青木薫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
海外アニメ「ザ・シンプソンズ」については真っ黄色のキャラクターぐらいしか知識がないんですが、著者が「フェルマーの最終定理」や「宇宙創生」のサイモン・シン、さらに翻訳が青木薫だったのでこれはもう間違いないと判断しました。まったく知らなかったんですが、あのアニメの脚本家たちはハーバードなど一流大学出身の数学マニアで、物語のあちこちに科学や数学のネタが仕込まれているそうです。この本はそれらのネタをかいつまんで、とても分かりやすく解説しています。シンプソンズを全然知らなくても面白かったです。ただ、最後の方に「フーチュラマ」というアニメの話題に移るんですが、そっちはなんとなく馴染めなかった。
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Posted by ブクログ
「人間原理」なんて当たり前じゃないか、と思っていたが、僕はどうやら「弱い人間原理」と「強い人間原理」を区別して理解できていなかったようだ。
人間原理というのは、20世紀半ばにケンブリッジ大学の物理学者ブランドン・カーターによって提案された、宇宙物理における原理である。その背景には、物理定数の様々な組み合わせから10^40という無次元量が見られる「コインシデンス」があった。些か数秘術じみている気もするが、それはともかく、この理由を考えていくうちに生まれたのが人間原理であった。
人間原理には、弱い人間原理と強い人間原理の二つがある。前者は「宇宙における私たちの位置は必然的に、観測者としての私たちの存在と両立する程度に特別である」(三浦俊彦『論理学入門』p.153)というもので、後者は「宇宙は、その歴史のどこかにおいて観測者を創り出すことを許すようなものでなければならない」(同、本書には一般的な形の人間原理のステートメントが書かれていなかったので、三浦から引いた)というものである。
簡単に言えば、前者はこの宇宙に観測者(人間)がいるという事実から物理定数の値がなぜそのような値なのかを説明する立場である。例えば、もしも重力の値がこの宇宙での値より大きければ星はグシャッと潰れ、人間どころか如何なる生命も生まれないだろう。一方で、重力が弱くても、宇宙にあるのはガスばかりで生命が生まれそうにない。弱い人間原理は、現代の言葉で言えば「観測選択効果」の一種として説明される。「実験家ならば誰しも、観測選択効果のことをつねに念頭に置いている。例としてよく持ち出されるのは、湖に網を打って魚を捕るという話だろう。もしも網目が直径5センチもあるような粗い網だったなら、小さな魚は網にかからず、漁師は、「この湖には胴回りの直径が5センチ以下の小さな魚はいないようだ」と結論してしまうかもしれない。一方、もしも直径5ミリほどの目の細かい網を使ったとしたら、メダカのような小さな魚もどっさりかかるだろう。どんな網を使うかによって、見えるものがちがってくるのである。」(p.151)言ってみれば当たり前のことで、実際殆どの物理学者は弱い人間原理に関しては問題にすらしていないそうだ。
一方で、如何にも眉唾で、発表当時多くの物理学者から反発を受けたのが強い人間原理である。というのも、その主張から、人間中心主義、或いは「目的論」が透けて見えるからだ。勿論それはカーターも分かっていて、そこで彼はこう述べた。「物理定数の値や初期条件が異なるような、無数の宇宙を考えてみることには、原理的には何の問題もない」(p.159)これが、人間原理におけるマルチバースである(世界アンサンブル、多宇宙ヴィジョンとも)。
マルチバースという概念がまともに取り上げられるようになるには、宇宙論・素粒子論の発展を待たねばならなかった。宇宙論ではインフレーション+ビッグバン仮説が有力視されるようになっているが、この理論からはマルチバースという考えが自然に出てくる(この見方では、マルチバースではなくメガバースと呼ぶ方がより適当らしい)。また、素粒子論において究極の理論の最有力候補であるひも理論では宇宙は11次元であるとされており、宇宙のあり得る可能性は膨大なものとなる。
宇宙(universe)が一つのものだという考えの下では、強い人間原理は確かに目的論に堕してしまうが、宇宙が複数(それも膨大な数が)存在する事を認めてしまえば、強い人間原理も単なる観測選択効果となるのである。
ただ、本書でも指摘されていることだが、他の宇宙というのはこの宇宙から観測不可能であり、その存在を認めることは「検証可能性」を大前提とする近代科学と呼べるのかという疑問がある。マクロ(インフレーションモデル)とミクロ(ひも理論)から、ともにマルチバースの可能性が示唆されているのだから、気持ちとしては、非常にありそうだと思えるのだが、未来永劫存在が確認できないものを仮定して良いのかというところにやはり抵抗がある。今よりもっと研究が進み、マルチバースの(間接的な)裏付けが続々と上がるようになれば、例えばブラックホールやクォークのように、いつかはマルチバースなんて当たり前になるのだろうか? -
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ビッグ・クエスチョンとは、人間が問い続けてきた根源的な問いや、人類の未来を左右する課題など、人類にとっての難問のこと。
→「私たちはどこから来たのか?」「人工知能は人間より賢くなるのか?」など。
ホーキング博士は、理論物理学を使うことで、ビッグ・クエスチョンのいくつかに答えようとしてきた。
例えば。。。
■神は存在するのか?
・昔、宇宙は神が創造したとされていたが、今では全てを自然法則によって説明できる。
・宇宙は、エネルギーと空間からなる。これらは、ビッグバンと呼ばれる宇宙誕生の際に生じた。
・原子サイズ以下の小さな世界では、陽子などの粒子が、何もないところから現れる。
かつて宇宙はとても小さく、陽子と同様、何もないところから出現したと考えられる。
・宇宙の中で空間と時間は絡まり合っている。ビッグバンの瞬間、空間とともに、時間そのものが始まった。
・ビッグバン以前に時間は存在しないため、神が宇宙を創る時間もない。だから「神は存在しない」といえる。
■人工知能は人間より賢くなるのか?
・人工知能(AI)が人間よりうまくAIを設計し、自ら改良できるようになれば、人間より賢くなる可能性がある。
・AIの短期的な影響は、誰がそれをコントロールするかにかかっており、
長期的な影響は、AIはそもそもコントロール可能かどうかにかかっている。
・人類にとって良い社会を作るには、どんなAIにするのか、失敗が許されないため確実に人間が計画するようにしなければならない。 -
Posted by ブクログ
ホーキング博士が、神はいるのか?などのビッグ・クエスチョンに答えてくれる本。
論理的というよりは、もう少しだけ大胆に飛躍した答えを出してくれているのが興味深いです。未来と人類の進化を見据えての回答に感じます。
なので、人類は宇宙に出るべきだし、AIなども活用して科学文明を進めるべきだという、大きな問いに対して大きな答えを出しているのではないかと思います。
おそらくそれは、博士がご自身の残り時間を考えて、我々に託した思い、希望なんだと思います。
訳者の青木氏には「フェルマーの最終定理」を面白く読ませてもらいましたが、本作も博士の特徴がよく分かる本になっています。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ45 宇宙をつくる3つの要素、物質・エネルギー・空間。それらがビッグバンで自発的に生まれた。つまり、宇宙は何もないところから自発的に生じた。空間は負のエネルギーで満たされている、差し引きゼロの状態で常に一定。では何もないところに宇宙誕生の引き金を引いたのは何か、それが量子力学の領域。陽子のスケールでは、何もないところに粒子が出現し、消滅しては別のところに姿を現す。
52 ブラックホールの中では時間そのものが存在しない。時間の消失こそ、宇宙の始まりに起こったこと。
61 一般相対性理論が明らかにしたのは、空間と時間は、宇宙に含まれる物質とエネルギーによって形作られる力学的な量であって、永遠に過去から未来へと存在するのではない、ということ。アインシュタインは、空間と時間を統一した。
68 無限大の密度を持つ時空の特異点、ビッグバンにおいて、アインシュタインの一般相対性理論は破綻する。宇宙の起源を理解するには、不確定性原理(位置を正確に予測すれば、速度予測の精度は低くなる)を組み込む必要があり、理論物理学の大きな課題となっている。
76 三という次元には特別なところがある。もし空間が四次元なら、惑星は恒星の周りに安定した軌道を描くことができない。
193 ブレイクスルー・スターショットはアイディアとして興味深い。 -
Posted by ブクログ
まず、作者の題材の選び方が素晴らしい。数学、暗号、宇宙ときて次は代替医療。代替医療と一口に言ってもその数はかなりあります。
鍼、ホメオパシー、カイロプラクティック、ハーブ療法、この4大医療のほかにもアーユルヴェーダ、アレクサンダー法、アロマセラピー、イヤーキャンドル、オステオパシー、キレーションセラピー、クラニオサクラルセラピー、クリスタルセラピー、結腸洗浄、催眠療法、サプリメント、酸素療法、指圧、人智学医療、カッピング、スピリチュアルヒーリング、セルラーセラピー、デトックス、伝統中国医療、ナチュロパシー、ニューラルセラピー、パッチフラワーレメディ、ヒル療法、風水、フェルデンクライシス法、分子矯正医学、マグネットセラピー、マッサージ療法、瞑想、リフレクソロジー、リラクセーション、霊気など中にはこれも?というものも含まれていますが、科学的に有意なエビデンスがなければ検討の俎上に上がるという徹底ぶりです。
初めて聞く名前も多かったのですが、有名どころでは例えば、マグネットセラピーはピップエレキバンみたいなもの、カッピングはアントニオ猪木がやっていたが背中に丸いアザがでる、サプリメントでは魚油だけが特別扱い・・
まず最初の4大医療方法の結論から言えば、ハーブ療法は例外はあるが効果を誇張しすぎ、カイロプラクティックは腰痛だけには効果がある、鍼も同様、ホメオパシーに至っては効果ゼロ、あるのはプラシーボ効果だけ。
もちろん、プラシーボ効果にも考慮すべき側面はあるが、それなら医者が処方した薬も同様ということで、プラシーボ効果だけしか期待できないホメオパシーはやる意味がない。そして、こうした代替医療に傾斜することで、もっと効果の高い医療がなされず手遅れになるという弊害も出てくる。
このプラシーボ効果については、医師の安易な推奨についても著者は厳しく断罪する。
患者への気休めでホメオパシーを推奨すれば、それは医師がホメオパシーの効果を追認したことになるから、医療に詐欺文化が蔓延することになる。(P407)
最近、日本でも血液クレンジングという効果のないものを芸能人が拡散したことが問題になっていましたが、代替医療の分野でも同じことが起こっています。有名なところでは、ホメオパシー愛好家はシンディ・クロフォード、シェール、アーユルヴェーダはゴールディ・ホーン・・(P414)
本書では、代替医療をひろめた首謀者をリストアップしていますが、上のセレブ以外にも、医療研究者、大学、グル、メディア(この項で取り上げられた謎の化学物質の危険性を告発した記事・・センセーショナルに真実のみを誇張して書いたが、この物質とは単なる水だった、という1文は必読(P444)、医師、代替医療協会、政府と規制担当当局(多くの国ではサプリメントの安全性は保障されていないどころか、市場から回収するためには規制当局が有害であることを証明しなければならない)、WHO(過去にも鍼にお墨付きを与え、ホメオパシーも・・)などこのまま放置しておくと、代替医療天国になってしまいそうな状況です。
一方では、医薬品に関しては厳しい規制があり、研究段階だけで、前臨床試験(5年)、第1段階臨床試験(1年)、第2段階臨床試験(2年)、第3段階臨床試験(3年)、FDAレビュー(1年)など最短でも12年販売開始までに必要でさらに莫大な費用も掛かる。
ナチュラル、ホーリスティック、トラディショナルという言葉を使えば安心安全を担保しているかのように錯覚してしまう代替医療の世界とは異質です。
文庫本の訳者あとがきで、本書のサイモンシンが英国カイロプラクティック協会に名誉棄損で訴えられた顛末も書かれていますので本当にお得な1冊となっています。