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Posted by ブクログ
遺伝に関する言説について、特に優生学に繋がっていくような言質が蔓延っている中、決定論的に全てを形作るものではないが、人生の成り行きを形成する重要なファクターであるということを認識した上で、どう平等を実現するか、という思考への過程が記されていて、目が覚める思いでした。
遺伝による差は確かに存在するが、その生まれながらに得た人間の価値と、社会的に価値づけられた価値を混同してはならない、という言葉には、昨今の社会的な雰囲気に一つ明かりが見えた様な感覚になりました。
Posted by ブクログ
ヒトゲノムが解読された時に「全ての人間は99.99%同一だ」と言ったクリントン大統領の発言は間違っているし、間違いの上に社会基盤を構築しようとするのも間違っている。遺伝による違いは歴然と存在しており、学業の達成度や社会的な成功に関係している。ただし、それは優劣という比較の対象になるようなものではなく、運良くたまたま受け継がれたにすぎず、次の世代に受け継がれていくという保証もない。
必要なことは機会の均等(全ての人に同じ教育機会を与える)ではなく、個別化、最適化された教育である。ろうやアスペルガーが障害でなく特性だ、というのはやや言い過ぎのように思うが、公平と平等の違いなと、遺伝的な差異と社会制度について考えさせられるとことも多い。
著者には二人の子供がおり、一人は普通でもう一人は発話障害があるという。このことからも行動遺伝学には馴染があったらしい。全般に翻訳が素晴らしく、出版社のサイトにも詳細な脚注が載せられていて出典にも当たりやすい
・過去の優生学への反省から、学業に関する研究は遺伝を一切無視したゲノムブラインドの立場をとる研究者も多いが、ここに遺伝が関与していることは明白で、無視すべきではない。
・GWASの結果、個人のポリジェニックスコアは計算されるし、それが学習の達成度などを説明はできる。ただし、GWASは個人の環境などは一切考慮していない
・遺伝子があるから結果が怒る、など因果というものについて、ヒュームは
1)AがあればBが起きる
2)AがなければBはない
の二点が必要と考えたが、1はともかく、2は通常の科学的な検証には乗りにくい。
・遺伝学は、比較的よく似た環境に生まれ育った人たちが、異なる人生を送ることになるのはなぜかを理解するためには役立つ方法だ。しかし、明らかに異なる出発点にたった人たちが、同じような人生を送らない理由を理解するためには役に立たない。
Posted by ブクログ
遺伝と「平等」と言うと、優生学とか過去の色んな犯罪学とか絡んできて若干引くところがある。
筆者も、それは否定しないし、実際過去にはそれが利用されて来たのも事実。
だが、社会的成功や人生に、「遺伝」が絡んでいることは、否めない事実であり、それに目を瞑ることもまた、誤りにつながると論ずる。
前半は、様々な遺伝に関わる研究の成果、手法の進歩、問題点について触れ、遺伝の影響を排除は出来ないことを述べ、後半でそれを前提にした上で、では、どう言う社会を作っていくのが望ましいのかを説明していく。
いい内容だと思う。
環境ガチャと遺伝ガチャは事実であるが、いくつかの特定の遺伝子に起因する病例などを除くと、極めてたくさんの因子が絡んでくる為、簡単にこの遺伝子が決定的とは言えない。あくまで統計と確率の問題ではあるが、それでも確実に、傾向はある。
遠くから見ればはっきりするが、近づくほどぼやけると言う言葉もいいな。
そうして、そうして「不平等」を一番背負った人が幸せになるための適切な介入はなされるべき。
生まれ持ったものを「手柄」には出来ない。
自分が何であるか、何になるのかが不明な状況で社会は設計されるべき。
感謝と謙虚と援助だな。
Posted by ブクログ
面白かった。
各種研究の結果は肌感覚に照らしても納得感が強かった。現代の知識社会で高い評価を受けがちな能力・特性に、遺伝はまあまあ影響している。
個人的には「遺伝学を優生学と混同しないで!」と言うためにどれだけ紙幅を割くのか……と感じてしまった。
内容の割に文が重たい。それだけアメリカの状況が複雑だということなのかもしれない。
Posted by ブクログ
優生学や人種主義と結びついた遺伝学の悪歴史が「人は皆同じ」に固執させ、最新テクノロジーとなった遺伝学の活用を妨げている。同じ遺伝子でも社会や成育環境が異なれば成り行きが変わるとはいえ、適切に使えば効率的な介入や政策が可能になる。
社会のタブーになってたり、一部の人たちだけのメリットになってたりじゃなくて、ほんとに、適切に扱えるようになるといいと思います。
Posted by ブクログ
遺伝の影響は軽視もできず、かといってタブーもしてはいけない。咀嚼が難しい本。ただ、我々はたまたまうまくいっている、という点を心には留めておきたい
Posted by ブクログ
少し内容的には難しかったが、今まで人を分ける時にはそれは優生論となってしまい、あまり遺伝と人の関係は研究されて来なかった。
だけども、人は誰しも違う遺伝子に生まれ、それが個性として現れることは事実である。
生まれた時の遺伝子と生きる環境によって人の人生は変わってくる。
よく言われる親ガチャは悪い意味で使われがちだが、人が親からもらってるもの、遺伝子が違うのは事実である。
それをうまく利用することで社会を良くすることはできるかもしれない。
そう思わずにはいられないが、持つものが結局は負担が大きくなる。それには結局は反感を買ってしまう部分があり、どうなのだろうと思ってしまう。