青木薫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
量子力学という分野が、ミクロな世界で生じる「現象の理論」であるのに対し、量子物理学というのは「現象の検証と再現性」である。
1990〜2000年代に素粒子物理学がCERNの可動によって瞬く間に進歩し、重力子以外はほぼ発見。宇宙誕生後、物質と反物質がいかにしてバランスを崩して、物質だけが残ると世界となったのか、これも量子物理学による検証の成果によってスーパーコンピュータの演算で再現できた。
「畳まれた高次元の低次元展開」という三体で取り入れられた量子力学上の理論についても、現実味を帯びてきている。
現在、重力子はLIGOによる重力波の検出によって、理論上の物質ではなくなった。高質量ブラックホールの重力レンズ効果を検証したところ、光と同じく、粒と波の重ね合わせ形状を有している可能性が浮上したのだ。
人類の文明進歩は指数関数的に上昇している。20年前に地球上でできていた実験は、今では宇宙で行っている。第三次イラク戦争ではクラスター爆弾が問題視されたが、現代のウクライナ戦争ではドローン爆弾である。科学技術は必ず戦争利用される。なぜなら各国の科学研究は合法的な軍事研究にほかならないからだ、などというSF作品もあったかな。
本著と関係ないが、永世中立国のカナダにCERNとWHOがあってよかった。高エネルギーポジトロン砲と現存する最悪のウィルスであるウィルスベクター(感染すると種を残すDNAを破壊する人工ウィルス。空気、接触、粘膜感染する上に、自覚症状は一切ない)を唯一有する国だからだ。 -
Posted by ブクログ
まだ上巻だけだが、かなり面白かった。
子供の頃、僕は暗号作りをしたことがあった。日本語の平文をまずローマ字に置き換えて、母音と子音に分解した。それぞれの母音に1から5の数値を与えて、一桁目として、子音を同じように数値化して二桁目に使用した。友達に見せたら、仕組みを見破られた。一桁目の数値のパターンが少ないこと、濁音の表現が"を使っていたことで、大体わかったのだそうだ。
それから数年後、ひょんなことから点字の並びを見かけて、とてもおどろいた。日本語の点字は、まさにぼくが子供の頃作った暗号と思想が似ていた。数値ではなく点になっているだけだ。ぼくは、誰にもわからないように作った暗号は、盲目の人の会話をするための文字だった。それ以来暗号は作っていない。いまこうして、誰かが本に興味を持ってもらうような文章をなんとか自分の経験と照らして、できないかと考えている。
本書では、稀代のサイエンスライターのサイモンシンさんの名著だ。前回オックスフォード大卒業の彬子女王の本を読んだので、ケンブリッジ大学の方の本を読もうと思ったのだった。
最高に面白い。どんどん深刻なことを扱うことになる暗号と、大型化して複雑になっていく仕組みと、結局は鍵とか暗号表のノートを盗まれたら終わりという、アナログというか初歩的なことに落とし穴があって気が付かなかったり。
上巻があまりにも暗号の終わりとしてどうしようもない状況だったので、下巻でまだ話すべきことがあることに、本当の著者の腕がかかっているのだなと思うところだ。 -
Posted by ブクログ
やはりサイモンシンは読ませるなぁ!期待を裏切らない。宇宙創生では理論物理学や天文学の世界に、素人の自分でも惹き込まれたが、まったく明るく無い数論の世界へもこれまたドラマティックに引き込んでくれた。数学ってこんなに面白いものだったんだ。
時代背景や、数学者それぞれのキャラクターも描かれていて、最後まで飽きさせない。専門的な内容を素人にも分かるように面白く書いてくれるサイモンシンの力量と、様々な立場の人たちにも光を当てる公正さが彼の人柄に表れているように思えて、ますます好きになった。フェルマーの最終定理を通して、数学の大統一まで目指したワイルズに最後は感情移入し、感動せずにはいられなかった。数の世界に立ち向かう数学者が、パズルに夢中になる幼児のように純粋に思えた。彼らは数と格闘し、攻略したと思えば翻弄され、少しずつだが確実に未解決の問題を解いていく喜びを知り、魅了され、とにかく美しい数の世界を愛している。狂気と紙一重だが、そんなものと闘える情熱と頭脳を持てることが素晴らしい。彼1人の栄光だけでなく、新しい発見や理論の証明には、たくさんの過去の数学者や、同世代に生きる協力者の力が必要とされ、それが未来の数学者に遺伝子のように伝搬していく遺産なのだと思うと、なんて壮大なんだろう。
この本を読んで、今からでも数学を勉強しなおしたい、そんな大人がたくさんいるんじゃないか。サイモンシンを読むと、こんなに面白い世界を教えてくれて、若いうちに理系を切り捨ててきてしまったのは勿体無かったなと本当に思う。 -
Posted by ブクログ
物理の世界をわかりやすく、又科学者たちの人間模様も交えて興味深く読ませる筆致のスペシャリスト。宇宙の切り口は筆者によって様々だが、入門者にもグイグイ読ませる構成がさすが。科学の進歩に純然にスポットを当てた美談ばかりでなく、地位や名声に執着した人間らしい嫉妬や欲に翻弄された、科学者や科学界の裏側も描いていたのが面白かった。
現在の科学は数多のサイエンティストやそれに関わる人たちの奮闘の末に発展していった。人間の好奇心は歩みを止めることはない。好奇心は過去と現在を繋ぐ遺伝子のようなものだ。
サイモンシンの別の作品もぜひ読みたい!
どんな科学分野でも、人が初心者であることをやめてその分野の達人となるのは、自分は一生初心者のままだと知ったときである。
ロビン・G・コリングウッド
科学者とは、正しい答えを与える者ではなく、正しい問いを発する者である。
クロード・レヴィ・ストロース -
Posted by ブクログ
下巻も非常に面白かったです。
研究の世界では先取権、誰よりも早く発表することを意識することが多いみたいですが、意外と埋もれてしまうこともしばしば、というのがショックでもあり驚きでもありました。
またガモフのおふざけのせい?で過小評価されてしまったアルファーの無念は心に来ました。
それとハッブルがノーベル賞を取ることができなかった話も、とても印象的です。物理的な解釈を避けるその態度が個人的に好きだったのですが、そういった立場故にノーベル物理学賞から遠のいてしまう、という話は悲しいですね、仕方ないと言えばそうですが。
物理では有名なフェルミとチャンドラセカールが、規約を違反して奥さんのグレースに選考が進んでいたことを伝えた話は、素敵すぎました。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ授業のため仕方なく買った本でしたが、まさかここまで面白いとは思っても見なかった。
これまで先人たちが地球上から星を眺め、考えて実験し、それを後世の人たちが受け継いで解き明かしていく。好奇心というのは非常に素晴らしく、やっぱり研究者は尊敬されるものだなと感じた。
この本の面白いところは、ただ行ったことだけを述べるのではなく、当時の研究者の人間についても描かれているところがあることでより面白くなっていると感じる。
最後のビッグバン仮説に客観的証拠を残した人物が、まさかデータ取るのが好きなだけでそのデータの意味を探ろうとしてないってのがまた面白い。