青木薫のレビュー一覧

  • 暗号解読(上)

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    上巻では単アルファベット暗号のエピソードからエニグマ暗号まで。非常に面白い。電報・無線によって通信速度・範囲が飛躍的に伸びたことで暗号の必要性がそれまで以上に高まったという。
    色々な暗号が考案されているが暗号解読者は暗号作成者の癖や暗号の利用法の癖・そして頻度分析によって解読していく。
    非常に面白い本。エニグマの理屈もよくわかった。

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    2025年05月06日
  • 令嬢だって自分で幸せを掴みとりますわ!アンソロジーコミック

    匿名

    購入済み

    面白い

    どの話も短い中に起承転結がついていてスッキリととした読後感。絵も他の令嬢アンソロジーにあるような、これは買って読むレベルなの?というものもなく、全体的に楽しく読めました。令嬢アンソロは多すぎるのでこれくらい捻りが効いているのも良いと思います。

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    2025年04月13日
  • 時間の終わりまで 物質、生命、心と進化する宇宙

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    仕事に振り回されている時に読むには、あまりにも分厚い本だった。ということで、読むのにとても時間がかかってしまった。しかし、内容はものすごく刺激的だった。こんな本を書ける人がいるという事がまず驚き。

    同じ著者の『エレガントな宇宙』は、現代物理を数式を使わず、丁寧に説明されていて、読んだ後、すっかり物理の勉強に気持ちを向けさせられた。

    この本は、少し違って、宇宙の始まりから、生命の誕生、意識の発生、言語と物語、脳や宗教、芸術の起こりの意味、宇宙のその後、ボルツマン脳やマルチバースなどの紹介をして、時間の終わりまで、エントロピーと進化を軸に、世界を物理的立場から説明している。とにかく、ありとあらゆる学問に出会うし、たくさんのことを考えさせられる。とてもスケールが大きく、かつ、数学が背景にあって論理的な話。数式がないにもかかわらず難解な内容なのに、著者の理解の深さと誠実さのお陰で、最後まで読まされる。
    最後に、存在の尊さについてを論じて終わる構成がとても素敵だった。
    読み終わった瞬間に、もう一度読みたいと思った珍しい本だった。

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    2025年03月31日
  • 宇宙創成(上)

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    科学者たちがどう宇宙の創成にあたる謎を解明してきたか、群像劇や歴史エンタメのような感覚で一気に読むことができた。
    古代から科学者たちが努力を重ね、少しずつ真理に迫っていく様は感動する。ニュートンやアインシュタインがどう凄いのかもこれを読んで始めて分かった(ような気がする)

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    2025年03月15日
  • 時間の終わりまで 物質、生命、心と進化する宇宙

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    実にスケールが大きい。エントロピーと進化の2つの力を主役に、何もかも説明してやろうというような心意気。中盤の、意識、言語、宗教や芸術のあたりは少し迫力が目減りするのだが、それでもこれらを論ずる必然性はある

    最後には、ヒッグス場の相転移やボルツマン脳みたいなケレン味のあるネタも盛り込んで読ませてくれる

    なお、著者のことをワタクシのYoutubeにちょいちょい出てくるブライアン・コックスという方と混同していました。専門がよく似ているが別人

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    2025年02月22日
  • ビッグ・クエスチョン 〈人類の難問〉に答えよう

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    より良い未来のために何ができるか?「科学に興味なし」では済まされない。これまでのどの世代にも増して、私たちの未来は科学とテクノロジーに依存する。原発という優れた技術、事故、核融合、EV、ワクチン等、科学を人々のために活かしたい。私たちのリテラシーも、政府の舵取りも問われている。
    核戦争と気候変動が最大の危機。

    「神が存在するのなら、11次元のM理論のような複雑なものを、あなたはどうやって考えたのですか、と尋ねてみたいですね。」

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    2025年02月07日
  • 量子革命―アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突―(新潮文庫)

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    史上最高に面白いドキュメンタリー。
    個人的に興味のある分野、研究してた分野だから当然といえば当然だけど、人類がした議論で最も面白い議論の一つだと感じた。

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    2024年12月19日
  • 暗号解読(下)

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    ### 上巻

    歴史において長い間、暗号作成者と暗号解読者の戦いは、暗号解読者優位が続いていた。(多くの暗号は解読方法が発見されてきた)というのが、現代とギャップがあって面白いポイント。

    暗号史において、エニグマ解読にまつわるエピソードがやはり上巻の中で一番の読みどころ。

    ### 下巻

    暗号解読ではないが、類似のものとして古代文字の解読が取り上げられている(古代エジプトのヒエログリフ、古代ギリシャの線文字B)。また、誰も理解できない言語を操るアメリカ先住民ナヴァホ族を暗号通信担当として軍に迎え入れたアメリカ軍の話も面白い。

    そして、暗号というものが生まれてからずっと付きまとってきた「鍵配送問題」をついに解決した、RSA暗号の話が暗号史におけるクライマックス。

    最後の章では、RSA暗号を解読する可能性を持つ量子コンピュータを紹介する一方、量子コンピュータが更なる強固な暗号を生み出す可能性についても触れている。

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    2024年11月18日
  • 暗号解読(上)

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    暗号技術(解読)の発展を、その必要性や重要性を歴史的背景や関わった人物を描写しながら、知ることが出来る良書です。実は、量子コンピュータって世界のどこかで、もう出来てるんではないかと思いました。

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    2024年09月29日
  • 量子革命―アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突―(新潮文庫)

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    おもしろかった!様々な科学者が人間的に息づいて各々の信念や運命に倣って量子の理論を追求する姿を小説として純粋に楽しめたし、それだけじゃなく量子力学への興味も否応なしに掻き立てられるものだった。
    個人的にはボーアよりもアインシュタインの信念に強く共鳴しながら読んでいたので、現在アインシュタインの立場が回復してきていると知って安心した。これからの量子力学がどう進むかはわからないけれど、非局在的実存に何らかの理論が付けられて新しい量子力学が生まれることにわくわくしている自分がいる。

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    2024年09月27日
  • 宇宙創成(下)

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    サイモン・シンのフェルマーが面白く、同時に宇宙論にも興味を持っていたので手に取った。期待通り、宇宙論自体についても、その解明の過程についても、そして科学の面白さまで、期待を超えて楽しむことができた。

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    2024年09月19日
  • 遺伝と平等―人生の成り行きは変えられる―

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    とても読みやすい、とは言えないけど、必読。こうした遺伝の影響を考慮に入れずに、平等とか教育などは議論できない。ただ、とてもセンシティブで、繊細な理解が必要で、単純化するととても害のある暴力的なものになってしまう。理解も難しいが伝え方も難しい。平等も教育も、それこそこれからの国家や人類の行く末にとっても重要な課題で、この本に書かれているのはその根幹をなす知識なわけで、本当に重要なんだけど、単純化しないでちゃんと理解する必要がある。地道に読んで理解する価値あるし、そういう人が増えてほしい。

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    2024年07月05日
  • 時間の終わりまで 物質、生命、心と進化する宇宙

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    この著者のこれまでのものに比べると、対象がより一般的・普遍的になっている。これまで得た、量子物理学の知識をもって、空間や時間など、より、ある意味で身近なものを取り上げて考察した一冊。
    著者のこれまでの専門的な著作のような緊張感はあまりなく、言い方は正しくない気がするが、哲学的な話題について著者なりの科学的なアプローチで迫った、世界とは何かについての書、といった印象。

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    2024年07月05日
  • 宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論

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    891

    254P

    科学の面白い所って、人間っていうものを重要視してない所なんだよね。人によってはそれが嫌だって言うのかもしれないけど、私からするとここが面白くて堪らないポイントだな。だって文系分野とか宗教って絶対人間がデーんってあってそれ以外は矮小化されてるじゃん。でも科学にとって人間は空気の粒子のひとつとかその辺に舞ってる埃とかと価値が等しいんだよね。そのものの見方が面白すぎてやめられない。そんなヤバイものの見方してるやつ居たら頭おかしすぎて友達になりたいもん。

    青木薫
    1956年、山形県生まれ。京都大学理学部卒業、同大学院博士課程修了。理学博士。専門は理論物理学。翻訳家。サイモン・シンの一連の著作『フェルマーの最終定理』『暗号解読』『宇宙創成』(以上、新潮社)をはじめ、ブライアン・グリーン『宇宙を織りなすもの』(草思社)、マーシャ・ガッセン『完全なる証明』(文藝春秋)、マンジット・クマール『量子革命』(新潮社)など、数学・物理学系の一般向けの書籍から専門書まで幅広く手がける。数学の普及への貢献により2007年度日本数学会出版賞受賞。本書は初の書き下ろしとなる。

    宇宙はなぜこのような宇宙なのか 人間原理と宇宙論 (講談社現代新書)
    by 青木薫
    古代ギリシャの数学は、紀元前六世紀ごろに活躍したピュタゴラスに始まり、彼が設立した教団とその流れを汲む人たちが、ひとつ、またひとつと幾何学の定理を証明するうちに徐々に成果が蓄積されて、紀元前三世紀に、エウクレイデス(ユークリッド) の『原論』(ギリシャ語で「ストイケイア」、基本命題集というほどの意味) としてひとつの頂点に達した──というのが、長らく定説だった。今もたいていの本にはそう書いてあるので、きっとみなさんもそのように記憶しているだろう。

    古代地中海世界で生まれた二つ目の宇宙像は、今度こそほぼまちがいなくピュタゴラスに発し、プラトンからアリストテレスへと引き継がれた、有限な「コスモス」像である。コスモスという言葉通り、それは秩序ある宇宙だった。  もともとピュタゴラスは、「大地は球形をしており、他の天体とともに、宇宙の中心火のまわりに円を描いて運動している」と考えていたと伝えられている。つまりは、一種の地動説である。

    たとえば、若き日のマキャベリは、『ものの本性について』をまるまる一冊、自ら書写し、所有していたことが現代の研究により明らかになっているし、前章で登場した知識人モンテーニュは『随想録』の中で、ルクレティウスの文章を百ヵ所以上も字句通りに引用している。こうして、古代の原子論と無限宇宙の考え方はよみがえり、知識人のあいだにじりじりと支持を広げていった。

    では、その物質世界を、神はどのようなものとして創造したのだろうか? ニュートンはその点に関して、『プリンキピア』を書き上げたころを境に考えを変えたようである。『プリンキピア』とは、正式名称を『自然哲学の数学的諸原理』といい、古典力学を確立し、ニュートンの重力理論(いわゆる万有引力の法則)を打ち出した、近代自然科学の歴史上おそらくはもっとも重要な著作である。

    絶対空間と絶対時間にもとづくニュートンの古典力学体系は絶大な成功を収め、ニュートンの無限宇宙は、それから二百五十年にわたり科学的宇宙像であり続けた。しかしその宇宙は、神がたえず介入していなければ重力崩壊する宇宙だったのである。

    ニュートンの無限宇宙に潜んでいたこの深刻な問題に立ち向かったのが、二十世紀が誇る知の巨人、アルベルト・アインシュタインである。  一九〇五年にアインシュタインはまず、ニュートンの絶対空間と絶対時間を解体し、新たに「時空」という概念をもたらすことになる特殊相対性理論を発表した。それからおよそ十年後の一九一六年、彼はその特殊相対性理論に重力を取り込んだ一般相対性理論を発表する──それはニュートンの重力理論を包含する、アインシュタイン版の重力理論だった。

    だがリーマンの登場により、そんな状況が変わりはじめる。リーマンは、幾何学的な空間のいたるところで、空間が自由に伸び縮みできるような幾何学──リーマン幾何学(微分幾何学) ──を創始したのである。

    宇宙が「誕生した」というからには、宇宙を誕生させた何者かが存在するにちがいなく、その何者かは「神」ということになりそうだった。そんなあからさまに宗教臭い説を、カトリックの司祭だというルメートルが唱えたとあって、ほとんどの物理学者は激しく反発した。アインシュタインもルメートルに面と向かって、「あなたの数学は正しいかもしれないが、あなたの物理学は忌まわしい」と言ったというから、相当なものである。じっさい、その当時は多くの物理学者が、宇宙には始まりがあるというその説を、キリスト教の逆襲だと受け止めたのだった。

    アウグスティヌスはキリスト教の歴史上、もっとも尊敬される人物のひとりであり、その魂の遍歴をつづった著作『告白』は、今日なお世界中で読み継がれている。わたしがはじめてアウグスティヌスの『告白』を読んだのは、一九八〇年代の後半のことだった。彼の半生の回想に当たる前半部分(岩波文庫『告白』上巻) を読み終え、有名なアウグスティヌスの時間論が含まれる後半(下巻) に進んだとき、わたしは「えっ!」と驚いた。アウグスティヌスが、神の全知全能性にもとづいて論証する時間と空間の創造が、ビッグバン・モデルが描き出す宇宙誕生の考え方に酷似していたからである。

     そこでわたしは当然のごとく、こう考えた。カトリックの司祭だったというルメートルの膨張宇宙説は、キリスト教神学に根ざしていたとみてまずまちがいないだろう。キリスト教文化圏である西欧でビッグバン理論がすんなり受け入れられたのは、そんな宗教的な土壌があったからなのだ、と。

    しかし、その後知ったことだが、わたしのその考えは、偏見にもとづくありがちな思い込みだった。「ビッグバン理論はキリスト教思想から生まれたのだろう」というのも、「欧米にはキリスト教の土壌があるから、ビッグバン理論はすんなり受け入…

    現実には、ルメートルは信仰と科学という二つの道を切り離しておくことに心を用い、なおかつその両方を生涯追求した希有な人物だったし、キリスト教神学との類似性は、ビッグバン理論にとって大きなハンデにはなっても、何の得にもならなかったのである。キリスト教文化圏の物理学者たちは、ビッグバン・モデルを歓迎するどころか、科学に宗教を持ち込むものだとして…

    ボンディはその『宇宙論』の中で、まずはじめに「原理的な諸問題」をいくつか取り上げた。当然というべきか、そこには有名な「コペルニクスの原理」も含まれている。というよりむしろ、「コペルニクス」の名前と「原理」という言葉とを結びつけて、「コペルニクスの原理」という言葉を作ったのは、じつはボンディなのである。彼は、「論理に飛躍もあり、中途半端で不完全ではあるが」としながら、「コペルニクスの原理とでも呼ぶべきものがある」として、「地球は特別に恵まれた場所に位置しているわけではない」という考え方がそれだと説明した。

     二十一世紀の今日から振り返ってみれば、二十世紀の後半は、たしかにボンディが説いた通り、ミクロなスケールの物理学と宇宙スケールの物理学との深いつながりが明らかになった時代だったといえる。そんな状況の象徴として物理学者がよく持ち出すのが、自分の尻尾に嚙みつくヘビ、ウロボロスのイメージだ(図3‐1)。

    もうひとり、コインシデンスの問題に深く関心を寄せたのが、二十世紀の物理学に華麗な足跡を残した天才、ポール・ディラックである。

    しかし、そんな人間中心主義的な考えは到底受け入れられない、とディラックは考えた。そして彼はその代わりに、宇宙の年齢が大きくなるにつれ(つまり、時間が経過するにつれ)、重力の強さが変化するのではないかと考えたのである。初期宇宙では重力が強く、その後だんだん弱まったのだとすれば、この関係はあらゆる時刻で成り立つ関係となり、われわれ人間の存在するこの時代を、何か特権的な時代と考えなくてもよくなるからだ。

    ここには人間の自己中心主義に対するディラックの警戒心が見てとれ、それ自体として興味深い。ディラックは、そんな人間中心の考えを受け入れるよりは、物理定数はじつは定数ではなく、時間とともに変化するという、大胆な説を取るほうを選んだのである。

    科学は、われわれ人間のありようとは関係なく、その外側に広がる宇宙を理解しようとしてきたのではなかったのか? カーターは、ボンディの言う完全宇宙原理の代わりに、何を受け入れなければならないと言っているのだろうか?

     じつを言えば、宇宙の年齢に一定の制約があるということに気づいたのは、カーターが最初ではなかった。カーターの発表よりも十年ほど早い一九六一年に、ロバート・ディッケ(宇宙マイクロ波背景放射の検出で遅れをとり、ノーベル賞を逃したあのディッケ)が、そのことを指摘していたのである。

     この世界を理解する方法のひとつとして、「目的」という考え方を体系的に打ち出したのは、やはりと言うべきか、万学の祖アリストテレスだった。  彼は、「ものごとは、なぜそうなっているのか?」という問いに対しては、原因を示して答えなければならないと考えた。ものごとは多面的なので、ひとつの原因だけで説明できてしまうということはなく、探究にはいくつものアプローチがあり、それに対応していくつもの原因があるというのは当然のことだろう。  しかし基本的な型は四つだ、とアリストテレスは考え、それらを「質料因」「形相因」「動力因」「目的因」と呼んだ。

    物理学者は、この「起こりうることはかならず起こる、何度でも起こる」という考え方を、空気のように吸い込んで物理学者になっている。それはいわば物理の世界の暗黙の了解、一種の常識なのである。しかしそれは量子的な世界での常識なので、日常的な古典物理学にもとづく常識からすると、なぜそんなことが言えるのかと不思議に思われるかもしれない。これはけっこう重要なポイントなので、簡単に説明しておこう。

    ──「なぜ自分は今の今まで、 λ はゼロだと決め込んでいたのだろう」と。  たとえば、ポルチンスキーという著名なひも理論家は、「 λ がゼロでないという観測結果が出たら、自分は物理学をやめる」と言っていたそうだ。しかしそのポルチンスキーも目から鱗が落ちたらしく、前言を撤回し、今も活発な研究を行っている。

    物理学者は学生のころから、数式をいじって出てきた結果を鵜吞みにせず、その物理的意味をしっかり考えるという態度を叩き込まれる。そんなわけで、数学的な理論から導き出されたものに対しては、物理学者はちょっと意外なほど慎重なところがある。  もちろん、理論から出てきたものに対して慎重なのは健全な態度というべきだろう。しかし、物理学の歴史を振り返ってみれば、物理学者よりも自然のほうが大胆だったということが、たびたび起こったのも事実なのである。物理学者が「単なる数学だ」と言ってしりぞけた奇想天外なアイディアを、自然がちゃっかり採用しているということが度重なったのだ。スティーヴン・ワインバーグは、そんな物理学者たちの過度の慎重さに警鐘を鳴らして、「物理学者は理論を信じすぎるのではない。信じ方が足りないのだ」と述べた。

    しかし、本当にそうなのだろうか? 本当に科学は、白黒はっきりさせられるものなのだろうか?  わたしはその考えに懐疑的である。というのも、科学においては、何かが絶対に白であることを保証してくれるような、疑うべからざる真理──宗教なら啓示に相当するようなもの──は存在しないからである。  どこまでいっても白黒確定せず、それぞれの結果はどの程度信用できるのか、どんな根拠に裏づけられているのかと、たえず足元を確認し続けなければならないのが科学なのだと思う。その意味で、科学はつねにグレーの階調の中にあると言えよう。むしろ、足元を確かめながら知識を更新していけることこそが、科学の本領であり、強みなのではないだろうか。  原子やクォークやブラックホールの実在性は、今ではほとんど白に近いといえる。それにくらべると多宇宙ヴィジョンは、はるかにグレーの色味が濃い。それでも多宇宙ヴィジョンはすでに、更新可能な科学的知識という領域の中に入り込んでいるように思われるのである。

    つまるところ、人は誰しも、自分が生きる時代の文化と手を切ることはできない。科学者とて、それに関してはほかのどの分野の人たちともなんら変わるところはない。それどころか、もしも科学者が時代と完全に切り離されていたとしたら、まともな仕事はできないだろう。科学者はその時代その時代に、今、何が重要な問題なのだろうかと知恵を絞り、手持ちの道具を使って、目の前の問題に立ち向かうしかないのだから。

    後世から見れば的外れだったり、トンデモだったりするような問題意識に駆り立てられていたとしても、それぞれの時代の深い問題に立ち向かうことで、科学者は知識の更新に貢献することができる。過去の巨人たちがどんな色眼鏡をかけていたとしても、続く世代の科学者たちはその肩の上に立ち上がり、新たな眼差しで少し遠くまで見ることができるのである──現代の科学者たちもまた、この時代に特有な色眼鏡をかけているにしても。

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    2024年06月28日
  • 量子物理学の発見 ヒッグス粒子の先までの物語

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    難しい内容をわかりやすい言葉で説明してくれている。楽しく読める本です。きちんと理解するにはそれなりにしっかり読み返したりが必要です。

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    2024年06月02日
  • 代替医療解剖

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    鍼、ホメオパシー、カイロプラクティック、ハーブの代替療法を次々に取り上げながら、その効果の低いこと、ないこと、身体に害をなすことを論証している。プラセボ、二重盲検法など、科学が確立した手法、概念についても詳しく説明を加えている。

    医療リテラシーが高まる本。今も色褪せていない。
    代替医療が掲げる、総合性、自然由来、伝統という背骨に当たる傾向性を叩き切る。

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    2024年05月16日
  • 宇宙創成(下)

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    歴史小説であり、科学小説。

    歴史的な部分で読者を引き込むので、毎日読み続けてしまう。

    難解な部分は上巻だけで、下巻はドンドン読み進めて行ける。

    アインシュタインからビックバン確定まで、物理学者の活躍が眼前に現れるかのような。

    面白かったです

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    2024年04月12日
  • 宇宙創成(上)

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    今まで読んだ理科の本には書かれていない、ビックバンや星が何でできているのか、など歴史とともにその理由が書かれていて、、わかりやすく理解&納得できました。

    行ったこともない星の成分がわかるのはなぜ?
    宇宙の始まり
    膨張し続ける
    など

    面白い

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    2024年03月24日
  • 量子革命―アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突―(新潮文庫)

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    とびきりの天才が人類の知の沿岸を広げてきたことに改めて敬意を感じながら、それらの天才たちも同じ人間として日々の苦労や戦争のような外的な苦しみに耐えながら知の探究を続けていたという姿に励まされもする。

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    2024年03月02日
  • 科学革命の構造 新版

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    パラダイムとかパラダイムシフトという言葉はクーンの名前と一緒に知ってはいたけれど、
    実際この本を読んでみて、思っていた内容とけっこう違った。
    教科書で習うような古典を読んでみる良さはこういうところにもあると思う。

    通常科学は、理論や価値観、模範例など(パラダイム)を共有する科学コミュニティにおいて、パズルを解くように、理論の確認を行っていて、本質的に新しい発見を目指すものではないが、
    理論に合わないことが発見され、危機におちいることがある。
    そうした中で革命のように、世界観を変えるような新たなアイデアが打ち出され、パラダイムの変化がおこる。
    そうして、科学は累積的でない形で進歩していく。

    科学ときくとだんだんに進歩してきたものというイメージがあるが、実際には、とびとびにというか、連続的でない形で進化してきたものといえるのかもしれない。

    また時間をおいて読み返してみると発見のありそうな本だと思った。

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    2024年02月14日