青木薫のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
古くは朝永振一郎の「物理学とは何だろうか」等、第一線の研究者が記した一般向けの学術解説書は数多あるが、物体を対象としない純粋抽象的理論の体系である数学の現在進行中の研究内容をかみ砕いた言葉でわかりやすく説明したものは、そう多くはないだろう。
量子論や超ひも理論といった物理学の理論が、元を質せば数学における成果(のある意味簡略版)であることは余り知られていないと思われる。
純粋理論を突き詰めた数学と宇宙の成り立ちを示す物理学とが同じ理論に行き着くことは、大きな驚異でもあるが、至極納得的でもある。我々が暮らす宇宙は、極めて合理的な存在基盤に立つということだ。加えて、人間の思考が(極く選ばれた人 -
-
Posted by ブクログ
ホメオパシーは怪しいと気付いている人でも、鍼灸、カイロプラクティック、漢方を疑いなく信じている人は多い。
科学は今の時代でも万能ではなく、推論の積み重ねであり、原因が完全に解明されないまま利用されているものは多数ある。だが、本書が軸としているのは科学的根拠の究明ではなく、臨床試験とその結果を収集した系統的レビュー。ランダムで選ばれた患者に対し、二重盲検法によって試験担当者も対象者も本物の薬かどうか知らされないまま検証し、プラシーボの効果を排除してその効果を測定する。
正規の医薬品だろうと鍼治療だろうと霊感診療だろうとその理論はさておき、同じ検証プロセスを通してこそ何が有用で何が有害であるのかが -
Posted by ブクログ
2013年発刊。とてもおもしろかった。
天文学の歴史がこの一冊でざっとわかります。
理解力の乏しい僕ですら楽しめるくらいですから。
ええ。
【以下へぇ〜って思った点】
地球の自転=1日、月の満ち欠け=一ヶ月
季節のめぐり(地球の公転)=1年
地球と月と太陽という三つの天体が暦の元になっている。こんなの今さらすぎますが、僕はへぇ〜と思いました。昔の人たちは夜空をずっと観察しながらこの世界とは何なのかを探ろうとした訳ですな〜。
バビロニア国カルデア人が一日を24時間に区切り、一週間とう区切りを設けた。月〜日の曜日なんかも。
天動説から地動説へ。人間中心主義が崩壊。
宇宙の果て。ユークリッド幾何 -
-
Posted by ブクログ
宇宙の見方の科学哲学史。
初期の天動説、あるいはギリシャ時代の単純な地動説から、コペルニクスによる地球の太陽系での相対化が行われたとされるが、実はコペルニクスはそれも神の意図を知る上でのものであったと考えていた。むしろ後世の科学者たちがキリスト教的世界観からの離脱がこの時行われたと見た。また、ニュートン力学は依然完全統一理論を希求するところの出発点であり、アインシュタインもその系譜に載るが、量子力学や多元的宇宙論が出てくることで、現在の宇宙はたまたま人間が観測できている時代、空間にあるからだという、逆の意味(確率論的であるが)で人間中心論に戻って来ている。 -
-
Posted by ブクログ
人間原理的な考え方は、まだ科学を十分に学んでいない小学生ぐらいの考え方だと思っていた。しかし、その人間原理が常に最先端の宇宙論の中で見え隠れしているという構図が面白い。
著者の青木薫氏は数々のサイエンス・ノンフィクションを翻訳していて、幅広い知識と分かり易い説明が特徴なので、本書もすんなりと読み進める事が出来る。
標準理論での限界や、インフレーション理論とひも理論のオーダーが全く異なる両極端から多宇宙ヴィジョンがでてくる件は非常に興味深い。
現在測定可能な宇宙と、多宇宙ヴィジョンが相容れない事も事実であろうし、我々が生きている間に検証が行われる可能性少ないだろうが、固定概念にとらわれず想 -
Posted by ブクログ
最新の宇宙論のひとつである"人間原理"が導かれた背景について、古代ギリシャ以降の宇宙論の変遷をなぞりつつ丁寧に語る。
古代の"神が作った"=人間のための宇宙の理念を破ったコペルニクスの原理。
・宇宙における人間の居場所は、なんら特権的なものではない
・宇宙には特権的な場所はない
このコペルニクスの原理が長らく科学的考え方のベースになっていたが、現代の多元宇宙論に至って状況が変わる。一度ビッグバンが起きた以上、それは何度あっても不思議ではない。そうして宇宙は無数に誕生し、その中でたまたま、この宇宙は人間が存在するに都合のよいものであったという。
⚪︎ -
Posted by ブクログ
サイモン・シンの訳者で知られる著者の書き下ろし。
新書らしく、一般にも分かりやすく科学の知見を歴史的推移に沿って紹介。科学から人間原理が生まれてくることを、というより科学が人間原理を利用できる局面を紹介している。
つまり、まだまだ科学が解明できている領域は限定的であること。
でも、一番驚いたのは、クォークモデルを提唱した本人が、「クォークを実在物と考えるべきではありません。クォークは数学的な工夫にすぎない」と言明していたこと。
これは現実は理論物理学を超えていたことを証明している。
てことは、実際の宇宙の姿には人間の知見はまだまだ追いついていないのかも。 -
-
-
Posted by ブクログ
サイモン・シンを青木薫が訳した本がとてもよかったので,これも読んでみる。物理学を修めた訳者だけあって,こういう分野の訳書が多い。著者は哲学者で,10の科学実験を通して古代から現代までの科学史を通覧する本。
10の実験の主役は,エラストテネス,ガリレオ,ニュートン,キャベンディッシュ,ヤング,フーコー,ミリカン,ラザフォード。実験の数と合わないが,これはガリレオが2回入選していることと,最後の実験は特定の一人に帰着できないためだ。
キャベンディッシュは8人のなかで一番有名じゃないかもしれないが,印象に残った。18世紀の終わりごろ,彼はとても精巧につくった機械で地球の重さを測定した。当時すで -
-
-