青木薫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
サイモン・シンの訳者で知られる著者の書き下ろし。
新書らしく、一般にも分かりやすく科学の知見を歴史的推移に沿って紹介。科学から人間原理が生まれてくることを、というより科学が人間原理を利用できる局面を紹介している。
つまり、まだまだ科学が解明できている領域は限定的であること。
でも、一番驚いたのは、クォークモデルを提唱した本人が、「クォークを実在物と考えるべきではありません。クォークは数学的な工夫にすぎない」と言明していたこと。
これは現実は理論物理学を超えていたことを証明している。
てことは、実際の宇宙の姿には人間の知見はまだまだ追いついていないのかも。 -
Posted by ブクログ
サイモン・シンを青木薫が訳した本がとてもよかったので,これも読んでみる。物理学を修めた訳者だけあって,こういう分野の訳書が多い。著者は哲学者で,10の科学実験を通して古代から現代までの科学史を通覧する本。
10の実験の主役は,エラストテネス,ガリレオ,ニュートン,キャベンディッシュ,ヤング,フーコー,ミリカン,ラザフォード。実験の数と合わないが,これはガリレオが2回入選していることと,最後の実験は特定の一人に帰着できないためだ。
キャベンディッシュは8人のなかで一番有名じゃないかもしれないが,印象に残った。18世紀の終わりごろ,彼はとても精巧につくった機械で地球の重さを測定した。当時すでにニュートンの万有引力の法則は知られていたが,地上の物同士の間でその力を測るのは,引力が小さくて難しかった。彼はねじりバネをうまくつかって,鉛球同士の間に働く重力と,鉛球と地球の間に働く重力の比を求め,それによって地球の質量を決定した。彼の測定精度は,その後百年も更新されなかったらしい。
フーコーの振り子は,19世紀中ごろに考えだされて以来,すぐに各地に広まって広く観覧に供された。確かに何の動力もなしに(非常にゆっくりとではあるが)地球の自転というダイナミックな変化が目で見られる,しかも大勢が一度に経験できるというスグレモノなので,急速に普及したのもうなづける。むかし上野の科博で見て感心したのを思い出す。
人物が特定されない最後の実験は,二重スリットによる一つの電子の干渉実験である。あとがきによると,訳者も涙が出たほどのきれいな実験で,たった一つの電子がいわば自分自身と干渉して二重スリットの向こうのスクリーンに干渉縞をつくるのだ。同時に放たれた電子と電子が干渉するなら話もわかるのだが,一つづつうちこんでいった電子の到着先が,全体として縞模様をつくっていく。特に,日本の外村彰らによる1989年の追試結果は解像度もよく印象的で,ネット上にも公開されており,一見の価値がある。