青木薫のレビュー一覧
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ネタバレホーキング博士のチャームポイントはその率直さにある。自らを世界一コネクテッドな人間と表現し、世界で最初に宇宙旅行に行く人間の一人になるといい、神=自然法則、シンギュラリティ=ある、核融合エネルギー待望・・等々、少しもウェットなところがなく原理に則りいともあっさり述べているところが大変面白かった。
P29 収縮するブラックホールから放出され、ブラックホールが消滅した後に残された放射が、いったいどうすればブラックホールを作り上げたものに関する情報を運べるのかということだ。私が発見したのは、情報は失われないが、役立つような形では取り戻せないということだった。それはちょうど、百科事典を燃やしてしまい煙と灰を取っておくようなものだ。
P33 私は世界で最も接続された(コネクテッドな)人間だと言ってしまおう。
P43 私はアインシュタインと同じく、「神」という言葉を人格を持たない自然法則という意味で用いる。したがって、神の心を知るということは、自然法則を知るということだ。
P45 (宇宙の作り方が書かれたレシピ本があったとして)第一の材料は物質、第二の材料はエネルギー、第三の材料は空間、それもだだっ広い空間だ。
P82 「無境界(ノーバウンダリー)」の提案によれば、ビッグバンの前に何があったかと問うことには意味がありません。「前」を示すために必要な時間の概念がないからです。
P85 生物には二つの要素がある。一つは生きて繁殖する方法をその生命体に教えるための一組の指示(遺伝子)もう一つは、それらの指示を実行に移すためのメカニズムだ(代謝) それらの要素が生物学的なものである必要はないということだ。コンピュータウイルスは生命体の定義に合っている。
P94 人類の登場とともに、進化はDNAの発生に比肩する決定的に重要な段階に入った。言語、特に書き言葉が生じたのだ。書き言葉が生じたということは、DNAによる遺伝的なもの以外にも、情報を世代から世代へ伝えられるようになったということだ。[中略]本またはインターネットを介して伝えられる情報量は、DNAに含まれる情報量の十万倍になる。
P96「進化」という言葉を内的に伝達される遺伝物質に対してだけ用い、外的に伝達される情報に対して用いることに異議を唱える人たちもいる。しかしその考えは視野が狭すぎると思う。わたしたちは単なる遺伝子以上の存在だ。私たちと彼ら(先祖)とを区別するものは、過去一万年間に、とりわけ過去300年間に蓄積された知識なのだ。
P169 私は、非常に複雑な化学物質の働きが人類を知的にしているのなら、それと同じくらい複雑な電子回路がコンピュータに知的なふるまいをさせることは可能だと思う。そしてもしもコンピュータが知性を持てば、おそらくは自分自身よりもはるかに複雑で高い知性を持つコンピュータをデザインでいるようになるだろう。
P198 私は宇宙旅行を楽しみにしていて、最初にチケットを買う人間の一人になるでしょう。
P222 地球外生命がまだ接触してこないのは、私たちぐらいのレベルに到達した文明は不安定になって自滅するからだという説がある。
P228 クリーンエネルギーを際限なく供給する核融合の発電が開発されてガソリン車から電気自動車に切り替わるのを見てみたい。
P250 ホーキングは、様々なビッグクエスチョンに対する自分の答えを、世界に向かって発信した。後々間違いだったじゃないかと批判されることを恐れず、今の自分に言えることを勇敢に述べた。(解説)
P253 どのビッグクエスチョンに対するホーキングの答えも、その基礎のところには何らかの原理的考察があり、それが彼の言葉に力を与え意見を魅力的に指定いるように思われるのである(解説) -
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実験室で宇宙を作ろう、という話で、その理論と少し無謀な挑戦の話かと思ったら、どうも主旨が若干違っていた。
宇宙物理学者が創造主をどう考えるのか。多くの科学者は、素粒子物理学の統一理論を構築したノーベル賞物理学者のワインバーグのように、完全合理主義者であり、そのことを標榜もしている。アインシュタインが神はサイコロを振らないと言ったとき、もちろん彼は必ずしも人格神を信じていたわけではない。リチャード・ドーキンスは、宗教が生む非合理的でときに危険な行動を批判したアンチ宗教の立場で有名である。学問の世界では、創造論への信仰をほのめかすのは、明らかにその人の研究者としての評価には大きなマイナスであるらしい。
一方で、この著者はそれを理解しつつ、どこかで創造主たる神の存在を信じたいという気持ちを持っている。その著者に、量子物理学の理論を通して、人間が実験室で宇宙(ベビーユニバース)を創造する可能性が開かれたとき、神の存在を取り返すことができるのではという希望が開いたのではないのだろうか。そして、著名な物理学者でもあるツェーが、過去の論文においてそれをほのめかしていたのを知って、インタビューを試みるとともに、その探求を進める。
例えば著者は、もし仮に創造主がいたとして、何か情報を伝えるとすれば宇宙背景放射を通してしかないとして、何かのメッセージが埋もれていないかを探してみる。今のところそういったメッセージは読み取れないのだが。
本書の内容は、マルチバースにつながる量子宇宙論、量子論を説明するための量子もつれ、背景放射につながるインフレーションモデル、新しい真空モデル、磁気単極子につながる大統一理論、宇宙を創るための粒子加速器、ひも理論、ブラックホール問題、など網羅的である。著者は博識であり、その理解もおおむね世間の主流に沿っている。
しかし、著者の考えが少しずれているのではと感じるのが、人間の自由意志によって選択するたびに平行世界が生み出されるといった考え方をしていることが明らかになったときである。多世界が存在する契機は人間の自由意志といったレベルではなく、量子のレベルで発生するものであり、だからこそ世界は量子化(デジタル化)されているという論理ではなかったか。また、多世界で複数の自身のコピーが存在する中でこの世界の罪を裁くことに意味があるのかとまで言い出すと、それまでの科学者としての著者への信頼が崩れる気がする。やはり、宗教や道徳は、こういうと色々と言われそうな気がするが、原理的には相性がよくないことを明らかにしているようにも思う。
「人工的な宇宙を創ることに伴う被造物の正味の幸福と、全体としての善(悪)を計算するにはどうすればいいかという問題」とまで言い出すと、もはや論点がずれてしまっている。創造主たるものが仮に存在したとしても、それは善悪の彼岸を超えたものであるのは間違いないのだから、幸福や善悪が神の企図としてどうなっているのかなどは、仮にも考えることが必要な問題ですらない。実験室で宇宙を創る、という試みは興味溢れるテーマだし、科学的な事実も丁寧に書き込まれているが、そこに著者は過度に宗教的期待を持ってきており、また宗教的な読者をその先に想像して書かれているところが鼻白むところなのである。ツェーのインタビューが上手くいっていないように見えるのは、インタビュイーとしての著者が思い込みの上で答えを誘導しようとしているところがあるからだという可能性もある。なにせここまで最新の科学技術に精通をしておきながら、「神はどこにでも希のままに魂を作ることができるはずだから、ベビーユニバースに生じた生命には神は魂を与えないなどと、なぜ言えるのだろうか?」と言ってのけてしまうのだ。いずれにせよ、宗教(しかもキリスト教)の正当化に結びつく段になると途端に非科学的になってしまうのは、不思議で理解できないところでもあるのだが、だからこそ、この課題はおさまらないのだろう。
少し付け足しで書いておきたいのは、インフレーション理論をアラン・グースと同時期に独立に作り上げた佐藤勝彦の名前が、その貢献が正当に知られていない科学者として挙げられている点である。確かに欧米の著者によって書かれたどのような本を見てもアラン・グースの名前ばかりで佐藤勝彦の名前がないことは気にかかっていた。それだけではあるけれども、少しうれしい気持ちになる。ある意味で信仰者は真面目なのである。 -
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宇宙は、なにも無いところからひょっこり誕生する。
したがって宇宙の始まる前や後を考えることは意味がない?
「人間原理」…30年ほど前、わたしが『時間とはなにか』HPを書いたとき、同じようなことに辿り着いた。
「コンピュータの知性」…上記HPで人の脳について触れた。ただの科学物質の作用が⦅十分に複雑化》すると心が生じる。同様に複雑な電子回路が知的な、まるで心があるかのようなふるまいを示すことは起こりうると思う。
「AI」…人類を超えるAIの到来。本当の危険性はAIに悪意があるかどうかではないという。AIの目標が人類の目標と整合しないかもしれない。核戦争や地球温暖化を防ぐためには人類がいないほうが良いとAIが判断したらどうなるだろう。 -
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読んでよかったと言える本。皆にもお勧めしたい。
この著者のシリーズは興味深い話が多い。
現代医療の臨床検査による医療の効果の測定について、今では当たり前になっているけど、思ったよりも最近になってから定着したのだという印象を受けた。
自分が歳をとったので、100年前というのが、古いとは思うが、以前よりも近いと感じるためだと思う。
また、私も鍼には効果があるのでは?ってなんとなく考えていたけど。まったく効果がないとは、そこはちょっと意外だった。
海外の話だが、ホメオパシーのようないかにもいい加減に聞こえるものが大手を振って医療行為としてなされているかと思うと怖くなった。 -
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アインシュタインvsボーアを軸にした量子論史。この対決が凄まじく、また面白い。
SFで飽きるほど見た猫だのテレポートだの宇宙の分裂だのが、どういう流れから産まれたのか分かるのも楽しい。
が、やはり文章から量子論をイメージするのは難しすぎる。訳者は量子論解説本の決定版のように褒めるが、とてもついていけない。「波」と言われて私が想像するものと、量子論でいう「波」は似ているようで全く違う。そんなイメージのズレが至る所に現れるのだから、当然量子論の全体像は群盲像を撫でるが如くである。
私のような盲が理解に近づくには、象を撫で倒すしかないらしい… -
Posted by ブクログ
二千年以上前にヒポクラテスは警告した。
「科学と意見という、二つのものがある。
前者は知識を生み、後者は無知を生む」
本書は一言で言うと、怪しい代替医療手段に手を出すのはやめましょう、という点に尽きる。
なぜならば、通常医療はコストのかかる臨床試験を経て効用と安全性が実証されているのに対し、代替医療は無法地帯のように効能ばかりが強調されているが科学的に立証されていない。
代替医療はプラセボ効果以上のものはないという結論である。
「フェルマーの最終定理」などの著書で有名な科学ルポライター、サイモン・シンと、自らホメオパシーを施術する代替医療分野における世界初の大学教授絵エツァート・エルンストによる共著である。
本書では鍼、ホメオパシー、カイロプラクティック、ハーブ療法の成立から現在に至るまでを詳細に検証し、それら代替医療の効果について論じている。
そして、付録には上記以外の三十以上にものぼる代替医療についても言及されている。
代替医療が危険なのは、代替医療が有効だと信じ込み、通常医療に影響がある、もしくは通常医療を中止してしまうことで取り返しのつかないほど病状が進行してしまう可能性がある。
本書が冒頭で「チャールズ皇太子に捧ぐ」と書かれているのは、最大の皮肉である。 -
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レーダーマン著,青木薫訳ということで,これは読まなくちゃと思ってた。
冒頭,目次裏に“本書を、税金で基礎研究を支えてくださっている国民のみなさんに捧げる。”とある。著者が伝えたかったのは,「加速器は強力な顕微鏡」という大変シンプルな主張。超ひも理論だ何だじゃなくて,「加速器は凄い顕微鏡!」ってシンプルに報道してくれさえすれば,SSCのときのように納税者から無用な反発はないはずだ,とのこと。
実際はそんな単純な納税者ばかりではなくて,やはり金かかるのに実用性ないって嫌がられるような気もするが,実験素粒子物理学者としての矜持が感じられる本だった。
一貫してアメリカの基礎研究への投資が少ないことに警鐘を鳴らしてて,LHCの欧州やスーパーカミオカンデの日本や,中国に置いていかれることを危惧みたいな論調だったけど,えっ…日本が潤沢…?ってちょっと違和感だったのは否めない。
SSCの打ち切りを嘆き,多様な基礎研究への投資を呼びかけるレーダーマン。結構激しい
“経済を成長させているのは科学だという、ほとんどの人にとって…わかりきったことを、頭でっかちの経済学者たちが自分たちの専門用語で理解するまでに、なんと二百年以上もかかったというわけだ。”p13
90年代素粒子物理学コミュニティで起こった極めて対照的な出来事。
欧州ではwwwが産声を上げた。これは急速に輪を広げ,その後の世界を変革し大きな経済成長につながる。
一方,アメリカでは研究者たちの必死の努力にもかかわらず,巨大加速器SSCの計画が潰えた。大西洋を挟んで明暗。
“経済成長を駆動するのは科学研究だという新しい経済理論、というよりむしろ言うまでもない事実は、アメリカ連邦議会では何の影響力も持てなかったし、今に至るも持てないでいる。”p.17
えっとこれトランプになる前に書かれてるんだけど,アメリカでそうならいったい日本は…?
LHCの陽子ビーム,1つのパルスに細胞1個ぶんの原子の数くらいの陽子があるらしいんだけど,その運動エネルギーが時速百キロで突っ走るトラック一台ぶんだとかすごすぎるよ…。
光速の何%とか言うよりはるかに加速器のやばさを感じた。
こういうところに理論家への反発が垣間見えるの良い。
“衝突型加速器を作るのは、非常に小さな距離スケールで、この自然界で何が起こっているかを明らかにするためだ。あれこれの理論家の派閥が提唱するどれかの説に、証拠を与えるためなどではないのである。”p.264 -
Posted by ブクログ
人間原理の本。多宇宙になってないとおかしいと思う派の京大出身の科学ライター?
そういう気はします
・COBEのグループによる「ゆらぎ発見」の報道に接し、物理学者の中には、あらためてこう感じた人が大勢いたのではないだろうか。「これ(宇宙の誕生)が、一度きりの出来事であるはずがない」と。
私自身、そう感じた者のひとりだった。「二度あることは三度ある」と世間ではいうけれど、物理学者から言わせれば、「起こりうることはかならず起こる、何度でも起こる」のである。
物理学者は、この「起こりうることはかならず起こる、何度も起こる」という考え方を、空気のように吸い込んで物理学者になっている。それは言わば物理の世界の暗黙の了解、一種の常識なのである。
・むしろ、「なぜ、この宇宙だけだと思い込んでいたのだろう?」と不思議な気がするほどだ。わたしはこの宇宙の唯一性を、もはや信じる気にはなれないのである。 -
Posted by ブクログ
「昨日のない日」
ジョルジュ・ルメートルは、アインシュタインに「あなたの数学は正しいが、あなたの物理学は忌まわしい」と否定されながらも、宇宙の始まりの時をこう名付けたのだった。
137億2000万歳
WMAPによる宇宙マイクロ波背景放射から得られた宇宙の年齢。
突然、宇宙の膨張を加速させる何かが起こったわけではなく、膨張にブレーキをかける力(物質のエネルギー密度)が膨張によって弱まり、ダークエネルギー(空っぽの空間のエネルギー)の方が上回ったために、膨張が加速した。
ダークエネルギーが宇宙の膨張を支配するようになったのが、過去50億年かそこらの比較的最近。p163
第七章がこの本の真骨頂。
今から二兆年後、われわれの銀河団を除いて、すべての天体は観測不可能になる。
かつて可視光線だったものは、波長が伸びて赤外線やマイクロ派になり、いずれその波長は、宇宙のサイズよりも長くなる。
そのような未来の観測者たちは、1915年の観測者たちが見ていた宇宙「広大で空っぽの静的な空間の中に、われわれの銀河だけが存在している宇宙」を見ることになる。
「物理学は環境科学なのか?」
われわれが知る物理法則は普遍的なものではなく、たまたまこの宇宙で成り立つローカルな法則に過ぎないのか。 -
Posted by ブクログ
素粒子物理学に関する一般向け書籍としては珍しく、実験屋さん(と言ってもアメリカの大御所であり著名なノーベル物理学賞受賞者)による物理の本。翻訳本の名前が「量子物理学の発見」となっているのは誤解を招くと思う(現代は「神の粒子(=ヒッグス粒子)を超えて(Beyond the God Particle)。あくまで”素粒子物理学”、それも実験を中心とした話なので何を観測しているのか、という話。2012年のヒッグス粒子の発見という発表を受けて、ヒッグス粒子とは何なのか、ヒッグス粒子が質量の起源とはどう言う意味なのか、そもそも”質量”とは何なのか、ということを量子力学や相対論の歴史と初歩的な説明を行いながら、さらに著者たち自身の実験と結果について分かりやすく解説しながら解き明かしていくという内容です。本書の前半の解説は実験家らしく非常に分かりやすいと感じた。さすがに後半のヒッグス粒子と質量の話になってくると、一般読者には理解するのはちょっと難しくなる気もするが、頑張ればついて行けるレベル。量子物理学とか素粒子論の一般向け解説書というと”ひも理論”だとか”宇宙の誕生”だと”余剰次元”だとか、理論家による書籍が多いのだが、本書はそのような話は基本的に排除され、あくまで実験家として視点を集中にシンプルな解説がしあって非常に分かりやすい。基礎科学の重要性を経済学的にも主張しつつ、アメリカ政府の基礎科学への予算削減に対する辛辣な言葉が随所にあふれるところも面白い。本書はそのような政府や国民に対して素粒子物理学というビッグサイエンスへの理解を促し、基礎科学への予算投入を促すように書かれているとも言えそうです。