。