谷川俊太郎のレビュー一覧
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詩をどう楽しむか?は近年の課題だった。
この詩集を読んで、その悩みを突き抜けたように感じる。
言葉で読むのだけど、そこにあるのは言葉ではない。言葉にできない、言葉にならない、何か。例えば空気、感情、見えるもの聴こえるもの。
“詩”という存在を捉えようとするけれど、言葉にしようとすると指の間からこぼれ落ちてしまうような、そんな様子も感じられる。
言葉でどれだけ伝えられるか、を考えることが多いけど、言葉で伝えられないものがあることを伝える、とか、言葉で捉えられないものの存在を認識する、ための言葉たち、という感じがして、その感覚がとても新鮮で、でもずっと探していたという気もして、
とにかく谷川俊太郎はすごいのだ。 -
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ネタバレ谷川俊太郎追悼ウィークとして、谷川俊太郎選の変わり種として何気なく手に取った。茨木のり子、教科書でも取り上げたと思うのだが記憶にない。初読として読んで、こんなに素敵な女性がいたのかと嬉しくなる。詩集自体を読んでいきたいと思った。
好きだった詩
『対話』内部からくさる桃、⭐︎もっと強く、準備する
もっと強く願っていいのだ
わたしたちは 明石の鯛が食べたいと
もっと強く願っていいのだ
わたしたちは 幾種類ものジャムが
いつも食卓にあるようにと
・・・
女が欲しければ奪うのもいいのだ
男が欲しければ奪うのもいいのだ
ああ わたしたちが
もっともっと貪欲にならないかぎり
なにごとも始まりはしないのだ
『見えない配達夫』敵について、わたしが一番きれいだったとき、大学を出た奥さん、怒るときと許すとき
『鎮魂歌』⭐︎花の名、女の子のマーチ、七夕、りゅうりぇんれんの物語、
・・・
いい男だったわ お父さん
娘が捧げる一輪の花
生きている時言いたくて言えなかった言葉です
棺のまわりに誰もいなくなったとき
私はそっと近づいて父の顔に頬をよせた
氷ともちがう陶器ともちがうふしぎなつめたさ
菜の花畑のまんなかの火葬場から ビスケットを焼くような黒い煙がひとすじ昇る
ふるさとの海辺の町はへんに明るく
すべてを童話に見せてしまう
・・・
『茨木のり子詩集』首吊
『人名詩集』くりかえしのうた、兄弟、箸、居酒屋にて
『自分の感受性くらい』詩集と刺繍、自分の感受性くらい、二人の左官屋、波の音、⭐︎木の実
・・・
木の実と見えたのは
苔むした一個の髑髏である
・・・
生前
この頭を
かけがえなく いとおしいものとして
掻抱いた女が きっと居たに違いない
小さな顳顬(こめかみ)のひよめきを
じっと視ていたのはどんな母
この髪に指からませて
やさしく引き寄せたのは どんな女(ひと)
もし それが わたしだったら…
・・・
もし それが わたしだったら
に続く一行を 遂に立たせられないまま
『寸志』苦い味、⭐︎笑って、賑々しきなかの、寸志
・・・
ねえ
笑って!
あちらで
驪姫という娘のように
はればれと
『茨木のり子』(花神ブックスI) 一人は賑やか、みずうみ
『食卓に珈琲の匂い流れ』四行詩
『倚りかからず』時代おくれ、倚りかからず
『茨木のり子集 言の葉3』行方不明の時間
『歳月』本当素敵だった…
その時、夢、⭐︎部分、⭐︎夜の庭、⭐︎恋唄、一人の人、⭐︎急がなくては、なれる、⭐︎(存在)
部分
日に日に重ねてゆけば
薄れてゆくのではないかしら
それを恐れた
あなたのからだの記憶
好きだった頸すじの匂い
やわらかだった髪の毛
皮脂なめらかな頬
水泳で鍛えた厚い胸廓
兀字型のおへそ
ひんぴんとこぶらがえりを起したふくらはぎ
爪のびれば肉に喰いこむ癖あった足の親指
ああ それから
もっともっとひそやかな細部
どうしたことでしょう
それら日に夜に新たに
いつでも取りだせるほど鮮やかに
形を成してくる
あなたの部分
恋唄
肉体をうしなって
あなたは一層 あなたになった
純粋の原酒(モルト)になって
一層わたしを酔わしめる
恋に肉体は不要なのかもしれない
けれど今 恋いわたるこのなつかしさは
肉体を通してしか
ついに得られなかったもの
どれほど多くのひとびとが
潜って行ったことでしょう
かかる矛盾の門を
惑乱し 涙し
急がなくては
急がなくてはなりません
静かに
急がなくてはなりません
感情を整えて
あなたのもとへ
急がなくてはなりません
あなたのかたわらで眠ること
ふたたび目覚めない眠りを眠ること
それがわたくしたちの成就です
辿る目的地のある ありがたさ
ゆっくりと
急いでいます
(存在)
あなたは もしかしたら
存在しなかったのかもしれない
あなたという形をとって 何か
素敵な気がすぅっと流れてただけで
わたしも ほんとうは
存在していないのかもしれない
何か在りげに
息などしてはいるけれども
ただ透明な気と気が
触れあっただけのような
それはそれでよかったような
いきものはすべてそうして消え失せてゆくような
巻末収録の対談(茨木のり子、大岡信)、「美しい言葉を求めて」も面白かった。
(大岡)結局女性対男性というのはイデオロギーだけではとても解決できない面が非常にあると思うんです。
(茨木)まったくですね。
(大岡)男も女もたまたま一緒になった相手、あるいは恋愛している相手から影響される。それで形作られてゆく自我は、自分だけの自我ではなく、相手が入り込んできている自我ですから、そういうところでは、男と女を対立関係だけでとらえることはできない。… -
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谷川さんの詩集を文庫の新刊で見つけて、買ってきました。『ベージュ』というタイトルは、あとがきを読むと、谷川さんのお茶目な面が伺えました。
書き手の想いがダイレクトに読み手の心に響くのが、詩だと思っています。谷川さんのこの詩集の言葉たちは、長年書いてこられてきたから、ここまでのものになったように思いました。
最初の「あさ」というひらがなだけで書かれた詩は、余白も多い分、余計にその気持ちがページの中に満たされているような感じを受けました。そして、ひらがなが多いと、なぜだかじっくり読みたくなりました。
谷川さんが、そのときに置かれた環境や年齢や感情などによって思うことが、言葉となって溢れているような感じの詩集でした。素敵な詩を遺してくださってありがとうございました。 -
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2024年11月13日、老衰のため、92歳で谷川俊太郎さんが亡くなった。
私にとって谷川俊太郎さんは教科書に載っていた詩ではなく、大好きな「ピーナッツ」シリーズの翻訳者としてであり、子供が気に入って何回も読み聞かせた「めのまどあけろ」などの絵本の作者としてだった。そして、ちょっとだけ、やはり好きだった佐野洋子さんの配偶者だった。
亡くなられた日から、たくさんの方が、SNSで谷川さんのお気に入りの、または自分の人生にとって重要だったという詩を投稿していて、しめやかに、囁きかけるように静かな声で、谷川さんにふさわしい、お弔いが行われていた。それはとても好もしく思われた。
「ピーナッツ」は、鶴書房からペーパーバックで出版された。その時翻訳を依頼されたのが谷川さんで、依頼されたから仕事として引き受けた、と、さほど思い入れのなかった動機を語られていた。でも、こんなに長く続けられたのは、やはり読むうちに作品に惹かれたからでしょうね、と。
その後、出版社が代わり、翻訳者も変わって出版されていったが、私は谷川さんの翻訳でなければ馴染めずにいた。
河出書房新社の、死を悼む投稿によって、この全集が谷川さんに改めて依頼された、最近の仕事だったと知った。そして今また、全て谷川俊太郎翻訳の、谷川さんの『ピーナッツ』を読むことができるようになった。そのことが何よりも嬉しい。ペーパーバックのように、どこでも気軽に寝転んでは読めない、重たい本になってしまったけれど。
ご冥福をお祈りいたします。 -
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谷川俊太郎さんとブレイディみかこさんの一年半に及ぶ往復書簡
みかこさんの散文に、谷川さんが短めの文章と詩でお返事する。
といったスタイルでしょうか?
とは言え、みかこさんからの問いはあまり気にせず、好きに返事を書く谷川さん。
自由で軽快なやりとりのおかげで、こちらも肩の力を抜いて文章を楽しめる。
しかし、あくまでも〝手紙〟なので当然だが相手に向けて書かれた文章で、そこには敬意が感じ取れるのが素敵。
谷川さんの詩より
「この世とあの世のあわいに
その世はある」
──【その世】より一部抜粋──
「この世は他人だらけである
他人でないのは自分だけだと思うと
寂しい」
──【自分だけ】より一部抜粋──
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童謡「ぞうさん」の作詞でお馴染みのまど・みちおさんの詩集。
詩人・谷川俊太郎さんの編により集められたまどさんの詩。
このお二方、なんとなく同じベクトルを感じる。
谷川さんは大きなスケールで、まどさんは身の回りの小さなことから、命、ということにアクセスしているような印象。
この詩集は、まどさんのエッセイ的なものが収録されていて、そこからもそのひととなり、人生が垣間見える。
エッセイ→その時期の詩、という繰り返しの構成で進むため、詩の読解の参考にもなる。嬉しい。
特に、【カ といういのち】という章が私はすごく響いて、
「人はなぜ生き物に慈しみを感じるのか」という疑問から、人間は多くの場合、命を奪う側だからだ、という答えに到達する流れが、なんとも沁みた。
そこから続く「カ」というタイトルの詩たち。
「カ」は「蚊」のことで、普段私たちが厄介に感じる、血を吸うあれで、当然の如く叩き潰してしまいがちなあの虫だ。
まどさんは寝ている間に蚊に刺されていたことから、「寝ていて良かった、つぶさないですんだ、良い子を育てろよ」と綴る。
血を吸う蚊はメスであり、卵を産むための栄養としての血、という視点に慈しみが溢れる。
この生き物への愛情、命への慈しみが、この章に限らずテーマとして強い。
魚を食べる、というエッセイでは、魚を食べている時に、海を泳いでいる魚をイメージする、と始まり、
そのイメージが最も強く感じられるのが、
今は魚だったことを微塵も感じさせない「かまぼこ」だ、そこにはたしかに魚がいる、と読み、
そこから「かまぼこのような詩を書きたい」と結ぶ。
なんとも独創的な、しかし強く納得させられる文章だ。
思考がくっきりと言葉になっていて、読んでいるとまどさんの思考を追体験しているような感覚になる。
果ては、石ころとかの無生物への愛情、ずっとそこにある、すごいものなんだ、という感覚にまで到達し、なんだか宇宙の真理に触れているような気にすらなる。
あるがままに生命を考え、謳歌するような詩たちが詰まった、ずっと手元に置いておきたい一冊だ。 -
Posted by ブクログ
とっても軽快で面白かった。
谷川俊太郎はもう言わずと知れたレジェンドで
ブレイディみかこは両手にトカレフをいつか読みたいと思ったまま..この作品が初めましてな作品になった。
谷川俊太郎へ手紙を書く...
って凄いなって単純にとっても俗な感情で。
もちろんそれがファンレターでどこの誰とも分からない面識もない読者がただ個人的に宛てるものなら簡単かもしれないけど
作家として仕事として書くっていうのはスゲー!
のっけからの谷川さんの「あるとない」の詩から
ユーモアは正しく無邪気なものでないといけないという世界的な風潮や
みかこさんの住む英国のブリティッシュユーモアについての説明でもうぐいぐいみかこワールドにのめり込んでしまった
その後の谷川さんの返信文もキレッキレで!
とか書く自分の言葉の乱暴さにげんなり..してしまうくらいに
手紙のやりとりはとても丁寧で無邪気なおふたりがとっても新鮮に感じられました
その後もみかこワールドはセックス・ピストルズやビートルズなんとドストエフスキーまで登場する...
そのあとのちょっと内容についていけなかった感じの谷川さんの返信「その世」が完璧にこの本の核になっているから不思議でしょうがない!
少なくとも私にとって「その世」は音楽を浴びたあとの気持ちにビタ沿いしてくるものだった
そして初めて聞いた「トランスヒューマン」
もうここまでいくと映画化してほしいレベルの
イヤ、映画化されているような気もするけど
体があることの不自由さから解放された世界のこととかデータとして生きること
内と外からデータと幽霊という独特な世界観(みかこワールド)
でもエネルギー不足で停電したらデータより幽霊が強くね?って相手に思わせる前に書いてしまう人間性にも思わずニヤつく。
ページをめくるとバッと描いてある絵も
久々に好きな感じだなーと思いました。
谷川さんの「好き嫌いの判断を、知的な善し悪しの判断よりも信用している気配が私にはあるんです。」というところがとっても好きです。
私もあーだこーだより好き!でいいんだって思って生きていきたい。
そして最後にこの本に掲載されている谷川さんのたくさんの詩...最後の1行がどの詩もとってもステキ!!!