青木薫のレビュー一覧
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紀元前500年頃のピュタゴラスから影響を受けた、17世紀頃のフェルマーが証明したとされる定理を、三世紀半をかけて証明される。
多くの天才が一歩ずつ様々な研究を進め、その点と点を繋げて、完全証明に至るまで、凄く壮大でロマンがある物語だった。
証明したワイルズだけの半生でも、読み応えがあるが、三世紀半の間に関わった一人一人の歩みや人生についても細く書かれている。
算数レベルしか分からないが、出てくる定理等は補遺を交えて細く説明されている。「なるほど」と分かる事もあれば、何となくも分からない内容もあった…ただ細かな理論が分からなくても十分に楽しめた。 -
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科学の歴史を構造的に振り返る論文です。ある程度科学の歴史をおさらいしてから読み始めるべき本です。とはいえ、大体の歴史はみなさん学んでいるので、そんなに構えなくてもいいかと思います。
しかし、本書は私にとってはとても難解な書籍の一つです。それでも、とても興味を持って読み進めることができる面白さがありました。
本書は、科学革命(科学の常識が天動説から地動説に置き換わるような事象)がどのような構造で、どのようなプロセスを経て置き換わるのかを、つぶさに考察していくのです。パラダイム・シフトです。このパラダイムという言葉を創設した人が著者のトマス・S・クーン氏です。電気学、光学、熱理論、天文学、物理学、化学など様々な分野で革命がありパラダイムが置き換わってきているのです。えらい単純化して書きましたが、本書は、科学の転換点に立ち会うかの如く、どのようにパラダイムがシフトしていくのかを確認していくのです。
高い次元から低い次元を眺めるが如くです。転じて、この論文から、現在私たちがいる次元から、さらに高い次元を想像することができるのでしょうか?
科学の歴史を構造的に捉えるという視座を学ぶことができます。この応用ができないか?現在の社会を見つめる視座として、自身の設問として掲げておきたいと思いました。 -
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ネタバレ数学以前に算数すら苦手な私でも、飽きるどころかずっとワクワクしながら読んだ一冊。
歴史に残る難問に挑む人たちの情熱が大変よかった。
大好きな本です。
誕生日のパラドックスの問題楽しすぎ。
ピュタゴラスの弟子の死因が√2 って……ええ……?
「この問題の証明方法を知っているが、余白が足りないので書きません」があまりにカッコよすぎる。
オイラーの橋の問題おもしろー!!
問題が出された状況も含めて面白い。
まさか証明後に悪夢が訪れるとは。地獄のような日々……迫るリミット……。ハラハラしながら読んでいった。
すべてを終えた後の寂しさ。そして快さ。
いやーーいい本だった。
あと、めちゃくちゃどうでもいいんですが、オイラーの橋の問題の攻略方法を私なりに考えました。
①分身の術を習得してひとり1橋ずつ渡る
②スライムになって身体を自在に伸び縮みできるようにして7つの橋を一瞬で同時に渡る
④追加で橋を建設する
⑤川を泳ぐ
⑥観測者に催眠術をかけて条件通りに橋を渡ったと錯覚させる
⑦ 「この問題の証明方法を知っているが、余白が足りないので書きません」とハッタリをかます
個人的には①②はファンタジー技の有無を数学的に証明しないと不可と言えないので、強そうだなーと思いました。 -
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フェルマーが余白に何を見ていたのかは、いまだわからない。
17世紀、フェルマーは「余白には入りきらない」と書いた。300年以上、オイラーもクンマーも、途中までは進む。部分は埋まるが、全体は埋まらない。谷山豊と志村五郎は、楕円方程式とモジュラー形式が同じ数列を持つのではないか、と言い出す。1984年のフライ、1986年のリベットを経て、フェルマーの式を直接解かなくても、谷山=志村予想の必要な部分を証明すれば、フェルマーの最終定理も証明できる。
1986年、ワイルズは7年間、130ページで半安定楕円曲線とモジュラー形式の対応を示した。130ページかけてフェルマーの式を計算したのではない。1993年6月23日、ケンブリッジで「ここで終わりにしたいと思います」。秋に欠陥が見つかり、1994年9月19日に直す。一筋縄ではいかなかった。この接続を私は力業と呼びたい。
1482配置を人間が1つずつ検算できない四色問題、130ページを分担査読したワイルズ。どこまで人が確かめられる証明なのか。そこがなんとわくわくさせてくれる。フェルマーが「余白には入りきらない」と書いた証明が何だったのかは、いまだわからない。 -
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暗号解読 下
原作:サイモン・シン
訳:青木 薫
出版社:新潮社
新潮文庫 シ 37 3
下巻のはじまりは、暗号ではなく、言語と、古代文字の解読である。暗号は、言語に通暁している者が適しているといわれていて、ヒエログリフなどの解読の手法と暗号との対比による解説である。
もともと、敵が知り得ないような言語があれば、その言語で対応していれば、平文でも全く問題はない。太平洋戦争の中で、ナヴァホ暗号といわれた言語がそういった使われ方をしている。
そういえば、映画でマンハッタンで、敵にかこまれた工作員どうしが、アフリカ戦線で覚えた言語でコミュニケーションを図っているのを思い出した。
次にヒエログリフである。その解読は、ロゼッタストーンである。エジプトで発見されたその石板には、ヒエログリフ、デモティック、ギリシア文字の3段に同じものが書かれていると推定されていたが、依然としてヒエログリフの解読には時間がかかった。なぜなら、解読者たちは、ヒエログリフは、アルファベットと同様な表音文字ではなく、漢字と同様、表意文字であるとおもっていたから。
やがて、王の名前を記載したカルトゥーシュに、パターンを見出す。解読事業を引き継いだシャンポリオンは、そのパターンが有名な王、ラムセスであること突き止める。最初のヒエログリフが解読されたのだった。
シャンポリオンは成果として、「ヒエログリフ体系要約」を発表し、実に1400年ぶりに、ヒエログリフは、言語としてよみがえった。ヒエログリフとは、コプト語の表音文字であったのだ。
その後、アテネの線文字Bなどの解読がすすめられていく。記号に数字が振り分けられて、そのパターンを推定していく。暗号解読と同様の手法が適用されていく
次に、20世紀のドイツの暗号、エニグマの解読現場にもどってくる。
エニグマ解読のために作られた、コロッサスという機器、それが、やがて、プログラミングができるコンピュータへと結びついていく。世界最初のコンピュータはENIACではなく、コロッサスなのだ。
コンピュータについては、DES暗号、公開鍵と、秘密鍵の組み合わせによるもの、素数のかけ算としてのキーだったり、モジュラー算術というのがでてきて、素数の剰余系など鍵の配送問題の結果の発明であったことなどの解説が続く
RSA暗号がきれいな公開鍵システムと解説がある
最後は量子暗号での解説で終わる。その解読能力は、解読不能な暗号を指数的な能力で行うことが予想されて、銀行などが水面下で研究を進めている状況と伺う。
楕円暗号(ECC)などの記述はすくなかったが、現代数学の発達により、符号化、暗号化の発展が目のつかないところで進められているに違いない。
ISBN:9784102159736
判型:文庫
ページ数:384ページ
定価:710円(本体)
2007年07月01日発行
目次
<上巻>
はじめに
第1章 スコットランド女王メアリーの暗号
“秘密の書記法”の進化
アラビアの暗号解読者たち
暗号文の頻度分析
西洋のルネサンス
バビントン陰謀事件
第2章 解読不能の暗号
ルイ十四世の大暗号と鉄仮面
ブラック・チェンバー
バベッジ対ヴィジュネル暗号
私事通信欄から埋蔵金まで
第3章 暗号機の誕生
暗号の聖杯
暗号機の発達―暗号円盤からエニグマまで
第4章 エニグマの解読
鳴かないガチョウたち
コードブックの奪取
匿名の暗号解読者たち
<下巻>
第5章 言葉の壁
失われた言語と古代文字の解読
線文字Bの謎
“つなぎ”音節
馬鹿げた脱線
第6章 アリスとボブは鍵を公開する
神は愚か者に報いたまう
公開鍵暗号の誕生
最有力候補―素数
公開鍵暗号―もう一つの歴史
第7章 プリティー・グッド・プライバシー
大衆のための暗号―か?
ジマーマンの名誉回復
第8章 未来への量子ジャンプ
暗号解読の未来
量子暗号
付録 暗号に挑戦―一万ポンドへの十段階
補遺
謝辞
訳者あとがき
文庫版のための訳者あとがきー「史上最強の暗号」解説 -
Posted by ブクログ
暗号解読(上)
著:サイモン・シン
出版社:新潮社
新潮文庫 シ 37 2
国家にとって、国を治め、軍を動かすためには効率的な通信手段が不可欠であることを支配者たちは知っていた。それと同時に支配者たちは、メッセージが正当な受信者以外の人物に渡ったり、貴重な秘密がライバル国家に奪われたり、重要な情報が敵の軍隊に漏れたりすればどうなるかもよく理解していた。
孫子は、謀攻篇に彼我の情報量が勝利へ直結すること、そのために、用間篇に何種類ものスパイの運用方法をも、記載している。
重要な情報を敵に知られることなしに、離れた味方に伝える手段こそ、暗号なのである。
暗号は、数学、言語学、情報理論、量子論などの広範な学問を支えとして、いまも重要なポジションにとどまったままだ。
本書は、
第1次世界大戦は、毒ガスなどの化学者の戦い
第2次世界大戦は、核兵器などの物理学者の戦い
第3次世界大戦がおきるとすれば、情報を中心とした数学者の戦いになるであろうと語っている
スコットランド女王メアリのエリザベス1世への反逆について、つたない暗号を使った手紙が証拠となった。エリザベスは、メアリを処刑することまでを考えてはいなかったが、その手紙をもって、処刑執行書へサインをせざるをえなかった。
古代ギリシアとペルシアの戦い、ペルシャの意図を事前に察知し、軍艦を建造して、ペルシア軍の到着を待ち構えていたギリシャ軍は、一夜にして、ペルシアの大軍を大敗に追い込んだ
クリプトグラフィ(暗号化)、ステガノグラフィ(蝋や薬品をつかった隠ぺい)前者が歴史の主役だ
カエサルの換字式の暗号、カエサルのシフト・サイファーという
2001年宇宙の旅での、IBM→HALだ。
アラビアにも、アダブ・アル・クッターブという行政書に暗号の説明がある
旧約聖書にも、暗号の記載がある。ヘブライ語の換字式暗号、アトバシュである。
施政者は、いかなる時代でも、情報の重要性に最新の注意をはらってきたのである
暗号技術は、15世紀のヨーロッパで高度化をおこなう
単語の文字に着目するもの、もっとも多いのがe、アルファベットの各文字の出現率でその暗号を特定する時代
現在も、LLMなどに用いられている、コーパスなどで、単語通しの出現の頻度などが、暗号解読の手引きとなっていく。単アルファベット換字式という。
ホモフォニック:aやeなどの出現率の高い単語に其の率に応じて、記号を割り当てていく方法、そこから連接特徴という解読法が生み出されていく
ルイ14世の大暗号:単なるホモフォニックでも換字式でもない極めて強度の高い暗号であった
多アルファベッドで暗号化されたメッセージをモールス信号で送信する、これがヴィジユネル暗号と呼ばれる、当時解読不要といわれた暗号である
ヴィジュネル暗号が解読されてからしばらくは、暗号の発展はなかった
19世紀に3つの文書を組み合わせはビール暗号が世に出た
そして、3つのスクランブラーを組み合わせたドイツのエニグマという暗号が登場した
1926年にドイツの使用しているメッセージの中に解読不能なものが混じるようになっていた。それがエニグマであった。
エニグマは、最初誰にもよめなかった。当時最強といわれたドイツ軍は、アルザス・ロレーヌの回復後、割譲されたポーランドの旧領の回復をもくろんでいた。そのために、ポーランドは、エニグマの解読により、ドイツの意図を探ろうとしていた
エニグマは、軍内の裏切り者、恐怖のポーランドによる努力、そして、戦時中のコードブックなどにより少しづつ解読されていった。
大事なこと
①戦争を始める前は、暗号体系を一新して、時間を稼ぐ
②解読しても解読できたことを決して悟られてはいけない。なぜなら、これまでの努力をふいにすることだから
③暗号は暗号化し、そして、平文に復元する。多忙を極めるオペレーター、うっかりミスを起こすことある。そこがつっこみどころだ。
結果として、独伊日の枢軸国がつかっていた暗号は、すべて連合国に解読されて、かれらの意図する方向へと
導かれた。
偶然を意図されたミッドウェイ海戦、山本提督の死、コードブックを奪われる条件で作戦を立案すべきであった。
情報とは、まさに国家の生死をきめる、重要な事項なのである。
ISBN:9784102159729
判型:文庫
ページ数:352ページ
定価:750円(本体)
2007年07月01日発行
目次
<上巻>
はじめに
第1章 スコットランド女王メアリーの暗号
“秘密の書記法”の進化
アラビアの暗号解読者たち
暗号文の頻度分析
西洋のルネサンス
バビントン陰謀事件
第2章 解読不能の暗号
ルイ十四世の大暗号と鉄仮面
ブラック・チェンバー
バベッジ対ヴィジュネル暗号
私事通信欄から埋蔵金まで
第3章 暗号機の誕生
暗号の聖杯
暗号機の発達―暗号円盤からエニグマまで
第4章 エニグマの解読
鳴かないガチョウたち
コードブックの奪取
匿名の暗号解読者たち
<下巻>
第5章 言葉の壁
失われた言語と古代文字の解読
線文字Bの謎
“つなぎ”音節
馬鹿げた脱線
第6章 アリスとボブは鍵を公開する
神は愚か者に報いたまう
公開鍵暗号の誕生
最有力候補―素数
公開鍵暗号―もう一つの歴史
第7章 プリティー・グッド・プライバシー
大衆のための暗号―か?
ジマーマンの名誉回復
第8章 未来への量子ジャンプ
暗号解読の未来
量子暗号
付録 暗号に挑戦―一万ポンドへの十段階
補遺
謝辞
訳者あとがき
文庫版のための訳者あとがきー「史上最強の暗号」解説 -
Posted by ブクログ
数学の本なのに、読み終えて残るのは数式ではなく、人間の執念だった。
たった一行の命題が、三百年以上にわたって人を惹きつけ、人生を狂わせ、ときには世代をまたいで受け継がれていく。
この本がが描いているのは、難問が解かれるまでの歴史というより、人はなぜ答えがあるかどうかも分からない問いにここまで心を奪われるのか、という物語だと思う。
アンドリュー・ワイルズが少年時代に出会った一つの問題を、長い年月を経て自ら解く。
その筋書きだけを見れば、あまりに出来すぎている。
けれど実際には、孤独な時間も、失敗も、証明の欠陥もある。
だからこそ最後の到達は、華々しい勝利というより、長く離れていた場所へようやく帰ってきたような感覚になる。
数学とは、単純な論理の積み重ねだと思っていた。
この本を読むと、論理のその奥には、憧れや意地や式の美しさへの執着といった、ひどく人間的なものが流れていることに気づく。
答えそのものよりも、答えを求め続けた時間のほうが尊い。
そんなことを思わせる一冊だった。 -
Posted by ブクログ
暗号の歴史の鉄板本。歴史ではなく暗号の作り方・解き方まで分かる。しかもそれがとても面白く描かれている。2000年以上にわたる暗号の歴史をまとめているため、個々のエピソードは専門書を読んだほうがもちろん詳しいが、この本だけでも十分にその面白さが伝わるし暗号や古代の言語が理解できる。素晴らしい本だ。
古代の失われた言葉も暗号として、その解読の歴史を紹介。ヒエログリフ・線文字B。戦時中に使われたナヴァホコード。
暗号の大問題「鍵配送問題」=鍵をどうやって送るのかの解決の歴史。RSA暗号の解説。
暗号とプライバシーの解説(この章はかなり時代遅れ)
最後に量子暗号の紹介。 -
Posted by ブクログ
暗号の歴史はすなわち作成者と解読者の争いの歴史。重要な役割を果たした暗号ごとにその仔細が描かれ、「これは解読できないだろう」を裏切り続ける構成でめちゃくちゃ面白い。特に悪名高いナチスドイツのエニグマや、ピエログリフの解読は最高のドラマ。
かくしてサマーウォーズにも出てきたRSA暗号が君臨し、作成者が勝利を掴んだ。素数の掛け算は一瞬でもその素因数分解には地球上のすべてのコンピュータを繋いでも途方もない時間がかかる、単純な理屈に基づいているのがこと美しいが、それを文明もろとも瞬殺できる量子コンピュータが誕生したときにどちらが勝利するのか、あるいは両成敗なのか、(コンピュータ自体が存在しないのに)その答えまで示されていて天晴れである。 -
Posted by ブクログ
数学者という人達はパズルを解くのが大好きなのだと書かれていることに心から共感!それに尽きると思う。ただただ未解決の問題が好きで、それに挑み、解けてみるとなんて美しいんだろうと信じられない気持ちになる、数学者を奮い立たせているのは発見の喜びというのはまさしくかと。それをしかもビスケットとアールグレイティー片手にアイディアを仲間に聞いてもらったり吟味しあったりと、なんとも優雅で楽しく。ワイルズは、秘密主義で進めたようだが、それもまた良し。好きだから知りたいからという純粋な気持ちだけが解く鍵になっていることが、わかりやすくドラマティックに数学がわからなくてもわかるように書かれている。
美しさを求めつつも、ピュタゴラスは無理数を見つけた弟子が許せずに溺死による死刑を宣告していたり、アリストテレスが0ゼロの概念を含めるとおかしなことが起こるからと使用禁止にしていたりと人間臭いところも知れて面白い。また、最大のパズルの創始者(14-15ゲーム)サムロイドの初期のゲームは世界一のショー(サーカス興行士)P・Tバーナムのために作られたとあり、あれ?それって映画グレイティストショーマンの人じゃない?とか気がついたり。本題以外のところでもとても楽しめた。気になるところ、言葉や展開が美しいところをと書き留めた読書メモが4ページにもなり(私のメモ帳が手帳サイズで小さいので笑)